盲導犬情報 第4号(1995年1月)



内容


特集:子どもたちへの啓発活動

福祉教育に対する各盲導犬協会の取り組み

児童・生徒に対して社会福祉への関心と理解を深め、豊かな人間性を養うことを目的として、いろいろな学校が福祉教育に取り組んでいます。内容は、地域の清掃からお年寄りとの交流、老人ホームや共同作業所の訪問、募金活動など、学校によって様々です。盲導犬事業は、福祉に関心がない人にも「犬」という存在を通して関心を持ってもらい易い、という利点があります。そこで、日本で盲導犬の訓練や歩行指導を行っている各法人に、どのような形で福祉教育に関わっているのか聞いてみました。8法人中 7協会から回答をいただきましたのでご報告します。

訓練施設の見学、盲導犬の訓練実演や講演を学校から依頼された場合、回答のあった 7協会すべてが「依頼に応じる」と答えています。昨年 9月から11月の 3ヶ月間に受けた見学の申し込みは、2〜26件、平均9.9件。講演依頼は、3〜44件、平均15.6件となっています。講演の依頼を受けた場合の対応は、5協会が「職員を派遣する」と答え、2協会が「職員を派遣することもあるが、場合によっては使用者に依頼する」と答えています。講演の内容としては、盲導犬訓練に関する話や盲導犬使用者に出会ったときの注意点、協力の仕方などの他、盲導犬だけでなく白杖や手引きについて、また広く視覚障害についても理解してもらえるようなものが考えられているようです。

ほとんどの協会が、「幼い時の経験が将来大きな効果をもたらすものである」「次世代を担う子どもたちにこそ積極的なピーアールが必要である」などの意見を述べており、今後も子供たちに対して積極的に啓発活動を行っていきたいと考えているようです。


盲導犬を主題にした福祉教育の実施について =京都市立醍醐中学校の場合=

昨年 4月、京都市立醍醐中学校の創立記念行事として、全校生徒の前で盲導犬や視覚障害についての話をする機会がありました。生徒に対するアンケート調査を 3月に実施した結果、ボランティアに対する関心は高いがどうしたらよいのかわからない、といった傾向がみられた為このような話を聞く機会を計画した、とのこと。そこで、話を聞く前と聞いた直後、そして話を聞いてから数ヶ月後の計 3回、アンケート調査に協力していただき、生徒達がどんなふうに話を受け止めてくれたのか、きいてみました。

まず、事前アンケートで「街で盲導犬をつれた視覚障害者をみかけたことがありますか?」という質問に対して、326人の生徒の内 232人(71.2%)の人が「いいえ」と答えています。盲導犬に対してもっているイメージをあげてもらうと、約半数の人が「かしこい」と答えています。その他には、「おとなしい」「やさしい」「えらい」などが挙げられました。

事後アンケートで、「盲導犬に対するイメージは変わりましたか?」と尋ねると、49.9%の人が「変わった」「少し変わった」と答えています。どんなところが変わったのかを具体的に挙げてもらうと、「かしこい」「盲導犬は義務で働いていると思ったが、犬も楽しんでいる」「用事のないときはおとなしく待っている」「けっこうのんびりしている」「犬が道を覚えていると思っていたが違った」「信号がわからないことを知った」といったものが挙げられました。

「街で視覚障害者に会ったとき、手引きをするなど、何か援助しようと思いますか?」という質問に対する答えを比べてみると、次のようになりました。

そう思う 事前 26.5% 事後 42.8% 8ヶ月後 31.0%
少しなら思う 事前 36.7% 事後 45% 8ヶ月後 45.0%
どちらとも言えない 事前 26.5% 事後 7.5% 8ヶ月後 17.9%
あまりそう思わない 事前 7.7% 事後 3.1% 8ヶ月後 7.6%
まったく思わない 事前 2.6% 事後 1.6% 8ヶ月後 1.3%

