盲導犬情報 第11号(1996年10月)


内容


ユーザー研修会について

財団法人 北海道盲導犬協会

北海道盲導犬協会(札幌盲導犬協会)は1970年(S45)11月に発足し、翌1971年(S46) 4月卒業の第1・2号から1975年(S50)春までに40組の盲導犬ユニットを卒業させるに至り研修会(交流会)等を通してユーザーからの生の意見を聞く必要性を感じはじめました。
 当協会の場合、共同訓練(歩行指導)修了後指導員と生徒(新ユーザー)と一緒に帰宅し現地での2〜3日間のフォローアップおよび、卒業後最初に迎える積雪期に指導員がユーザーの現地へ訪問しフォローアップを実施しておりますが、北海道の地理的な広域性を考慮に入れ、よりきめ細かなフォローアップと卒業生間の交流を目的として、1975年(S50) 8月13日〜15日までの 2泊3日間で『第1回盲導犬ユーザー研修会』を指導員の発案により開催いたしました。
 初回は市民へのアピールを考え、市内中心部をオーディオマップと点字地図をたよりに、ユーザーの年齢、卒業年度などに分け「オリエンテーリング」を実施しました。盲導犬と如何にスマートに安全に歩行できるか、又、盲導犬を充分にコントロールし幾つかのポイントを通過し目的地(知事公館)に到達出来るかなど、盲導犬との歩行を指導員がチェックし評価を加えました。
 第1回ユーザー研修会は大きな反響とともにユーザー自身が進んで社会参加のための行動を積極的に取るようになってまいりました。
 その結果1976年(S51)「北海道盲導犬ユーザーの会」(北海道協会卒業生同窓会)が発足し、ユーザー達で独自に一般社会への啓発活動やPR活動を行うようになっております。ユーザー研修会も今年で第21回目(1990年H2は施設増改築のため中止)を数えるまでになり、毎回テーマを決め多彩な内容となるようメインプログラムを工夫しております。
 メインプログラムを大別し紹介すると、 1)オリエンテーリング(ボイスマップ・点字地図利用)、障害物回避オリエンテーリング、 2)社会人としてのマナー教室(テーブルマナー・話し方教室・お化粧教室)、 3)社会見学(芸術の森(彫刻・織物・陶器等触れて体験する)歴史の村見学等)、4)討論会(ユーザーの盲導犬に対する責任・盲導犬協会に対する要望・社会に対する要望)などです。
 ユーザーの研修と社会活動を目的として開催されています。又、毎回、盲導犬の犬体検査を札幌市の開業獣医師会の協会を得て実施しております。
 今年は初心に返り、服従訓練教室及びオリエンテーリングをメインテーマとして34名のユーザーが参加して実施されました。
 盲導犬ユーザー研修会開催の目的は、当初ユーザー間の親睦とユーザーに対するフォローアップを目的として開催しましたが、現実には対社会への啓発活動も兼ねる結果となっています。
 ユーザー研修会の成果として、ユーザー間の交流とともにユーザーの協会に対する事業への理解と協力が向上したようです。研修会には多くのボランティアも協力していただいていますが、盲導犬の働き、視覚障害者へのアプローチ方法、協会事業への理解と、積極的な協力者へと変貌しています。その協力者達が率先して、『ワンボイス』という、ボランティアグループを結成し、地方ユーザーの来札時等、案内役として活躍していただいています。又、指導員や他職員のユーザー及び盲導犬に対する接し方などの勉強にも大いに役立つ行事となっており、今後とも継続して開催していく予定でおります。しかし、参加人数が増加し協会施設以外(第10回は協会施設外実施)の利用が課題となっています。
 その他課題としては、多頭数の盲導犬が集まる場合のユーザーの社会的責任の自覚と向上を目指す必要を感じております。当協会の場合、ユーザーとパピーウォーカー、繁殖ウォーカー、ボランティアとの交流を制限しておりません。その自由な交流の間に発生する些細な問題も解決していかなければならないとともに、ボランティアに対する教育期間の設定なども必要な時期に来ていることも事実であります。
 財団法人北海道盲導犬協会の『盲導犬ユーザー研修会』を紹介させていただきましたが、社会と盲導犬及びユーザーのより良い関係を作っていくためにも、購読の皆様からのご意見が大切だと考えておりますので、ぜひ沢山のご意見を頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。

