盲導犬情報 第20号(1999年1月)



内容




盲導犬使用者のタクシー利用について

私も不愉快な体験

福岡県  稲本 八重子

小林さんの体験を読んで、最後まで納得のいく処理をされたことは大変すばらしいなあと思いました。
  実は、私もタイトルにしたような移動に関しての不愉快な思いをした者です。
  一昨年の広島での交流会に参加すべく準備を終え、さあ出掛けようとした矢先パラパラと雨が落ちてきてしまったではありませんか。
  これから遠出をするというのに、荷物や犬が濡れるのは困るなあと思い、タクシーを頼みました。
  止まった車に近づく私に、
「えーっ?犬も乗せると?」
「はい。すみませんが雨が降ってきて、ちょっと濡れると困るものですから」
「困るねえ。あとのお客さんが迷惑するとよ」
「あーっ、そうですか。そうでしょうけど私も困るんです」
「後に乗る人が文句言われると困るんたい」
「すみません。私もお客です」
と、なんだかんだ言いながら結局バスセンターまで強引に乗ってしまったものの、やはり私は不愉快さがしこりとなって気が晴れません。すぐにタクシー会社に電話をして乗ったタクシーの番号を言って状況を話したのですが、電話口の女性は、
「はい、上司に聞いておきます」
の一点張り。
  交流会を終えた後、私は福岡市にある陸運支局に電話をして、かくかくしかじかの話をしましたら、あっさりと受けとめてくれて
「わかりました。今後そのようなことがないように指導しておきます」
とのこと。ほっと一安心でした。
  数日後、タクシー会社からお詫びの電話が来て胸のつかえがおりたものの、しばらくはその会社のタクシーを敬遠する私でした。その後自由に「レイ」と一緒にタクシーにも乗ることができていることは言うまでもありません。
  何事も泣き寝入りをしないで前向きにチャレンジするのはいいことですね。一人でダメなら団体で、その意味でも使用者の会は大切ですね。

運輸省・厚生省への要請を終えて

        全日本盲導犬使用者の会  清水 和行         

去る8月27日、参議院会館にて、かねてから懸案になっていた運輸省・厚生省との話し合いを持つことが出来ました。全犬使会からは私の他に山井修理事、中村進理事、森永佳恵理事、竹前栄治さん、野口由紀子さん、賛助会員のおそどまさこさんなどが参加しました。運輸省からは自動車交通局旅客課補佐官、鉄道局業務課補佐官、運輸政策局観光部観光地域振興課補佐官、運輸政策局消費者行政課補佐官、厚生省からは生活衛生局指導課課長補佐、生活衛生局指導課経営指導官、大臣官房障害保健福祉部企画課社会参加推進室長補佐(計9名)というまさに運輸・厚生・行政の第一線で働いておられる方々との話し合いを持つことが出来たことは、山井修問題対策部長の努力と大渕絹子参議院議員のお力添えがあったからこそと心より感謝しております。
  運輸・厚生両大臣には公共交通機関の乗車拒否対策、旅館・飲食店等の入店拒否対策、盲導犬の予防薬医療費等の助成について事前に文書をもって要請するとともに、当日は私たちの抱えている具体的な声を率直に伝えました。
  まず、最初に争点となったのは公営バスにおける盲導犬の乗車制限についてでした。実は5月の終わり頃全犬使会会員の小林誠さんから、名古屋市営バスに雨天時、乗車拒否されたことを伺いました。早速盲導犬情報室の久保さんの協力を得て、全国の実態について調べていただいたところ、名古屋市だけでなく川崎市、京都市、岐阜市でも公営バスの運行約款や乗車細則などに通勤通学時や、ラッシュ時の時間帯、降雨時などに盲導犬使用者の乗車制限があることが分かりました。実際にラッシュ時や雨の日に盲導犬使用者が公営バスに常に乗れないということがあるわけではありませんが、このような文書が民間ではなく公営バスにおいて公式にあること自体小林さんのような事例を生む原因になりかねないことだと思います。この件については運輸省も正確に把握しておられなかったため、調査した上、改善に向け努力されることをお約束いただきました。
  また、運輸省通達により、乗客の理解が得られない場合には、口輪の装着が義務づけられていることについても併せてその改善をお願いしました。確かにペットと盲導犬の区別がつかないような時代であればいざ知らず、社会に盲導犬が認知されている今では噛むことのない盲導犬に口輪を装着する必要はありません。第一、口輪を携帯して歩いている使用者はいないのではないでしょうか。この件についてはこちらの主張を良く理解していただいたようで、前向きに検討いただくことをお約束いただきました。
  少し話は飛躍するようですが、要はバスに限らず、全ての公共交通機関に他の乗客と同じ条件で乗れること(アクセス権の保証)が私たちの願いなのです。例えばということで、航空機における視覚障害者の乗車人数制限についても運輸省として併せてご検討いただきたい旨お話ししました。
  なお、タクシー乗車については昨年、運輸省から盲導犬使用者の乗車を拒否しないことについての通達が出されていること、はなはだしい乗車拒否がある場合には、各地方運輸局に連絡いただきたいことについてお知らせしておきます。
  (略)
  今回感じたことは、一人の力ではどうにもならないことも任意団体とはいえ、全国組織の団体として動けばそれなりの成果が得られることを実感したことです。何もかもすぐ解決するというわけにはいきませんが、一人の会員の声がきっかけで全国の盲導犬使用者の利益になるような話し合いが持てたことを会長として大変嬉しく思います。これからも問題対策部を中心に皆さんの声を集約し、関係諸機関へ伝えていく努力を続けていきたいと思っております。
  *この原稿は、全日本盲導犬使用者の会の許可を得て、「全日本盲導犬使用者の会会報第10号」より一部抜粋して転載させていただきました。

