盲導犬情報 第27号(2000年10月)



内容




盲導犬を同伴しての動物園の利用について

盲導犬を同伴した視覚障害者の動物園入園に関するアンケート調査結果報告(1)

盲導犬使用者の皆さんは、盲導犬を連れて動物園に行ったことがありますか?
  どちらかというと、どうしても行かなければいけない場所でもないし、また単独で行くことよりも誰かと一緒に行くことが多い動物園。しかもいろんな動物がいて、盲導犬を連れて入園されると動物園にいる他の動物たちに差し障りがある、と言われれば、それがたとえ盲導犬使用者に対する誤解による判断だとしても反論の仕様がありません。
  そういったことが煩わしくて、動物園に行きたいと考えたとき盲導犬は家に残し白杖やボランティアの人と行く人もいるでしょう。しかし、家庭の状況や時間的なことから盲導犬を家に残しての外出が難しい人や、家と動物園の行き帰りには盲導犬が必要だという人はやっぱり盲導犬を同伴して動物園に行かざるを得ません。それぞれの盲導犬使用者が、まず自分にとってそのとき最も望ましいと考えられる歩行方法を選べる環境であることがなにより大切ですが、そういう環境をつくるにはまず多くの人の正しい理解も必要になってきます。
  そこで、動物園で働く方々は盲導犬使用者の入園に関してどんな情報を持ち、どう考えておられるのかを知ることが、互いの理解を深める第一歩になると考え、今回、動物園に対しアンケート調査を行いました。この調査の結果が、盲導犬使用者が他の入園者と同様に動物園を楽しむためには盲導犬使用者が何に配慮すべきか、動物園側にどういった対応を望むべきかを考えていく上での材料になればと思っています。

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  1. 調査の対象と方法
      動物園は、その規模や動物の種類、展示方法などが実に様々です。そのため、アンケートに協力してくださった動物園がどのような特色をもつ動物園なのかがある程度わかるようにと考え、「日本と世界の動物園−Zooガイド」(近藤純夫著、平凡社、1998.7発行)に掲載されていた日本の動物園の内、サファリパークなど主な動物の展示方法が放し飼い形式の動物園でないと思われる94動物園を調査の対象としました。
      これらの動物園に対し、盲導犬を同伴した視覚障害者の動物園入園に関するアンケート調査という標題のアンケート用紙を作り、返信用封筒を同封して、各動物園長宛に郵送しました。
  2. 調査期間
      2000年5月〜6月
  3. 回答数および回収率
      アンケート発送数 94
      回収された調査票 67
      回収率 71.3%
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  1. .盲導犬を同伴した視覚障害者(以下、盲導犬使用者)が来たことがありますか?
      ある 34(50.7%)
      ない 33(49.3%)
  2. その時どのような対応をしましたか?
      a.盲導犬を同伴して入園してもらった・・・20(58.8%)
      b.一部立ち入りを遠慮してもらった・・・・10(29.4%)
       立ち入りを遠慮してもらった場所としては、
        ・ふれあい広場や放し飼いエリア・・・4
        ・フライングケージの中・・・・・・・2
        ・キジ・ツルなどの鳥類・・・・・・・2
        ・トラなど猛獣・・・・・・・・・・・2
        ・狼・・・・・・・・・・・・・・・・1
        ・熱帯生態園・・・・・・・・・・・・1
        ・シマウマ・ダチョウの混合飼育エリア・・・1
      c.盲導犬は事務所などで預かり、盲導犬は同伴せず入園してもらった・・・2(5.9%)
      d.盲導犬を預かることもできないので、入園を断わった・・・2(5.9%)
  3. 盲導犬使用者が入園を希望した場合、どのような対応をしますか?
      a.盲導犬を同伴して入園してもらって構わない・・・・11(33.3%)
      b.盲導犬を同伴してもよいが、行ける範囲は制限する・・・・・ 9(27.3%)
        盲導犬を伴って行くことができないのは、
        ・ふれあい広場や放し飼いエリア・・・・3
        ・ポニー乗馬・・・・・・・・・・・・・1
        ・猛獣・・・・・・・・・・・・・・・・1
        ・新着動物や母子などおちつかない動物・1
        ・抱卵中の鳥・・・・・・・・・・・・・1
        ・臆病な動物・・・・・・・・・・・・・1
        ・サル・・・・・・・・・・・・・・・・1
        ・無回答・・・・・・・・・・・・・・・2
      c.盲導犬は事務所などで預かり、盲導犬は同伴せず入園してもらう・・・7(21.2%)
      d.盲導犬を同伴して入園してもらっては困るし、盲導犬を預かることもできない・・・2(6.1%)
      e.現在、対応を検討中である・・・4(12.1%)
  4. 盲導犬を同伴して入園できると考える理由
      盲導犬がそばにいないと視覚障害者が困る・・・26
      盲導犬が他の動物に影響を及ぼすことは少ないと考えるから・・・13
      実際に入園したことがあったが問題はなかったから・・・7
      使用者と離れた盲導犬が不安を感じるだろうから使用者と一緒に入園した方がいい・・・4
      盲導犬を預かることはできないので使用者と一緒に入園した方がいい・・・2
      使用者や他の入園者に説得されて断わりきれなかったから・・・0
      その他・・・1
  5. 盲導犬を同伴しての入園・立ち入りが困難と思われる理由
      盲導犬が入園することで動物園の動物たちが興奮するので危険・・・31
      盲導犬によって、動物園の動物たちに伝染病感染のおそれ・・・6
      盲導犬が興奮して視覚障害者や周りの客に危険が生じるおそれ・・・5
      盲導犬に伝染病感染のおそれ・・・2
      犬の嫌いな客もいる・・・0
      その他    小さな子どもが驚く・・・1

