盲導犬情報 第10号(1996年7月)



内容


都道府県・指定都市における盲導犬育成事業の実施状況

厚生省通知によると、身体障害者の社会参加促進のための施策として、実施主体を都道府県および指定都市とした「障害者の明るいくらし」促進事業が1990年 4月 1日より実施されています。この事業は、障害者の社会活動への参加と自立を促進するために都道府県・指定都市単位で実施するメニュー事業で、都道府県および指定都市は「コミュニケーションの確保」「移動」「生活訓練」「生活環境改善」「スポーツ振興」「相談」「啓発・普及」の対策分野ごとにあげられた何らかの事業および「市町村支援事業」を実施しなければなりません。
  「移動」に関する事業としては、「自動車操作訓練・改造助成事業」「ガイドヘルパーネットワーク事業」と並んで「盲導犬育成事業」があげられており、「盲導犬育成事業」を選んだ都道府県・指定都市では、盲導犬の育成に要する費用の助成が行われています。ただし「障害者の明るいくらし」促進事業実施以前にも、障害者社会参加促進事業の中で盲導犬育成事業は取り組まれていました。また、都道府県・指定都市の単独事業として「盲導犬給付事業」を行っているところもあります。
  都道府県および指定都市によって、実施している盲導犬育成事業の形式や実施時期など違いがありますので、どのような形で盲導犬育成事業を実施しているのか、あるいはしていないのかを各身体障害者福祉主管課に問い合わせてみましたので、その結果をご報告します。

1.盲導犬育成事業実施の有無について

47都道府県と12指定都市に対して、盲導犬育成事業を実施しているかどうかを尋ねたところ、「実施していない」との回答があったのは、福井県・岡山県・鳥取県・島根県・広島市の 4県 1指定都市でした。ただし、鳥取県・広島市は、平成 9年度からの実施を予定しています。
  盲導犬育成事業の実施率としてみると、都道府県で91.5%、指定都市で91.7%、全体で91.5%の実施率となりました。1994年 1月にも同様の調査をしているのですが、そのとき「実施していない」と回答したところは 6県 3指定都市、他に回答はなかったのですが実施していないことがわかったところが 1県あり、実施率は83.1%でした。約 2年間のうちに実施していない県・指定都市は半減したようです。

2.実施の形態について

盲導犬育成事業を実施するにあたっては、都道府県・指定都市が指定する、あるいは視覚障害者が希望する盲導犬訓練施設と委託契約を結ぶ方式と、盲導犬訓練施設等に対して運営費あるいは育成費について補助金を交付する方式があります。委託契約方式をとっているのは、 1都 1府28県 5指定都市。補助金交付方式は、 1道 1府12県 7指定都市。このうち仙台市は委託契約と補助金交付の両方を実施しているので、また、神奈川県は直接施設に委託するのではなく、市町村補助事業として、市町村が施設に委託し県から市町村に1/2補助金を交付するという方式をとっているので、 1県 1指定都市が重複しています。

(1)委託契約方式

委託を行っている30都府県 5指定都市のうち、委託先の施設を単一施設に限定しているのは、青森県・群馬県・埼玉県・東京都・静岡県・石川県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県・千葉市(以上、アイメイト協会に委託)・岩手県・秋田県(以上、北海道盲導犬協会に委託)・宮城県・仙台市(以上、日本盲導犬協会に委託)・山形県・栃木県(以上、栃木盲導犬センターに委託)・三重県(中部盲導犬協会に委託)・大阪府・兵庫県・山口県・愛媛県・香川県・神戸市(以上、日本ライトハウスに委託)の20都府県・ 3指定都市です。
  複数の施設に限定しているのは、茨城県(栃木盲導犬センターまたはアイメイト協会)・千葉県(栃木盲導犬センター、アイメイト協会または日本盲導犬協会)・山梨県・横浜市(以上、日本盲導犬協会またはアイメイト協会)・熊本県(アイメイト協会または福岡盲導犬協会)の 4県・ 1指定都市でした。
  一方、視覚障害者が希望する施設に委託するのは、神奈川県・長野県・新潟県・川崎市の 3県・ 1指定都市でした。数的には前回の調査より増えていますが、視覚障害者の希望施設に委託するとしていた岩手県と群馬県が今回は委託先を限定するように変わっていました。
  また、滋賀県は未定、福島県と広島県からは回答がありませんでした。

