盲導犬情報 第13号(1997年4月)



内容




全国盲導犬施設連合会・職員研修会の報告

1997年1月25日から27日までの3日間、東京の全国身体障害者総合福祉センター(戸山サンライズ)にて全国の盲導犬育成施設が加盟する全国盲導犬施設連合会(以下、連合会)が主催して、盲導犬訓練士や歩行指導員を対象にセミナーが開催されました。特別講師として米国から家庭犬訓練専門家であるテリー・ライアンさんをお招きしました。テリー・ライアンさんは1967年以来世界各国で犬のしつけ教室の講師を務めています。又、ナショナル・アメリカン・ドッグ・インストラクターというアメリカ公認の犬の訓練士の養成講座の講師も務めています。
  盲導犬の訓練といっても様々な方法があります。現実には、全国の盲導犬育成施設でもそれぞれの訓練方法があり、統一性はありませんでした。盲導犬を利用する立場でみれば、どの盲導犬でも同じように接することができればいいというのが本心だと思います。そこで連合会としては結成を機として「統一した訓練の方向性」を確立することを目的として今回のセミナーを開催しました。
  テリー・ライアンさんは家庭犬の訓練士ですので、実際に盲導犬の訓練はしたことがないと言いますが、視覚障害者と生活をともにする盲導犬はまず「よき家庭犬である」必要があります。盲導犬の訓練の場合、扱う犬種はほとんどがラブラドール・レトリーバーとゴールデン・レトリーバーで、その犬たちの性格も穏和で従順という一定の型が求められます。訓練の方法も決まった型から抜け出すことなくマンネリになりがちです。この意味で他の分野で活躍している人の話を聞くのはとても意義深く大変参考になりました。
  今回のセミナーでは、人と犬との関係と犬を理解する方法から始まり、犬はどのように学ぶのか、その思考回路や犬とコミュニケーションする最善の方法、又犬の問題行動の解決方法などについてお話しいただきました。テリー・ライアンさんはまずその犬をよく知ることから始めます。問題行動が出てしまったら、実に探偵のように状況証拠を集め原因を探るのです。犬に教える方法は千差万別で、同じことでも犬種や個々の犬の性格によって全く異なるのです。「私がこう言ったからこうだ、と鵜呑みにするのではなく、自分でもよく観察してみて下さい。その上で自分で判断することが大切なのです。」と言うテリー・ライアンさん。個々の犬の性格を理解し、その犬に合った方法でしつけをする。このことは訓練士にとっては、ある意味では当たり前のことなのですが、私達が行っている日々の訓練を改めて考えさせる機会を与えて下さいました。
  テリー・ライアンさんのセミナーは、今後も継続的に行う予定です。次回のセミナーでは犬の訓練方法をくわしく話される予定です。今後のセミナーでも訓練のあり方を勉強し、新しい発見を得て、どんどん盲導犬の訓練に取り入れ、一頭でも多くの盲導犬を育成していきたいものです。

  (全国盲導犬施設連合会:上野)   