研修会に参加して

新潟市  上林 洋子(カンバヤシ ヨウコ)       

ユーザーの片(カタエ)に盲導犬すわらせて
    霊犬の慰霊式始まるを待つ
  静かなる楽流れいて十三頭の
    霊犬の名前よみあげらるる
  眼となりてともに暮らせし思い出の
    友の弔辞を涙して聞く
  愛犬を亡くせし友の泣きながら
    献花する背に掌を合わせおり
  いづれくる別れは誰にもあるならん
    わがシェル号のハーネス握る

ユーザーとなって 1年目、研修会に初参加させていただきました。最初に行われた霊犬の慰霊式では、新米ユーザーとして考えてもいなかった「別れ」という事実に直面し強い衝撃を受けました。夜にはユーザーの代表、ユーザーをサポートして下さるボランティア、協会の指導員と、それぞれの立場から問題提議があり、活発なディスカッションは学ぶべきことばかりでした。また、二日目のオリエンテーリングは訓練を受けたことを思い出しながらクリアーすることができました。この他、犬体検査、ゲーム、豊平川沿いの散策、北大落研の学生による落語、STVアナウンサーの講演などなど書ききれないほど盛沢山の内容でした。また服従訓練教室では「初心」を忘れてはいけないという基本を再確認することができました。

昨年の七月、新潟から一歩も離れたことのない私は不安でいっぱいな気持ちでこの協会に入所いたしました。ところが、明るく家庭的な暖かい雰囲気に接し、またシェル号との出会いにより、私の生き方も前向きになったと思います。この雰囲気が協会そのものの在り方に一貫しているからこそ、このような意義深い研修会が21回目を重ねられたのだと思います。職員の皆様、ボランティアの皆様、そしてユーザーの皆様、大変お世話になりました。この出会いを大切に、私もまたシェル号とともに歩んで行きたいと思います。