あるタクシー会社の対応

盲導犬を理由にタクシーの乗車を断られたとき、みなさんはどのような対応をしていますか?行政側からは、地方運輸局に連絡するようにとのアドバイスがあるようですが、稲本さんがされたように、拒否したタクシーの会社名がわかれば、まずその会社に連絡をとる、という方も多いと思います。
  でも、会社に連絡をとったところで、「今後このようなことがないように気を付けます」とか、「お話はよくわかりました」といった答えが返ってくるぐらい。このような事態を防ぐために、本当に会社側は何かやってくれているのだろうか、とちょっと疑問に思っている方もおられるのではないでしょうか。
  今回、京都市内に本社のある、あるタクシー会社で実際にどのような対応がされたのか、電話で伺う機会がありましたのでご報告します。

乗車拒否を受けた盲導犬使用者が直接連絡したわけではないので、拒否された使用者・拒否したタクシー乗務員とも当事者が誰なのかわからないのですが、ある盲導犬使用者が同じ会社のタクシーに2台続けて乗車拒否を受けた、との連絡が、昨年の秋にそのタクシー会社に入りました。
  会社としては、視覚障碍者や身体不自由者、お年寄りや妊婦、こういった弱者の移動手段として有効なのがタクシーである、と位置づけているそうです。また、乗務員に対しては、入社時にそういった社員教育はしているし、視覚障碍者に対しては降りてすぐに段差があるなど危険な場所で降車することがないように停車位置に気を付ける、といったようなことも社内研修で指導している、とのこと。また、車椅子使用者の利用があったときに対応できるように、営業所に車椅子を置き、折り畳みのやり方を体験できるようにもしてあるそうです。
  しかし、このような事態が起きたのは、乗務員にこのことが浸透していないためと言えます。そこで、各営業所に「盲導犬使用者に対してその乗車を拒否するということがあったようだが、今後はそのようなことがないように」といった内容の張り紙を掲示しました。この告示の中で盲導犬は介助犬とともに「弱者の身体の一部であり、特別な訓練を受けた犬であります。公共の場所、乗り物(JR、バス、タクシー、その他)などにも、同行することは認められている」と説明されています。また、会社だけでなく、この会社の労働組合としても弱者に優しいタクシーをめざそうと、組合員に対する啓発活動を考えておられるようです。
  営業所内の掲示だけでどの程度の効果があるのか、と思う方もおられるかもしれません。しかし、掲示板を見た乗務員の中には「こんなことは同じ乗務員としてけしからん」と憤る方もおられた、とのこと。確かにスピーディで全面的な解決は望めませんし、なによりこんな対応をしなくてはならない事態が起きないことこそが望まれることですが、それでも会社に届いた「乗車拒否」という苦情に対して、今回張り紙による社内啓発という形で対処された、ということを電話で伺うことができました。
  一方、実際に使用者を乗せた乗務員から「犬の毛が落ちて車内が汚れた」などの苦情を聞かされることもある、というお話も伺いました。それに対して会社側は、上記に掲示したような内容である盲導犬なのだから、それが拒否の理由にはならないと乗務員に話している、とのことでした。
  今後も、盲導犬使用者がタクシーをスムーズに利用できるように、タクシー乗務員の方に対し正しい理解を求めていくことは必要なことですが、それと同時に、使用者の側も犬にダスターコートを着せたり、犬の毛をとるためのガムテープなどを用意するなど、マナーに気を付けてタクシーを利用することも大切なことであり、何より大きな啓発になるようです。

盲導犬情報ボックス

盲導犬使用者のタクシー利用に関する通達

「盲導犬を連れている視覚障害者のタクシー乗車について」という自動車交通局長通達が、1997年6月11日に地方運輸局長・沖縄総合事務局長にあてて出されています。
  内容は、「標記について、今般、社団法人全国乗用自動車連合会会長及び社団法人全国個人タクシー協会会長あて別添のとおり通達したので、了知の上、管内タクシー事業者に対し適切な指導を図られたい。」とあります。そして、別添の文書として、次のようなものが添付されています。
  「視覚障害者の関係団体等から盲導犬を連れている場合に乗車拒否される事例があるとの指摘がありましたが、本来、視覚障害者が盲導犬を連れて利用する場合には、道路運送法第13条及び旅客自動車運送事業等運輸規則第52条の規定により、運送の引き受けの拒絶ができないことになっています。
  盲導犬は、特別の訓練を受け視覚障害者の自立を促進する重要な手段となっていることからしますと、盲導犬のために乗車拒否が生じることは、大変遺憾なことであります。従って、改めて盲導犬の役割を含め乗車拒否の防止について乗務員に対し指導教育に努めるよう貴協会傘下会員に対し周知をお願いします。」

ところで、この文書の中にある「道路運送法第13条」は、「運送の引受け及び継続の拒絶」を規定している条文で、「第13条 一般旅客自動車運送事業者は、次の各号の一に掲げる者の運送の引受け又は継続を拒絶することができる。」として5項目が挙げられており、その二つ目の項目に「第52条各号に掲げる物品(同条ただし書の規定によるものを除く。)を携帯している者」としています。
  そしてその第52条とは、「物品の持込制限」を規定している条文で「第52条 一般乗合旅客自動車運送事業者の事業用自動車を利用する旅客は、次に掲げる物品を自動車内に持ち込んではならない。ただし、品名、数量、荷造方法等について、別表で定める条件に適合する場合は、この限りでない。」として15項目が挙げられており、その13番目に「動物(盲導犬及び愛玩用の小動物を除く。)」となっています。

最新スペイン盲導犬事情

−竹前栄治・岡部史信「スペイン盲導犬関係法令」(東京経済大学)より−

スペインにおける盲導犬事業・関係法令について、東京経済大学教授・竹前栄治氏が岡部史信氏と共に「スペイン盲導犬関係法令」と題して、東京経済大学「コミュニケーション科学第9号」(1998年10月)に発表されました。今回、竹前栄治氏の許可を得てその論文の一部を掲載させていただきました。各項目についてはなるべく原文のまま掲載するようにしましたが、説明を加えるために一部他の項目で記述されている部分を付け加えた箇所があります。また、その法令を定めている自治州名など一部省略した部分もあることをご了承ください。

