盲導犬情報 第17号(1998年4月)



内容




日本ライトハウス行動訓練所ユーザーのアンケート集計結果

日本ライトハウス  中村 透

(社福)日本ライトハウス行動訓練所では、現在ライトハウス出身の盲導犬を使用しているユーザーの方に対し、効率的に有効なアフターケアを行うためにアンケートを実施しました。対象のユーザーは 120名、その内86名の方から回答が得られました。
  アンケートはユーザーの方に電話し、直接質問に答えてもらう方式を取りました。以下はそのアンケートの集計の結果です。結果を見ると様々な問題が浮かび上がってきています。読者の中には「こんな実態を放っておくのか!」と感じる部分もあるかも知れませんが、結果を素直に皆さんに報告することにしました。
  アンケートの実施の主旨は「アフターケアのため」でしたので、現状をライトハウスがどう分析しているのか、今後どのように対応していくのか、の考察は機会をあらためさせて頂きたいと思います。実施は昨年8月から9月にかけて行いましたが、その後11月に職員が分散してアフターケアに向かいました。ユーザーフォローの重要性をあらためて感じているところです。

アンケート集計結果
  1. 現在使用している盲導犬は
      1頭目(56) 2頭目(20) 3頭目(8) 4頭目(2)
  2. 犬の年齢は
      2歳(15) 3歳(9) 4歳(15) 5歳(2) 6歳(6) 7歳(8) 8歳(10) 9歳(7) 10歳(2) 11歳(7) 12歳(5) 13歳(2)
  3. 最近獣医にかかったか?
      はい(48) いいえ(21)
  4. 毎年ワクチンを打っているか?
      はい(71) いいえ(6) 不定期(1)
  5. 毎年定期的にフィラリアの予防をしているか?
      はい(68) いいえ(8) 不定期(1)
  6. 1日何時間外で歩いているか?
      0〜30分(3) 30〜1時間未満(50) 1時間〜2時間未満(4) 3時間未満(19) それ以上(1)
  7. よく行く場所は?
      スーパー(32) 仕事場(18) 散歩(11) 飲食店(11) 病院(5) 買い物(4) 近所(4) スポーツセンター(3) 役所(3) 公園(3) 友人の家(2) コンサートホール(2) 福祉センター(2) 銀行・郵便局(2) 散髪(1) コンビニ(1) 美容院(1) 学校(1) 幼稚園の送迎(1) プール(1) 親元(1)
  8. 飲食店・タクシーを使用するときは?
    8-1 犬も入っていいか聞く(39) 聞かない(27) 場合によって(6) 使用しない(1) 店を選ぶ(1)
    8-2 使用を断られた時どうする?
      交渉する(41) すぐに出る(28) その他・・・断られたことがない(8) 説明する(2) あきらめる 会社名を聞いて後で抗議 県の福祉課に伝えるなど
  9. 家の中では繋いでいるか?
      いいえ(61) はい(13)【12時間(1) 10時間(1) 3時間(1) 2〜3時間(1)】
  10. 家の中で遊ぶことはあるか?
      ある(55) ない(14)
    【遊び方】プロレス(13) ひっぱりっこ(9) かくれんぼ(2) おもちゃを使って(2) その他・・・じゃれる(13) スキンシップ(8) ボール(3) お腹をさする(2)
  11. 「カム」という命令ですぐに来るか?
      すぐに来る(61) しばらくしてから来る(17) なかなか来ない(6)
  12. 排便は命令するとすぐにするか?
    12-1 する(70) しない(9)
    12-2 トイレ以外で失敗するか?
