盲導犬情報 第23号(1999年10月)



内容




今、盲導犬に関わっている人たちへ!

佐野国際情報短期大学 日比野 清

「盲導犬情報第22号」(1999年7月31日発行)に「社会福祉基礎構造改革と盲導犬事業」という情報が掲載されていた。たぶん編集部が書かれたのだと思うが、その方向性をふまえて、盲導犬事業関係者ならびに盲導犬使用者及び何らかの形で盲導犬に関わりのある方々が今、社会福祉基礎構造改革と関連する法律改正に際して、何を考え、どのような行動をして行かなければならないかについて、私見を述べてみたい。

社会福祉基礎構造改革の理念は、社会福祉の理念とも言うべき「個人が尊厳を持ってその人らしい自立した生活が送れるよう支える」ことを推進するものであり、その具体的な改革の方向として、以下の3点をあげることができる。

(1) 個人の自立を基本とし、その選択を尊重した制度の確立
  (2) 質の高い福祉サービスの拡充
  (3) 地域での生活を総合的に支援するための地域福祉の充実。

特に、社会福祉事業法の一部改正においては、障害者関係事業として、障害者(児)生活支援相談事業、身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者デイサービスセンターを経営する事業、盲導犬訓練施設を経営する事業を新たに社会福祉事業に追加することが法案化される予定である。
  また、身体障害者福祉法の一部改正において今回のテーマと関係の深いものについては、以下の事業がある。

  1. 身体障害者生活訓練等事業(身体障害者が日常生活又は社会生活を営むために必要な訓練等の援助を提供する事業)
  2. 盲導犬訓練施設を経営する事業・盲導犬の貸与(1.2.とも、平成13年4月1日施行予定)

この社会福祉基礎構造改革の方向性と具体的改正を前提に盲導犬育成・貸与事業を考えてみよう。

 
(1)盲導犬訓練施設の社会福祉法人化について

現在わが国には8法人の盲導犬訓練施設が存在するが、その内1法人を除いては社会福祉法人ではない。これは正に盲導犬事業が今まで社会福祉事業で規定された事業ではなかったからである。1法人は盲導犬事業を開始する以前から点字図書館や出版所、視覚障害者更生施設などを設置・運営していたために、たまたま経営主体が社会福祉法人だったのである。それも今までは社会福祉法人における盲導犬事業は、収益事業とみなされていたのであるから「何をか言わんや」である。
  しかし今、社会福祉事業法が改正され、盲導犬事業が社会福祉事業となり、それを経営する法人が仮に社会福祉法人となったからと言って、どんな利点があるのだろうか?現在、盲導犬事業を行っている法人が特定公益増進法人と言う指定を受けると、寄付者はその額に応じて税の控除がなされている。もちろん社会福祉法人であれば無条件にそれが適用されている。
  盲導犬取得希望者及び盲導犬使用者にとっては、いったいどのように考えたら良いのだろうか。それは、厚生省が「盲導犬訓練施設設置運営基準」や「盲導犬歩行指導員等養成基準」ならびに「盲導犬訓練基準」などをどのように考えているかによるのだろう。もし、一定基準の条件がクリアしない限り、盲導犬訓練施設としての認可が得られないようにするならば、大きな問題を投げかける事になるし、またそれらの基準が無いに等しいようなものであれば、従来とほとんど変わらない状況が続く事になるだろう。少なくとも、最低限、施設間の格差が生じないような方策を講じて欲しいものである。
  統一化に関しては今更最初から原案を作成する必要はない。各種の基準については、すべての盲導犬訓練施設が加入している、日本盲人社会福祉施設協議会リハビリテーション部会盲導犬委員会が、策定したものがあるのだから、それらとの整合性をはかっておけば良いのである。こうしておくことによって、少なくとも盲導犬自身、共同訓練及び物理的な施設環境や職員配置とその技術レベルなどにおいて、施設間の格差が最小限になることは間違いないだろう。
  しかし、私の見通しとしては、その段階にまでは到底及ばないと思う。なぜならば、基準を厳密・厳格にし、盲導犬事業が社会福祉法人でなければ運営できないようにしてしまうことは、「多様な事業主体の参入促進」、「福祉サービスの提供体制の充実」、「社会福祉法人の運営の弾力化」などの社会福祉基礎構造改革のねらいに逆行することになるからである。従って私は、できるものならば現存する8法人が規制緩和される社会福祉法人の基準を満たし、社会福祉法人化すべきだと考えている。それは、社会の認識や理解と言う観点から考えて、盲導犬事業が社会福祉事業として、社会福祉法人が設置する訓練施設で営まれていると言うコンセンサスは得られやすく、寄付の増額も期待できると同時に、現行の「明るいくらし促進事業」の一つとしての「盲導犬育成・貸与事業」の委託が獲得しやすくなり、実態に即応した委託費設定が可能となると考えられるからである。