1.スペイン国立視覚障害者協会について(本文103ページ)

スペイン国立視覚障害者協会、通称オンセ(ONCE)は、社会における視覚障害者のインテグレーションと個人の自立を容易にすることを主たる目的として、1938年12月13日に設立された組織である。そして現在、5万4000名以上の会員が存在し、これらの者に対して、個人の自立、補助的な経済援助、特別教育から、スポーツ、文化活動へのアクセス、雇用の振興まで、幅広いサービスについて、その多くを無料で提供している。
  現在の組織は、「役員会」以下、大きく「オンセ企業団体」「オンセ基金」「部局」「地域会議」の4つに分類され、様々な活動が実施されている。このうち、盲導犬の育成や雇用の創設などの事業を担当しているのが、1988年2月に創設されたオンセ基金である。
  オンセ基金による雇用機会の提供サービスは、1989年の「フンドーサ・グループ株式会社」の設立で本格的に活動が進められた。この団体には、33の会社と70の事業所が所属し、5800名の人が雇用されている。このうち4200名が身体障害者である。ここで働く身障者の人たちの活動は様々であり、クリーニング業、
病院の中の小売店、食品業、広告代理店、情報処理、人材募集などの業務に従事している。オンセ基金はその創設時から1997年までの10年間で、2万人以上の人に雇用を提供している。

2.盲導犬について(本文98〜99ページ)

スペインにおいて、「盲導犬」とは、一般的に「視覚障害者に同伴し、この人を誘導しかつこの人に対する援助を行う」ことを目的として、「国内外」を問わず、盲導犬の訓練所として「正式に認可された訓練所」で訓練を受けた犬のことを指している。現在のところ、スペインには盲導犬を訓練する公認の訓練所は、「オンセ盲導犬基金」のなかの施設のみであり、訓練士の養成プログラムも盲導犬の訓練システムについても十分に確立されていない状況である。このため、訓練士の多くはイギリスで訓練士となる訓練を受けた人がほとんどであり、したがって盲導犬も、イギリス式の訓練を受けている。しかし、盲導犬に使用する言語は、「カステリャーノ(標準スペイン語)」であり、スペインでは英語が用いられていないことが特徴の一つといえるであろう。
  盲導犬であるか否かは、訓練を受けたことを証明し、さらに「防疫のための定期検診」を受けたことを証明する「特別の票」を犬に取り付けることで識別されることになっている。この「票」の条件は規則で定められることになっており、現在、オンセ盲導犬基金などにこれを付与する権限が与えられている。

3.「アクセス」権(本文99、100〜101、107ページ)