盲導犬使用者の体験から

動物園入園に関して

大阪府 岡田 彰

私は約10年ほど前に、大阪市立天王寺動物園へ入園しました。その時、まず動物園に電話して、動物園に入園したいことを申しました。最初は係りの方から
「動物園に盲導犬は困ります。戦後、動物園に野良犬が入ってきたためにいろんな動物が恐怖感を覚えた。それにもし病気がうつったら・・・」
といろいろ言われました。けれども私は、せっかくのことだしボランティアグループの方もおられるし、と長いこと電話で話していました。すると、獣医さんが出て来られまして
「一度、盲導犬を館内に入れてみたらどうだろうか」
そして、
「それでは、休館日の日に1回試しに歩いてほしい」
と言われました。それで休館日、盲導犬協会の職員と私達夫婦で盲導犬(その時の盲導犬の名はユーキ)を連れて入りました。
  まず最初、おサルさんの前を通りましたら、おサルさんはたいへん興奮して、もう金網をガシャガシャ言わせるぐらいに大騒ぎでした。それを過ぎて、今度はいろんな動物、キリン、シマウマ、そういう草原の草食動物はどうしたかというと、やっぱり小さな犬ですけれども、まわりを全部雄が囲んで、その中に子供そして母親がという風にして囲んでいました。獣医さんもびっくりしました。
「うわあ、こんな犬でも警戒をしてるんだなあ」
  そしてゾウさんの所に行きました。ゾウも警戒している、と言われました。
「どうしてわかるんですか」
と聞いたら、
「耳を後ろにぐっとひっぱっている。だから警戒している」
とのことでした。
  その次に行ったのはライオン、トラ、そしてピューマのオリの前ですけれども、そこではライオンとトラはじいっとして盲導犬の動きをみているだけで、ユーキの方は全然気がつかなかったようです。ところがピューマのオリで、ピューマがサーッと動いたとたんに、ユーキは吠えてピューマの方に走って行こうとしました。でも、それはそれで何事もなく終わりまして、次に鳥達の所に行ったんですが、鳥の方は別に影響なかったようです。ただ、タンチョウヅルの前では、犬を見て警戒していたのかだいぶ鳴いていたし、獣医さんの説明で
「あ、あのツルはもうすぐお産が始まるから」
と言うので、そこを迂回しました。
  その後では、パンダの前ではパンダはもう全然無視し、アヒルやカバがいたって全然無視。だから動物園の中を歩いたからといって別に何ということもなく、獣医さんの説明を聞きながら動けたのでかえって楽しかったです。
  後日、盲導犬を連れての本番の時は、獣医さんに
「今度はサルの前は通りませんよ」
と言われました。実は、あれからしばらくは興奮したのか、夕飯を食べないサルさんが多かったらしいです。だからおサルさんのところだけは迂回して、それ以外は前と同じようにまわって行きました。そうしたら、かえって動物ではなくいろんなお客さんが
「盲導犬だ、盲導犬だ」
と言って騒がれていたのが面白かったです。
  結論として、動物園に入園しようと思うのなら電話連絡を先にしておいて、一緒にまわるときは獣医さんと一緒にまわってもらうと大いに助かると思います。私達もそうしましたし、各担当の係の方もずうっと一緒について来てくれました。そしてビデオもとっておられたようです。本当に楽しい思いをしました。