全国盲導犬施設連合会主催の職員研修会に参加して

福岡盲導犬協会  櫻井 昭生

この度、1997年1月25日から27日まで開催されました全国盲導犬施設連合会の主催による初めての職員研修会に福岡盲導犬協会から私と研修生2名で参加させていただきました。
  セミナー講師のテリー・ライアン女史は30年に及ぶ犬のしつけ方教室の講師としてまた、ワシントン州立大学のコーディネーター及びナショナル・アメリカ・ドッグ・インストラクター協会元会長の豊富なキャリアに裏付けされた貴重なセミナーであったと思いました。
  ややもすると犬の訓練は、経験や勘に偏りがちになりがちです。もちろん経験や勘も大変重要であることは十分承知しています。しかし今回のように盲導犬の専門外の犬のトレーナーからの犬の行動分析、しつけ、問題行動の改善などを改めて客観的にセミナーで講習を受けることにより新鮮な感じで犬を改めて見つめられたような気がします。テリー・ライアン女史の講義は、話だけでなくスライドやビデオや質疑応答、ロールプレイングを用いた犬の問題行動のカウンセリングなどとてもわかりやすくフレキッシブルに感じられました。
  今後協会でパピーウォーカーやボランティアの方に犬のしつけや講習をするときには、専門的な話だけでなく、このように視覚的にあるいは興味を持てるような講習の演出方法を参考にさせて頂きたいと思います。セミナーの資料として使用された彼女がコレクションしているという犬の笑っている写真はとてもほのぼのとしており彼女の犬に対する愛情が感じられました。また、セミナーの途中で、クイズを出し答えた参加者にプレゼント(モチベーター)を与えてセミナーに私たち参加者を知らず知らず釘付けにするところは、さながら彼女の訓練の神髄をまざまざと教えられたような気がします。淡々とそして常に参加者の関心をつかみながら進められたセミナーは犬の訓練に通じるものがあると感じました。
  彼女の言葉で、一番印象に残ったのは、「犬にとって心の平静は、人との交流が重要」と言うことでした。テリー・ライアン女史の言われるように私たちが係わっている盲導犬は、繁殖ボランティア、パピーウォーカー、訓練士、ユーザー、老犬ボランティアと4パターンの人間に関わっていかなければなりません。
  それぞれの立場で盲導犬が心の平静がもてるような接し方をしていかなければなりません。現役の盲導犬の場合においては、まずユーザーと盲導犬が健康で安全であることが前提にあって初めて心の平静がもたれると思います。私たちは現役の盲導犬の職務が全うできるようにユーザーの後方において専門家の立場で見守っていかなければなりません。
  私たちは「視覚障害者にとって良い盲導犬とはどういうものなのか」という視点を忘れずに今後も、盲導犬育成に関して学習していくことが我々盲導犬育成の専門家としての責務だと確信しています。視覚障害者にとって良質の盲導犬を提供していくためには、学習によって理論を深めさらにその理論をどこまで実践の中で現実のものとするかが私たち専門家の仕事です。

動物行動学者のエーベルハルト・トルムラーはこう言っています。「私は犬を知りません。犬に関していくつかのことは知っていると思います。しかし、厳密な自然科学的意味において、批判を受けずに証明できうる、私が本当に知っていることは次のことだけなのです。『現在の我々の犬に関する知識は、いろいろな研究の道を開くには充分である』と。」

ですから、私は、盲導犬育成専門家として犬のパートナーとして犬に対して常に謙虚に、彼らの声を聞くことを怠ってはならないと思います。私たち専門家が犬のことが解っていると錯覚をした時点で彼らは手の届かないところへ離れていくのではないかと思います。今後も、国内あるいは外国の盲導犬関係者、ライアン女史、あるいは他の犬の訓練関係者、動物学者など様々な切り口で犬に対する理解や訓練技術の向上が得られるようなセミナーを実施していただきたいと思います。今回のようなセミナーは私たちの仕事に刺激と加速を与えてくれたように思います。これを、一過性のものに終わらせないで継続性のあるものにしていただきたいと思います。そして盲導犬育成の実践が少しでも理論に近づく為の役割を果たしていくものであることを願っています。
  今後私たちは、盲導犬育成の現場の専門家として、盲導犬に関する育成技術、情報を常にリードし現在盲導犬を使用されているユーザーの方々や今後盲導犬を使用される方に対して適切な指導、助言、情報が提供できるために、様々な方法を通じて努力していかなければならないと考えています。最後に講師のテリー・ライアン女史及びセミナー開催の関係者各位に感謝し、皆様のご健康とご活躍を祈念いたします。また、今後も是非このような理論的向上が図れる場を継続的に提供していただき、我が国の盲導犬育成の質の向上を計っていただくようお願い申しあげます。