国の法令および各自治州の法律には、「アクセス」という用語が頻繁に用いられている。しかし、この用語について明確な定義は存在していない。しかしながら、立法目的から判断して、盲導犬を伴った視覚障害者がそうでない一般の人々と区別なく全く同等の権利を実現することが趣旨である以上、単なる「出入り」というだけでは当然不十分であり、「出入り、使用あるいは利用、およびこれに付随するその他一切のこと」のすべてを含み、さらにこの権利の行使に何らかの制約も受けないことまでを含む権利を考えられる。自治州によっては、「周囲へのアクセス」という表現が見られるが、この概念には、こうした意味合いがあるものと考えられる。
  さて、権利としてアクセスできるところに関しては、各自治州とも、「公共の場所、区域および施設」「宿泊施設」「公共輸送機関」を列挙している。ここで特筆すべきは、この施設などが、かりに民間が所有するものであっても、公共性を有するものであれば、例外なく適用されるという点である。
  まず、「公共の場所、区域および施設」とは、各自治州共通のものとして「余暇および娯楽施設、公共施設、医療施設など、公私の教育施設、宗教上の施設、博物館など公衆が利用する建物など、公共輸送機関の停留所などの公共の場所」などが挙げられている。なお特筆すべきは、自治州によっては、「動物園」についても例外規定を付帯することなく明記されている場合が存在していることである。
  次に、「宿泊施設」とは、「ホテル、キャンプ施設、休暇村、その他の宿泊施設、観光施設」などが共通に挙げられている。さらに国の法令では「レストラン、カフェテリア、その他一般に料金を取って飲食サービスを提供する施設」もこの範囲に含まれており、自治州でも、これと全く同じ規定を採り入れている例も存在している。もっとも、レストランなどの飲食施設については、規定していない自治州がほとんどであり、さらに宿泊施設については、宿泊可能なホテル、アクセス可能なデパート、ショッピングセンターの規模を詳細に規定する自治州も存在している。
  最後に、「公共輸送機関」とは、共通のものとして「公共のまたは公衆が利用する一切の種類の輸送機関、および各自治州が権限を有する小型車両輸送機関の市内および市外サービス」と規定されている場合が多い。要するに、鉄道、地下鉄、長距離バス、近距離バス、船、飛行機などのことであると理解できる。問題は、タクシーについてであるが、「タクシー」という用語を直接明記する自治州は、ナバラ自治州だけである。もっとも、各自治州とも「小型車両輸送機関」から「タクシー」の公共性を考慮すれば、この機関だけ除外する理由は見当たらない。結局、タクシーはすべての自治州で「小型車両輸送機関の市内および市外サービス」に位置づけられ「公共輸送機関」に含められていると理解してよいと思われる。
  ただし、視覚障害者が盲導犬を同伴して各種のアクセス権を行使したいと希望しても、盲導犬自体に「病気(熱病・皮膚に見られる寄生虫の兆候、異常脱毛、下痢性の排便、異常分泌)、攻撃性、不衛生、あるいは人に対する推測可能な危険の兆候」がある場合は、当然にその権利を行使することができない。また、口輪の携帯、盲導犬の定期検診の実施、その証明、盲導犬の証明書の提示といった義務、盲導犬の素行に注意し、盲導犬が存在することで様々な業務に支障が生じないようにする責任、第三者に損害が及ばないように注意し、かりに損害が生じた場合にはこれを賠償する責任などを履行しないで、盲導犬を同伴させることを希望した場合も同様に権利を行使することができない。

4.最新スペイン盲導犬事情(本文97〜99、101〜102ページ)