(2)補助金交付方式

14道府県 7指定都市では、訓練施設あるいは視覚障害者団体等に補助金を交付して盲導犬育成事業を実施しています。盲導犬訓練施設に補助金を交付しているのは、北海道・札幌市(以上、北海道盲導犬協会)・愛知県・名古屋市(以上、中部盲導犬協会)・京都府・京都市(以上、関西盲導犬協会)・大阪市・奈良県・和歌山県(以上、日本ライトハウス)・福岡県・佐賀県・長崎県・福岡市・北九州市(以上、福岡盲導犬協会)・仙台市(日本盲導犬協会仙台事務所)の 8道府県・ 7指定都市。神奈川県は、市町村補助事業として、各市町村へ。また、岐阜県は岐阜県視覚障害者福祉協会、富山県は富山県視覚障害者協会、徳島県は徳島盲導犬を育てる会、高知県は高知県盲導犬協会、大分県は大分盲導犬協会に補助金が交付されています。

3.実施内容について

(1)委託・育成補助頭数

委託契約で年間何頭の育成を予定しているのかは、無回答だった 2県を除いて平均を出してみると、 1.9頭となります。一番多いのは、東京都の10頭。次は 4頭で、栃木県・埼玉県・長野県。続いて 3頭の育成を予定しているのは、石川県。 2頭が、秋田県・茨城県・静岡県・山梨県・新潟県・香川県・宮崎県・鹿児島県・横浜市。 1頭が、青森県・岩手県・宮城県・山形県・群馬県・千葉県・三重県・滋賀県・大阪府・兵庫県・広島県・山口県・愛媛県・熊本県・沖縄県・仙台市・千葉市・川崎市・神戸市でした。合計して62頭になります。
  一方、補助金を交付している14道府県・ 7指定都市のうち、盲導犬育成費に対して補助金を交付している12道府県・ 6指定都市の内、何頭分かという記入のなかった 1府を除いて平均を出してみると、 2.5頭となりました。一番多いのは、北海道の10頭。次は 4頭で富山県・福岡県・札幌市。 3頭が、京都市。 2頭が、大分県・名古屋市・大阪市・福岡市・北九州市。 1頭が、岐阜県・奈良県・和歌山県・徳島県・高知県・佐賀県・長崎県。合計42頭です。
  これらの頭数については、予算的には予定していても毎年確実にその頭数分が育成されているとは限らないようです。地域によっては、前年度あるいは過去数年間、育成実績がない(盲導犬を申し込む者がいない)が今年度予算は組んである、といったところもあるようです。
  ところで、これら助成している育成頭数をその地域に住む視覚障害者の人数で割ってみると、平均して0.03%と非常に低い割合になりました。視覚障害者数について回答があったのは44都道県・指定都市で全ての地域ではありませんが、一番割合が高かったのは富山県で0.11%、次いで石川県・千葉市が0.08%、栃木県・山梨県・札幌市が0.07%北海道・長野県が0.06%、京都市・福岡市が0.05%といった具合です。一番低いのは0.01%で 9府県 1指定都市でした。もっとも 1級から 6級まで全ての人数で割っているのであまり参考になる数値ではないかもしれません。試しに 1・2級の人数だけで割ってもみましたが、やはり平均して0.06%とあまり変わりませんでした。

今年度育成される予定の盲導犬の数は、視覚障害者人口の0.03%。しかも、この育成頭数には 2頭目、 3頭目といった代替えの頭数も含まれています。ちなみに、日本の視覚障害者人口は、353,000人(1991年11月調査)。0.23%の人が、現に盲導犬を使用しています。古くて、しかも外国での調査なのでストレートに比較することはできないとは思いますが、アメリカ合衆国のコロンビア大学ニューヨーク社会事業学校附属社会事業研究所が1955年から 3年半にわたって実施した、盲導犬の使用と視覚障害者の歩行の実態に関する調査によれば、約35万の視覚障害者人口のうち、現に盲導犬を使用している者が 1%弱、盲導犬を使用する資格があると判定される者は 1%である、という調査結果が出ているそうです。

