『盲導犬情報』 第27号 〜認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第27号


今号の内容

  1. コロナ禍での公共交通事業者に向けた「接遇ガイドライン」について
  2. 「サービス介助士」について 公益財団法人日本ケアフィット共育機構  喜山光子
  3. 盲導犬ユーザーのコーナー
    「こんにちは! 盲導犬エルフです」  高知県 山内かおり
  4. 盲導犬情報ボックス
    「都道府県別 日本の補助犬実働数」
  5. 編集後記

1.コロナ禍での公共交通事業者に向けた「接遇ガイドライン」について

 国土交通省では、公共交通事業者による一定水準の接遇を全国的に確保するため、2017(平成29)年度、「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」を作成・公表しました。そして、今年7月にこのガイドラインの追補版として、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた高齢者・障害者等に対する接遇のあり方についてとりまとめたものを公表しました。
 この作成にあたっては、障害当事者や公共交通事業者を対象としたアンケート調査やヒアリング調査が実施され、学識経験者、障害者等関係団体、交通事業者等による「公共交通事業者等における接遇ガイドライン等改訂のための検討会」が開催されています。
 ここでは、ガイドラインに掲載されている項目にそって、視覚障害者に関係する部分をご紹介していきたいと思います。

(1)新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた接遇の考え方

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、対人距離の確保、マスクの着用、手洗いや消毒・検温の励行など、感染予防対策が実施されている。しかし、「コミュニケーションにより必要な支援を伺う・伝える」ことが必要な高齢者・障害者等にとっては、コミュニケーションがとりにくい状況下で、サポートが受けにくい状況になるなど大きな支障が生じている。
 公共交通機関の安全な利用を図るには、感染症対策を講じた上で、必要な支援をできるだけ簡潔なコミュニケーションによって行うことが必要となっている。

(2)感染症対策下で生じている新たな課題

課題1. 声かけや見守りなどの支援が受けにくい

 三密を避けてソーシャルディスタンスをとる、会話を控えるなどの感染症対策をとっているために、声かけや見守りなどの支援が受けにくくなっている。

【視覚障害の具体的な課題】
課題2.これまでのコミュニケーションや接遇が受けにくい

 マスクの着用やアクリル板の設置、三密の回避や会話を控えるなどの対策によってコミュニケーションがとりにくくなっており、必要なことが伝わらない、必要な介助を受けられないなどが生じている。

【視覚障害の具体的な課題】
課題3. 感染症対策設備が利用しにくい

感染症対策として設置されている設備が、高齢者・障害者等の利用が想定されていない場合があり、利用できない・しにくい状況が生じている。

【視覚障害の具体的課題】
課題4. 感染症対策がしづらい、理解しにくい

 マスクの着用や会話を控えるなどの感染症対策が、障害等によってできない、必要性が理解できないなどの場合があり、「対策していない」と誤解される場合がある。

【視覚障害の具体的な課題】
課題5. 新たな工夫が求められている

 直接対面し時間をかけてコミュニケーションを行う必要がある予約や各種手続きについて、感染症対策下においてもこれまでと同様に利用できるよう、非接触や短時間で行える工夫が求められている。

(3)新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた上での接遇のポイント

ポイント1. 変わらず「まず声かけ、そして必要な支援」を行うことが重要

 これまでと変わらず高齢者・障害者等が安全に公共交通機関を利用できるよう、接遇の最も重要なポイントである「コミュニケーションをとること」は、安全を確認する、必要な支援を行う上で変わらず必要であり、感染対策を講じた上で、「声かけ」などのコミュニケーションを行っていくことが重要。

【基本的な声かけのポイント】
ポイント2. コミュニケーションツールを準備する

 マスクの着用などでコミュニケーションがとりにくくなっているなど、これまでのコミュニケーションや接遇が受けにくくなっているが、様々なツールやICTなど他の手段などを活用してコミュニケーションがとれるよう準備が必要。

【対応の好事例】
ポイント3. 感染症対策設備の設置方法や変更事項等の伝え方に配慮する

 消毒液などの感染症対策設備が利用できない・しにくい状況が生じる場合があるが、設置位置を工夫したり、個別に対応するなどして、誰もが感染症対策設備を利用できるようにすることが必要。
 また、感染症対策による運行の変更や、必要な対策が生じた場合の情報などが、多様な手段で伝えられていないために情報を入手できにくくなっているが、文字やイラストで掲示する、音声アナウンスを流すなど、複数の手段により情報提供を行うことが必要。その際、換気で窓を開けていることや、アクリル板等の設置によりアナウンスや声が聞き取りにくい状況があるため、聞き取りやすいようはっきりと、繰り返し伝えることが重要。

