盲導犬情報 第35号(2002年10月)


内容


身体障害者補助犬法とその施行規則について

身体障害者補助犬法が今月1日 から施行されました。この法律の中には、「厚生労 働省令で定める」といった記述がいくつかありましたが、身体障害者補助犬法施行前 日の9月30日、身体障害者補助犬法施行規則などの厚生労働省令が告示されました 。身体障害者補助犬としての表示の様式や所持しなければならない書類などが定めら れています。そこで、どのような内容の省令なのか、盲導犬に関する部分を中心にみ ていきたいと思います。なお、< >の中の文章は、説明のために盲導犬情報室で書 き加えたものです。

1.身体障害者補助犬法施行規則について

厚生労働省令第百二十七号
身体障害者補助犬法第五条、第十二条、第十五条第一項及び第二十条並びに附則第 三条の規定に基づき、身体障害者補助犬法施行規則を次のように定める。

<身体障害者補助犬法第五条には「身体障害者補助犬の訓練に関し必要な事項」につ いて、第十二条には「身体障害者補助犬の表示等」について、第十五条第一項には身 体障害者補助犬の「認定業務を行う者」としての法人の指定について、第二十条には 「指定法人及び身体障害者補助犬に関する認定に関し必要な事項」について、附則第 三条には「介助犬又は聴導犬」の表示に関する経過措置について書かれています。>

身体障害者補助犬法施行規則
(盲導犬の訓練基準)
第一条 身体障害者補助犬法(平成十四年法律第四十九号。以下「法」という。)第 三条第一項に規定する訓練のうち盲導犬に係るものは、次に掲げる訓練により行わな ければならない。この場合において、第一号に掲げる基礎訓練及び第二号に掲げる歩 行誘導訓練は、並行して行うことができる。

<「身体障害者補助犬法第三条第一項」とは、第二章「身体障害者補助犬の訓練」の 中で「訓練事業者の義務」が述べられている部分で「盲導犬訓練施設を経営する事業 を行う者、介助犬訓練事業を行う者及び聴導犬訓練事業を行う者は、身体障害者補助 犬としての適性を有する犬を選択するとともに、必要に応じ医療を提供する者、獣医 師等との連携を確保しつつ、これを使用しようとする各身体障害者に必要とされる補 助を適確に把握し、その身体障害者の状況に応じた訓練を行うことにより、良質な身 体障害者補助犬を育成しなければならない」としています。>

 一 基礎訓練(視覚障害により日常生活に著しい支障がある身体障害者であって盲導犬を使用使用とするもの(以下「盲導犬使用予定者」という。)がこれを同伴して不特定かつ多数の者が利用する施設等を利用する場合において他人に迷惑を及ぼさないことその他適切な行動をとることができるようにするための基本動作の訓練をいう。)

 二 歩行誘導訓練(盲導犬使用予定者の障害の状況及び必要とする補助に応じ、道路の通行及び横断、階段の昇降、不特定かつ多数の者が利用する施設等の利用を安全に行うための歩行誘導を確実に行うことができるようにするための訓練をいう。)

 三 合同訓練(盲導犬使用予定者が盲導犬とするための訓練を受けている犬(ハからホまで及び次項において「訓練犬」という。)に指示をして、基本動作及び歩行誘導を適切に行わせることができるようにするための次に掲げる訓練及び指導をいう。)

  1. 盲導犬使用予定者の障害の状況及び必要とする補助に応じた訓練
  2. 盲導犬使用予定者の屋内外の生活環境に応じた訓練
  3. 盲導犬使用予定者に対する訓練犬との意思疎通の手段の指導
  4. 盲導犬使用予定者に対する訓練犬の飼育管理、健康管理その他の管理に関する指導
  5. 盲導犬使用予定者が訓練犬を不特定かつ多数の者が利用する施設等に同伴する訓練

2 前項第二号に掲げる歩行誘導訓練については、盲導犬使用予定者の障害の状況及 び必要とする補助についての正しい評価に基づいて作成された訓練計画により行うと ともに、盲導犬使用予定者と訓練犬との適合性の評価をできる限り早期に行わなけれ ばならない。