(2)金額からみた実施内容

次に、どれほどの金額が盲導犬育成事業に使われているかについてですが、委託契約の場合の単価は、平均して 1,549,706円。最高金額は 1,901,000円、最少金額は 800,000円でした。補助金を交付している場合は、運営費補助の名目で補助金を交付しているのが 7道県・指定都市で、平均2,220,714円。最高金額は 7,760,000円、最少金額は 895,000円。また、育成費補助の名目で補助金を交付しているのは18道府県・指定都市で、平均 2,078,171円。最高金額は 5,670,000円、最少金額は 635,000円。また、これらの金額を育成頭数で割り 1頭当たりの金額を出すと、最高金額は 1,751,000円、最少金額は 325,000円、平均すると 1,050,924円となりました。

(3)視覚障害者の負担額について

視覚障害者が盲導犬を取得もしくは貸与を受けるとき、盲導犬にかかる育成費をどれほど負担するのかについては、無回答の府県もあったのですが、多くの都道府県・指定都市では「無料」となっているようです。ただし、茨城県・神奈川県・山口県では、「所得に応じて決定する」ことになっているようです。また、「県内の市町村で独自に補助をしているところもあり、負担額は一概にはいえない」という県もありました。

(4)その他の助成について

その他実施されている盲導犬に関する助成施策について尋ねたところ、狂犬病予防法に基づく飼犬登録手数料、予防注射料等の減免を行っているのは、宮城県・茨城県・東京都・長野県・新潟県・石川県・広島県・山口県・名古屋市・広島市。ただし、広島市は来年度から盲導犬育成事業を開始する予定のところです。
  盲導犬の診療費・薬代の助成は、北海道・横浜市。餌代の助成は、北海道・東京都・愛知県・名古屋市。訓練に係わる旅費等、取得に係わる費用の助成は、北海道・横浜市。犬舎等飼育用品の購入費用の助成は、北海道・東京都・名古屋市が行っているようです。ただし、住民税非課税者や生活保護受給者など、給付対象者に制限があるようです。

[参考文献]「失明者歩行訓練の発展と現状」国立東京視力障害センター(1974.5)
  「体の不自由な人びとの福祉」厚生省社会・援護局更生課(1996.2)

病気の際の犬の管理について

茨城県  畔蒜(アビル) 明

昨年三月、私は軽い脳梗塞を起こし一ヵ月ほど病床に伏しました。
  ユーザーが病気になればたとえ家族がいたとしても、盲導犬の世話は到底できるものではありません。普段の世話はすべてユーザー自身が行っているのであるから当然のことであります。
  私は出身施設である栃木盲導犬センターに電話を入れ、事情を話しました。福岡所長は事情をお聞きくださり、わざわざ三時間半かけて職員を派遣してくださいました。回復し迎えに行ったときには、病気だからと言って盲導犬の餌代も受け取ってくださいませんでした。
  四月の中頃からひどく両足がむくむようになりました。近くの医院で血液検査など受けましたが、原因がわからず佐原市(サワラシ)の県立病院に紹介されました。検査のため、即入院です。またも困ったのは盲導犬のことです。みてあげるという人たちも何人かいましたが、長期の入院になることも考え、栃木盲導犬センターに預かっていただくことにしました。少し早いとは思いましたが、六月十日朝、第一回のフィラリアの薬を飲ませ、娘の夫が宇都宮まで送り届けてくれました。
  私の予想がそのまま当たり、今日、七月一日になっても最終的な病名はまだ決定していません。胃の内視鏡、大腸の内視鏡、肝臓のいこう、肝臓のCTなどあらゆる検査を受けました。肝臓の影に直接針を刺して組織を取り、今病理学的検査が行われているところです。
  愛犬の病気も大変なことですが、ユーザー自身の病気もまた大変なことです。そのようなときは、やはり家族がいても私はセンターにお預けするのがベターだと思います。センターならば盲導犬として崩れる心配はありません。盲導犬の専門家ですから、どこも心配する必要はありません。このようなことを考え、私たちはセンターの仕事にできる限り協力すべきだと思います。
  一日も早く我が盲導犬「ローサ」と会える日を願いつつ、静養に努めています。

使用者の経験談(3)