「つつじの会」のご紹介

      滋賀県  浜本 捷子       

関西盲導犬協会で共同訓練を受け盲導犬を貸与されている私たちユーザーの仲間が集まり、今回「関西盲導犬協会盲導犬ユーザーの会」を結成しました。名称は訓練センターの所在地・亀岡市の花にちなんで「つつじの会」と名付けました。
  そのつつじの花も美しく咲きそろった今年 5月の 3日に「つつじの会」の発会式と第一回の総会を開きました。そして、この会の発足に向けて準備の段階から力を尽くしてこられた大西正広さんに「つつじの会」を代表する初代の会長職に就いていただきました。
  「つつじの会」では、今後の活動に向けて三つのスローガンを掲げています。その一つは「盲導犬歩行による行動の質および量の両面にわたる拡充」、二つ目は「盲導犬を通して市民への意識啓発活動」、そして「会員相互の親睦と情報の交換」となっています。これら三つのスローガンの元にさっそく活動を始めました。
  6月には、第一回の研修会を開き、市民への啓発活動として講演などに出向いた場合、話のポイントをどこにおくかといったことについて意見の交換をしました。また、 8月の下旬には一泊研修会も実施しています。この時は「盲導犬育成事業のためのチャリティショー等にはユーザーとしてパートナーの盲導犬をどのように関わらせていけばよいのか」「歩行中事故にあった場合の事例報告とその対応について」「盲導犬に関わっておられるボランティア、訓練センターの職員そしてユーザーそれぞれの役割と立場を語り合って理解を深める」といった三つのテーマを設けて分科会の形で話し合ったり、全体会議の中でまとめたりしながら勉強しました。
  この一泊研修会では会員相互の親睦という目的もありましたから、とても楽しい集いになりました。その折りの雰囲気を「つつじの会」の会報から少し抜き出してご紹介いたします。
  −残暑厳しい季節とはいえ、市街地を離れた丘陵地に建つ訓練センターはいっぱいの緑に囲まれてとてもさわやかでした。 8月の24日、25日の両日にわたって開かれた「つつじの会一泊研修会」には、ユーザーとそのパートナー、盲導犬に関わっておられるボランティアの皆さん、それにセンターの職員も総動員といった形で50名近くの人が集まりました。
  もちろん主たる目的はテーマを決めて話し合った研修会にあるのですが、それ以外の場でも盲導犬に関わる者同士、お互いの立場や思いを伝え合えたことは大きな収穫でした。
  前日から訓練センターに泊まり込んだ人、長距離の夜行バスに乗って朝の 5時に京都駅へ到着してしまった人など、まるで遠く郷里を離れていた人が久々のお里帰りといった雰囲気でした。
  ワンちゃんたちは、センターの職員から爪を切ってもらったり、耳や歯の状態をみてもらったり、体重を計ってもらうなど、健康チェックを受けました。また、ボランティアの皆さんは合間をぬってワンちゃんたちを散歩に連れ出したり、訓練センターの広い敷地内を思いっきり走らせて下さいました。運の良い子はブラッシングやシャンプーまで・・・。
  夜は懇親会の席となり、ボランティアの皆さんが手作りのごちそうをテーブルに並べて下さって、多いに盛り上がりました。「カラオケを」、いいえ犬自慢をしたのです。「うちの子は鼻筋通って誰にも負けない美人(?)」「おでこに街路樹の枝がひっかかるほど、うちのワンちゃんは寄りがよろしい」「スター性があってどんな場所でも堂々と盲導犬の能力を発揮する」「とことん迷子になったけどちゃんと家まで連れて帰ってくれた」などなど。司会者が一人一分間と時間を指定したにも関わらずそれを守った人は一人もいませんでした。−
  こんなふうな犬自慢とお互いの情報交換で熱気あふれる雰囲気のうちに懇親会の夜はふけてゆきました。そしてワンちゃんたちと行動を共にする私たちの二日間をじっくりと見ておられたボランティアのお一人が「このユーザーにしてこのパートナーありといった感じでどのワンちゃんもみんなご主人によく似てますね」とおっしゃった一言が印象に残ります。
  ユーザーとボランティアそして協会の職員も共に歩み始めた「つつじの会」です。より質の高い盲導犬歩行に向けて心を合わせて活動しています。

国立身体障害者リハビリテーションセンター学院学生のレポートから

国立身体障害者リハビリテーションセンター学院では、 1年間のコースで視覚障害生活訓練に携わる専門職員の養成を行っています。アイマスクをしての白杖歩行や点字といった実際の生活訓練科目の修得だけでなく、より広範囲で専門的な知識を修得できるよう多方面にわたる講義が組まれているようです。また、盲導犬に関しても、必ず盲導犬訓練センターを見学し、盲導犬に対する理解を深めています。
  今年も 9月の末に 2泊 3日の研修が関西盲導犬協会で行われました。これから視覚障害リハビリテーションに携わろうという勉強中の若い人たちにとって、盲導犬による歩行とは一体どんなふうに感じられたのか、提出されたレポートの一部をご紹介してみたいと思います。