3 盲導犬訓練事業者(身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第三 十三条に規定する盲導犬訓練施設を経営する事業を行う者をいう。以下同じ。)は、 前項に規定する訓練計画の作成及び適合性の評価その他第一項各号に掲げる訓練を行 うに当たって、医師、獣医師、社会福祉士その他の専門的な知識を有する者との連携 を確保するとともに、必要に応じ福祉サービスを提供する者その他の関係者(以下「 福祉サービスを提供する者等」という。)の協力を得なければならない。

4 盲導犬訓練事業者は、育成した盲導犬の健康状態並びに基本動作及び歩行誘導の 状況について、これを使用する身体障害者から定期的に報告を求め、その障害の状況 及び必要とする補助、屋内外の生活環境等の変化に対応するための補充訓練、追加訓 練その他の再訓練を継続的に行わなければならない。

(介助犬の訓練基準)
第二条 (略)

(聴導犬の訓練基準)
第三条 (略)

(身体障害者補助犬の表示)
第四条 法第十二条第一項の規定による表示は、様式第一号により身体障害者補助犬 の胴体に見やすいように行わなければならない。

<「身体障害者補助犬法第十二条第一項」とは、「身体障害者補助犬の表示等」が述 べられている部分で、国等が管理する施設や公共交通機関、不特定かつ多数の者が利 用する施設、事業所又は事務所などの「施設等の利用等を行う場合において身体障害 者補助犬を同伴し、又は使用する身体障害者は、厚生労働省令で定めるところにより 、その身体障害者補助犬に、その者のために訓練された身体障害者補助犬である旨を 明らかにするための表示をしなければならない」としています。>

(法第十二条第二項に規定する厚生労働省令で定める書類)
第五条 法第十二条第二項に規定する厚生労働省令で定める書類は、身体障害者補助 犬の衛生の確保のための健康管理に関する次に掲げる事項を記載した書類(以下、「 身体障害者補助犬健康管理記録」という。)及び第九条第五項の規定により交付され た身体障害者補助犬認定証その他身体障害者補助犬であることを証明する書類とする。

<「身体障害者補助犬法第十二条第二項」には、国等が管理する施設や公共交通機関 、不特定かつ多数の者が利用する施設、事業所又は事務所などの「施設等の利用等を 行う場合において身体障害者補助犬を同伴し、又は使用する身体障害者は、その身体 障害者補助犬が公衆衛生上の危害を生じさせるおそれがない旨を明らかにするため必 要な厚生労働省令で定める書類を所持し、関係者の請求があるときは、これを提示し なければならない」としています。  また、「第九条第五項の規定」には「指定法人は、認定を行ったときは、様式第一 号により作成した表示、身体障害者補助犬健康管理記録及び様式第三号により作成し た身体障害者補助犬認定証を当該申請に係る身体障害者に交付しなければならない」 とあります。盲導犬に関しては、当分の間、この第九条の規定は適用されませんが、 様式第一号により作成した表示については、この施行規則第四条で「身体障害者補助 犬の胴体に見やすいように行わなければならない」とされています。>

一 身体障害者補助犬の予防接種及び検診の実施に関する記録(予防接種及び検診を実施した診療機関等の名称及び獣医師の署名又は記名押印がなければならない。)

二 前号に掲げるもののほか、身体障害者補助犬の衛生の確保のための健康管理に関する記録

<第六条から第十四条までは、身体障害者補助犬法第五章に関した施行規則ですが、附則第二条で「盲導犬に関しては、当分の間、第五章の規定は、適用しない」としていますので、ここでは項目と簡単な内容だけ挙げていきます。>