連携

兵庫県  藤原 和夫

連携プレイという言葉にふさわしいかどうか。しかし我が家では人と動物の絆が深く、連帯し連携しているありさまは、おもろい家族やなあと、その一員である私も納得している。
  朝六時になるとナッチーの排便に行くことになっているので、その時間になっても私が起きないと、ナッチーは私の寝床の横に伏せてじっと待っている。その後音声時計を買ったが、ゆうべは遅くまでテープ図書を聴いていたのでなかなか眼があかない。それでもナッチーは待っている。テレビの上でチイコ(アビシリアンという系統の雌猫)が見兼ねたのかナッチーが頼んだのか、勢いよく飛び下りて私の布団にもぐりこみ、「はよう起きてよ、ナッチーねえちゃん待ってるわよー」と私の眼やほっぺたを舐めはじめる。猫の舌はざらざらで丁度ペーパーでこすられているよう。わかったわかったと起き上がると、ナッチーはちぎれんばかりに尻尾を振って、ひりひりするほっぺたを「ここですか」と舐めてくれる。
  隣から鯖ずしを貰ったのでみずやの上においたのを、チイコがみつけたのか、ナッチーが感づいてチイコにいったのか、みずやの上に乗ったチイコが鯖ずしを一個づつ落としにかかる。下で待っているナッチーがぱくりと食べる。そのうち皿がバランスを崩し、ガチャンと鯖ずしもろとも落ちてしまう。その物音で家内に感づかれ、
「あんたら何してるのー!」
と一喝で、チイコは二階にとんで逃げ、ナッチーは部屋の隅で尻を向けて小さくなっている。
  市場から夕食のおかずを買ってくると、自分の好きなものがあるときはチイコはいつまでも冷蔵庫の前に座って動かない。やっと夕食の用意を始めると、一目散に私のところにやって来ては「はよう、はよう」と、私の指を噛んでテーブルの前に座れと誘導する。座布団に座るとぴったり右側に寄り添い、あれほしい、これほしいとねだりまくる。私の甘いのをちゃんと見越している。ナッチーは左側に座り、あとでやるからと言っておけばおとなしく待っているが、チイコは猫の耳に念仏である。あれこれと忙しい家内にしゃくをしてもらい、両脇に若いねえちゃんが待ってくれていると思えば、酒の味もまた一段と乙なものである。これでチイコが近くのゴルフ場のボール拾いにでも行って、稼いでくれたら左団扇だがとチイコに言ってみるが、それは聞こえませんと魚に余念がない。我が家では女性三人に囲まれて、男冥利に尽きる。
  小学生の孫たちが遊びにくると、ナッチーは大喜びだが、チイコはいらいちゃんちゃこ(いじりまわされる)されるので迷惑と逃げ回る。孫たちと騒いでいるとナッチーもその気になっている。相撲をとっていても孫が転がり、次と呼ぶとナッチーが順番を待っていたのか飛びついてくる。いいところで負けてやると、孫に「ナッチー山の勝ちー」と名乗りをあげてもらい、胸を張ってのしのし見栄を切る。
  次は将棋の歩まわりだが、これはナッチーにはできないので横でおとなしく観戦している。本将棋を始めると駒が一枚足りない。どこを探してもないのでナッチーの顔を見るとそわそわやりだす。口を開けさすと金が一枚出てくる。駒を一枚くわえたら自分も参加してる気になるのだろう。トランプ遊びの時も、一枚余分のカードをくわえているとおとなしく見ている。本棚の上からチイコが瞳を丸くして見下ろしている。
  かくれんぼうをやろうと言うので、目隠しのいらない私が鬼になり、ひとつ、ふたつと十かぞえて、孫たちの隠れているのを探しにゆく。狭い家で隠れ場所はすぐわかる。一人は階段の柱に蝉のようにしがみついている。尻をたたく。もう一人は机の上で壁に蜘蛛のようにへばりついている。尻をたたく。次はナッチーで、隠れるとすればテレビの下だろうと見当つけて、行ってみると案の定台の下に頭をつっこんで、かくれているつもりだろうが尻がはみだしている。その尻を「見つけたー」とたたいてやると、「見つかったー」と天井に腹を向けてひっくりかえる。