盲導犬訓練センターを見学して

      東山 愛子       

私が視覚障害者という存在を意識し始めてから初めて見た盲導犬は、つまり初めて意識的に見た盲導犬は、視覚障害者の集まる会場の中で蹴られたりしっぽを踏まれたりしながら、じっと黙って座っている無表情な犬だった。また私自身、ストレートな感情表現を全身でする犬という動物を醒めた目で見ていたこともあって、盲導犬に対して機械的な、視覚障害者の歩行のために作り上げられたモノというイメージを強く持っていた。
  今回の見学にあたって、犬が一体どのように歩行を助けるのか、歩行の中でどんな役割を持つのか、というのがもちろん最大の疑問点であったが、実際に盲導犬訓練センターを見学し、盲導犬による歩行を体験した最大の収穫は、盲導犬が犬である、動物であることの意味を感じとれたことだと思う。
  初めて犬舎に入ったとき、一斉にしっぽを振り、こちらを向く犬がみんな、喜んでいて、かまってもらいたがっているのだと聞き、どう対応したらよいのか戸惑いを感じた。正直なところ私は犬が苦手だった。そんなにしなくてもいいのに、と思う半面、なぜこんなに喜びがためらいなく真っ直ぐに出てくるのかと驚き、犬を初めて見るものの様に感じた。自分一人がつまらないことにこだわって入っていけないような感覚があった。しかし時間が経つにつれ、喜ぶ犬に対して自分自身が嬉しいと感じたり、かわいいと思ったりする気持ちを伝えようとしていることに気づき、また自分がそれをどう表現すればいいか、等と考えていないことに驚いた。そして、その、理屈ではない部分で自分の気持ちをあらわしたり、相手の表現を受け入れたりするということが心地好く感じられ、とてもくつろいだ気持ちになれた。しかし、このときはまだ、私をくつろがせたのは犬であって、盲導犬ではなかった。
  2日目の午後の体験歩行のとき、私にとって犬はまだ少し扱いにくい相手であったし、ただの歩行のための道具ではないという感覚も出来上がり始めていて、自分でも驚くほど緊張していた。犬は私の歩みに合わせるのだといわれるし、犬の動きに合わせなくてはいけないし、一体、犬が私に合わせて歩くのか、私が犬に合わせて連れられるのか、さっぱり訳がわからなかった。しかし、歩いているうちに、自然に一緒に歩く、という言葉が浮かんだ。手引きは相手に連れられる。白杖は自分が歩く。盲導犬とは一緒に歩く。今まで知っていた手引きや白杖からは出てこない、一つの新しい歩き方を発見したようだった。そこにはアイマスクをしたときの独特の孤独感や、目的地に辿り着くことだけを目指して、挑むように歩く、白杖歩行の緊迫感が全くなかった。日のあたる感じや、川の音を情報としてではなく、単に光や音として感じ、楽しむことが出来たことに驚いた。そして歩きながら自分以外の生き物の呼吸を感じ、それに合わせることで、自分も一つの生き物として共存しているのだという原点に戻り、自分を考え直させるような解放感と、気持ちの歪みがとれたような感覚を味わうことが出来、歩行の手段として以上に、共存者としての盲導犬の意義も考えられるように思われた。
  もちろん、日常的に盲導犬を使用することになれば、盲導犬は歩行の手段であり、白杖の訓練のように目的地の発見が重要になるし、音や光も情報としてとらえなければならないのだろうが、歩行を楽しむことが盲導犬によって可能になるのだという考えは、白杖歩行が歩行手段として完全ではないことを意味するように思われた。
  これまでは、安全な白杖歩行の技術を身に付ければ、見えなくても自由に移動が出来る、そしてそれで移動の問題は解決されると思っていた。しかし盲導犬と歩くときの安心感の中で、果たして歩くとは目的地までの移動のことでしかないのだろうか、見えなくなることで失われるのは移動の自由ではなくむしろ移動を楽しむことではないかという疑問が生じた。私たちの仕事が視力の低下によって失われた生活を取り戻すことであるなら、私たちが指導する歩行技術といわれるものは、盲導犬を含めてまだまだ不完全であるのだと思われた。それぞれの歩行手段の改良や、目的に合わせた手段の併用などがなされなければならないのであろうが、そのためにも未知の分野であった盲導犬について知り、それに携わる方々に接する機会がもてたことは有意義であった。