      しない(38) 時々する(21) 頻繁にする(7)
    12-3 排便についてその他問題点
      オムツを嫌がる(2) 以前したことのある所ですることがある(1) 雨の匂いでしにくい(1) 餌をかえてから(1) 花火の音がするとなかなかしない(1) 外での排便の命令ですぐにできない(1) 慣れた所でよく失敗する(1) 行く場所によって(1) 室内で失敗することがある(1) 雀おどし等の音で排便しにくい(1) 歩行中にマーキング(1) 歩行中の大の失敗が多い(2) 旅行に行った時なかなかしない(1) 年齢的に2時間ごとに(1) 水を飲みすぎて少しもらす(1) 小が近い(1)
  13. 家の中での無駄吠えは?
    13-1 する(38) しない(42)
    13-2 どの様な時に吠えるか?
      人が入って来たとき(31) 物音がしたとき(10) 餌の催促(2) その他・・・バイクの音(1) 家の外での足音(1) 猫が入って来た時(1) チャイムの音(1)
    13-3 家の外では?
      する(14) しない(64)
    13-4 どの様な時に吠えるか?
      犬にあった時(10) 猫・その他小動物をみて(3) 人に対して(1) 挑発されると(1)
    13-5 たしなめるとやめるか?
      すぐやめる(34) なかなかやめない(9)
  14. 歩行について
    14-1 歩く速度は適当か?
      ちょうど良い(49) 遅すぎる(12) 速すぎる(13) 少し速い(2)
    14-2 犬にあった時は?
      落ち着いている(21) やや興奮する(29) 向かっていく(20) 犬による(2) 避けようとする(2) 早足になる(2) うなる(1) たまに吠える(1) 逃げる(1)
    14-3 子供にあった時は?
      落ち着いている(62) やや興奮する(11) 向かっていく(2) うなる(1) 友好的(1) 好きでない(1)
    14-4 猫や鳥をみた時は?
      落ち着いている(43) 向かっていく(27) やや興奮する(3) うなる(1) においを嗅ぎに行く(1)
    14-5 これらに向かっていく時コントロールがきくか?
      はい(60) いいえ(7) 時による(1) する必要なし(1)
    14-6 においを取るか?
      よく取る(16) 時々取る(43) 取らない(19)
    14-7 拾い食いをするか?
      する(16) しない(60) わからない(1)
  15. 噛んではいけない物を噛むか?
    15-1 はい(24) いいえ(53) 時々(1)
    15-2 「ノー」と言えば止めるか?
      すぐ止める(26) なかなか止めない(4) わからない(1) 誰もいない時に(1)
  16. 外出時、犬を待たせている時(ex.仕事場)おとなしくしているか?
      おとなしくしている(60) クンクン鳴く(10) そわそわする(8) 吠える(4) 何か物をかじる(2) その他(1)
  17. 現在の犬の引退後、持ち替えを希望するか?
      する(49) しない(9) わからない(5) 迷っている(1) 犬による(1)
  18. 現在の犬の引退後、犬を引き上げても良いか?
      はい(39) いいえ(17) わからない(6) 考えたくない(1) 最後まで(1)
  19. 指導員の定期的な訪問を希望するか?
      はい(60) いいえ(15) 相談したとき(1)
  20. 犬について問題点・希望など(一部抜粋)