(指定の申請手続き) 第六条 <身体障害者補助犬を育成する施設として指定を受けようとする者がしなけ ればならない申請について書かれています。>

(指定の基準) 第七条 <盲導犬を除く身体障害者補助犬育成施設を指定する基準について書かれて います。>

(認定の申請手続き)
第八条 <身体障害者補助犬として育成した犬の認定について必要な書類等について 書かれています。>

(認定の方法等)
第九条 <指定法人が認定を行う際の方法について書かれています。>

(報告の徴収等)
第十条 <指定法人は、身体障害者補助犬の健康状態や基本動作等について、使用者 に報告を求める義務があるとしています。>

(認定の取消し)
第十一条 <身体障害者補助犬の認定を取り消さなければならない事例について書か れています。>

(厚生労働大臣への報告等)
第十二条 <指定法人が厚生労働大臣に報告しなければならない報告書の内容等につ いて書かれています。>

(廃止等の届け出)
第十三条 <指定法人が認定業務を廃止・休止・再開した時に厚生労働大臣にしなけ ればならない届け出について書かれています。>

(身分を示す証明書の様式)
第十四条 <指定法人に対し、立入調査又は質問をする職員の身分証明書の様式を規 定しています。>

附則
 (施行期日)
第一条 この省令は、法の施行の日(平成十四年十月一日)から施行する。ただし、 第二条及び第三条の規定は、平成十五年四月一日から施行する。 <省令の第二条、第三条は、介助犬・聴導犬の訓練基準について書かれています。>

(認定に関する経過措置)
第二条 <介助犬・聴導犬の訓練に関して、平成十五年三月三十一日までの間の経過 措置について書かれています。>

(認定を受けていない犬を使用する場合の表示に関する経過措置)
第三条 <認定を受けていない介助犬・聴導犬を使用する場合の表示の様式や必要な 届出、証明書について書かれています。>

2.身体障害者補助犬法施行規則で定められた表示の様式と所持しなければならない書類について

(1)身体障害者補助犬の表示

施行規則第四条では、身体障害者補助犬に、「その者のために訓練された身体障害 者補助犬である旨を明らかにするための表示をしなければならない」としています。  表示の大きさは「縦55ミリメートル以上、横90ミリメートル以上」。「用紙に は厚紙を用い、表面はビニールカバー等をすることにより容易に破損しないもの」で なければいけません。

用紙の上半分よりやや小さい位の大きさで「盲導犬」と書かれ、その下の部分には、

  1. 認定番号
  2. 認定年月日
  3. 犬種
  4. 認定を行った指定法人の名称(盲導犬の場合は、国家公安委員会が指定した盲導犬育成施設の名称)
  5. 指定法人の住所及び連絡先

を明記し、身体障害者補助犬の胴体に見やすいようにつけなければなりません。

(2)所持しなければならない書類

施行規則第五条では、「身体障害者補助犬健康管理記録」を所持し、関係者の請求 があるときは、これを提示しなければなりません。厚生労働省が作成したものは、う す緑色の表紙にビニールカバーがついた縦13センチ、横9センチのもので、48ペ ージあります。
 表紙には、「身体障害者補助犬健康管理手帳(身体障害者補助犬法第12条第2項 で定める書類)」とあり、「補助犬使用開始年月日」を書き込むようになっています。
 1ページ目には、以下の事項を書き込むようになっています。

  1. 犬の名前・性別
  2. 犬種
  3. 犬の生年月日
  4. 狂犬病予防法に基づく登録番号
  5. 毛色・毛質
  6. 使用者の名前
  7. マイクロチップ番号(使用の場合のみ)

2ページ目は、「獣医師による健康管理記録(予防接種、検診等の記録)」とあり 、認定時直近の予防接種記録と獣医師名(押印)、診療機関名、住所を記載する欄が 2回分あります。

3ページから19ページも、「獣医師による健康管理記録(予防接種、検診等の記 録)」で、年月日と獣医師名(押印)、診療機関名、住所を記載する欄が1ページに 2回分、合計34回分記載できます。

20ページから29ページは、「使用者による健康管理記録(異常所見等、特記事 項のみ)」とあり、年月日と特記事項を1ページ12行、10ページあります。

30ページから39ページは、「体重測定記録」で、年月日と体重を1ページに2 4回分、合計240回分記載できます。

40、41ページには、「身体障害者補助犬健康チェック項目」として、「ご自身 でチェックできない項目については、どなたかにお願いしてください。」として27 項目の質問があり、最後に「異常を見つけたり、何か心配なことがある場合には獣医 師に相談しましょう。」とあります。その項目をあげていくと、

42,43ページには「使用者による被毛等の管理」として「身体障害者補助犬の 使用者は、自らが飼養および利用する犬の被毛等について、適切な管理を行う必要が あります。使用者により実施される被毛等の管理の実施項目及び実施頻度は、以下の とおりです。」として、