栗東のトレセン

  S.K   

イルザと生活するようになって5ヶ月が過ぎた頃のことです。以前、PTAの行事で栗東の日本中央競馬会栗東トレーニングセンターに行かれたことがありました。その時、私は参加できなかったのですが、どうしても行ってみたくなり家族で出かけました。入場券を買い、イルザを事務所にあずかっていただこうと思っていたその時、むこうの方が、
「あっ、犬ですね。おあずかりしましょうか」
と言ってくださいました。夫はその言葉をさえぎって
「これは盲導犬ですから大丈夫です。こちらで責任を持って見学させていただきます」
と言い切ったのです。私の心の中に『あなたは盲導犬使用者じゃないのに、訓練も受けていないのにそんなことを言って大丈夫なのかな。何かあっても知らないわよ。小学校へ歩いて行く時も、時々、田んぼにとびこみバッタを追いかけたり、散歩中のわんちゃんにごあいさつに行ったりすることがあるんだから』と不安がよぎったのですが、次の瞬間、私も『盲導犬なんだから夫の言う通りだわ』と思い返し、中に入りま した。
「あれがどうやら。それがこうやら」
とトレセンの中の説明を夫や子供たちから聞きながら歩きました。イルザはしっかり私の命令を聞いて歩いています。私たちは全く気づいていなかったのですが、うしろから自転車に乗った方がついて来られていたようで、突然
「大丈夫ですね。どうぞゆっくり見学して行ってください」
と声をかけられ、私たちから去って行かれました。パカパカパカ・・・とかすかに馬のひずめの音がします。
「お母さん、前からお馬さんに乗った人が来たで」
子供たちの声に私の背筋がピッとのびます。『よし、私もイルザをしっかり調教しなくっちゃ』と思ったのです。十字路を横断する時も、どうしようかなと迷っていたのですが、
「先に渡ります」
と馬に乗られた方に声をかけました。そして、さっそうと馬の横を通り過ぎたのです。もちろん「お先にありがとうございました」というお礼の言葉も忘れませんでした。私の頭のてっぺんから聞こえる「どうぞ気をつけて行ってください」という男の方の声も、とても気持ちよいものでした。
  見学を終えて、芝生の所でイルザに排泄をさせました。それを固めてカバンに入れ、バス停でバスを待っているとT会社のバスが止まりました。乗り込んだとたん運転手から、
「犬は困るなあ。しかもこんなに大きい犬を。さあ、降りて、降りて」
と車内のマイクで言われたのです。
「あのー、この犬は盲導犬ですけれども」
と伝えても、
「ダメだ。危険物だから早く降りて」
と言われたのです。
「とにかく草津駅まで乗せてもらえないと帰れないんです」
とお願いしてみるのですが、どうもうまく話がつきません。こんな所で不愉快な思いをするのもシャクなので、バスから降りることにしました。次のバスには、無事に乗って帰ってくることが出来ました。

この原稿は、滋賀県内の広報に載せる予定のものの一部ですが、S.Kさんの承諾を得て掲載しました。

日本財団「盲導犬に関する調査」結果報告書の概要(5)