使用者の立場から

盲導犬とともに社会参加を促進する活動

山梨県  吉川 勝彦

私は、中途失明で山梨県立盲学校を昭和54年に卒業しました。さいわい、資格試験にも合格し、また、同窓であった妻と結婚することができ、全盲同志の夫婦で助け合いながら、宝1丁目で小さな治療院を建設し、開業しています。
  中途失明といっても、だんだん視力がおちていき、杖歩行も慣れていないので、大変苦労するようになりました。そこで、盲導犬を使うことを考えました。
  県内に住む盲導犬を使っている先輩の話を聞いて、盲導犬訓練所に4週間の共同訓練を受けにいきました。とても、大変でしたが、『ミミ』という犬とともに生活することになりました。盲導犬と歩行するようになると杖歩行とは違って、『3S』になるといわれます。それは、スピーディー・セーフティー・スマートのかしら文字をとったものです。本当にその通りの歩行が得られました。今から12年前のことです。今は3頭目と生活しています。
  しかし、道を歩く時はよいのですが、当初は鉄道に乗るのもスムーズにはいきませんでした。それでもなんとかなるのですが、タクシーとなったら乗せてくれませんでした。タクシー協会に協力をお願いしました。
  ホテル・スーパー・レストラン・食堂等にも入れません。始めのころは、甲府市の施設でも拒否されました。甲府市の場合、市長さんに盲導犬の主旨を話して善処をおねがいしたところ、それ以後拒否されることはなくなりました。こんな活動を続けるなかで、山梨県の盲導犬育成事業の開始とあいまって、現在11頭が活躍するようになり、理解もだんだん深まってきました。
  数年前には、山梨県盲導犬使用者の会を結成し、数名が集まって理解を求める活動を始めました。昨年(平成8年)には、ともしび募金の援助を受けて、富士山5合目から7合目にかけての登山道で盲導犬啓発キャンペーンを実施し、登山客にアピールしました。今年(平成9年)は今までの会を発展的に解組し、使用者だけでなく、一般の人にも加入してもらって、理解を求めるために、山梨県ハーネス友の会を作りました。そして5月に、ともしび基金の援助を受け、昇仙峡遊歩道に、盲導犬7頭と40名を越えるボランティアによって、キャンペーンを実施し、さらに、山梨大学工学部森教授による「盲導犬ロボットの現況」と題する講演を聞きました。
  しかし、盲導犬への理解は深まりつつあるといっても、まだまだです。今年(平成9年)になってからも、石和(イサワ)温泉のホテルで私達の仲間が宿泊を拒否され、交渉の結果、やっと泊めてもらえました。2月には、国会議事堂見学で盲導犬が国会に入れませんでした。これも、議会事務局や各方面に運動を展開し、衆参両院とも盲導犬帯同による見学が許される事が議院運営委員会で決まりました。
  さる8月31日、有志3頭と3名、ボランティア2名で南アルプススーパー林道を定期バスに乗り、夜叉神峠に登りました。そして、大樺沢(オオカンバザワ)から芦安(アシヤス)村営バスで北沢峠にいき、さらに、長谷村(ハセムラ)から飯田線伊奈市駅に向い、上諏訪を経由して帰ってきました。それに先立って長谷村役場に電話をかけて、盲導犬が行くことを伝えましたが、盲導犬は村営バスに乗せられないという返事でした。そこで、村長さんにお願いして、長野県庁に聞いてもらいますと、その後長谷村の交通係から電話が来て乗せてくれることになりました。また、10月には視覚障害者協会の主催で東京方面に研修に行きましたが、その際「お台場」にあるフジテレビの展望台で入場を拒否されました。これも幹部の方々の交渉で入場することができました。
  「そんなところでも拒否されるの」と、驚くところで拒否されているのが現状です。私達は盲導犬使用者としてのマナーを十分身につけるとともに、地道な活動によって社会参加が促進されるよう努力を続けて参りたいと思っております。みなさんのご理解とご協力をお願いして私の主張といたします。

*この原稿は、山梨県主催「障害者の日ふれあいフェスティバル・第8回障害者の主張」より、吉川勝彦さんの了承を得て転載いたしました。

私の啓蒙・啓発活動

滋賀県  浜本 捷子(カツコ)

大津市社会福祉協議会のHさんからすすめられて、私は先頃開かれた「滋賀県社会福祉学会」に出席しました。
  この学会は、何らかの形で社会福祉に携わっている人たちが、日頃の活動状況を発表するというものです。私は、この学会の六つの分科会のひとつ「福祉教育」の席で、講演活動などの状況を発表しました。
  盲導犬のユーザーとなってから、地域のボランティアグループ、人権推進委員会、社会福祉協議会などから講演の依頼を受けるようになり、ボランティア講座、福祉講座、人権学習会の席で、視覚障害者や盲導犬への理解を深めていただくためのお話をしています。また小学校、中学校、高校などで、授業の一環として取り組んでいる人権学習や親子ひびきあい活動のお手伝いをしています。
  1人と1頭の地道な活動ですから、その成果が目に見えると言った形で現れることはありません。しかし、障害を持つもの自身が生活体験を通して語る生の声、そんな私を助けてイキイキ働く盲導犬の生の姿は、その対象者に対して非常に強く大きなインパクトを与えているように思います。
  はじめは、珍しいものに対する単なる興味や好奇心であっても、私とパーシャが肌で接し語り合ううちに、自然な形でごく身近な存在として受け入れてもらえるようになり、そのことがやがては視覚に障害を持つものへの正しい理解と盲導犬の啓発につながっていくのではないかと感じます。
  学問的な高い見地からとか机上の論理ではない部分で、お互いの心のバリアを取り外していけたらと言う思いから、私は依頼が有れば今後ともこうした活動を続けていくつもりです。
  「社会福祉学会」では、このような内容を発表したわけですが、今年で16回を重ねるこの学会で視覚障害者が、盲導犬のユーザーが発表の場に立ったのは初めてとのことでした。今後とも視覚障害者がこのような発表の場に多く立たれることを願っています。
  私とパーシャが様々な形で社会に参加をしていくということは、お互いの心のバリアを取り除く役割とともに、誰もが持っている潜在的な優しさをも引き出す力を持っているような気がするのです。少々思い上がりが過ぎるでしょうか?でも、皆さん盲導犬のユーザーであれば、吾がパートナーの純真無垢なあのつぶらな瞳は、人々の優しさを強く引きつけずにはいられないと言うことを、よーくご存じなのではありませんか?