事前アンケートで、援助をしようと思わない人たちにその理由を挙げてもらうと、「下手に援助すると大変になるから」「面倒くさい」「機会がない」「恥ずかしい」「盲導犬が横にいたら助けない」「余計なことをしてほしくない人もいるから」といった理由が出されました。一方、事後アンケートでは、「断わられたらいやだから」「恥ずかしい」「自信がない」といった理由だけが挙げられており、援助しようと思わない、という気持ちが変わらなかったにしても、その意識には少し変化が見られるような気がします。

また、「視覚障害者が安心して暮らせる街にするため、私たちの身近な所で改善できることを書いて下さい」という項目では、「信号の音」「盲導犬が入れる店やホテルを増やす」「ゴミを捨てない」「自転車を邪魔な所に置かない」「手引きをしたり声をかけ助ける」「車の違法駐車をなくす」「盲導犬を増やす」「みんなの気持ちの持ち方をかえる」「点字をする人を増やす」など、いろいろなことが挙げられました。また、それだけに留まらず、何か自分達ができることはないのか、と考え、盲導犬育成のために自分達で廃品回収や募金活動をして集めたお金を寄付しようということになりました。

そういった活動が進められる中、12月の中旬に再びアンケート調査に協力してもらい、実際に視覚障害者に会ったかどうか、その時どのような対応をしたのか、といったことについて答えてもらいました。313人の生徒の内、「街で白い杖や盲導犬を使って歩いている視覚障害者に会った」と答えた生徒は118人(37.7%)でした。そして、その中の 5.9%の生徒が「その時、声をかけたり手引きをした」と答えています。「しなかった」と答えた生徒にその理由を尋ねると、「自信がなかったから」が最も多く51.4%、「恥ずかしかった」が33.3%、「時間がなかった」18.9%、「他の人が手引きをしていた」17.1%、「その他」26.1%となりました。「その他」を選んだ生徒の中には、「車やバスの中にいた」「遠くで見かけた」「特に困っておられなかった」等、声をかけようという気持ちはあってもできなかった生徒が含まれています。

「今後、街で視覚障害者に会ったとき、手引きをしようと思いますか」という質問に対しては、「声をかけたり手引きをした」と答えた生徒全員が「そう思う」と答えています。しなかった生徒では、68.5%が「そう思う」「少しならそう思う」と答え、「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と答えたのは3.6%となりました。視覚障害者に会わなかった生徒で「そう思う」「少しならそう思う」と答えたのは79.5%、「あまりそう思わない」「まったくそう思わない」と答えたのは5.1%となっています。全体を通してみてみると、「そう思う」と答えたのは31.0%、「少しならそう思う」が45.0%となっており、事後アンケートの結果より少なくはなっていますが、依然高い割合を占めています。

この中学校の場合は、アンケート結果やその後の生徒会活動からみても、盲導犬を主題にした福祉教育がとてもいい方向に向かった一例といえるのではないでしょうか。しかし、もしそこに、話を聞いただけで終わらせることなくその後のフォローをして下さった先生方の熱意がなければ、このような結果は生まれなかったと思います。学校行事で忙しい中 3回ものアンケート調査とその集計をして下さっただけでなく、生徒達が取り組める活動を生徒と共に考え、生徒と共に行動された醍醐中学校の先生方には、本当に頭の下がる思いがしました。やはり話をする者だけでなく、日頃生徒に接しておられる先生方の思いや取り組みが、子どもたちに福祉ということを身近に考えてもらうためのこういったプログラムを進めていく上で必要不可欠なものだと言えるでしょう。

最後に、この中学校の生徒二人の感想文の一部をご紹介します。
 「私は、今日の学習でいろんな事を学びました。犬が人間を助けてあげているのを見て、「犬にできているんだから、人間にだってできることなんだ」と思いました。もし、この学習をする前に、視覚障害者の方に会っていたとしても、私は助けてあげず、見て見ぬふりをしていたと思います。でも、この学習をして、もし街で視覚障害者の方に会ったとしたら、勇気を出して声をかけたいと思いました。この少しの親切で、その人の心がなごむのなら、私は手引きをしてあげたいと思いました。−略−」(1年生・浦上 亜沙子(ウラカミ アサコ)さん)