1 整毛
 当該犬の被毛の性状、長さ等にもとづいて、適切なブラシおよび櫛等を選択し、それによる整毛を実施します。
 実施頻度は、基本的には1日ないしは数日に1回とします。ただし、各々の犬の状態にもとづいて、とくに換毛期等には適宜頻度を増やすようにします。

2 皮膚および被毛の洗浄
 当該犬の皮膚ならびに被毛の性状等にもとづいて、適切なシャンプー製品とリンス製品を選択し、それによる皮膚および被毛の洗浄を実施します。
 実施頻度は、数週間に1回、ないしは1〜2か月に1回程度とします。

3 剪毛
 当該犬の被毛の性状、長さ等にもとづいて、適切なはさみ等を選択し、それによる剪毛を実施します。
 実施頻度は、基本的には1年に1〜2回とします。ただし、各々の犬の状態にもとづいて、必要に応じて適宜頻度を増すようにします。

4 爪切り
 爪が過度に伸張した場合には、爪切りを行います。
 実施の時期は、各々の犬の状態によりますが、一般的には起立時に四肢の爪が床面に接触しはじめたときを目安とします。」

44ページから47ページには、「身体障害者補助犬法(抄)」として、同法の第 7条から第13条が記載されています。ちなみに同法第7条から第11条までは、施 設等における身体障害者補助犬の同伴を拒んではならない、または拒まないよう努め なければならない、とした条文で、第12、13条は、身体障害者補助犬ユーザーの 義務(身体障害者補助犬であることの表示、身体障害者補助犬健康管理手帳の所持、 身体障害者補助犬の行動管理)について書かれています。

3.既存の法律や省令の改正点(身体障害者補助犬の育成及びこれを使用する身体障 害者の施設等の利用の円滑化のための障害者基本法等の一部を改正する法律の内容等)

(1)障害者基本法

a. 改正点
第十条 「福祉用具の給付」を「福祉用具及び障害者の補助を行う犬の給付又は貸与」に改め、「福祉用具」を「福祉用具等」に改める。
第十九条 「福祉用具」を「福祉用具等」に改める。
第二十二条 「設備の整備」とあるところを「及び施設の整備、当該公共的施設を利用する障害者の補助を行う犬の同伴」に改める。

b. 改正後の条文
(施設への入所、在宅障害者への支援等)
第十条の二
3 国及び地方公共団体は、障害者の障害を補うために必要な補装具その他の福祉用具及び障害者の補助を行う犬の給付又は貸与を行うよう必要な施策を講じなければならない。
4 国及び地方公共団体は、前三項に規定する指導、訓練及び福祉用具等の研究及び開発を促進しなければならない。

(専門的技術職員等の確保)
 第十九条
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する者その他障害者の福祉に関する業務に従事する者及び第十条の二第三項に規定する福祉用具等に関する専門的技術者の養成及び訓練に努めなければならない。

(公共的施設の利用)
第二十二条の二 国及び地方公共団体は、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設を障害者が円滑に利用できるようにするため、当該公共的施設の構造及び施設の整備、当該公共的施設を利用する障害者の補助を行う犬の同伴等について障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。

2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設の構造及び設備の整備、当該公共的施設を利用する障害者の補助を行う犬の同伴等について障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。

3 国及び地方公共団体は、事業者が設置する交通施設その他の公共的施設の構造及び設備の整備、当該公共的施設を利用する障害者の補助を行う犬の同伴等について障害者の利用の便宜を図るための適切な配慮が行われるよう必要な施策を講じなければならない。

(2)社会福祉法

a. 改正点
第二条 「又は手話通訳事業」を「手話通訳事業又は介助犬訓練事業若しくは聴導犬訓練事業」に改める。

b.改正後の条文
(定義)
第二条
3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
一〜四 (略)
五 身体障害者福祉法に規定する身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業、身体障害者相談支援事業、身体障害者生活訓練等事業、手話通訳事業又は介助犬訓練事業若しくは聴導犬訓練事業、同法に規定する身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設又は視聴覚障害者情報提供施設を経営する事業及び身体障害者の厚生相談に応ずる事業