1998年3月16日、マドリッド郊外のオンセ基金による盲導犬訓練所を訪れ、次のようなインフォメーションを得ることができた。

  1. スペインの人口は日本の約半分であるが、視覚障害者の数は、5、6万人であり、盲導犬数は500余頭である。年間の盲導犬になる頭数は55頭で、現在、ウェーティング・リストに登録されている人数は150人から200人程度である。したがって、2、3年待てば誰でも盲導犬を入手できるとのことであった。入手手続きは、まずオンセに申し込み、オンセはその希望者の家庭環境、適性などを審査し、リストに載せる。しかし、盲導犬の所有権はオンセにあり、盲導犬を貸し出しているのであるから、使用者が後になって不適切であることが判明すれば、返却させることがあるとのことであった。
  2. 盲導犬の繁殖には約30家庭が協力しており、協会と協力家庭の両方で行っている。子犬は、生後45日から1年間、普通の家庭で(いわゆる「飼育奉仕者」)で育てられる。
  3. 訓練期間は、平均して6ヶ月間であり、その訓練は、広大で静かな訓練所から数台の車で町中に運んで行う。訓練場は、犬の食事、睡眠、休息、遊びの場である。
  4. 訓練の方法は、イギリス方式で行われている。スペインにはとくに訓練士の養成機関はないので、イギリスで訓練を受けてきた訓練士が中心となって後進の訓練士を養成している。イギリスで訓練士(インストラクター)になるには3年間の訓練見習期間が必要だが、盲導犬の初期の訓練だけを担当するトレーナーは約1年間の訓練でなれる。ここでもこの方式で訓練を受け、訓練所内の試験を受けて一人前の指導員になっている。
  5. 公共施設、公共輸送機関への「アクセス権」の侵犯に対する制裁(罰金)については、国の法令には罰則規定は設けられていないが、各自治州の法律には、その実行性を確保するために、例外なく罰則規定が採り入れられている。各自治州とも、その違反の程度に従い、「軽度」「重度」「最重度」に違反を分類し、罰金のみの制裁を科すこととしている。違反状態の是正あるいは改善命令や自由刑を予定せず、財産刑のみの制裁は、一見すると実効性の確保には不十分とも考えられるが、違反とされる行為の範囲が広く考えられていること、さらにスペインの経済状態や意識の視点からはかなり高額の罰金が予定されていることをみれば、現在のように法制度の整備が段階的に進められている状況では、十分に意味のあるものになっていると思われる。
      現実には地方などでタクシーの乗車拒否や小さなホテル、レストランなどで入店拒否の例がないわけではないようである。
  6. 見学した訓練所の施設は、オンセが経営するもので、7棟を視察した。暖房、空調設備、手術室、医務室、分娩室などが完備されており、部屋も年齢や訓練の前半・後半によって多様な部屋割りがなされている。週2回の体重測定、個犬差による給餌、心理的孤独防止のためのラジオ音楽放送など、素晴らしい配慮がみられ、特に印象深かったのは、慣らすために飼っている数匹の猫が犬と仲良く同居している光景であった。