「−略−主人の命令は英語で「ストレート・ゴー」とか色々あったけど、色々命令の種類がある中で、一つ一つがきちんと区別できるのはすごくえらいなと思いました。でも、デパートやレストランも、盲導犬を入れてもらえない所がまだまだ多いと言っておられたけど、視覚障害者にとっては、とても失礼なことだと思います。自分が好きで目が見えなくなったわけでもないのに、盲導犬をつれた視覚障害者の出入りを断わるなんて。このことはこれからも考えなおしていかなければならないと思います。」(2年生・中西 悠吏果(ナカニシ ユリカ)さん)


講演活動について

大阪府  岡田 彰

盲導犬ユーキがわが家にやってきてもう 5年になります。そして私が講演をするようになってからも 5年ほどがたちました。高等学校や中学校の先生の前で、あるいは小学校の全校生徒だとか 2年生だけだとか、保育園の幼児、または老人センターの職員の方などの前で、今までに20回ほど話をさせていただいています。

話の内容は、盲導犬に関してが多く、その中に少しだけ視覚障害者のことについての話もしております。ただ、盲導犬についてもそれほど詳しくは話をしておりません。だいたい講演時間が30分から45分ぐらいの間ですから、あとは質問を受ける、という形で話をしております。盲導犬が生まれ、その後パピーウォーカーに預けられ、1才になると訓練所に帰り、それから約 1年間をかけて訓練をすること、新しい主人と接触しそれからの訓練のことなどを話します。また、新しい主人と一緒に生活が始まったら、その時の歩行の仕方だとか、信号を誰がどう判断するのかとか、そういったことや犬の健康管理や衛生管理のことなどについて、あるいは盲導犬をさわりたいときはどうすればいいか、といった大事なことについても話をし、最後に、杖を持って歩いている人、もしくは盲導犬を使っている人などを手引きする場合はどうすればよいか、というようなことも話しております。

その時その時によって内容が少しづつ変わり、旅行に行ったり遊びに行った時などの楽しかったことなどがあれば、その時の様子も話しております。乗り物に関しては子供さんも興味があったりするので、自動車やバス、電車、エスカレーター、エレベーターはもちろん、飛行機にも何の問題もなく乗れること、但しジェットコースターには乗れなかった、といったことなども話に入れております。

小学校へ行った場合いつも思うのですが、全校生徒の前で講演するので、一人一人にちゃんと見せてあげたりすることができないのが残念です。そこで、先日ある小学校の 2年生だけを対象にしたときは、一人一人がユーキの前に立ってゆっくり見たりさわったりする時間を設けました。非常に興味があったようです。学校の先生などに話をするときは、誉めて誉めて誉めてやることが盲導犬に対する教育であることをお話すれば、先生方も「人間と同じですね」などと言っておられました。

こうして講演を年に2〜3回していると、たまには最寄りの駅で電車を待っているときなど、盲導犬をみつけて「わあ、ユーキだ、ユーキだ」と言って寄ってきてくれたり、人によっては「岡田さん」と名前を覚えていてくれる方もいます。そういうときは非常に嬉しいです。もう一つ嬉しいことは、講演が終わった後、子供さん達からの感想文が届いたときです。それは大変嬉しいものです。何遍も何遍も読み返し、しっかり聞いてくれているな、と感心しています。このようにして私は、講演は元よりハイキングや旅行、その他いろいろなところにユーキと出かけることを楽しんでおります。


一般市民の盲導犬に対する接し方について

広島市  桑木 正臣

私は 5年間、盲導犬と生活し地域住民と接し、また各方面に盲導犬について講演に行きますが、その際、その接し方のピーアールに疑問に思うことがあります。今まで私が各訓練所の使用者から聞いたこと、またテレビ・ラジオ等マスコミで報道されたことは「盲導犬あるいは使用者に声をかけない」「さわってはいけない」「食べ物を与えてはいけない」「遠くから見守ってほしい」。この中で、食べ物を与えること、犬に声をかけること、黙って犬にさわること、この三点は全くその通りだと思う。しかし、使用者に声をかけること、「おはよう」「こんにちは」などの挨拶や、また、犬には黙ってさわってはいけないが、使用者に一声「さわってもいいですか」と言えば、使用者は「シット」「ダウン」など犬をその態勢にさせ、さわらせることにより、盲導犬について少しでも話す機会が得られるので、大変いいことだと思っている。私が受けた訓練所では、この点はいいことになっているが、他の訓練所ではそうでない所もあるようだ。