(3)身体障害者福祉法

a. 改正点
第四条 介助犬訓練事業及び聴導犬訓練事業の定義する項目を加える。
第二十一条の三にある「盲導犬」を「盲導犬等」と改める。また、同条中「身体障害者」の下に「肢体の不自由な身体障害者又は聴覚障害のある身体障害者」を加え、「における厚生労働省令で定める」を「において」に改め、「盲導犬」の下に「(身体障害者補助犬法第二条第二項に規定する盲導犬をいう。以下同じ。)、介助犬訓練事業を行う者により訓練を受けた介助犬又は聴導犬訓練事業を行う者により訓練を受けた聴導犬」を加える。
第二十一条の四にある「支援する事業」の下に「身体障害者の盲導犬、介助犬又は聴導犬の使用を支援する事業」を加える。
第二十六条 「又は身体障害者生活訓練等事業」を「身体障害者生活訓練等事業又は介助犬訓練若しくは聴導犬訓練事業」に改める。

b. 改正後の条文
(居宅事業)
第四条の二 この法律において、「介助犬訓練事業」とは、介助犬(身体障害者補助犬法第2項第三項に規定する介助犬をいう。以下同じ。)の訓練を行うとともに、肢体の不自由な身体障害者に対し、介助犬の利用に必要な訓練を行う事業をいい、「聴導犬訓練事業」とは、聴導犬(同条第四項に規定する聴導犬をいう。以下同じ。)の訓練を行うとともに、聴覚障害のある身体障害者に対し、聴導犬の利用に必要な訓練を行う事業をいう。
(盲導犬等の貸与)
第二十一条の三 都道府県は、視覚障害のある身体障害者、肢体の不自由な身体障害者又は聴覚障害のある身体障害者から申請があったときは、その福祉を図るため、必要に応じ、盲導犬訓練施設において訓練を受けた盲導犬(身体障害者補助犬法第二条第二項に規定する盲導犬をいう。以下同じ。)、介助犬訓練事業を行う者により訓練を受けた介助犬又は聴導犬訓練事業を行う者により訓練を受けた聴導犬を貸与し、又は当該都道府県以外の者にこれを貸与することを委託することができる。

(社会参加を促進する事業の実施)
第二十一条の四 地方公共団体は、視覚障害のある身体障害者及び聴覚障害のある身体障害者の意思疎通を支援する事業、身体障害者の盲導犬、介助犬又は聴導犬の使用を支援する事業、身体障害者のスポーツ活動への参加を促進する事業その他の身体障害者の社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進する事業を実施するよう努めなければならない。

(事業の開始等)
 第二十六条 国及び都道府県以外の者は、厚生労働省令の定めるところにより、あらかじめ、厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て、身体障害者居宅生活支援事業、身体障害者相談支援事業、身体障害者生活訓練等事業又介助犬訓練事業若しくは聴導犬訓練事業(以下身体障害者居宅生活支援事業等」という。)を行うことができる。

(4)身体障害者福祉法施行規則

a. 改正点
第十五条から第十七条までを削除する。削除された第十五条には、「身体障害者福祉法第二十一条の三に規定する厚生労働省令で定める訓練」として盲導犬訓練の内容が定められていた。

4.身体障害者補助犬法第七条第一項の公共法人を定める政令

身体障害者補助犬法第七条では、「国等(国及び地方公共団体並びに独立行政法人、特殊法人、その他の政令で定める公共法人)は、その管理する施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない。」としています。その公共法人の範囲としては、独立行政法人(全60法人)、特殊法人(全77法人)、認可法人(全86法人)、その他10団体が挙げられています。
 独立行政法人には、国立公文書館、国立特殊教育総合研究所、大学入試センター、国立オリンピック記念青少年総合センター、国立女性教育会館、国立青年の家、国立少年自然の家、国立科学博物館、国立美術館、国立博物館、文化財研究所、教員研修センター、水産大学校、海技大学校、航空大学校、国立環境研究所などがあります。
 特殊法人としては、簡易保険福祉事業団、国際環境振興会、社会福祉・医療事業団、身体障害者福祉協会、住宅金融公庫、放送大学学園、新東京国際空港公団、関西国際空港株式会社、日本中央競馬会、地方競馬全国協会など。
 認可法人には、空港周辺整備機構、日本万国博覧会記念協会、日本障害者雇用促進協会、日本商工会議所、日本銀行など。
 その他の法人としては、地方公共団体、地方住宅供給公社などです。