 
(2)盲導犬事業の位置づけと枠組みについて

今回の法律改正によって社会福祉事業化される予定の生活訓練(社会適応訓練)の一部として盲導犬貸与を概念化し、それを生活訓練事業として居宅生活支援事業者の認定を受け、それに関わる費用を保障させることへと結びつけていき、名実ともに盲導犬訓練を視覚障害者のリハビリテーション訓練の一つとする。
  従来から言われているように、盲導犬を使用しての歩行は、視覚障害者にとっては白杖を使用しての歩行と並ぶ単独歩行の一つの方法である。さらに、歩行訓練は日常生活動作訓練やコミュニケーション訓練とならび生活訓練(社会適応訓練=心理・社会リハビリテーションの中核)の一課程であり、視覚障害者に対して総合的な生活訓練が、地域で提供できるようになれば素晴らしい事である。決して他のワーキングドッグが役立たないと言うのではなく、盲導犬はそれなりの歴史と確立された訓練方法、社会的認知度などが高い。今盲導犬を様々な角度から検討し、視覚障害者の生活訓練の一課程として具体的に概念化することができれば、他のワーキングドッグとは異なった地位を占めることができるだろう。
  あまり大きな声では言えないが、やはり視覚障害者の命を預かる盲導犬を、誰でもが・何処ででも育成できる可能性があるような規制緩和に歯止めをかけておかなければならない。この機会に盲導犬の育成・貸与を行ってきた施設に対してお願いしたいことは、是非視覚障害者に総合的なリハビリテーションが提供できるような施設へと発展して行ってもらいたいことである。既にいくつかの盲導犬訓練施設は、その転進をはかるため日夜努力されていることを、私は十分承知している。だが、さらに今、その足並みをそろえるべく一層の努力をお願いしたい。

 
(3)その他

利用者と事業者とが対等な関係に基づきサービスを選択する利用制度が徹底されていくと、そこには様々な盲導犬育成・貸与事業での課題が山積してくる。
  盲導犬に関わる各種の基準が設定され、一定の標準化がなされたとしても、それでもなお各々の訓練施設の特殊性を反映した特性は残るだろう。消費者である視覚障害者は、それに対して敏感に反応し、今まで以上に合法的に訓練施設を選ぶようになるだろう。しかし、メンテナンスの必要のない物であればそれで良いのだが、この場合は盲導犬と言う生き物である。何度も繰り返されるフォローアップやアフターケア、緊急時の場合の一時預けなど、物理的な距離が問題となることもあるだろう。表面的な特徴だけで安易に選ぶわけには行かない。
  理想的には視覚障害者が施設を選ぶと言うよりは、最も自宅に近い所にある訓練施設から盲導犬を取得できることが良いのかもしれない。この結論は、前述した盲導犬育成・貸与事業の委託問題と密接にリンクしているので、各々の盲導犬訓練施設や視覚障害者個人の考え方によってどうにでも展開できる事である。今こそがその分岐点であると言っても過言ではないだろう。
  共同訓練の大きな問題点として、訪問形態(デリバリーサービス)の導入がある。多くの訓練施設がそうであるように、1頭目は4週間、2頭目以降は2週間の入所形での訓練によって盲導犬貸与を実施している。これでは取得できる視覚障害者が限られ、多くの取得希望者から何とかならないだろうかという質問を度々受けることがある。ニュージーランドをはじめ多くの国々で実践されているように、訪問あるいはサテライトへの通所形態による共同訓練の実施は不可能なのだろうか?これを解決することによって、一挙に盲導犬使用希望者は激増するに違いないと私は確信している。現在就労中の視覚障害者をはじめ、特に継続雇用や原職復帰を願う中途視覚障害者にとっては朗報になるだろうし、盲導犬取得と同時に、前述のように他の生活訓練も受けられるとすれば、素晴らしい環境が構築されることになる。