要するに、反対の立場は、犬に他人がさわると落ち着きがなくなり、使用者に危険なことがあっては、ということだろうが、使用者にその旨伝えてあれば犬も落ち着かせるし、危険もない。ただ、使用者が半年かそこらの初心者の場合、犬のコントロールができないと思えば断わればいいのである。

私は、常に講演などで特にこの点、今まで報道されたことは間違いではないが、そのピーアールの仕方に問題があるのだから、まず、興味のある方は、使用者に声をかけ、その後話をするなり、犬にさわるなりしてほしい、このように話しています。

ある学校の校長さんは、「そうだったんですか、なるほど。その方が盲導犬にも親しめるし理解も増す」と言っておられた。実際に私が毎朝の散歩中でも、子供達は通学途中で「おはようございます」と何人もが声をかけてくれるし、散歩の途中広場で休んでいると、犬にさわりながら視力障害者はどうして生活しているのか聞いてくる。

二つほど例をあげると、一つは小3の女の子二人「おじちゃん、おばちゃん、朝起きてどうやって服を着るの」「ごはんはどうやって食べるの」、こういう質問が飛んでくる。もう一つは、5年生二人「生活はどうしているのか」、これは何を仕事にして収入を得ているのか、という、子供達にすれば、目の見えない人は親または誰かに養われているのだろうと思っているらしい。盲導犬をさわりながらこんな質問をすることにより、障害者のことも理解してもらえる。こういった観点からも、その啓発にはこういったピーアールの仕方がより良いものだと信ずる。

イギリス盲導犬協会の前広報担当部長、ジョン=ベイリー氏は、できるだけ多く町を盲導犬と歩き、一般の方と接する機会を増やすことが何よりの理解を得ることだと言われたが、遠くから見守るだけでは、何の理解も得られない。


施設紹介(3)

財団法人 中部盲導犬協会

中部盲導犬協会は、昭和45年 9月 5日に名古屋市中村区則武町、通称駅西の長屋の一室を借りて盲導犬の訓練を開始しました。

49年12月には愛知県より財団法人の認可を受け、昭和55年 7月には名古屋市港区十一屋 1丁目に鉄筋コンクリート造り 2階建ての管理棟と鉄骨ブロック造りの犬舎を備えた盲導犬総合訓練センターが、愛知県、名古屋市、日本自転車振興会の補助と市民の皆様の支援により完成しました。

当協会では、地域社会の理解と参加の下にバランスのとれた盲導犬育成事業を目指しております。

優秀な盲導犬を育成する事は第一に、社会に盲導犬が受け入れられ、視覚障害者と盲導犬が何時でも自由にあらゆる場所も利用出来ることが実現できるように、学校、子供会、地域のイベント等に積極的に参加をして盲導犬の理解を深める運動に取り組んでいます。

また、盲導犬使用者はガイドドック・オーナーズクラブを組織して研修旅行、ハイキングやボランティアとの交流と広く盲導犬を知って頂く活動やホテル旅館の盲導犬の受け入れについても署名活動を実施しており、 4万人を越える署名の協力をいただいております。

また、ボランティアの育成にも力を入れて多くのみなさまが、盲導犬の育成に関心を持ち積極的に参加いただけるような活動を行っています。  将来は、盲導犬が多く育成出来るように有能な盲導犬訓練士、歩行指導員の養成に力を傾注しており、また、手狭になった施設の増改築の構想を持ち、全国の盲導犬訓練施設と協調して、視覚障害者の自立と安全歩行の一助となるように努力しています。