*この原稿は、関西盲導犬協会盲導犬ユーザーの会「つつじの会」情報誌「GOOD GOOD」第6号より、浜本捷子さんの了承を得て転載いたしました。

盲導犬は補助具?

「盲導犬情報」では、以前から「盲導犬は視覚障害者にとって安全かつ能率的に歩くために必要な歩行補助具の一つである」というような言い方をたびたびしてきました。
  たとえば盲導犬を連れて飲食店に入ろうとしたときに、「犬は困ります」と入店を断られたという話をよく聞きます。そんなとき、盲導犬使用者の皆さんはどんな対応をしていますか?
  「盲導犬はペットではありません」「訓練されたおとなしい犬ですから」「コートも着せているので店内に毛が散るようなことはありません」などなど・・・。すると「でも犬の嫌いなお客様もいますから」と言い返すお店の人は多いと思います。
  ちょっと極端な話ですが、では白杖を使用している人がお店に入ろうとした時に「先端恐怖症のお客様もいますから」と入店が拒否されることはあるでしょうか。もちろん犬嫌いより先端恐怖症の人の方がはるかに少数派だし、そんな人の目にふれないよう杖をカバンにしまうこともできます。杖から毛が抜けることもないでしょう。でも「杖を持って入店されては困ります」と白杖使用者を追い返すことが非常識な行為と多くの人が思う理由は、それだけではないはずです。
  そこで「盲導犬を連れてくるな」と盲導犬使用者に言うのは、白杖使用者に対して「白杖を持って歩くな」と言っていることと同じなのだ、ということを強調することで、盲導犬を理由に入店を拒否することの無意味さを相手に伝えられないかと考えました。もっとも入店を拒否するような人がこの『盲導犬情報』を読むとは考えられませんが、本誌の中ではその考え方を基本においてきました。そして、盲導犬が使用者にとってどのような存在なのかということにはあまり触れず、その点に関しては読者の方々の投稿に頼ってきました。
  しかし、この盲導犬を「生き物」としてではなく「歩行補助具」として考えることに対し、異論をお持ちの方もおられると思います。今回は、二人の方から情報室に届いている「その考え方、おかしいんじゃないか」というご意見(1通は3年以上も前にいただいたお手紙です。掲載までに長い年数が経ってしまったことをお詫びいたします)をご紹介します。

盲導犬を補助具という言葉は使わないように

広島市  桑木 正臣

平成10年1月号の盲導犬情報に盲導犬は視力障害者の歩行の補助具であると書いておられた。なるほど以前からこういう言葉はよく聞くし、文章に書かれているのを見た記憶もある。
  使用者でない時はそれほど嫌な感じはしなかった。しかし10年近く共に生活しているとこの言葉ほど冷たい愛情のかけらもないものであると思う。犬に言わせれば僕は心があるよときっと言うだろう。視力障害者に「めくら」と言うのと大差はない。「視力障害者の歩行を助けてくれる生きた心を持ったパートナー」と言って欲しい。多くの使用者はそう思うだろう。
  今日届いた「ハーネス通信」(関西盲導犬協会が毎月発行している会報)に訓練士と思われる人が、「盲導犬は白杖と同じように、歩くための「道具」であるかも知れませんが、決してそれだけではないと私は思います。だから、私は「盲導犬と一緒に歩く」というより、「盲導犬と一緒に生活する」ということばが好きなのです。盲導犬は共に生活する良きパートナーでもあるのですから」という意見を言っていた。このようなお考えに拍手を贈りたい。私も盲導犬を使うとか飼っているとかは言わない。講演の演題にしても「盲導犬との生活」と題している。歩行の為にだけ盲導犬はいるのでないことを特に強調している。
  生活全般、ことに心と心のふれ合いは精神的に大きな喜び、なごみを与えてくれている。そしてもう一つ、毎日の散歩によって我々の健康面に白杖では得られない、ロボット、その他補助具では得られない大きな人間愛、動物愛がある。