だらだらと思いつくままに書いてしまったが、私を含め今、盲導犬に関わりのある者たちは真剣に討議を重ね、1頭でも多くの優れた盲導犬の育成・貸与と、理解ある人々に囲まれた素晴らしい盲導犬使用環境を形成して行くべく努力をしていきたいものである。

日本財団「盲導犬に関する調査」結果報告書の概要(2)

盲導犬訓練士の現状について

b.盲導犬訓練士の現状
   b-1.盲導犬訓練士とは
盲導犬訓練施設で盲導犬の訓練や視覚障碍者への歩行指導にあたっている職員は、一般的には「盲導犬訓練士」と呼ばれることが多い。この報告書の標題でもそうなっている。しかし、報告書の中では「盲導犬歩行指導員」「盲導犬訓練士」「研修生」と職務を分けて呼んでいる。そこでこの調査報告書の概要を紹介する前に、まずこの呼び方の違いを整理しておきたい。

 1992年、日本盲人社会福祉施設協議会リハビリテーション部会盲導犬委員会は、盲導犬の訓練および盲導犬を使用する視覚障碍者の歩行指導を行う者の養成に関して、各訓練施設が遵守すべき「盲導犬歩行指導員等養成基準」を定めた。
  その中で、盲導犬訓練士とは、盲導犬の訓練を目的とする法人として国家公安委員会が指定した法人が運営する訓練施設において、「研修生」として施設長の監督の下、盲導犬歩行指導員の指導を受けなければならない。その期間は最低3年で、その間に20頭以上の犬の訓練と6例以上の歩行指導の事例を経験する機会が与えられなければならない。
  こういった研修課程を経て認定された盲導犬訓練士とは、歩行指導に供することができる犬を訓練する技能を有すると認定された者であるが、歩行指導をする場合には、指導員の指導監督を必要とする。
  それに対し「盲導犬歩行指導員」とは「自らの責任において歩行指導に供する犬を訓練し、視覚障碍者に対して歩行指導を行うことができる」と法人が認定した者である。
  盲導犬歩行指導員の研修期間は、原則としてさらに2年。ただし、日本ライトハウスが厚生省の委託を受けて実施している歩行訓練指導員養成講習会、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院の視覚障害生活訓練専門職養成課程およびそれに準ずる課程を修了した者は研修期間を短縮できる。しかし20頭以上の訓練と6例以上の歩行指導の事例を経験するという条件は満たさなければならない。
  また、研修生が受ける研修プログラムは、以下の事項を含む技術及び専門知識の修得に留意され作成されなければならない、とされている。
  1. 犬の訓練技術および犬に関する知識
      犬解剖学、犬舎管理を含む飼育技術、犬の歴史、犬の感覚、犬と人の相互作用、動物心理学、繁殖遺伝学、盲導犬の歴史、訓練方法論、盲導犬歩行の法的問題、広報活動等
  2. 視覚障碍者の歩行に関する技術および知識
      人間の感覚、運動のメカニズム、学習心理学及び教育方法論、老年学、ロービジョン、発達心理学、面接と評価の技法、カウンセリング、電子機器等
  3. 盲導犬の歩行指導に関する技術および知識
      盲導犬の使用に関する適性評価、フォローアップ、指導計画の立案等
      そして、これらの資格の認定に当たっては、法人が「研修生が、訓練技術、専門知識および経験事例についてそれぞれ満足すべき水準に達していることを確認しなければならない」としている。
   b-2.職員の処遇状況
  調査時の各施設の職員数は、事務部門が正職員33人、嘱託職員5人、施設部門が正職員70人、嘱託職員11人、合計 119人。施設部門の職員の内、盲導犬歩行指導員は、男性14人、女性7人。盲導犬訓練士は男性4人、女性1人。研修生が男性10人、女性24人で、盲導犬の訓練や歩行指導に直接関わっている職員は、合計60人となっている。
  1993年度から1995年度までに採用された研修生の在職率は、2年次で76%、3年次で39%となっている。また、過去5年間の退職者は研修生45人(平均勤続年月数1年5ヶ月)、訓練士3人(平均6年10ヶ月)、歩行指導員8人(平均9年9ヶ月)となっており、研修生の離職率の高さが窺える。