ポイント4. 感染症対策についての情報提供を行う

 公共交通機関の職員と同様、公共交通機関を利用する高齢者・障害者等を含むすべての利用者自身にも感染症対策が求められているが、感染症対策にかかるさまざまな情報を、高齢者・障害者等を含むすべての利用者に届けていくことが重要。

ポイント5. 感染症対策下における新たな工夫

 対面でコミュニケーションをとる必要があった予約や各種手続きについて、感染症対策下においてもこれまでと同様に利用できるよう、ICTの活用や短時間で行える工夫が求められている。

【ICTを活用した取り組み】

 なお、巻末には、「参考」としてコロナ禍の公共交通利用時に生じている高齢者・障害者等の困りごとおよび事業者の対応の好事例として、障害者団体へのアンケート結果から抜粋したものがいくつか挙げられています。

【コロナ禍の公共交通利用時に生じている困りごと】
【事業者の対応で良かったこと】

 また、コロナ禍での接遇研修として、一定水準の接遇を提供できるようにすることが重要として、動画配信やオンライン等の研修が実施されています。例として、

が挙げられています。

 ※この原稿は、「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン〜新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた高齢者・障害者等に対する接遇のあり方について〜」(国土交通省)から一部抜粋して作成しました。国土交通省ホームページからPDF版・テキスト版がダウンロードできるようになっています。同省ホームページで「接遇ガイドライン コロナ」といったワードで検索、または、以下のアドレスからダウンロードできます。
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000267.html

2.「サービス介助士」について

 公益財団法人日本ケアフィット共育機構  喜山光子

 コロナ禍での公共交通事業者に向けた「接遇ガイドライン」の中で、実施されている接遇研修として、ユニバーサルマナー検定やサービス介助士・交通サポートマネージャー研修などが挙げられています。今回、その中の一つ、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が運営しているサービス介助士についてお話を伺いました。

(1)団体を立ち上げた経緯

私たちは1999年11月、前身である特定非営利活動法人日本ケアフィットサービス協会を立ち上げて以来、急激に加速する高齢化に対応できるしくみづくりに奔走し、「おもてなしの心」と「安全な介助技術」を修得する「サービス介助士」の学びをたくさんの企業、市民の皆様に受け入れていただき、高齢者、障害者などお手伝いが必要な皆様が安心して外出できる社会づくりの一翼を担えていければと考えました。2013年12月、内閣総理大臣から公益認定を受け、公益財団法人日本ケアフィット共育機構として新たなスタートを切り、次々と変化する社会のニーズに対応すべく新しい資格を誕生させ、「誰もが暮らしやすい共生社会」の実現に向けて、今後も様々な社会貢献事業の展開を考えます。

  

(2)サービス介助士資格の実績と導入分野について

障害のあるなしなどの違いを越え、共に築く暮らしやすい社会。一人ひとりの「気づき」と「学び」が互いにつながり、社会の力になっていく、そういったネットワークづくりも、私たちの大切な活動のひとつであり、その実践として生まれたのが、サービス介助士資格認定制度です。
約1000社の企業様が、サービス介助士の学びを導入。交通機関、宿泊施設、デパートなど小売店、金融機関、自動車関連、医療関連、警備業など様々な生活シーンの中に介助の心得を修得した人材がいることで、たとえ要支援者であっても、より快適な社会生活を送ることができると考えます。9月1日現在までに、194,990人のサービス介助士が活躍中です。

(3)サービス介助士学びの特徴

々峙舛髪藹による実践的な学び

 加齢や障害についてテキストやインストラクターの講義から体系的に学ぶだけでなく、実技演習やディスカッションによって学びをすぐに仕事や日常で活かすことができるよう“介助する/される”両方の立場を演習で実践することで相手の立場に立ったコミュニケーションを身につけます。

⊂祿嘉事者講師(サービス介助士アドバイザー)との対話からの学び

 なかなか馴染みのない“障害”について、車いすユーザーや視覚障害者などの障害当事者との対話を通じて、エピソードを交えながら分かりやすく理解します。日常で障害者が出会うバリアとその原因を一緒に考えて、サービス介助士としてどのように応対するかを実践します。

9馘攜鯆名覆寮楸ガイドラインに準拠し、サービス現場に即したカリキュラム

 国土交通省 交通事業者向け接遇ガイドライン作成検討委員会を中心とした有識者の監修により、事業者と生活者のニーズに寄り添った内容で、常に社会で求められていることを学びに取り入れています。