盲導犬訓練センターを見学して

      小宮 康生(ヤスオ)       

よく考えれみれば当たり前のことなのに、見たり聞いたりしなければ分からないということがある。盲導犬と使用者に関することはまさにそうであろう。マスコミの報道でも多くが、美談として、犬が中心に紹介される。犬がどれだけ「おりこうさん」かということを強調する。そのとき使用者は脇役になってしまう。しかし使用者こそが主役なのであり、人が犬を使って歩いているだけなのだ。犬が連れていってくれるわけではなく、使用者が指示を出し、犬は命令に従うだけなのだ。少し考えればわかるはずであるのに、私もそのわからない一人であった。
  センター見学では、訓練を見せていただいたり、体験歩行をさせていただいたりした。訓練で印象に残ったのは、犬の喜びようであった。使用者の命令に従うこと、一緒にいることがうれしくてしょうがないという様子であった。これは訓練の方針が「ほめる」ことであるからである。何かができたらほめる、つねに声をかけ励ますという訓練士の方々の姿勢があの喜びを育てているのだろう。犬の訓練というと警察犬の訓練が頭に浮かんで、かなり厳しい訓練、規律正しい犬を想像していた。それとは異なる訓練であった。
  共同訓練に関しては、白杖の歩行訓練と重なる部分が多いことを知った。というよりも白杖の歩行訓練という基礎の上に共同訓練があるといってもいいかもしれない。特にオリエンテーション技能は盲導犬歩行のためには不可欠である。犬が勝手に連れていってくれるのではなく、使用者が地図を頭の中で作って歩くのであるから当然である。
  体験歩行に関しては、盲導犬歩行と白杖歩行の体験ができた。二つの歩行の違いは、情報収集のための集中の仕方の違いではないかと思う。ハーネスからの触覚情報に集中するか、白杖からの触覚、聴覚情報に集中するかの違いである。もちろん盲導犬でも白杖でもまわりの環境の情報にも注意することはいうまでもない。歩行した感想をいえば、車のほとんど通らない舗装された農道を使用していたのだからはっきりとは言えないが、盲導犬のほうがまわりの音やにおいを楽しむ余裕をもって歩けたようだ。犬といっしょだという安心感もあったかもしれない。川のせせらぎ、草のにおいなどを楽しめた。白杖の場合、一人で集中して歩くので緊張してしまうので、余裕をもちにくいのかもしれない。川のせせらぎも一つの手がかりとして感じていた。ただ確かめつつ納得しながら歩くには白杖の方がいいかもしれない。犬が障害物を避けてくれるわけだが、自分自身の方向感覚はとりにくかったように思う。これは、犬をまだ完全に信頼していなかったからかもしれない。あとは、体験とは直接関係ないが、手入れの問題があるだろう。犬は生き物であるから杖のような扱いをするわけにはいかないだろう。それぞれの歩行に長所、短所があるのは当然だ。それを選択するのは、歩行する視覚障害者自身であろう。
−略−