盲導犬に関する情報源と今後の課題

E.盲導犬に関する情報源

今回は、一般の視覚障害者(盲導犬使用者および元使用者、盲導犬希望者としてすでに盲導犬育成施設などにアプローチしていない視覚障害者)を中心に、盲導犬に関する情報源などについてみていきたい。

E-1.盲導犬の認知度

一般の視覚障害者で盲導犬について「よく知っている」と答えている人は18.8%、 「少し知っている」と答えている人は55.9%おり、一般の視覚障害者の4人に3人は盲導犬に関して何らかの知識を持っていると言えよう。これは、年齢別ではあまり大きな差は見られないが、視覚障害を受けた年齢でみると若いほど認知度が高くなる傾向にある。また、外出の頻度別にみると、「ほぼ毎日外出する」人の場合は77.1%と高くなっているが、「ほとんど外出しない」人では56.9%と低くなっている。

E-2.盲導犬に関心を持つきっかけとなった情報源

盲導犬に関心を持つきっかけとなった情報源として一般視覚障害者が挙げたのは、「盲導犬使用者」58.5%、「一般マスコミ」44.2%、「視覚障害関係マスコミ」40.9%となっており、盲導犬使用者とマスコミが高い割合を占めている。盲導犬現使用者、元使用者についても同様の傾向がみられる。一方、「福祉事務所等行政機関」「白杖歩行指導員」については、10%未満となっている。

ただ、盲導犬に対して関心が「おおいにある」人や盲導犬に関して「よく知っている」と答えている人、盲導犬を「いますぐ希望する」と答えている人は、「盲導犬使用者」だけでなく「盲導犬訓練施設」からも情報を得ている割合が高い(例えば関心が「おおいにある」人の57.3%、「いますぐ希望する」人の54.7%が「盲導犬使用者」、関心が「おおいにある」人の25.9%、「いますぐ希望する」人の45.3%が「盲導犬訓練施設」を情報源として挙げている)。

また、盲導犬を「希望しない」人の61.4%、「迷っている」人の62.2%も、やはり「盲導犬使用者」を情報源に挙げている。盲導犬の希望の有無に関わらず、盲導犬使用者は盲導犬に関するより具体的で身近な情報発信源であることがうかがえる。

地域別にみると、「一般マスコミ」を情報源とする割合についてはあまり大きな差は見られないが、「盲導犬使用者」については、最も高いのは関東地域では63.6%となっているが、四国地域では43.6%と差が見られる。代わりに四国地域では、「福祉事務所等行政機関」を情報源と挙げる人が17.9%おり、他の地域と比べると多くなっている。

E-3.地方自治体の盲導犬貸与事業

盲導犬貸与事業については、「知っている」が62.6%、「知らない」が32.2%となっている。これは、年齢が高いほど認知度が高くなる傾向にある。また、盲導犬に関して「よく知っている」という人の85.5%は、盲導犬貸与事業について「知っている」と答えている。地域別にみると、東北地域と四国地域で69.1%とやや高く、北海道地域では56.5%とやや低くなっている。

E-4.盲導犬取得のための問い合わせ先

盲導犬使用者、元使用者、希望者が盲導犬取得のために実際に問い合わせた先として挙げたのは、「盲導犬訓練施設」で約半数に達している。次いで「福祉事務所等行政機関」が約2割、「盲導犬使用者」が約1割となっている。「視覚障害福祉施設」 については、使用者、元使用者の約5%が挙げているが、希望者では0、また「白杖歩行指導員」では、使用者の1.2%が挙げているが、元使用者、希望者では0であった。

F.全体のまとめと今後の課題

わが国における盲導犬育成事業の現状について、供給側としての盲導犬訓練施設および訓練士、需要側としての盲導犬使用者、希望者、一般視覚障害者の視点から現状の分析を行った。