  夕食の時は寿司をとり、ワイワイ言いながら食べていたのだが、家内がちょっと席を外したのを待っていたようにチイコが、テレビのマンガに夢中になっている孫の寿司のネタをかっぱらった。それに気がつかず孫が、「おばあちゃんとこのお寿司、ご飯だけで何ものってないよう」と文句を言い出す。「そんなあほな」と家内が見にきて、寿司と部屋の隅を見比べると、そこではナッチーとチイコが、
「うまかったねえ」
「おいしかったわぁ」
と、お互いの口を舐めあっていたと言う。
  夕食のあとはカラオケをやろうと、孫たちはセットして歌いだすが・・・。こらぁ聴いてられまへんとナッチー、部屋の隅へ行って尻を向ける。孫たちは「なんでやナッチー」と大きな背中に飛び乗る。チイコが助けようと孫の頭にかじりつく。子供二人と犬猫二匹乱闘になる。家鳴り振動するので仲裁に入り、私と家内がデュエットで歌いだすと、ナッチーさっと出てきて真ん中に割り込んで、やめろ、やめろとマイクもつ手に噛みついて邪魔をする。ナッチーも演歌がわかるのか、私がソロで浪花恋しぐれを歌うと、「そばに私がついていなければ、何もできないこの人やから」という歌詞がわかるのか、おとなしく目を細めて聴いているという。
  チイコが外に出て人を傷つけてはと、外には出さない躾をしてあるのだが、時々表の戸が開いていると飛び出すことがある。近所の家の縁の下に入り込みなかなか出てこない。そんな時はナッチーに言うと「よろしおます」と、やがてチイコの尻を鼻で突きながら連れて帰ってくる。
  ナッチーは世話女房型で、チイコだけでなく人間の世話も好きなのか、私達盲人仲間が旅行、ピクニック、会合と、みんなで道を歩くときは、いつしか先頭に出て進む。初めての町で、私もナッチーも地理がわからないのに先頭に出て歩く。うしろから付き添いの晴眼の人に、「真っすぐ」「右」など指示をしてもらい、みんなを誘導して満足のようだ。
  ヘルパーの人がついていないときなど、私は左手にハーネス、右手の杖を横にしてうしろの人はその中ほどを握り、左手の杖をうしろに伸ばす。こうして三人四人を誘導してナッチー、得意そうに時々振りかえっては「大丈夫ですか。右へ曲がりますよ。階段ですよ。気をつけて下さいね」といっているようで、世話役ぶりを発揮する。ナッチーがきた当時は、他人が私の体に触れるのも厭がっていたナッチー。いつしかボランティア精神が身についていったのだろう。まるで子供の頃の、縄の輪の中に入っての電車ごっこを、みんなでしているようである。
  プールでのこと。プールサイドにナッチーを伏せて待たせ、飛び込んでクロールで中ほどまで泳ぎ、立ち泳ぎで待っているナッチーに手を振ってみた。とたんにナッチーざんぶと飛び込み、スイスイ犬掻きで私のそばに泳いできたのにはびっくり。私が助けを呼んだと勘違いをしたのか。まわりの人も驚いたろうが今更仕方がない。仲よく並んで端まで泳ぐことにした。プールの壁についたところで監視員さん、小声で遠慮がちに「ワンちゃんの毛、大丈夫でしょうか」。えらいことをしたとナッチーを上にあげようとするが、これがたいへんなことでなにしろ32キロ。なかなかあがれないので監視員さんに上から引っ張ってもらい、私が尻を持ち上げてやっと上にあがれた。ほっとするがナッチー、プールが気にいったのか、早くもう一度飛び込みましょうよ、と身構えるので慌てて押し止める。紐で柵にくくりつけてやれやれ。聞くところによると、ラブラドールは水遊びが大好きなようだという。