盲導犬協会を見学して

      降旗(フルハタ) えり子       

先月、二泊三日で訓練センターに見学にうかがった。盲導犬に接するのは初めてであり、また犬が好きということもあってとても楽しく、幸せな三日間だった。
  着いてすぐ、亀岡駅で共同訓練を見学させていただいた。共同訓練という言葉を初めて聞いたときは何をするんだろうと思っていたが、使用者が適切な指示を出し、盲導犬が使用者の指示によって歩くという共同作業によって目的地に着くことが出来るのだということを間近で見学することによって理解することが出来、共同という言葉がぴったりだなと感じた。その上、歩行速度が非常に速く、白杖でよろよろ歩いている私にとっては唯々感心したというのが盲導犬歩行の印象である。
  協会に着いて、配食・排便見学ということで初めて盲導犬に触れた。盲導犬というのは使用者と職員の方以外は触れてはいけないようなイメージがあったので自由に触ってもいいですと言われたときは少し意外に感じたのだが、職員の方が犬に接し犬がとても喜んでいるのを見て、持っていたイメージがまったく違うことに安心した。次の日の服従訓練を見学したときも、服従と言うくらいだから厳しい訓練なのかと思っていたので、犬と遊びながら訓練をすることを聞き、また犬がとても楽しそうなのを見たら本当に自分は無知だと感じ恥ずかしかった。その後実際に盲導犬による歩行を体験した。エンジョイ・ウォーキング・ディーというイベントがあるのは知っていたが、実際に歩いてみると本当にエンジョイ・ウォーキングであった。何カ月間も練習をし、最近では白杖歩行にちょっとばかり自信も付いてきたので、初めての盲導犬より技術や動作の面では白杖の方が歩きやすいと思うが、犬と歩いているということで気持ちはリラックスできたようで、白杖歩行のときより緊張感が幾分和らいだ状態で歩くことが出来たように思う。障害物の回避では、白杖では腰の高さくらいまでの障害物しか検出できないので床面に接していない障害物によく肩や額をぶつけるのだが、盲導犬は通れるかどうかを判断してくれるので安全である。実際に盲導犬と歩いたのはわずかで、また訓練を受けたわけではないので白杖と盲導犬とどちらの方が歩きやすかったか判断できないが、犬と歩くと安心感が得られる半面、杖を持っていない分不安であった。
  見学、体験についての感想は楽しかったというのがほとんどであるが、使用者のお話や講義、発表については反省や考えてしまうことがいくつかあった。ひとつに盲導犬が主体でなく使用者が主体であるというようなお話があった。このことに関しては私はとても反省しなければならない。今まで盲導犬を見かけるとかわいいという気持ちが強く犬にしか注意を向けず、使用者の方の顔を見たことがなかったような気がする。その方は迷って困った顔をしていたかもしれないのに・・・。実際見かけた盲導犬に声をかけたり、触ったりしたということはないが、盲導犬には注意力が散らないように近づいてはいけないようなイメージがあり、もし使用者の方が困っていても声をかけにくかったり、かえって遠巻きにしてしまったかもしれない。私を含めてもっともっと一般の方に盲導犬のことを理解してもらえば、より歩行しやすい環境になるかもしれない。しかし私のようにまったく違う印象を持ってしまったり、あるいは誤解を持ってしまいかえって避けてしまう人もいるかもしれない。盲導犬に対する注意はよく聞くが、盲導犬と一緒の視覚障害者にどのように接し、また援助することが出来るのかを知ってもらうともっと自然なコミュニケーションが増えるのではないかと思う。−略−

盲導犬協会を見学して感じたこと

      酒井 智子(トモコ)       