財団法人 関西盲導犬協会

関西盲導犬協会では、視覚障害者に盲導犬を渡すことを唯一の目的とするのではなく、視覚障害者に「快適な歩行」を提供し、「質の高い生活、人生」を営んでもらうことが重要である、と認識しています。そのため、他のリハビリテーション施設と連携し事業を進めている他、視覚障害者によっては、盲導犬と白杖あるいは電子機器を併用するなど、総合的な観点から指導に当たっています。また、そういった指導の対象者も全盲者だけに限るのではなく、弱視者なども含みより広い範囲で捉えています。

その他、全国で初めて、夫婦で 1頭の盲導犬を共用する「タンデム」という方法を開発しました。関西盲導犬協会では、必ずハーネスは左手で持ち、道の左側を歩くように指導します。タンデムの場合もその点は同じで、まず夫婦のどちらか一人が盲導犬のハーネスを持ちます。そして、その人の右斜め後ろにもう一人が立ち、ちょうど手引きを受けるような感じで、前に立つ人の腕や肩などに触れる、というスタイルで夫婦一緒に歩きます。また、常にタンデムで歩くのではなく、時にはどちらか一人だけが単独で盲導犬を使うこともあります。こういった方法で盲導犬を使っているご夫婦は、すでに10組になります。

また、訓練センターでは毎年 1回秋に「エンジョイ・ウォーキング・デー」というイベントを開催するなど、盲導犬に関する情報の積極的な提供を心がけています。エンジョイ・ウォーキング・デーでは、予約制で盲導犬との歩行を体験したり、盲導犬使用者やリハビリテーションの専門家の話を聞いたり、他の歩行補助具の体験をしたり、と「視覚障害と歩行」ということをいろんな面から考えてもらう1日になるように企画しています。この日以外でも、視覚障害者からの体験歩行の申し込みは受け付けていますので、盲導犬を自分の歩行補助具として考えてみたけどまだ迷っているという人も、盲導犬ってどんなものなのかよくわからないと思っている人も、考える材料を増やす意味でも、まず体験歩行をしてみることをお勧めしています。

全日本盲導犬使用者の会 戌の歳11(ワンワン)月に発会

広島市  清水 和行

この「盲導犬情報」の創刊以来、紙面をお借りして参りました盲導犬使用者の全国的な組織作りも皆さんのご支援のおかげで、昨年1994年(戌の歳)11月23日に東京の戸山サンライズでめでたく発会することが出来ました。当日は70人近い目の見えない仲間の他、ご来賓の皆さんやボランティア、報道関係者など、約170〜180人もの人で会場が埋まり、床には53頭もの盲導犬が静かに新しい会の誕生を見守ってくれていました。

現在のこの会の正会員数は、266名です。全国の盲導犬使用者が約800人と言われていますから、その3割もの人たちがこの会に結集したことになります。またこの266人の内、盲導犬を希望している人が25人もいます。盲導犬について最も関心がありながら最も情報の不足している希望者にこそ、このような会の存在が必要なのかも知れません。今後、盲導犬を希望する人の入会が増えてくることが会の底力になると思います。

私たちの目指していることは、(1)会員相互の親睦と情報交換、(2)盲導犬と共に暮し易い社会環境の整備、(3)盲導犬使用者自身のマナーの向上であり、私たちが盲導犬を使って社会でいきいきと生きていくことです。そのために私たちは使用者交流会、全国的なアンケート調査、会報の発行、盲導犬の啓発、無理解によるトラブル解決のための取り組み、使用者自身の研修などの活動をしていきたいと考えております。

しかし、そのためには財政的な裏付けやボランティアの方々のお力添えが不可欠です。今回発会記念大会を実施するに当たっても、ボランティアの方々の献身的なお力添えに支えられてこそ実現したものであり、この場をお借りして心より感謝の意を表したいと思います。

また、読者の皆さんの中で、この会の主旨をご理解いただき賛助会員として支えて下さる方がおられましたら、下記の事務局までご連絡下さい。

盲使用者の体験談(1)