台湾の盲導犬事情・・・・・筑波大学大学院 石上智美

筑波大学大学院人間総合科学研究科 石上智美(いしがみ ともみ)

「盲導犬情報第22号」(1999年10月)のなかで、「アジアの盲導犬訓練施設」が紹介されていました。現在、アジア地域で盲導犬育成事業を行っているのは、日本の他に韓国と台湾だけです。そのなかで最も盲導犬の育成と使用の歴史が浅いのは台湾であり、第1号の盲導犬が誕生したのは1996年のことです。ですから、「盲導犬=とても珍しい存在」であると言えます。そこで、台湾の盲導犬をとりまく環境や盲導犬使用者の現状、盲導犬使用者が日々直面している問題などを明らかにするために、2001年6月と2002年7月の2回にかけて、台北市内のバリアフリー調査と台湾で1番目の盲導犬使用者に対する聞き取り調査を行いました。今回は、これらの調査から明らかになった「台湾の盲導犬事情」をみなさんにご紹介したいと思います。

1.台湾の盲導犬育成事業について

台湾の盲導犬訓練施設は「恵光(ホェイクァン)盲導犬センター」と言います。盲導犬訓練施設は台湾国内にひとつだけです。この施設は中途失明者のリハビリセンターである「私立台湾盲人重建院(じゅうけんいん)(以下、重建院と略します)」の敷地内にあります。住所は、台北市の隣に位置する新荘(シンチュアン)市というところです。
 1991年末、重建院において盲導犬の育成計画が開始され、1992年に犬舎が完成しました。
 そして1993年、オーストラリアから繁殖犬を購入し、同時に訓練士にも来てもらい、重建院の3名の職員が指導を受けたということです。翌年9頭が誕生し、それぞれパピーウォーカーのもとに預けられました。その後、約1才になると重建院に戻され、「社会福祉法人日本ライトハウス」の職員により盲導犬の候補となる犬が選ばれました。その際、台湾の盲導犬育成事業の成功のためにも、9頭の中から最も優れた犬を選ばなければならなかったということです。そして犬の性格や適性テストの結果などから、台湾初の盲導犬候補として選ばれたのは「アギー」という名の犬でした(他の8頭は、それぞれもとのパピーウォーカーの家庭に引き取られたとのことです)。そして1996年7月、後ほど紹介する台湾で1番目の盲導犬使用者となった柯明期(カー・ミン・チー)さん(男性)とアギーは、日本ライトハウスにて約1ヶ月間の共同訓練を受けて卒業し、台湾に帰国しました。こうして台湾での第1号の盲導犬が誕生したのです。
 ただし2002年7月の時点においても、「恵光盲導犬センター」で盲導犬の繁殖と育成は行われていません。また、盲導犬訓練士や歩行指導員も養成されていないのが現状です。

2.台湾の盲導犬使用者の状況

1996年に柯明期さんが1番目の盲導犬使用者となり、1999年にはニュージーランドで共同訓練を受けた2番目の盲導犬使用者が誕生しました。そして2002年の5月と6月に、アメリカで共同訓練を受けていた5名の方が帰国し、2002年7月の時点で7名の盲導犬使用者が誕生しています。
 ここでは、聞き取り調査に協力してくださった柯明期さんについてご紹介します。柯さんは20代で失明し、重建院にてリハビリ訓練を受けたのち、中途失明者のカウンセラーとして重建院で働いています。1991年末、重建院において盲導犬の育成計画が開始された際、院長からの要望により台湾初の盲導犬を持つことを決めたということです。また2001年には、中途失明者の職業支援について勉強するために国立台湾師範大学特殊教育研究所に入学し、現在重建院の職員と大学院生を掛け持ちしているとのことです。
 柯さんは台湾での盲導犬使用の先駆者であるため、他の盲導犬使用者から頻繁に相談を受けるそうです。そのなかでも、「排泄をさせる場所について」、「ドッグフードの種類について」、また「ホテルやレストランなど、どこならば盲導犬と一緒に入れるか」という相談が多いとのことです。
 まだ7名の盲導犬使用者しかいない台湾では、使用者の会はもちろん、盲導犬や使用者を支援する会もできていません。そこで今のところは、柯さんのような「先輩ユーザー」が唯一の頼りとなっているようです。