*この文章は「ナッチーわが心の友」から、著者である藤原和夫さんの了解を得て転載させていただきました。「ナッチーわが心の友」は、盲導犬情報第 5号でご紹介した手作りチャリティーテープ「盲導犬・ナッチーの武勇伝」に一部補筆し、尼崎市視力障害者福祉協会文化部より同協会創立50周年を記念して出版されたものです。この本は、一部 500円で販売し収益は盲導犬育成のために寄付することになっています。ご購読をご希望の方は、尼崎市視力障害者福祉協会文化部・堀口隆さん(電話:06-491-9724)までお問い合わせ下さい。

盲導犬情報ボックス(1)

国際盲導犬学校連盟1996年年報より

今年も国際盲導犬学校連盟から年報が発行されました。これは、1995年12月31日現在で国際盲導犬学校連盟に加盟している各国の盲導犬訓練施設の状況をまとめたものです。
  年報によると、国際盲導犬学校連盟に加盟している盲導犬訓練施設は、正会員が38施設、準会員が15施設となっており、前年末より 6施設増えています。加盟施設のある国も、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、フランス、ドイツ、オランダ、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ニュージーランド、ノルウェイ、ソロバキア、南アフリカ、スペイン、スイス、イギリス、アメリカの22ヵ国になっており、オーストリア、ドイツ、ソロバキア、スペインの 4ヵ国が1995年中に新たに加盟したようです。日本では、北海道盲導犬協会、栃木盲導犬センター、アイメイト協会、中部盲導犬協会、関西盲導犬協会、日本ライトハウスの 6施設が加盟しています。
  これらの加盟施設の内、フランスと日本の一部施設を除いた48施設で1995年 1月 1日から12月31日までの1年間に訓練に成功した盲導犬とその使用者の数は 1,711ユニット(前年は 1,308ユニット)。この内、 1,230ユニット(71.88%)は施設内で宿泊して指導を受け(前年は61.39%)、 292ユニット(17.07%)は宿泊と自宅の両方で(前年は25.84%)、また 189ユニット(11.05%)は自宅で(前年は12.77%)、と受けた訓練の形態が違うようです。そして 3,133頭の仔犬達がパピーウォーキング中で、また、活動している盲導犬とその使用者は 9,644ユニット(前年は 7,888ユニット)となっています。

盲導犬情報ボックス(2)

日本の盲導犬使用者数

社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会リハビリテーション部会盲導犬委員会の「平成 7年度盲導犬訓練施設年次報告書」を参考にして1996年 3月31日現在の日本の盲導犬使用者数を出すと、次のようになりました。

北海道 74名 青森県  4名 岩手県  4名 宮城県  5名
秋田県  9名 山形県  3名 福島県 12名 茨城県 18名
栃木県 13名 群馬県  9名 埼玉県 36名 千葉県 18名
東京都 76名 神奈川県29名 新潟県 14名 富山県 12名
石川県 19名 福井県  5名 山梨県  9名 長野県 37名
岐阜県 13名 静岡県 27名 愛知県 34名 三重県 13名
滋賀県  3名 京都府 24名 大阪府 41名 兵庫県 30名
奈良県  7名 和歌山県 6名 鳥取県  0名 島根県  2名
岡山県 10名 広島県 28名 山口県 11名 徳島県  5名
香川県  8名 愛媛県  9名 高知県  6名 福岡県 39名
佐賀県  8名 長崎県  8名 熊本県 18名 大分県 14名
宮崎県 11名 鹿児島県18名 沖縄県  3名   
     

日本に在住の盲導犬使用者数は 802名。前年度に比べると 7名増えています。なお、12組のご夫婦が二人で 1頭の盲導犬を使っており(広島県 4組、北海道・熊本県各 2組、三重県・京都府・大阪府・兵庫県各 1組)、こちらの方は変更ありませんでした。
  また、1995年度の 1年間に訓練を修了し盲導犬となった犬は 100頭(前年度は 104頭)。その内、 2頭目 3頭目といった代替の盲導犬数は36頭(36.0%)でした(前年度は45.2%)。
  ちなみに、厚生省は「平成10年に年間 480頭の育成」という目標を示しています。

編集後記

京都はいま祇園祭の最中で、コンチキチンの祇園囃子の音が繁華街の中を流れています。祇園祭とは平安時代に疫病の退散を祈ったのがそもそもの始まりとか。日本のあちこちで暴れているO-157もこれで退散してくれるといいのですが ・・・。
 ところで、前々回の情報ボックスで盲導犬使用者が書いた本を紹介しましたが、ある読者の方から「犬に関する本も紹介してほしい」と電話をいただきました。これについては、本の範囲が広すぎてなかなか紹介しきれないと思います。そこで、またまた読者の皆さんにお願いです。今まで読んだ犬にまつわる本の中で、面白かった本を教えてください。本の名前と作者名、わかれば出版社名と、なぜその本がオススメなのか、一言書き添えて盲導犬情報室まで送ってください。ちなみに私が読んだ本で印象に残っているのは「犬とある精神分析家の話」(C.W.マイスターフェルド著、誠文堂新光社発行)。アメリカで狩猟犬などのトレーナーをしている著者が、今まで自分が訓練した犬で扱いに手こずった犬(あるいは飼い主)やユニークな犬についてユーモアたっぷりに書いていて、読んだのはもう大分前なのですが、なかなか面白かったように記憶しています。(久保)