盲導犬と共に大菩薩登山に挑戦

茨城県 畔蒜(アビル) 明

去る 9月28日、私たち栃木盲導犬センター出身者 3名は、3頭の盲導犬と共に、大菩薩峠の登山に挑戦した。新潟の赤塚さん、千葉の保谷(ホヤ)さんは共に女性である。大菩薩峠は、江戸と甲州とを結ぶいわば裏街道であり、その頂上は約2000mの高さであり、富士山 5合目に相当する。中里介山は、小説「大菩薩峠」の執筆に生涯をかけた。主人公の机竜之介は、晩年盲人となった事を思えば、私たちと何か通じるものがあるように思えるのである。

この登山に関して、私は約 6ヶ月間にわたり綿密な準備と計画を立てた。出発点である山梨県の小菅村社会福祉協議会に協力の要請をしたのは、忘れもしない 4月 5日であった。担当者は私の話にかなり驚いたらしく、しばらく時間が欲しいと言うことだった。 7月になり、担当者から全面的に協力したいので、依頼状・計画書および誓約書の 3通を提出してほしいという連絡があった。私は、それら 3通をまず点字で作成し、町役場の福祉担当者にワープロで墨訳してもらった。

なおも嬉しいことには、今回の私たちの計画にお隣の塩山市でも、全面的な支援をして下さるというのであった。それは言うまでもなく、小菅村担当者の加藤さんの熱意によることは明かである。私は、先の 3通の書類を小菅村および塩山市の社会福祉協議会長宛に提出した。さらに私は、担当者の不安を除く意味でも、栃木盲導犬センターに訓練士の派遣を要請した。それが結果的には大成功であった。

宿は、以前私が泊まった事のある亀井屋旅館を指定した。おかみさんは、気持ちよく 3頭の盲導犬を部屋まで入れることを承諾してくれた。

その夜、私たちは今回の計画の力を貸して下さった 5名の小菅村の人たちを交え、楽しい夕食をとった。明日の成功を願い、ビールで乾杯した。

28日の当日は、朝から雨であった。台風26号の接近で、南岸にある秋雨前線が活発になったためである。中止か決行かは、私たちをサポートして下さる人たちの判断に委ねられている。訓練士は、犬達の爪の手入れをする。もし登山中に爪を剥すようなことになれば背負ってでも歩く覚悟である。思案の末、決行と決まった。私たちは、おかみさんからおにぎり弁当を受け取り、それぞれのリュックに入れた。誰もがGパンに運動靴、ヤッケ姿であった。

ワゴン車で30分ほど林道を進み、私たちは車から降りた。依然として霧雨は降り続いている。軽い準備体操の後、私たちは 3班に分かれた。訓練士を先頭に、私とローサと加藤さん、赤塚さんとルルと消防士の島崎さん、それに保谷さんとラッキーと黒川さんである。

「普通なら 2時間のコースですが、今日は倍の 4時間を予定しています」

という責任者の加藤さんの話であった。私たちの登山のために東京都の営林署は、登山道に倒れた木などを片付けて下さったという有難い話が加藤さんからあった。

30分ほど歩くと、私のふくらはぎは棒のように硬くなり、いくらかかとをついて歩くようにと言われても爪先だけで歩くのであった。いつもなら先を争う犬達もさすが慎重に誘導した。犬と並んでやっと通れるほどの狭い参道は、突き出た岩や切株が多く、それに左右のいずれかが絶壁という危険窮まりない道であった。私は腰に太いロープを巻き、後ろから加藤さんがそれをもって支えて下さった。さすがに二人の女性達は、ロープは使用しなかった。最初は30分おきにとった休憩が、やがては10分おきとなった。人馬一体という言葉があるが、人も犬も汗と雨とでびしょ濡れであった。いつしか私は二人の女性達に先を越され、恥ずかしさも忘れ懸命に歩いた。犬を連れては危険な場所は、まず訓練士が犬だけ渡し、私たちは左右から支えられるようにして、カニ歩きで丸太橋を渡った。