使用者からのお便り

ハーネス・心を繋ぐ命の絆

北海道  山本 義晴

私は、平成7年4月より、盲導犬「テンダー」と暮らしています。今年の4月で、丁度2年になりました。
  私がテンダーと暮らすようになり、今まで数多くの思い出やできごとがありました。特に印象強い思い出は、昨年に行われた全国盲導犬使用者交流会と、北海道盲導犬ユーザー研修会です。
  まず、私が盲導犬を持ったことに対し良かった部分は、行動範囲が広くなったことです。ただ単に行動範囲が広くなったと聞きますと、一見、遠くまで行けるようになったと勘違いする方もいると思いますので、もう少し詳しく説明します。
  私は平成3年の秋、緑内障のため失明し全盲になりましたが、その翌年、白杖歩行訓練、点字訓練などの生活訓練を受けました。その後、盲導犬取得までは白杖で歩いていたわけですが、「障害物に対する不安」と言う理由で、ほとんど外には出ませんでした。突然の失明により今まで容易に行くことのできた場所でさえ出掛けることが困難となり、結局、特別な用事でもない限り、白杖を使っての単独歩行はまずしていなかったのと同じです。当然、生活訓練後は三療を習い、今年の3月1日より出張専門として開業しています。
  丁度、私が三療を習っているとき、北海道盲導犬協会の方が来られて、私は体験歩行を受けてみました。思ったよりも確実に障害物をよけ、歩行速度も速く、交差点などではきちんと停止してくれると言うように、白杖とは比較にならないほど「安全性が高い」「確実な誘導」「歩行速度が速い」と言うことで共同訓練に申し込み、一昨年の4月より待望の盲導犬「テンダー」と共に楽しく生活しています。
  ところが当時は、「これがなぜ、盲導犬なんだろう」とか「体験歩行の時と全く違う」と言うように、私が想像していた盲導犬のイメージとはかなり違っていました。障害物には平気で当てられるし、交差点では止まらないこともあったりと、テンダーを返してしまおうと本気で悩み続け、しばらくの間は後悔の連続でした。
  しかし、今ではだいぶ盲導犬らしくなり、安全に歩いています。街中を歩いていると援助してくれる優しい人たちにも出会い、また、以前より声を掛けられるようになりました。「大丈夫ですか」「青になりましたよ」「段差になっているので注意してください」「もし良かったら、連れて行きますよ」「席が空いているので是非、座って下さい」「少し狭くなるので注意して下さい」などと、このように優しく援助してくれる人たちも多く、感謝の気持ちが溢れています。
  盲導犬を持ち、私にとって行動範囲が広くなったと言うのは、その歩ける広さ自体ではなく、以前、健常者だった頃に出掛けていたいろいろな商店などに加え、乗り物を使うことにより、さまざまな場所へも楽に行けるようになったことです。
  特に私がよく行く場所は、コンビニ、CDショップ、デパート、飲食店、パソコンショップ、病院などです。もちろん、私の住む函館は、盲導犬への関心や理解が高いらしく、ほとんどの商店や病院などにも、盲導犬を同行できます。