−略−
  盲導犬がいれば使用者は安全で、犬自身が誘導してくれるものと思っており、その為には厳しい訓練を受けて合格した犬だけが盲導犬になるのだと思っていた。だから、もし盲導犬の数さえ増えれば、白杖を使って歩くよりも盲導犬と一緒に歩く方が、視覚障害者にとっても有効なのではないかと思っていたのである。けれど、 2日間の訓練見学や講義、体験歩行を通して、それらは誤解だったと分かった。盲導犬は、使用者が主体となって指示を出すことによって一緒に歩くことができ、障害物や段差を発見してくれるが、犬のその動きも使用者自身が気づかなければならない。当然、目的地までの地図は使用者が理解していなければならないし、その点では白杖使用と変わらないので、必ずしも盲導犬の方が良いというわけではないのだと分かった。
  実際に体験歩行をしてみると、盲導犬と白杖歩行の違いを感じた。まず最初に驚いたのは、歩くスピードが速いことだった。白杖では常に路面からの情報に注意しながら歩くので、杖のチップが引っかかることも多く、速度は落ちてしまう。また、初めて歩く場所では、杖で検出できない障害物を気にしながら歩くことになるので遅くなる。しかし盲導犬は、障害物を避けてくれるし「よって」という言葉かけで、常に左端を歩くことができるので、歩道上をベアリングしてジグザグ歩行をしてしまうこともない。このことは特に歩車道の区別のない道路で有効だと思った。杖では、直線歩行をしているつもりでも、道路の中央寄りに歩いていっている場合があるからである。この体験歩行で、一本道を歩行した時は、盲導犬の方がずっと歩きやすく感じたし、復路を白杖歩行した時間よりも早かったと思う。ただ、障害物回避や左折したりする時は、慣れないせいか、ハーネスの動きが分からずに戸惑ってしまうことも多かった。犬は生き物なので当然ハーネスからは、常に犬の動きが伝わってくる。その動きに注意していると、少し左の方に動いただけでも、右の方に障害物があるのかと思ってしまうこともあった。職員の方の講義にもあったが、障害物をいつよけたか、何をよけたのかなどが気になるような人は、白杖歩行や白杖の併用がいいのかもしれない。
  また、体験歩行で一番強く感じたことは、歩く楽しさだった。初めて盲導犬と歩くということで、緊張はしたが、歩行中に不安になることはなく、隣で一緒に歩いてくれる犬がいることで楽しく歩くことができた。もちろん、白杖を使って見えなくても単独歩行ができる喜びというのもあるが、白杖も盲導犬も歩く手段の一つとして考えると、物を使って歩くよりも体温を感じられる犬と歩く方が楽しいし、迷った時の不安さも違うと思う。ただ、生き物だからこそ、通れない所もあるということで行動範囲には制限ができてしまう。こうして白杖と盲導犬について考えてみると、必ずしもどちらがいい手段だとはいえないのだと分かった。
  私たちは将来、生活訓練で関わる視覚障害者に最も合った歩行手段を提案していくために、白杖・盲導犬両方の特徴を十分理解していかなければならない。そして、その人に何が適しているのかを考えるためには、白杖と盲導犬という二種類として考えるのではいけないと思う。体験歩行でも、私が一緒に歩いた犬はペースがとても速かったが、別の犬はゆっくり歩いていたり、犬舎や排便の様子を見ていても、一頭一頭特徴があることが分かった。例えば、高齢だから自分のペースで歩ける杖がいいということではなく、ゆっくり歩く犬もいるということを頭に入れた上で、本人の性格や歩行の目的・範囲など、いろいろな面から考えていけるようにしなければならない。
  職員の方や使用者の方のお話も、とても興味深いものだった。盲導犬に両手持ちと片手持ちがあるということは初めて知ったが、片手なら、どうして左側なのか、両手と片手の長所や短所について、もっと詳しく聞きたかった。左側は、右利きの人が多いというのも理由に挙げられていたが、左利きの人も中にはいるのだから、両手を使っている場合との比較についてもっと知りたいと思った。それと、盲導犬返却の話も印象に残っている話の一つで、盲導犬として活躍している犬は、完璧のようなイメージがあったので、ほえたり、待てなくて返却されてくる犬がいることに驚いた。体験歩行で一回歩いただけでも、歩く時には盲導犬を信頼して、犬について歩いていけたので、使用者は盲導犬に絶対的な信頼を置いているのではないかと思う。盲導犬に向いている犬を訓練して、信頼できる盲導犬を一頭でも多く育ててほしいと思った。
  私はまだ盲導犬に関して詳しく知っているわけではないけれど、少しは知ることができた一人として、周囲にも正しい接し方を広めていきたい。以前の自分も、盲導犬と歩いている視覚障害者を見ても、盲導犬を主体として見てしまったり、触ってみたいと思ったりしていた。そういう人はたくさんいると思うので、隣には必ず視覚障害者がいて、その人が主体となって歩いていることを知ってもらいたいと思う。入店拒否や乗車拒否の問題も、使用者自身が話をすることも必要だし、私たちが周囲の理解を促していくことも大切なのではないか。
  全体的な感想としては、二日間本当に楽しかったと思う。犬がとても楽しそうに訓練をしていたのが、強く印象に残っていて、職員の方とも、講義や見学時間以外にも、色々なお話を伺うことができ、自分にとっては本当に良い経験になったと思う。分野は異なっていても、視覚障害者を主体として考えるということでは同じなので、将来、情報交換などもしていけたらと思う。