『盲導犬情報』第3号を読んで

        埼玉県  福井 哲也         

「盲導犬の需要等に関する調査報告(3)」の最後の部分に、「盲導犬を歩行補助具としてではなく犬という生き物としてとらえた考え方がネックになっているように思う」との一文がありました。私はあえて言葉尻をとらえた議論をするつもりはないのですが、盲導犬も犬であることに変わりはないのですから、こういう理屈もいささか無理があるのではないかと直感的に思いました。盲導犬はペットとは違うという点を強調されたかったのだと思いますが。
  世の中は犬好きの人が意外に多いようです。会合などで盲導犬を連れた人がいると、必ずそばへ寄って行き、犬に話しかけたり撫でたりする人(晴眼者)がいます。歩いている時はさすがに声をかけませんが、マスターが席について犬がヒマになるとそういう人が必ず現れます。犬好きの人は、どうやら犬を見かけると黙って通り過ぎることが出来ないようです。マスターもそれを拒否するわけではなく、むしろ犬を媒介にその人とのコミュニケーションを楽しんでいるようにみえる場合もあります(内心は迷惑に思っているのかもしれませんが)。こういう光景に出会うと犬嫌いの私は、「盲導犬はやっぱり犬だなあ」と実感してしまいます。
  思い出してみると、盲導犬に遠慮なく話しかけるのは、中年の女性が多いようです。犬の前にかがみ込んで、本当に赤ん坊でもあやすかのように言葉と仕草をしています。
  このように、盲導犬のそばに犬好きが寄って行って妙にはしゃいでいる光景は、欧米でもあるのでしょうか。それとも日本社会がまだ盲導犬になれていないからなのでしょうか。
  また、盲導犬にとっては犬好きからチヤホヤされるのは別にマイナスではないのでしょうか。

全国盲導犬施設連合会が盲導犬現状調査を実施予定

日本の盲導犬事業は、先進諸国に比べ非常に遅れていることはよく指摘されてきました。1957年に日本で盲導犬が訓練されるようになってから40年以上がたっていますが、現在日本の盲導犬使用者は約 800人(人口が日本の約半分のイギリスでは、盲導犬使用者は約4000人)、しかも年間の盲導犬育成頭数は、ここ数年間は横這い状況にあります(1994年度 104頭・1995年度 100頭・1996年度 104頭)。
  このような現状の中で、盲導犬育成普及事業を取り巻く様々な問題点を検証しよりよい方向に盲導犬事業を発展させるために、全国盲導犬施設連合会では調査委員会を設置し、本年度に本格的な調査を開始することになりました。このような調査は今まで各地域で個別に実施されたことはありましたが、全国的な規模で行われるのは初めてのことです。
  調査は、次の5項目に添って実施される予定です。

  1. (1)盲導犬の需要と供給
  2. (2)繁殖の現状と体制
  3. (3)潜在的需要の把握
  4. (4)訓練士等養成の課題
  5. (5)協会運営の現状と展望