  一方、中途半端な理解で困ることもないとは言えません。信号を気付かずに渡り「赤ですよ」と言われても、ほとんどの場合、戻ることができません。「赤信号もわからない盲導犬なんて、一体、どんな訓練をしてるんだろう」「あの盲導犬、きちんと訓練されていないんじゃない」などと言う人もいます。
  さらに、私が交差点を横断中、減速せず物凄いスピードで突っ込んで来る車も多く、その大半は若い女性ドライバーです。それに私が赤信号などで待っている時、わざとに目前でクラクションを何度も鳴らす車もいます。私は、これらのことに関して非常に腹が立ちます。
  このような場面に遭遇しても、テンダーはそれなりの対処法もわかったらしく、横断中でも危険と判断した場合、減速したり、その場で一旦停止したり、また、少し歩行速度を上げたりと、テンダーは私を本気で守ろうと相当神経を使っていることが伝わってきます。
  今現在では、訓練にはなかったような場面に遭遇しても、自ら判断し安全に誘導してくれるようになりました。また、歩行中、テンダーとの会話も多くなり、お互いの心を繋ぐハーネスが、どれほど重要な絆であるかを実感している毎日です。
  私が今までもっとも感激してしまったことは、丁度、電車に乗り家に帰ろうとしていたときのことでした。「この犬、何歳になるんですか」と聞かれ、私は、その人としばらく話をしていました。そして、その人が電車から降りようとするとき、「これで、好きなものでも買ってあげて下さい」と、私の手に現金を握らせたのです。金額自体は少なかったものの、その人の優しい気持ちというかその行動にはとても感激してしまい、今でも忘れることができません。
  私の場合、まだまだ理想の盲導犬とは言えませんが、少しづつテンダーの能力が高まってきているように感じます。
  また、街中に出掛けると犬名を聞いてくる人もいますが、私は、一切教えていません。以前は素直に教えていたのですが、テンダーの名前を呼ばれ、危うく走ってくる車に衝突しそうになったという、命に係わる危険な経験もあり、それ以来犬名は教えないようにしています。もちろん、歩行中でも滅多なことでは犬名を呼ぶことがありません。
  これを読んでいる視覚障害者の中で、自由に歩くことができなく単独歩行に困っているという方は、是非とも体験歩行を受けられてみてはいかがでしょうか?そのことにより盲導犬歩行の安全性が実感できるはずです。
  なお、「世話が面倒くさい」と言う理由だけのために盲導犬を諦めてしまう方も多いようですが、実際、自由にどこへでも行けるようになり、また、いかなる場所でも安全に歩けるようになってくると、それらの世話も楽しく何とも思わずにできるようになってきます。苦労するのは最初だけです。世話のことよりも、「歩行の安全性」「確実な誘導」のことを重視して考えて下さい。最初は、私のように後悔の連続と言う方もいると思いますが、今思えば、盲導犬を持って本当に良かったと思っています。
  北海道盲導犬協会職員、北海道盲導犬ユーザーをはじめ、全国のユーザーのみなさん、今後ともよろしくお願い致します。そして、国立函館視力障害センターの職員や入所生には、テンダー共々いろいろなことにご協力いただき、本当にありがとうございました。この誌面をお借りして、お礼申し上げます。