盲導犬情報ボックス

盲導犬を連れて利用できる観光施設

旅行のソフト化をすすめる会より「障害者や高齢者のためのアクセシブル旅行ガイド 観光施設編(2)」が発行されました。全国の公園・動物園・植物園・庭園・遊園地・テーマパーク 731施設の施設名・住所・電話番号・開園(営業)時間・交通手段といったデータの他に、併設施設やトイレの状況、点字による展示説明の有無や立体的展示物に触れるか、盲導犬の受け入れが可能か、ガイドヘルパーがあるか等といった情報が記載されています。ちなみに 731施設のうち盲導犬の受け入れが可能となっているのは、 237施設でした。今回はその中で、有料で様々なアトラクションのある施設や動物園を都道府県別にご紹介します。

北海道 北海道開拓の村 グリュック王国 スプリングファーム
岩手県 盛岡市動物公園 小岩井農場まきば園 マリンパーク山田
秋田県 秋田市大森山動物園
福島県 松ヶ岡公園
茨城県 つくばエキスポセンター
栃木県 東武ワールドスクウェア 那須ハイランドパーク りんどう湖ファミリー牧場
群馬県 伊香保グリーン牧場
埼玉県 埼玉県立こども動物自然公園
千葉県 千葉市動物公園 行川(ナメガワ)アイランド マザー牧場 東京ディズニーランド
東京都 東京都多摩動物公園
神奈川県 鎌倉シネマワールド 相模湖ピクニックランド
富山県 魚津総合公園ミラージュランド
石川県 いしかわ動物園 のとじま臨海公園
山梨県 富士スバルランド
長野県 塩沢湖レイクランド
岐阜県 野外博物館合掌造り民家園
静岡県 浜名湖遊園地パルパル 東海大学社会教育センター(三保ランド) 三島市立公園楽寿園 朝霧高原グリーンパーク 富士サファリパーク
愛知県 名古屋市東山動植物園 博物館明治村
三重県 鈴鹿サーキット 志摩スペイン村パルケエスパーニャ
京都府 東映太秦映画村
大阪府 エキスポランド
兵庫県 遊びの王国アリバシティ神戸 姫路セントラルパーク おのころ愛ランド公園
鳥取県 鳥取砂丘こどもの国
広島県 呉ポートピアランド 福山メモリアルパーク みろくの里
香川県 レオマワールド
愛媛県 梅津寺パーク 愛媛県立とべ動物園
福岡県 スペースワールド 大牟田市動物園 玄海彫刻の岬恋の浦
佐賀県 どんぐり村三瀬(ミツセ)ルベール牧場 有田ポーセリンパーク
宮崎県 オーシャンドーム フェニックス自然動物園
鹿児島県 ゴールドパーク串木野

編集後記

先日、盲導犬情報室長(牡のラブラドール・リトリーバーですが ・・・)と一緒にいたところ、 6才ぐらいの女の子が「さわっていいですか?」と声をかけてきました。「いいよ」というこちらの返事を待ってから撫で始め、後から来る友達にも「ちゃんと聞いてからでないとあかんよ」と教育的指導。そこへ中年の女性がやってきて「まあ、かわいい」とさわり始めました。早速さっきの女の子に「ちゃんと聞かなあかん」と言われても平気な顔。そこで皮肉を込めて女の子に「おりこうさんだね。さわる前にちゃんと聞きなさいって誰に教えてもらったの?」と聞くと、女の子はくだんの女性を指さして「おかあさん」。あらら・・・。