      アメリカの1990年ADA(障害を持つアメリカ人法)、イギリスの1995年DDA(障害者差別禁止法)などでは、すでに盲導犬を同伴する視覚障害者のホテル、レストラン、バス、タクシー、病院など公共施設、公共輸送機関への「アクセス権」は確立しているが、ここで紹介するスペインの法令をみても、今やこの動向は世界の大きなうねりとなっているように思われる。人権意識の極めて乏しい日本が、世界の孤児にならぬよう望みたい。

読者からのお便り

犬にも寝違い!
名古屋市  小林 誠

先日、私のパートナー、マリーが「珍しいケースだ」と獣医師から言われた体験をしました。読者の皆様は何だと思われますか?それは、なんと「寝違い」・・・。
  それは、明日から連休に入るという11月21日のこと。突然、発生しました。
  マリーに食餌、ブラッシング、排泄などをしようとベットをのぞき
「マリー」
と名前を呼んだのですが、いつものように尻尾を振る様子も喜んでベットから出て来る様子もないのです。
  「どうしたんだろう」と思い、とりあえずはベットの中で立たせ体全体に触れ、痛がるところや嫌がるところ、腫れや熱感はないかなどを確かめましたが、特に気になるような所もなかったため食餌を与えてみました。
  食事もいつもと変わらず食べ、歩かしてもみたのですが嫌がる様子もなかったため、「とりあえず足や股関節の異状ではないなあ」と確認できました。
  私は2頭目のパートナーを「先天性股関節形成不全」で引退させた経験があっただけにまず「足や股関節」と考えたのです。
  体を拭こうといつものように顔を右に向けさせようとした時
「キャン」
という悲鳴のような声があがりました。私はそれでも「首」の異状とは思わず「これは口の中に口内炎のようなものでもできたのだろうか」と考え、歯茎や口の中に手を入れ触れてみましたがやはり嫌がるそぶりもみせないため耳にも触れましたが腫れ、熱感もないので、まさかと思いつつ首筋の筋肉を左右注意深く観察してみたのです。すると腫れはないものの右側に熱感がありました。さらに首をいろいろな方向に向けてみましたが右真横以外にはなんら問題なく動かせたのです。
  私は「寝違いのようなものかもしれないけどひょっとしたら頚椎に異状が・・・」と思い「早朝に申し訳ない」とは思ったものの、いたたまれずかかりつけの獣医に電話をしました。現在のマリーの様子と素人ながらにも前身に触れてみて気づいたことなどを話したところ
「今日から大阪で学会があるので、とりあえずは連休明けまで安静にさせておいて連れていらっしゃい」
とのこととなりました。
  幸いなことにその後日が経つに連れて症状も緩和され、診察を受けた24日にはほぼふだんと変わらないまでに回復していました。
  首のレントゲンや触診、耳や口の中歩行状態なども見ていただきましたが
「これと言って気になるところもないし日が経つに連れ良くなってることから判断して、人間でいう寝違いとか筋違いといわれるものでしょう」
と獣医師から言われました。
  私はほっとしたと同時に「へえ、犬にも寝違いが起きるんだ」と思うとおかしくなりました。
  犬といってもよくよく考えれば体の構造や働きはほぼ人間に近いのでしょうから「寝違い」が起こっても不思議ではない訳ですよね。
  私は今回の「寝違い騒動」を通して改めて体の不調を言葉で訴えることの出来ないこの子達のためにも、いつも一緒にいる我々ユーザーが気づいてあげなくてはいけないと気持ちを引き締めました。