  施設の職員の労働条件についての考え方としては、「現状で妥当」と答えたのが1施設、「改善が必要」と答えたのは7施設。改善したい労働条件として過半数の施設が「時間外労働」「給与基準」を挙げている。
  時間外労働に関する調査項目はないが、1ヶ月あたりの平均休日取得日数は、「4〜5日未満」が2施設、「5〜6日未満」が2施設となっている。また、給与面では高卒初任給が平均で約13万円、大卒初任給が平均約15万円となっている。
   b-3.盲導犬訓練士の現状について
   (1)回答者のプロフィール
ここで回答しているのは、盲導犬訓練士に限らず盲導犬歩行指導員や研修生も含めた41名である。
  回答者の内訳は、男性48.8%、女性41.5%。平均年齢31.4歳で、20,30歳代が約65%を占める。最終学歴は「大学卒」が46.3%でもっとも多く、「高卒」が29.3%。職務については、「盲導犬歩行指導員」39.0%、「盲導犬訓練士」と「研修生」が共に24.4%となっており、就職時期は1988年以前が26.8%、1989年以降が58.5%となっている。
   (2)養成・研修について
    1)養成・研修に対する満足度
盲導犬歩行指導員になるには研修が必要であり、各施設が一定の基準をもって養成に当たっていることは先に述べたが、その養成・研修に対する満足度について尋ねると、「非常に満足している」が24.4%、「やや満足している」が22.0%で約半数近くが満足していることがわかった。しかし「全く満足していない」4.9%、「余り満足していない」が19.5%で、回答者の4人に1人は現在の養成・研修の在り方に満足できないと感じている。
  その理由としては10人中6人が「養成・研修がシステム化されていない」、3人が「わかりにくい」、2人が「教員の数の不足」「目指す盲導犬の具体像の提示がない」「養成・研修を受けられる環境がない」などを挙げている。
    2)望まれる研修内容
施設で整えてほしい研修内容として、回答者の半数が何らかの回答をしている。その内複数の回答があった項目としては、「情報交換の活発化」「パピーウォーカー育成等の知識習得」「他施設での研修の実施」「労働と研修との分離独立」「各指導員の指導方法の統一」「研修内容の専門化」「特定の人数や施設内での研修の実施」「研修員の増強」「資格制度の一本化」など多岐に渡っている。
   (3)労働条件等について
    1)処遇面の現状
給与の金額をみると、基本給月額は「15〜20万円」がもっとも多く、平均20.6万円となっている。1ヶ月の休日日数は「4日」がもっとも多く29.3%、平均 5.7日。宿直は1ヶ月平均 4.0回、日直は 2.7回となっている。
    2)整えてほしい労働条件
施設で整えてほしい労働条件としては、回答者の26.8%が「勤務時間・残業時間の短」を、17.1%が「職員の増員」、14.6%が「休日の確保」や「給与のアップ」をあげており、ゆとりを求めていることがうかがえる結果となった。このほかには、「業務内容の専門化・担当業務の特定化」「育児休暇の増設」などが挙げられている。
   b-4.まとめ
  盲導犬の訓練や視覚障碍者への歩行指導については、高い専門知識や経験を有する指導員がその任務に従事しているが、訓練士になる前の段階にある研修生の離職率が高いことから、訓練士の絶対数が不足する状況が続いている。過去5年間の研修生の平均勤続年月は1年5ヶ月だった。研修生の初任給や休日数を見ると、民間企業や公務員と比較して格差があるケースもあり、こうした労働条件の違いは離職率が高くなる要因の一つになっているものと思われる。また、訓練士養成のための専門指導員などを配置している施設は少なく、施設長やベテランの指導員がそれらの任務にあたっているのが現状である。
  各施設及び盲導犬訓練士から指摘された改善すべき点や要望として、労働条件の改善や職員の増加、業務内容の専門化、養成カリキュラムのシステム化などが挙げられている。