3.台湾の盲導犬をとりまく環境について

1)歩行環境
 台北市内のバリアフリー調査を行ったところ、歩行環境の悪さが浮き彫りになりました。
 まず、台北市内の歩道には点字ブロックがほとんど敷かれていません。また点字ブロックが敷かれている歩道でも、その上に自転車やバイクが置いてあったり、付近に屋台などが出されている箇所や、点字ブロックのメンテナンスが行き届いていない箇所がみられました。
 台北市内では、一般の人はバイクを使用していることが多く、まるで日本の自転車のように歩道上にバイクを駐輪している箇所を数多くみかけました。幅の狭い歩道で点字ブロックの上にバイクが駐輪してあると、盲導犬使用者は盲導犬とともに車道に出なければならないので非常に危険です。
さらに、首輪をしていない野良犬と思われる犬が、市内をうろついている様子があちこちでみられました。柯さんによると、今までに何度か盲導犬が野良犬に襲われたことがあるとのことでした。

2)社会における盲導犬の受け入れ
 柯さんによると、1996年の使用を始めた頃には、盲導犬とともに電車・バス・タクシーなどの交通機関、宿泊施設、飲食店などを利用することが全くできなかったということです。しかし政府から「許可証」を発行してもらい、その許可証を使用している現在では、主な交通機関は利用できるようになっているそうです。ただしタクシーについては、利用を断る運転手もいるとのことです。さらに交通機関とは違い、飲食店や宿泊施設では許可証を見せても利用を拒否されることがほとんどであるといいます。
 柯さんは盲導犬の使用をはじめてから現在に至るまで、テレビ・新聞・雑誌などの取材を積極的に受け、そのたびに社会への受け入れをアピールしてきたということです。その成果によって、徐々に改善の方向に向かってはいるようですが、社会のなかで安心して盲導犬を使用できる状況とは言いがたいでしょう。
 また街中を歩くと、「きれいな犬」、「大きい」、「こわい」などという声が一般市民から聞かれるそうです。使用を始めて1年くらいは、断りもなく犬にさわったり餌をあげたりする人がいたようですが、現在では少なくなったということでした。

4.台湾で盲導犬を普及させるためには

柯さんに「今後台湾で盲導犬を普及させるための条件」について尋ねたところ、次の3点が挙げられました。

  1. (1)法律を制定すること
  2. (2)道路上の障害物を減らすこと
  3. (3)野良犬を減らすこと

今後増えていくと思われる盲導犬使用者の社会参加を保障するには、やはり個人による啓発活動だけでは限界があります。ちなみに、韓国では1998年に改正された「韓国障害者福祉法」において、盲導犬使用者が盲導犬とともに社会のなかで活動できる権利(アクセス権)が保障されています。また日本では、2002年5月に「身体障害者補助犬法」が成立し、まだ十分な内容とは言えませんが、ようやく法律上でアクセス権が保障されることになりました。台湾においても、このような法律の制定が現在早急に求められていると言えるでしょう。
 また、台北市内のバリアフリー調査から明らかになったように、2)の道路上の障害物の問題や(3)の野良犬の問題も、盲導犬の普及を妨げる要因であると言えます。道路上の障害物については、視覚障害者団体が政府に改善を要求しているということです。また野良犬については、現在政府が管理を始めているとのことでした。