広島市議会予算特別委員会を傍聴

広島市  桑木 正臣

我々広島ハーネスの会が市議会に盲導犬との傍聴を申し込み、認められて3年になる。昨日(3月12日)もウィリーと傍聴した。これで3度目になる。
  私自身、予算特別委員会の「厚生」委員会に興味があり積極的に傍聴に行っているが、それ以上に議員さんに盲導犬を見ていただき少しでも理解を深めるという目的の方が大きいかもしれない。
  今回の傍聴には特別の理由があった。遅蒔きながら9年度予算に初めて50万円が「盲導犬の啓発事業」として予算化され、市議会に提出されたのである。ほぼ認められるとのことだが、決定ではないとのことだった。
  広島ハーネスの会としても数年前から何らかの形で予算化を要望していた。しかし善処するとの回答だけで進まない。ところが、昨年7月の本誌「10号」の47都道府県・12政令都市での盲導犬育成事業の実施状況に関する記事の中で、実施していない指定都市は広島市だけだが9年度は予算化を予定しているとあった。
  さっそく私は市に電話して確かめた。答えは「検討中であるが、予定はしていない」との返事。
「おかしいではないか。情報誌のアンケートに予定していると返事しているではないか?すぐ墨字の『盲導犬情報』を送ってもらって検討してくれ」
と申し出た。2、3日たって盲導犬情報室にそのいきさつを電話したところ、広島市から電話があり10号を送ったと返事があった。それを聞き、市では少しはやる気があるなと確信した。
  その後、我々の会長が市役所を訪れ正式に要望し、ようやくここまでこぎつけた。このきっかけは、全国盲導犬施設連合会が全国都道府県にアンケートをとったそのことが重要な意味を持っていると思う。深く敬意を表し御礼申し上げる。
  昨日の傍聴は、盲導犬の予算化についてとくに誰が質問するかしないかわからないとのことだったが、運良く昨年も私とウィリーを歓迎してくれた自民党議員が他の議員の質問中に私のそばに来て
「今日はどういう目的で来たか」
と聞く。
「盲導犬の啓発予算として50万予算提出されたので、どなたか質問してくださるかと思い来ました」
と言うと、
「自分がこれから質問に立つからそのことを言ってあげる」
そして、犬の名前、犬種、私がハーネスの会の副会長であることなどメモされた。
  まもなく質問に立たれ、市長さんに
「市長、後ろの席に盲導犬が寝もしないで、よく話を聞いているが大したものだ」
ということは、議員さんの中にはコックリされる人があるようで ・・・。それから私の名前、ウィリーの名前を言われ、福祉課長に予算の内容について質問された。その内容は、「盲導犬の啓発」として、ホテル・旅館・レストランなど盲導犬が利用しやすいように年に3回くらい講習を開き、ハーネスの会に委託して講師派遣、会場その他の費用に充てるとのことだった。
  質問の議員さんが
「桑木さん、それでいいですか」
と言われ
「はい、ありがとうございました」
と大きな声で答えると、ウィリーがタイミング良く寝そべっていたのが私の声で目が覚めたのか、大きな図体でパッと立ち上がった。
  こういったように、国会であれ地方議会であれ、盲導犬と積極的に傍聴することは、ある意味で大きな啓発になると信じる。99パーセント、広島市の予算(盲導犬)は通過すると思う。

全日本盲導犬使用者の会の講演テープを聞いて

栃木県  古川暁男

先頃、昨年11月23日に東京・戸山サンライズで行われた全日本盲導犬使用者の会主催の講演会のテープを聴きました。パピーウォーカー、ブリーダー、指導員といった方々がそれぞれの立場から話をされた中で「リタイア犬(盲導犬として仕事を終えた犬)とか不適格犬(訓練しても盲導犬になれなかった犬)という呼び方がイメージとして良くないので、別の呼び方がないでしょうか」という話が出ていました。そこでいろいろ考えてみて、次のような呼び方はどうかと思い提案いたします。

リタイア犬を「フリー犬」に
 フリー犬とは、盲導犬の仕事から解放され自由になったという意味です。

不適格犬を「ラッキー犬」に
  盲導犬になれなかった犬をラッキー犬という呼び方は少しおかしいと思うかもしれませんが、決してそのようなことはありません。何故ならば犬にもいろいろな生き方があっていいはずです。例えば盲導犬になれなくても聴導犬として、麻薬犬として、介助犬として、ペットとして等など ・・・。
  又パピーウォーカーとしても、愛情こめて育てたわが子(犬)が盲導犬になってほしい気持ちが半分、又ならずに戻ってきてほしいという気持ちが半分だと聞いています。ですから盲導犬になれなくてもラッキー犬と呼んでもいいのではないでしょうか。
  もし犬のことばが解るなら、盲導犬になってラッキーかなれなくてラッキーかは、一度聞いてみたいものですね。

「高齢者・障害者の利用に対応する宿泊施設のモデルガイドライン」ができています

社団法人日本観光協会から昨年 3月に「高齢者・障害者の利用に対応する宿泊施設のモデルガイドライン」という冊子が発行され、宿泊施設において高齢者や障害をもつ人に対応するための指針が示されました。
  同書によれば、1995年 6月の観光政策審議会答申「今後の観光政策の基本的な方向について」において「観光は国民生活に不可欠なものになっている」と認識され、21世紀の観光を創造するための具体的方策の提言の一つとして「障害者、高齢者などの人々の旅行促進と環境整備」が取り上げられているとのこと。国際的にも、1991年に「WTO(世界観光機関)」で「90年代における障害のある人々のための観光機会の創出」が決議されており、そういった社会状況を背景にこのモデルガイドラインは設定されたようです。