来日されたジョン=ゴスリングさんからお話を伺って

10月上旬、オーストラリアにあるビクトリア盲導犬協会(Guide Dog Associationof Victria)のジョン=ゴスリング(John Gosling)さんが来日され、関西盲導犬協会と日本ライトハウスの盲導犬訓練施設を訪問しました。
  ゴスリングさんは、1971年にオーストラリア王立盲導犬協会で盲導犬歩行指導員研修生となられ、1974年に指導員に。その後、1977年にはソニックガイドやモーワットセンサーといった電子機器を使用した歩行指導員の資格を得、1978年にはビクトリアカレッジで歩行指導員養成コースを修了するなど、視覚障碍者に対する歩行指導に関しては幅広い知識と経験をお持ちの専門家です。
  1980年にオーストラリア全州の盲導犬歩行指導員の技術的責任を負う立場にあるチーフインストラクターになられていますが、現在、オーストラリア国内のみならず、日本、イギリス、フランス、スイスなど世界各国の盲導犬協会の視察や、台湾での盲導犬事業設立の相談を受けるなど、国際的に活躍。また、1998年5月には国際盲導犬学校連盟評議会のメンバーにも選ばれている方です。
  そんな大ベテランのゴスリングさんにいろいろな話を伺う機会がありました。限られた時間と英語力の中ではありますが、ゴスリングさんからお聞きしたことを少しご紹介したいと思います。

まず、ビクトリア盲導犬協会についてお聞きしました。日本でいう盲導犬協会とは異なり、盲導犬協会というより総合的な視覚障碍リハビリテーションセンターとして機能している施設のようでした。盲導犬だけでなく白杖や電子機器を使用した歩行指導や日常生活訓練、ロービジョンサービスなど、大人・子どもに関わらず視覚に障碍をもつ人たちのあらゆるニーズに応えることができるようなスタッフ・設備・財源が備わっており、視覚障碍児・者に対する専門的なサービスがスムーズに提供できているようです。
 しかし、こういったことは、ビクトリア盲導犬協会に限ったことではないようです。話は少しそれますが、「失明とは何か、失明により何が起こるか、失明に対して何をすべきか」という観点から書かれた「失明」という本があります。失明によって失われるものを20に分類し、「そのそう失の苦しみと、リハビリテーションの過程における諸問題を考察した」この本は今から40年近く前に書かれたものですが、その内容は現在でも参考になる部分が多く視覚障碍リハビリテーションの入門書とも言えるものです。この本の中で著者であるトーマス=キャロル(Thomas J. Carroll)は、「盲導犬を使いこなす訓練をする前に、失明者自身の感覚訓練が必要であることは言をまたない。現存する盲導犬訓練センター全部が、これらの失明者の感覚訓練をしているわけではないが、モリスタウンにある盲導犬学校は、短期のこの種訓練を実施している。ほとんどのセンターで失明者の訓練を実施していない理由として考えられるのは、犬の訓練ということに目を奪われているためと思われる。いずれにしても、盲導犬を使いたいと考える人は、まずリハビリテーションセンターで正規の感覚訓練を受けることが肝要であると思う。」と述べています。歴史的にみて、視覚障碍者の移動能力の回復について最初に手がけたのは盲導犬を利用したものでしたが、ただ盲導犬を訓練していくだけでは視覚障碍者の移動能力の回復は得られない、盲導犬の利用の前に環境認知のためのオリエンテーション訓練などが必要だ、と指摘しているわけです。
 盲導犬に関して先進国といわれる国々の施設には、盲導犬に限らず総合的なリハビリテーションサービスが提供できるような施設が少なくないようです。それは、初期の盲導犬での歩行指導から得られた経験や反省が国を越えて伝えられ、よりよいサービスの提供が出来る体制作りに確実に活かされているのかな、とふと思ったりしました。
 その他、オーストラリアと日本での盲導犬に対する社会の中での位置づけの違いについてもお聞きしました。
 例えば、日本国内では以前よりは随分改善されてきてはいますが、今もなおレストランやホテルなどを盲導犬使用者が利用しようとしたときに断られることが少なからずある、というのが現状です。オーストラリアでも同様のトラブルはあるようですが、しかし日本と違う点は、レストラン、タクシーなど一般的に利用するものについて盲導犬を理由に断わることを法律で禁止しているということでしょうか。
 もちろん法律で禁じているのは、盲導犬使用者に対してのことだけではありません。視覚障碍者や聴覚障碍者、肢体不自由者など障碍をもった人々に対する一切の差別は、法的に許されないこととされています。その法律の元になっているのは、アメリカのADA法(障害をもつアメリカ国民法Americans with Disabilities Act)です。差別を禁じた法律ができているのは、そういったトラブルがあるからとも言えますが、法的に保障されていれば心強い気もします。
 盲導犬に対する意識も少し違うようです。例えば、まだ盲導犬にはなっていないパピーウォーキング中の犬も、一般の施設に連れて行くことはほぼ公認されていることのようです。ですからパピーウォーカーはパピーを連れて駅の構内や公共施設に入ったりエスカレーターに乗せたりすることが出来ます。もちろんこういったことが許されているのは盲導犬候補の犬に限ってのことであり、一般のペットを同じように連れて行くことはできません。こういったことも、今の日本では考えられない状況と言えるでしょう。
 また、日本では、現在ほとんど重複障碍をもつ人には盲導犬の歩行指導ができていないのが現状ですが、オーストラリアでは視覚障碍の他に、聴覚障碍や肢体不自由、知的障碍など重複障碍をもつ人にも対応しているそうです。車椅子に乗っている人と盲導犬のユニットもあるそうなのです。
 重複障碍をもつ人のためにどのような点が配慮されて盲導犬が訓練されているのか、視覚障碍のみの使用者に比べて盲導犬を同伴して行動する範囲に制限があるのかないのか、さらに詳しく伺いたいことは多々ありましたが、いかんせん言葉の壁が…聞けず仕舞いのまま涙をのんでのお別れとなりました。