その結果、盲導犬供給側の状況として、供給体制の強化が必要であることが明らかになってきた。現在の繁殖犬数および作出頭数では、新規の盲導犬希望者と代替えの盲導犬希望者に十分対応することは難しくなっていくことが予想される。また、盲導犬訓練士や専門知識を持つ職員の数の絶対的不足により、過剰な負担がかかる状況が続いている。一方で、重複障害や高齢化した対象者への対応など、指導員の業務をよ り専門化・高度化する必要性があろう。しかしながら、このような供給体制を改善・ 強化していくために必要な財源については、多くの盲導犬訓練施設で確保の見込みがたっていない。運営資金の多くは寄付金によるものだが、現状では長期的な見通しの持てる安定的な財源にはなっていない。

盲導犬供給体制を強化するには、それぞれの訓練施設が現在の事業運営の在り方を見直す必要があるだろう。その上で、盲導犬訓練施設・関連機関や団体が有機的に連携したり、事業を共同化・外部化するなど、統合的な盲導犬事業を展開する段階にきているものと考えられる。

一方、視覚障害者側の状況としては、盲導犬を実際に使用した経験のある人たちが盲導犬との生活には高い満足度を示しているにも関わらず、一般視覚障害者の盲導犬に対する関心や意識にはやや開きが見られた。こういったことから、実際には希望者が顕在化しにくくなっていることが予想される。こうした状況を改善するためには、まずより多くの視覚障害者が盲導犬に関して正しい知識を持ち、その上で、自分が日常生活を送る上で持つべきかどうか判断できる環境づくりを行うことが必要だろう。

  また、盲導犬使用者が使用する上での問題点として挙げた「入店拒否などで活動範 囲が制限される」「隣近所や周囲の人々に気を遣う」といった点を解消していくため に、一般社会の理解促進を図り、盲導犬使用環境を改善していくことも大切である。

こういったためには盲導犬育成施設は施設間だけでなく、一般マスコミや視覚障害者関連マスコミ、地域の行政機関、福祉関連機関などと連携し、盲導犬に関する適切な情報を適宜提供し情報発信を促進するための活動をしていくべきであろう。

このように、盲導犬育成事業のあり方を考えていく上で検討すべき課題は、供給体制の強化、盲導犬使用者が直面する使用上の問題点の解決、盲導犬の使用を躊躇する視覚障害者への啓発、一般の視覚障害者の盲導犬に対する関心の喚起、一般社会への視覚障害者や盲導犬に対する理解促進や盲導犬受け入れ体制の整備のあり方など多岐にわたる。

これらの課題に対し、「盲導犬との生活を希望する視覚障害者に対して、よりスムーズに質の高い盲導犬をより多く提供できる環境をつくる」という目標のもとに、まずは短期的に解決すべき課題と中・長期的に取り組む課題とに整理し、供給側・需要側の双方の視点から育成事業のあるべき姿について具体的に検討していくことが重要になっている。

盲導犬Q&A

小型犬は盲導犬にはならないのでしょうか?

Q: 盲導犬には、ラブラドール・リトリーバーやゴールデン・リトリーバーなどの大きな犬が使われていますが、もっと小さな犬を盲導犬にすることはないのでしょうか。
A: 盲導犬は、止まったり歩くスピードをゆるめたり、あるいは向きを変えたりという動作で盲導犬使用者に段差の始まり、曲がり角、障害物があることを伝えます。盲導犬使用者は犬の身体につけたハーネスからそういった犬の動きを知り、周囲の状況を判断しています。
  小さな犬にハーネスをつけたとすると、ハーネスのハンドル部分を長いものにしなければ盲導犬使用者の手に届きませんし、それでは小さくて犬の動きがわかりにくい上に、犬の動きが伝わりにくくなります。
  また、盲導犬が止まっているにも関わらず盲導犬使用者が誤って一歩踏み出したとしても、ラブラドール・リトリーバーやゴールデン・リトリーバーなど30キロ近い体重があれば、ぐっと踏みとどまることが出来ますが、小さな犬では人間の力に負けてしまって踏みとどまることが出来ないでしょう。
  そういったことから、小型犬を盲導犬にすることはありません。