内容としては、単に施設や設備の改善だけでなく、これらをベースとしてソフト面で活かしていくことが高齢者や障害をもつ人の受け入れ体制の充実につながることが明記されています。
  まず現状のチェックリストがあり、盲導犬に関することでは、その中の「高齢者や障害をもつ人の受け入れ体制チェックポイント」として「盲導犬の入館が可能である(ロビー、レストラン、宴会場、売店等への同行)」、「盲導犬の宿泊が可能である」といった項目が挙げられています。
  また、箇所別モデルガイドラインとしては、宿泊施設のさまざまな場所でどのように対応すべきか、どのような施設・設備の整備が望まれるか、器具・道具・標示等に配慮する点などが細かく挙げられています。

「宿泊施設においてクリアすることが望まれる、高齢者や障害をもつ人の受け入れに際して必要とされる基本的な事項」として、全般的な受け入れ体制としては、「盲導犬の入館が可能であること。ロビーをはじめ、レストラン、売店等への同行も可能であること」「盲導犬の宿泊が可能であること(一緒に宿泊する場合、盲導犬の排泄場所を設定しておく必要がある)」、また、フロントでは「盲導犬の宿泊に際しては、関係箇所に的確な申し送りをしておく」といったことが書かれています。
  「高齢者や障害をもつ人に対する快適な受け入れ体制を策定していくに際して重点的な整備・取り組みが期待される事項」としては、全般的な受け入れ体制として「きめ細かなサービス教育を実施していること(疑似体験講座、盲導犬の理解、車いすの取り扱い、手話など)」とあります。また、たとえばフロントでは「視覚障害者に対しては、チェックインの際に館内の各施設やエレベーター操作盤のボタンの位置や使用方法、また非常口、客室内の設備について実際に案内・説明する」、階段では「視覚障害者には誘導、車いす使用者には上り下りの手助けをする」、エスカレーターでは「視覚障害者等の利用に際しては、従業員が付き添う」、レストランでは「メニューを読み上げたり、メニューについて手話で説明する。視覚障害者に料理の説明をする場合、テーブルを時計の文字盤に見立てて説明する方法もある」などとあります。
  また、「視覚障害者を誘導する際は、後ろからひじの上をつかんでもらい、半歩前を歩くのが基本である」として左側に盲導犬を連れた女性がホテルのスタッフに誘導されているイラストが載せられています。

もちろんこれらのガイドラインに強制力はありません。しかし、こういった冊子が発行されることが宿泊施設への啓発につながり、やがて盲導犬使用者のよりスムースな利用の実現につなっがていくことを期待して、このモデルガイドラインが出来たことは評価できるのではないでしょうか。まだまだ盲導犬使用者が利用の拒否に遭うことも少なくないのが現状ではあります。
  しかし、同書の中にも「心のバリアを取り去り「まず来てみて下さい」という気持ちが大切であり、その上で、利用者とより良い方策を考え、学んでいく姿勢」が不可欠であると書いてあります。この言葉が多くの宿泊施設で働く方々の中で実践されていくことを期待したいものです。また、この言葉に応えるべく、サービスの受け手側としてもマナーの向上などの努力も怠らないように心がけたいものですね。

こくちばん

「盲導犬も連れていく視覚障害者にやさしい海外ツアー」第4弾6月に実施予定

おそどまさこさん企画による「盲導犬も連れていく視覚障害者にやさしい海外ツアー」の第4弾が、6月22日から29日までの8日間で計画されています。全日本盲導犬使用者の会とスイス政府観光局が後援し、今回はスイスとイタリアへのツアーです。実行したいプランの一つとして、スイスの盲導犬使用者との交流もあげられています。
  旅行費用は約40万円、盲導犬使用者の単独参加は原則として5名まで受けたいとのこと。このツアーについてのご質問・ご相談などある方は、株式会社地球は狭いわよ・おそどまさこさん(電話:0551-38-2430)まで、またパンフレットの請求・参加申し込みについては、JTB池袋支店・松崎敬(タカシ)さん(電話:03-5391-2631)までお願いします。

盲導犬情報ボックス

日本に初めて来た盲導犬使用者は?