「この辺りはヒノキ、この辺りはカラマツ」

という加藤さんの説明も私の耳には入らないほど、疲労は極限であった。

「あと100m、がんばりましょう」

「あと何メートルですか」

そんな私の問に、

「あと100mです」

あと100mが数回繰り返し、私は支えられるようになり山小屋にたどり着いた。先に到着していた赤塚さんや保谷さん、それに塩山からここまで出迎えに来て下さった方々が拍手で迎えて下さった。熱いお茶で喉を潤し、おかみさんの作ってくれたおにぎり弁当をいただいた。記念写真を撮り、小菅村の人たちとはここで別れ、私たちは岩だらけのゴロゴロ道を塩山に向かって降りた。いつしか雨も上がり、まだ夏の面影を残す太陽が真正面から顔をのぞかせ、私たちの成功を祝ってくれているようだった。

昨日は小菅村幼稚園で盲導犬と子供達とのふれあいを行った。今日は塩山中学校において同じ様な機会が行われる。700人の中学生を前に、訓練士が盲導犬の仕事について話し、私たちはそれぞれ体験談を披露した。ギブ・アンド・テイク、これは何度か小菅の加藤さんが口にした言葉である。与えるものは与えるが、それに代わるものを受けたいというのである。

多分、白杖でということであったら、このような協力は得られなかったと思う。盲導犬によって私たちは貴重な体験ができた。盲人の団体旅行にすら参加させてもらえない盲導犬が、年々社会に受け入れられつつあることは、嬉しいことである。体は疲れたが、実に心は晴やかであった。石和の温泉につかり、共に喜びを語り合いながら帰路についた。


盲導犬情報ボックス

便利なもの・あれこれ

昨年11月に開かれた全日本盲導犬使用者の会発会記念大会には、盲導犬使用者が約60名、全国各地から参加しました。各盲導犬協会出身の盲導犬使用者がこんなに多く集まったのは、今回が初めてなのではないでしょうか。そこで、今回のボックスでは、そんな全国各地の使用者が使っていた便利そうなものをご紹介してみたいと思います。

<ダスターコート>

周囲に毛を散らさないために盲導犬に着せるダスターコートは、出身協会に関わらず多くの使用者が使っていたので今さら紹介するまでもないのですが、例えば首のところが輪になっているタイプと首のところも取り外せるタイプ、あるいは背中のファスナーの部分がボタンやマジックテープになっていたり、袖無しや七分袖、といった具合いに微妙な違いがあるものがいろいろとありました。

<海水浴用のビニールバケツ>

よく子どもが海に遊びに行くときに持って行くような、折りたたむことができるビニールバケツを使って、犬に水あるいは食餌を与えている人がいました。ポリ袋を食器代わりにしている人もいましたが、ビニールバケツの方は手を放しても大丈夫、という点が便利なように思いました。

<通称:ションベルト>

排便所では、犬の腰にベルトをつけ犬に排便させている人がいました。このベルト(ションベルト)の先に、スーパーでよく配られている持ち手付きのビニール袋をセットして、片方の持ち手を尻尾の付け根で結ぶと、うまく便が袋の中に落ちていきます。便を探して拾う手間がかからないという訳です。また、袋の中に液体を固める粉末を入れておくと、おしっこも外に漏らさず処理することができるそうです。ただし、犬にこれをつけて排便するようにさせるには練習が必要なようですので、その点はご注意を。

<小さなポシェット>

ハーネスのハンドルの邪魔にならないところに手の平に乗るくらいの大きさのかわいいポシェットをつけている人も何人か見かけました。ポシェットには、排便の時のためのビニール袋などを入れておくそうです。

編集後記

情報ボックスの内容はいかがでしたか?「そんなこと、もうとっくの昔に知ってるよ」という内容だったかもしれません。こんなスグレモノがある、こんな工夫をしている、そういった情報をお持ちの方は、ぜひ情報室までご一報を!そんな情報を集めて、また紙面でご紹介してみたいと思います。

ところで、次号は盲導犬使用者のタクシー利用について特集したいと考えています。タクシーを気持ちよく利用できた経験や嫌な思いをした経験、その他普段感じていることなど、多くの方々のご意見をお待ちしております。