(関西盲導犬協会・山口浩明)

全国盲導犬施設連合会活動報告

全国盲導犬普及キャンペーンポスターについて

全国盲導犬施設連合会では、「全国盲導犬普及キャンペーン」の一環として、連合会発足以来、毎年度新しいデザインのポスターを制作しています。今年度もすでに半分が過ぎていますが、どんなデザインのポスターなのかご紹介したいと思います。

 ポスターの大きさはB3版。ハーネスを付けたラブラドールリトリーバーがポスター中央に座っています。その右横に、黄色い点字ブロックが縦にしいてあります。その点字ブロック上に「盲導権(ケンの字は犬のケンではなく権利のケン)」の文字。そして盲導犬と点字ブロックの間に黒い字で
 「第一条 主人と一緒に飛行機、鉄道、バス、タクシー等利用できる。
 第二条 主人と一緒に飲食店、宿泊施設等を利用できる。
 第三条 主人からの呼びかけに専念するため、主人のみに応答できる。」
 ポスター左上には、やや小さい文字で「盲導権」。実際には、こんな権利は存在しませんが、ぜひ認識してもらいたいのです。盲導犬に対する理解不足による問題が、現在、多数起きています。盲導犬はペットとは違います。人間を知り、社会のルールを学び、主人の眼として一生懸命働いています。ハーネス(胴輪)をつけている時の盲導犬は「社会の一員」です。ですから仕事中は「盲導権」を主張させてください。盲導犬の「盲導権」は、みなさんの優しいまなざしに支えられているのですから。」ポスターの下の部分には、「全国盲導犬施設連合会」とあり、その右横に7つの加盟施設名とそれぞれの電話番号が記してあります。

 このポスターは、全国盲導犬施設連合会の募金箱を設置していただいているお店に配布していますので、そういったお店の店頭などで見かけることができます。もしこのポスターをご希望の方がおられましたら、全国盲導犬施設連合会加盟施設か連合会事務局にお問い合わせください。ただし、残部があまり多くはないので品切れの際はご容赦ください。また、ポスターを送付する際には送料を申し受ける場合がありますがご了承くださいますようお願い申し上げます。

盲導犬情報ボックス(1)