日本に初めて盲導犬使用者が来日したのは、1938(昭和13)年のことです。ジョン=ホルブス=ゴードンという盲導犬使用者がアメリカから東洋観光のために来日し、日本各地の観光と併せて講演会や歓迎会が設けられました。
  木下和三郎という京都盲学校の教官だった人の著書に『盲目歩行に就て』というものがあります。昭和14年に発行されたこの本の中には「盲導犬問題」としてゴードン氏について書かれた箇所があります。当時の日本人が初めて見る盲導犬をどのように感じたのかの一端がうかがえますので、少し長いのですが引用したいと思います。(なお、仮名遣いは現代仮名遣いに直しました。)
「−略−ゴルドン氏は人に手を引かれると気兼ね気苦労があるが、犬ではそれが無いと言い、経済的であると言っているが、第一、人にあらざる犬が人の心の如何程迄を理解し、それに副い得るか、安全な道は引いてくれるとしても、始めて行こうとする雑多な所へ、即妙に連れて行ってくれるとは思われない。例えば理髪屋に行きたいとか、食堂に行きたいとか、郵便局に行きたいとか、知らぬ所へ行って呉れるかどうか。日本では電車汽車に同乗させられるかどうか。仮に同乗が出来るにしても、今度は何処行き、今度は何処と電車汽車の系統が分かるかどうか。次に経済的であるというが、日本等では果してどうか。ゴルドン氏の話によると、盲導犬を飼うには多額の金が入り、之を使うには少なくとも二、三週間訓練師に就て盲人自身が訓練されなければ出来ず、その後も毎日生肉一ポンドを与えているとの事であるが、まさか肉許りでも済むまいから飼育費は恐らく一般日本人の食費を凌ぐものと覚悟しなければならぬではないか。それから之は余り立入り過ぎた猜疑かも知らぬが、犬に引かれて東洋観光等銘を打っているが、ゴルドン氏はオルチーというシェパード系の犬の他、氏の健康監督のためと言って、ヘンリー・メーシーというお医者様が付添っていると言う事で、メーシー氏はゴルドン氏の健康上医師としての世話をするほか、何の世話もしないとは言っていたそうであるけれども、常に一緒に歩いているというから、直接手は掛けぬにしても、オルチーはメーシー氏の方を見乍らゴルドン氏を引張っているというに過ぎぬ様なものではないか。私はこれ等の点に就て是非突込んだ質問をしたかったのであるが、氏と相見るの機会を得なかった事を此の歩行論執筆の上から深く遺憾とする。」

編集後記

住宅街を歩いていると、あちこちから沈丁花、梅の花の香が漂ってきて、散歩するには楽しい季節となってきました。
  ところで前号で犬のブラッシングについてのご意見を募集しましたが、残念ながらどなたからも連絡をいただけませんでした。これは困っている人はいないからなのか、困っているけどどうしようもないからなのか、どっちなのでしょうか ・・・。
  とても恥ずかしい話なのですが、賃貸マンションに住んでいる私の失敗談を聞いてください。あれは前号を出した直後のこと。家の者に「今日帰ってきたら、部屋の前の通路の隅にきれいに掃き集められた犬の毛の塊が置いてあったよ」と教えられてビックリ。誰が掃いてくださったのか今もわからず仕舞いで謝りようもなく、居心地の悪い毎日 ・・・。掃こうと思いつつ1日延ばしにしていた自分を深く反省した次第です。(久保)