19号を読んで

鹿児島県  益田 美喜子

やっと冬らしく寒くなった鹿児島ですが、今日は天気も良くポカポカした1日です。
  今回の「盲導犬情報」のテーマ「盲導犬の引退について」など、盲導犬希望者の私にとっても、とても興味深く考えさせられる印象深い内容でした。
  それから「アンケート結果に思う」の名古屋市・小林誠さんの文章を読んでいて「なるほど」と感じたことは、「排泄の失敗はユーザーにも責任がある」といったことです。その部分を読んでいたら、ユーザーがしっかり盲導犬の世話をしたり気配りをしてあげたりしながら、上手にコントロールしていかないといけないから大変だなと思いました。あと、いいこと言うなと思ったところは「スーパードッグ的ピーアールばかりしてたらユーザーは生活がしにくくなる」と「盲導犬のメリットもデメリットも話すことが大切だ」というところです。
  盲導犬希望者に私がなってからもうすぐ2年がたちます。その間に盲導犬に関する本や雑誌、盲導犬使用者などで盲導犬についてのお話しを聞いたり調べたりするようになりました。
  そうするうちに盲導犬を使用するってことは考えていた以上に大変だなって、なんとなく実感するようになりました。たとえば「ハーネスをとった盲導犬はすごーく元気がよくて困る」とか「トイレに時間がかかる」など。こういう話しを聞いていると「呑気な私に盲導犬が使えるかな」と心配になります。
  でも、なぜか盲導犬が欲しいです。私は、ラブラドールとゴールデンをかけあわせたワンちゃんがいいなあ。元気がよくて、ちゃんとおとなしくて、名前がわかりやすいワンちゃんがいいです。

編集後記

ちょっと遅いですが、明けましておめでとうございます。盲導犬情報室にも何通か年賀状をいただき、ありがとうございました。ほんのちょっとでも、読んでよかった、面白かったな、と思ってもらえるような「盲導犬情報」になるようがんばりますので、今年も宜しくお願いします。
  ところで、この間(これもちょっと古い話ですが)、イギリスの大臣であり盲導犬使用者でもあるデイヴィッド=ブランケット氏の著書「晴れた日には希望が見える」(朝日新聞社刊)を読みました。読んで真っ先に思ったことは「あれ、イギリスの盲導犬もこの程度か」。そう思ってふと苦笑してしまいました。一般の人が盲導犬をスーパードッグのように考えていることの問題点を理解しているつもりでいましたが、そういう自分もイギリスの盲導犬に対してはスーパードッグ的イメージを勝手に持っていたことに気づいたからです。偏った見方は少ない情報の産物・・・ですよね。(久保)