5.まとめ

今回の台北市内のバリアフリー調査と盲導犬使用者に対する聞き取り調査によって明らかになったことは、台湾においては、盲導犬使用者が安全にかつ快適に盲導犬を使用することができる環境が十分には整っていないということでした。しかし、柯さんが盲導犬の頭をなでているときのリラックスした表情や、盲導犬が生活を共にするかけがいのないパートナーとなっていることから考えると、今後台湾において盲導犬を普及することで、視覚障害者のQOLの向上につながる可能性が高いと思われました。
 盲導犬の普及のためには、駐輪問題などの歩行環境の改善・整備だけではなく、盲導犬に関する社会的な認知を高めていかなければなりません。そのために、一般市民が盲導犬やその使用者に関してどのような認識を持っているのかを把握する必要があります。すでに台北市内の大学生に対する認識調査が終了しているのですが、「街中で盲導犬と出会った際に一般市民はどのような反応を示すのか、またどのような態度をとるのか」などの調査も必要です。また次の機会に、調査結果をご報告したいと思います。

<著者から一言>

清水和行先生をはじめとして、多くの盲導犬使用者の方々や盲導犬協会の方々にお世話になっておりましたが、「盲導犬情報」への投稿は今回が初めてです。これから、誌面をお借りして研究結果をお知らせしていきたいと思います。


盲導犬情報ボックス

身体障害者補助犬ユーザーの数

日本には、2002年3月31日現在、915人の盲導犬ユーザーがいます。盲導犬実働数は895頭です。また、盲導犬を育成する団体は9法人です。では、盲導犬以外の身体障害者補助犬、つまり介助犬や聴導犬のユーザーは、日本にどれぐらいいるのでしょうか。
  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の身体障害者補助犬担当者会議資料によると、2002年3月1日現在、介助犬実働数は26頭。介助犬を育成する団体は16団体あります。育成等を行う団体を所在地別にみると、東京都6団体、京都府3団体、山口県2団体、岩手県・山形県・茨城県・山梨県・静岡県に各1団体となっています。
  育成した犬が介助犬として認定されるためには、審査が必要です。書類審査の他に、犬の動作を実地検証することになっています。犬の基本動作としては、

  1. 呼んだら来る(合図を含む)
  2. 座る、伏せる、待つ、止まる
  3. 2の状態について、介助の意志表示があるまで維持できる
  4. 強く引っ張ることなく落ち着いて歩く
  5. 指示された時・場所で排泄できる
  6. 音響、植物や他の動物など様々な刺激や関心の対象を無視できる
  7. 使用者に注目して集中することができる<
  8. 指示された場所(部屋、車等)に入ることができる

といった点が上げられています。また、介助動作についても、物の拾い上げ及び運搬、着脱衣の補助、体位の変更、起立及び歩行の際の指示、扉の開閉、スイッチの操作、緊急の場合の救助の要請、その他の使用者のニーズに応じて必要とされるものについて確認が行われます。
  これら基本動作等の検証等は、介助犬の訓練者(その犬の訓練者は除く)及び身体障害者リハビリテーション施設等の医師、獣医師、作業療法士、理学療法士、社会福祉士等により編成された審査委員会で行うこととなっています。

一方、聴導犬実働数は、2002年1月1日現在19頭。育成団体は7団体あり、東京都・神奈川県・長野県・愛知県・徳島県・長崎県・鹿児島県に各1団体となっています。
育成した犬が聴導犬として認定されるためには、介助犬と同様、書類審査の他に、犬の基本動作が検証されます。また聴導動作としては、ブザー音、電話の呼び出し音、使用者を呼ぶ声、危険を意味する音等を聞き分け、使用者への必要な情報の伝達及び音源への誘導、その他の使用者のニーズに応じて必要とされるものについて、確認が行われます。
  これらの検証等は、聴導犬の訓練者(その犬の訓練者は除く)及び医師、獣医師、社会福祉士、言語聴覚士、心理職、身体障害者相談員等により編成された審査委員会でおこなうことになっています。


編集後記

身体障害者補助犬法が施行されて1ヶ月がたちました。厚生労働省ではポスターやチラシを作成して、この法律やその内容について啓発活動に取り組んでいます。しかし、省令の内容が官報に載ったのは施行の前日であり、当の身体障害者補助犬ユーザーには十分認知されないまま10月1日を迎えた感があります。ある盲導犬ユーザーは、毎日通勤で利用している電車に乗車しようとした際、省令で定められた通りの表示がしていない、との理由で駅員さんに拒否されそうになったとか。いままで問題なく毎日利用していた公共交通機関においてでも、新しい法律の方が優先してしまうのですね。(久保)