国際盲導犬学校連盟1999年年報より

国際盲導犬学校連盟から発行された年報によると、1999年1月1日現在で国際盲導犬学校連盟には26カ国72施設が加盟しています。これは前年に比べると2カ国9施設が増えており、年々加盟国も加盟施設も増えています。加盟施設のある国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、韓国、ニュージーランド、ノルウェイ、スロバキア、南アフリカ、スペイン、スェーデン、スイス、イギリス、アメリカの他、新たにブラジル、台湾の施設が加わりました。
 1998年の1年間に、一部の加盟施設を除いた各国の加盟施設で訓練を修了した使用者とその盲導犬は、 2,626ユニット(前年は2,193ユニット)。この内の1,254ユニット(47.75%)は新規の、1,372ユニット(52.25%)は代替えの盲導犬使用者でした。
 訓練形態でみてみると、1,927ユニット(73.38%)は施設内で宿泊して、341ユニット(12.99%)は施設と自宅と両方で、358ユニット(13.63%)は自宅で訓練を受けています。前年度に比べると、施設と自宅の両方で訓練を受けたユニットの割合は減り、施設内で宿泊、あるいは自宅のみで訓練を受けたユニットの割合が増えています。
 また、4,728頭の仔犬たちが盲導犬候補として育てられており、15,059ユニットの盲導犬と使用者が活動中とのことです(前年は12,397ユニット)。

盲導犬情報ボックス(2)

アジアの盲導犬訓練施設

「国際盲導犬学校連盟1999年年報」によると、アジア地域で国際盲導犬学校連盟に加盟している訓練施設がある国は、日本の他には韓国と台湾だけです。
 韓国にあるのは、サムソン盲導犬学校(Samsung Guide Dog School for the Blind)。1993年に設立され、1998年の1年間に10ユニットが卒業、1993年の設立以来合計33ユニットがサムソン盲導犬学校から誕生しています。指導員の養成については、ニュージーランド盲導犬協会に3年間派遣していた指導員2名が歩行指導員の資格を得て帰国した、とのこと。
 また、1999年1月の国会では、公共交通機関やホテル・レストランを含めた公的な建物への盲導犬とその使用者のアクセス権を保障する新しい法律が制定されました。盲導犬使用者の利用を断った場合には、 200万ウォン(約 2,000ドル)の罰金が課せられるそうです。
 台湾にあるのは、恵光(ホェィクァン)盲導犬センター(Huikuang Guide DogCenter)。1996年に設立されています。これは余談ですが、中国語で盲導犬は「盲導犬」の盲と導を入れ替えて「導盲犬」と書くそうです。
 1996年に日本で訓練を受けたユニットが帰国して以来、まだ台湾では1ユニットしか成功例がありません。現在、研修生2名をニュージーランド盲導犬協会に派遣し、指導員の資格を得て帰国するのを待っている状態です。また、指導員の養成だけでなく、公的な場所に盲導犬とその使用者が立ち入ることを保障した法律が制定されるように運動を続けているそうです。

編集後記

国際盲導犬学校連盟が毎年発行している年報は、「盲導犬情報」の中でお伝えしているような盲導犬の育成頭数やパピーウォーキング中の盲導犬候補犬の頭数などだけでなく、各加盟施設が施設の紹介やその1年間のトピックスなどを写真を添えて報告するページがあります。そんなページを見ていたら、車椅子に乗った人が犬と歩いている写真が眼に留まりました。
 昨年設立10周年を迎えたというオーストリアのOsterreichische Schule furBlindenfuhrhundeという施設のものでした。この盲導犬訓練施設では、昨年車椅子を使用している人に盲導犬の歩行指導を行ったとのこと。盲導犬としての訓練の他にどうやって車椅子を引っ張り誘導するのかという介助犬としての訓練もしたようです。
 さて、共同訓練に入ってちょっとした問題が持ち上がりました。車椅子に乗った人のスピードが速すぎて、指導員はこのユニットについて歩くのが大変だというのです。でもローラーブレードで問題解決。確かに写真にはハーネスではなくリードで犬を連れた車椅子使用者の後ろに指導員らしき女性がスケート靴ならぬローラーブレードを履いて歩道を滑っている様子が写っています。
 でも、そんなにスピードを出して危なくないのかな?日本の交通環境を考えるとちょっと心配にもなりますが、それができるというあたり、お国事情の違いでしょうか・・・。(久保)

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