ぅ献Д蹈鵐肇蹈検爾了訶世鮗茲蠧れた学び

 サービス介助士は、“齢(よわい)を創る”という考えの創齢学(ジェロントロジー)を核とした学びで、ジェロントロジーとは加齢に関する体系的な学問で一般的に「老年学/老人学」と訳されています。ジェロントロジーを通して高齢者が生きがいある生活を送っていくために、そして一人ひとりが生まれてから死ぬまでの人生を考え、より生活の質を高め、齢を創りあげていくために、ノーマライゼーションの考え方も含めてサービス介助士の学びで発信しています。

ゾ祿欧亮匆颯皀妊襪旅佑┐魎霑辰箸靴燭もてなし・接遇の体得

 “障害のある方は心身に障害があってかわいそうだから手伝う”と考える人もいます。しかし、高齢者・障害者が困っている原因は環境や事業者の仕組みが生み出している、という考えをもとにすれば、その人へのおもてなしや接遇の心構えも変わってくるでしょう。“社会の仕組みが障害を生み出している”という考え方の“障害の社会モデル”を身に付けていきます。

Υ鏡しない・させない接遇

 感染予防のための各種ガイドラインが発行されていますが、サービス介助士の講義では、さらに踏み込んで高齢者・障害者など多様な人への接遇を、“感染しない・させない”接遇の観点からお伝えし、With / Afterコロナ時代におけるユニバーサルな接遇を考えていきます。

(4)弊機構のこれからの役割とビジョン

 日本ケアフィット共育機構では「誰もが誰かのために、共に生きる社会」の実現のためにサービス介助士の普及を進めております。その考えはSDGs(持続可能な開発目標)が目指す“誰一人取り残さない社会”の実現と通じるものです。企業としての発展とともに、すべての人がアクセスしやすい社会に向けた取り組みに、サービス介助士資格取得の推進が寄与するものと考えています。

3.盲導犬ユーザーのコーナー

『こんにちは! 盲導犬エルフです』   高知県  山内かおり

 盲導犬や視覚障害への理解啓発のための授業や、ボランティア講座などの講師として盲導犬エルフと参加する機会があります。高校生の年齢になると家庭や社会の中での役割をもち、自分で考えて行動することができると思います。また、近い将来、就職や進学により家族や友達以外の多くの人達と出会うことになるでしょう。その高校生達に向けて災害時避難所などでの視覚障害者に対するサポートをお願いしています。そこで、今回は、高校生を対象とした理解啓発授業、ボランティア講座での内容を紹介します。

*     *     *

 今年も、各地で台風や豪雨などによる大きな被害がニュースなどで報道されています。高知県では南海トラフ地震も心配されているところです。実際に避難しなければいけないような状況では、家族や自分自身も不安な状態にあるかもしれませんが、避難所や危険な場所で、私たち視覚に障害のある人を見かけたら少しお手伝いいただけると助かります。
 視覚障害者の見え方には、全く見えない「全盲」の人と、見えにくい「弱視」の人がいます。弱視の人の方が数が多く、その見え方は一人一人異なり、日常の行動からは視覚障害者であると理解されにくい場合があります。
 視覚障害者の移動手段には、目の見える人の肩や肘を持って誘導してもらう方法、白杖を使って点字ブロックなどをたよりに歩く方法、盲導犬を伴っての移動方法がありますが、災害時には多くの方の避難が考えられます。
 広い場所や初めての場所での移動が私たち視覚障害者は苦手です。特に避難所の体育館など室内では、物や壁にぶつからないように白杖や盲導犬を伴っての移動は難しいのです。そのような時には、見える方にガイドをお願いすることでスムーズに移動することができます。ガイドの仕方は、肘か肩を持たせてください。ガイド者は二人分の幅を確保し、半歩前を歩きます。狭い通路でも視覚障害者が持っている方の腕を背中にまわしたり、両肩をつかまらせてもらえば、一人分の幅で移動できます。

 避難所でトイレや掲示板の位置を説明する際には、クロックポジションによる説明が便利です。クロックポジションによる位置説明は部屋や施設、卓上の位置関係を説明する際、時計の文字盤に置き換えて12方向で説明する方法です。体育館でも視覚障害者を基準にして位置関係を説明することができます。例えば、「6時の方向に出入り口、9時の方向に掲示板、5時の方向にトイレがあります」などと説明してもらえれば方向を確認することができます。
 また、避難所では、生活していく上でのルールなど、頻繁に掲示物が貼り出されます。私たち視覚障害者は貼り出された大切な情報に気づかないことがあります。掲示物の情報を教えていただけるようお願いします。
 現在のこのコロナ禍の状況では、非対面の場面も多く、お店の人とのやり取りや、店舗や施設に設置してある体温計や消毒液の場所がわからず困ることがあります。
 ウィズコロナの時代に、人との距離も必要となりますが、マスクの着用、手洗いや消毒など感染予防をお互いに心がけて、「いつも」の時にも「もしも」の時にも、声かけやサポートをお願いします。