盲導犬情報ボックス

交通バリアフリー法と盲導犬

「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動円滑化促進法(交通バリアフリー法)」が2000年5月10日に可決、5月17日に公布されました。
  このバリアフリー法の中に盲導犬に関する記述はありませんが、5月9日に開かれた参議院交通・情報通信委員会では、「政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に向け万全を期すべきである」として「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律案に対する付帯決議」を採択しました。全部で七項目あり、盲導犬については六項目目に次のように書かれています。
「六、福祉機器の研究開発、交通ボランティアの活用、バリアフリーマップ等の作成等により、高齢者、身体障害者等が安全かつ快適な社会生活を送れるよう、ハード面、ソフト面にわたる諸施策の充実に努めること。その際、オストメイト等の人工臓器保有者、その他内部障害者への配慮を図るとともに、盲導犬等を伴った身体障害者等への対応の充実に努めること。」

広告のページ

ペディグリーは、「全国盲導犬基金」をバックアップしています。

たくさんの視覚障害者の方々に、待ち望まれている盲導犬。しかし、盲導犬を育てるのは、いろいろな人のボランティアと多くの時間を必要とする大変な仕事です。しかも、皆様からの寄付によって支えられているため、財源がとても不安定なのです。現在、日本で盲導犬を必要とする人は約7800人。それに対して、盲導犬はわずか850頭。“ペディグリー”は、ひとりでも多くの視覚障害者に盲導犬を届けられるように、新聞やパンフレットで協力を呼びかけながら「全国盲導犬基金」をバックアップしています。

墨字版「盲導犬情報」には、2000年7月4日付け読売新聞に掲載された広告を縮小したものを併せて載せています。
  その広告とは、ほぼ全面が真っ黒な紙面の中央に白抜き文字で
「盲導犬と別れた時、もう一度失明したかと思った。」
とあります。その横に少し小さく、同じく白抜きの文字で次のような文章が続いています。
「ずっと一緒に生活してきた盲導犬が、事故などで突然死んでしまった時、何人かの視覚障害者はこう感じたのだと言います。それは、次の盲導犬が来るまでのどんなに短い間の事だったとしても、一瞬にして全てのものを失ってしまったように思えたのでしょう。見える時と同じように歩ける。好きな時に、好きな所へ行ける。そしてなによりも、存在そのものが心の支えになってくれる盲導犬。だからこそ、この言葉は
「視覚障害者が、盲導犬をどれだけ必要としているのか」ということを、私たちに教えてくれる言葉でもあるのです。」

編集後記

7月3日付けの中日新聞に掲載されていた「盲導犬も連れて行く視覚障害者にやさしいツアー」を企画しているトラベルデザイナーのおそどまさこさんが書かれた「盲導犬連れの海外ツアー最前線」という記事を読みました。その中に、現地の水を飲んで体調を崩した盲導犬のことが書いてありました。海外旅行に行ったら生水を飲んではいけないとよく聞きますが、これは人間だけでなく犬も同様だということを初めて知りました。またこの記事には、盲導犬としての仕事をしないペット化した盲導犬がいることについての問題提起と思われる内容もありました。

まだまだとは言うものの、盲導犬使用者に対する入店や利用の拒否が過去に比べて少なくなってきているのは、盲導犬使用者自身がマナーに気をつけ社会的な理解が得られるように努力してきた結果でしょう。使用者も周囲も気持ちよく社会生活を送るためには、必要な努力とも言えるでしょう。

しかし、こんなことを言うと多くの方から誤解を受けそうですが、いつまで盲導犬やその使用者は品行方正であり続けなければいけないのでしょうか。例えばマナーのなっていない携帯電話の使い方をしている人に対して周囲の人は時に文句を言ったりしますが、携帯電話を持っている他の人にまで同じような冷たい視線を投げかけることはないでしょう。盲導犬使用者も同様に考えられるようになったら(つまりマナーの悪い盲導犬使用者に引きずられない社会的な認識が得られるようになったら)なんだかまた違う可能性が生み出される社会になるように思うのですが、これは夢でしょうか。(久保)