具体的な内容としては、各盲導犬育成施設の育成頭数や繁殖犬の保有状況、法人運営の現状や考えられている事業の展望等について詳しく調査する他、盲導犬訓練士・歩行指導員に対しては、労働条件や望まれる研修内容等についての考えを調査していきます。また、盲導犬使用者に対する質問項目には、申し込み先や貸与されるまでの期間、盲導犬を使用してみて感じる良い点や問題点、使用状況など。元盲導犬使用者に対しては、使用者に対する質問項目と同じもの以外に代替(ダイガエ)犬を希望しなかった理由など。そして潜在的需要を把握するために、関係機関の協力を得ながらより多くの視覚障害者に対して、障害の程度や現在の歩行方法、盲導犬に関する情報源や希望の有無などについて、質問調査していく予定です。
  盲導犬の育成頭数がなかなか増加しない要因として、犬の不足・訓練士等の不足・協会の財源不足など様々な問題点が考えられています。今回の調査は、そういった問題点をより明確にし抜本的な対策を打ち出すための基礎にもなります。また、日本ではまだまだ盲導犬の数が足りないとよく言われますが、果たしてどれほどの需要があり、どれほど不足しているのか、そのために育成施設はどうあるべきかを問う、大きな意味をもった調査です。関係各位の調査へのご協力をよろしくお願いします。

盲導犬情報ボックス

日本の盲導犬育成事業の始まり

戦後、ふたたび相馬安雄氏ら有志が集まり日本盲導犬協会設立のためにたびたび会合がもたれたようですが、中心になっていた相馬氏らの死去に伴い、しばらく空白状態が続いたようです。その後、1949(昭和24)年、現在のアイメイト協会理事長でもある塩屋賢一氏が盲導犬の研究を開始し、5年後、相馬氏の長男雄二氏・塩屋氏・松井新二郎氏らが中心となり日本盲導犬協会を設立、盲導犬学校建設を図りましたが実現には至りませんでした。
  しかし、1957(昭和32)年には、河相洌(カアイ キヨシ)氏が所有していたシェパード犬チャンピィが塩屋氏により盲導犬として訓練され、河相氏ご自身が使うために歩行指導が行われました。この日本人により初めて訓練された盲導犬の誕生の経緯やチャンピィとの生活ぶりについては、河相氏が「ぼくは盲導犬チャンピィ」という本を書かれていますので、お読みになった方も多いかと思います。
  1967(昭和42)年には、従来の日本盲導犬協会が改組され、新たに財団法人日本盲導犬協会が厚生省の許可を受けて設立されました。以後、1971(昭和46)年に財団法人東京盲導犬協会(現財団法人アイメイト協会)、財団法人札幌盲導犬協会(現財団法人北海道盲導犬協会)、1974(昭和49)年に財団法人栃木盲導犬センター、財団法人中部盲導犬協会が設立されました(各協会の設立年は、財団法人に認可された年としました)。また、社会福祉法人日本ライトハウスでは、1970(昭和45)年、オーストラリア盲導犬協会へ職員を留学させ盲導犬訓練所を開設しました。これら6つの盲導犬訓練施設は、1978(昭和53)年に盲導犬の訓練を目的とする団体として国家公安委員会の指定を受けました。その後、少し間をおき、1983(昭和58)年に財団法人関西盲導犬協会、財団法人福岡盲導犬協会が設立され、それぞれ国家公安委員会の指定を受けています。
  そして、これらの8施設を結ぶ組織として、1995年4月に全国盲導犬施設連合会(現在の加盟施設は、アイメイト協会を除く7施設)が発足。社会への啓発活動や加盟施設の交流・情報交換をはかっています。
   参考文献:「盲導犬に関する参考資料集(その1)」(日本ライトハウス発行 1971.11)

編集後記

「あなたにとって盲導犬とはどんな存在ですか?」と聞かれたらあなたは何と答えますか?どのような表現がすべての人の思いを満たすものになるのか、到達できるかどうかわからない難しい道のりですが、多くの方のご意見をいただきながらゴールを目指したいと思います。
  また、「視覚障害者」という言い方はやめてほしい、というご意見もいただいています。「目が不自由な人」「盲人」・・・。いろいろな言い方があり、それぞれの言い方に様々なご意見があることと思います。1985年ごろ、「ショウガイシャ」の「ガイ」の字は「そこない。わざわい」という意味のある「害」の字ではなく「へだてる。さえぎる」という意味のある「碍」の字にすべきだ、とある肢体不自由者の運動団体が提唱していました。一般的にはあまり使われていませんが・・・。
  さて次号ですが、盲導犬の引退についてのお便りが届いています。盲導犬との別れは使用者ならば誰もが避けては通れない道です。辛い経験ではありますが、いろいろな体験談、ご意見をお寄せください。(久保)