*     *     *

 多くの方のもつ盲導犬や視覚障害へのイメージはどのようなものでしょうか? 盲導犬は、「かわいそう、ストレスが多くて寿命が短そう・・・」、視覚障害についても「目が不自由だと何も見えないのですか?」「目が不自由な人が自分でご飯を作ったりするのですか?」、このような質問がよくあります。
 私たちが啓発授業など様々なイベントに参加することや、私たちの日々の生活のなかで、「盲導犬や視覚に障害を持つ人も、自分の家族や友達と同様に特別な存在ではない」ということを少しでも伝えることができるように、また、「どのような方法であればお互いを理解し、協力することができるのか?」など考えながら一般社会との懸け橋となるように、これからも高知で活動していきます。
 盲導犬エルフと行動する中で、一人でも多くの方に視覚障害や盲導犬を理解していただけるように願っています。

4.盲導犬情報ボックス

○都道府県別 日本の補助犬実働数

 現在の日本の補助犬実働数は次のようになりました。

*この数字には、連合会に加盟していない育成団体の数字が含まれています。

社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会 自立支援施設部会盲導犬委員会
「2020年度盲導犬訓練施設年次報告書」より。

厚生労働省「身体障害者補助犬実働頭数(都道府県別)」より。

 盲導犬実働数861頭に、1頭の盲導犬を夫婦二人で使用するタンデム方式の盲導犬使用者19組を加え、盲導犬使用者数を算出してみると、日本国内で盲導犬を使用している視覚障害者の方は 880人です。
 なお、タンデムの盲導犬使用者を地域別にみると、都道府県別では、広島県に3組、東京都・大阪府・和歌山県・鹿児島県に各2組の他、長野県・愛知県・滋賀県・兵庫県・島根県・岡山県・山口県・福岡県に各1組おられます。
 盲導犬実働数は2009年度の1070頭をピークに年々減少していますが、特に2020年度は前年度に比べ−48頭。しかし年間育成頭数は103頭で、2019年度に比べると1頭多くなっています。一方、年間育成頭数のうち新規の使用者のパートナーとなった盲導犬は24頭、代替えは79頭で、年間育成頭数の76.7%が代替えとなっています。2019年度の67.6%と比べると、その率は上昇しています。

都道府県別 日本の補助犬実働数

盲導犬、介助犬、聴導犬の順で数字を掲載

盲導犬 介助犬 聴導犬
北海道 41 2 0
青森県 6 0 0
岩手県 8 3 0
宮城県 26 1 0
秋田県 11 1 0
山形県 6 0 0
福島県 19 0 0
茨城県 17 0 0
栃木県 10 1 0
群馬県 8 1 1
埼玉県 46 3 5
千葉県 26 3 0
東京都 98 8 16
神奈川県 66 8 7
新潟県 26 0 1
富山県 6 0 0
石川県 13 1 1
福井県 6 0 0
山梨県 18 0 0
長野県 17 1 0
静岡県 33 0 2
愛知県 35 2 0
岐阜県 7 1 0
三重県 9 1 0
滋賀県 13 1 3
京都府 10 4 3
大阪府 55 8 10
兵庫県 35 2 1
奈良県 15 0 6
和歌山県 4 0 3
鳥取県 5 0 0
島根県 12 0 0
岡山県 16 2 0
広島県 18 1 0
山口県 16 0 0
徳島県 4 2 1
香川県 7 0 0
愛媛県 10 1 2
高知県 6 1 0
福岡県 24 0 0
佐賀県 5 0 0
長崎県 4 0 0
熊本県 4 0 0
大分県 10 0 0
宮崎県 10 0 0
鹿児島県 11 0 0
沖縄県 9 1 1
合計 861 60 63

5.編集後記

 今月5日に東京2020パラリンピックが幕を閉じました。数々の熱戦が報道されましたが、イスラエルの選手が盲導犬と共に来日し、開会式や選手村で選手のユーザーと共に過ごす盲導犬の様子がメディアに紹介されて話題になりました。これが「選手村の中の話だから」「外国の選手だから」ではなくて、盲導犬ユーザーが盲導犬とともに、日本のどこででもいろんなイベントや仕事に参加し、時にはくつろぐことが当たり前と思われるような社会になれば、と願っております。