盲導犬情報 第36号(2003年1月)


内容


都道府県・指定都市が実施する盲導犬育成事業について

盲導犬情報室では、47都道府県と13指定都市(2003年4月に政令指定都市となるさいたま市を含む)で、盲導犬育成事業がどのように取り組まれているのか、各身体障害者福祉主管課に問い合わせてみました。同様の調査を1996年に行っていますが、この6年間でどのような変化があったのでしょうか。比較もしながら現在の状況をご報告します。

1.盲導犬育成事業実施の有無について

盲導犬育成事業の実施状況は、1府1県1指定都市が「未実施」と答えており、実施率は都道府県で95.7%、指定都市で92.3%、全体で95%となっています。1996年の実施率は都道府県で91.5%、指定都市で91.7%、全体で91.5%でしたから、盲導犬育成事業を実施している自治体は6年前に比べると増え、ほとんどの自治体で実施されています。
  「実施していない」と回答があったのは大阪府、福井県、広島市。そのうち福井県からは、「民間財団法人が1982年より貸与事業を実施しているため」との回答がありました。また、「実施している」と回答があった自治体でも、すべての自治体が毎年実施しているわけではなく、希望者が出たときにのみ実施しているため未実施の年度もある、というところもありました。

2.実施の形態について

盲導犬育成事業を実施するにあたっては、都道府県・指定都市と特定の団体や視覚障碍者が希望する盲導犬育成施設が委託契約を結ぶ方式と、運営費あるいは育成費について盲導犬育成施設や特定の団体に補助金を交付する方式があります。
  委託契約方式をとっているのは、33都県5指定都市。補助金交付方式は、13道府県6指定都市。このうち福岡県は委託契約方式と補助金交付方式と両方を実施しています。

2-1.委託契約方式

委託を行っている33都県5指定都市のうち、委託先として盲導犬育成施設以外の団体をあげているのは6県。三重県は三重県視覚障害者協会、広島県は広島県視覚障害者福祉協会、鳥取県は鳥取県視覚障害者福祉協会、島根県は島根ライトハウス、高知県は高知県盲導犬協会、徳島県は徳島の盲導犬を育てる会に委託し、盲導犬育成事業を実施しています(高知県盲導犬協会は盲導犬訓練施設をもたない法人です)。
  盲導犬育成施設を委託先にあげた27都県5指定都市のうち、秋田県は北海道盲導犬協会、栃木県は栃木盲導犬センター、東京都・石川県・静岡県・鹿児島県・千葉市はアイメイト協会、香川県・愛媛県は日本ライトハウス、福岡県は福岡盲導犬協会に委託先を限定しています。一方複数の施設を委託先に上げたのは、5県3指定都市。宮崎県はアイメイト協会・関西盲導犬協会・福岡盲導犬協会、山梨県・横浜市・川崎市はアイメイト協会・日本盲導犬協会、兵庫県・神戸市が日本ライトハウス・兵庫県盲導犬協会、山口県は日本ライトハウス・福岡盲導犬協会、茨城県は日本盲導犬協会他を委託先にあげています。
  また、視覚障碍者が希望する盲導犬育成施設に委託すると回答があったのは、青森県・岩手県・宮城県・山形県・福島県・群馬県・埼玉県・千葉県・神奈川県・新潟県・長野県・岡山県・沖縄県・仙台市の13県1指定都市。6年前には、「視覚障害者が希望する施設に委託する」と回答したのは3県1指定都市のみでしたから、視覚障碍者の希望を尊重するという考え方を持つ自治体が、この数年間で3倍以上に増えたことになります。

2-2.補助金交付方式

1道1府11県6指定都市では、盲導犬育成施設または視覚障害者団体等に補助金を交付して盲導犬育成事業を実施しています。委託契約とは異なり、特定の盲導犬育成施設に補助金を交付している自治体がほとんどで、北海道盲導犬協会には北海道・札幌市、中部盲導犬協会には愛知県・名古屋市、関西盲導犬協会には京都府・京都市、日本ライトハウスには奈良県・和歌山県。福岡盲導犬協会には、福岡県・福岡市のほか佐賀県・長崎県・北九州市が補助金を交付しています。複数の盲導犬育成施設をあげているのは大阪市で日本ライトハウス・兵庫県盲導犬協会。視覚障害者が希望する施設と回答しているのは、滋賀県・熊本県の2県でした。
  また、岐阜県は岐阜県視覚障害者福祉協会、富山県は富山県視覚障害者協会、大分県は大分盲導犬協会に補助金を交付しています(大分盲導犬協会は訓練施設をもたない法人です)。

3.実施内容について

3-1.委託・育成補助頭数

1年間に委託されている盲導犬育成頭数の総数は79頭。1996年と比べると、17頭増えています。最も多いのは東京都の8頭、静岡県の7頭(どちらもアイメイト協会に委託)。次いで希望施設に委託するとした埼玉県の6頭となっています。年間4頭と回答したのは栃木県・群馬県、3頭は茨城県・新潟県・石川県・兵庫県・鹿児島県、2頭は千葉県・神奈川県・山梨県・宮崎県・仙台市・横浜市・神戸市、1〜2頭は山口県・沖縄県、1頭は岩手県・宮城県・秋田県・山形県・福島県・長野県・三重県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県・徳島県・香川県・愛媛県・高知県・福岡県・千葉市・川崎市。青森県は未定とのことでした。
  一方補助金を交付している自治体のうち、盲導犬育成費に対して補助金を交付している1道1府10県6指定都市のうち、何頭分かという記入のなかった1道1指定都市を除くと、30頭分の育成費が補助されています。1996年と比べると12頭分減っています。最も多いのは愛知県の5頭、次いで札幌市の4頭、富山県・奈良県・大分県・名古屋市・大阪市・京都市・福岡市が2頭、岐阜県・滋賀県・京都府・和歌山県・佐賀県・長崎県・熊本県が1頭となっています。

3-2.金額からみた実施内容

どれほどの金額が盲導犬育成事業に使われているかについてですが、委託契約の場合の単価は平均すると1,833,253円(1996年には1,549,706円)。最高金額は210万円(1996年は約190万円)。最少金額は80万円(1996年も同額)でした。
  補助金を交付している場合は、運営費補助の名目で補助金を交付しているのが2県3指定都市。平均121万円(1996年は約222万円)。最高金額は154万円(1996年は776万円)。最少金額は100万円(1996年は約89万円)。また、育成費補助の名目で補助金を交付しているのは1道1府10県6指定都市で、1頭分の金額としては平均1,263,129円(1996年は約105万円)。最高金額は1,985,000円(1996年は約175万円)。最少金額は405,200円(1996年は約32万円)でした。ただし、最少金額の自治体は、育成費のほかに運営費も補助しています。

3-3.視覚障碍者の負担額について

ほとんどの自治体が盲導犬育成費に関する視覚障碍者の負担額を「無料」と答えていますが、3県1指定都市のみが「所得に応じて決定する」と答えています。

3-4.その他の助成について

その他実施されている盲導犬に関する助成施策について尋ねたところ、「狂犬病予防法に基づく飼犬登録手数料、予防注射料等の減免を行っている」と回答のあったのは、神奈川県・山口県・宮崎県・さいたま市・名古屋市・神戸市の3県3指定都市。それ以外の「盲導犬の診療代・薬代の助成」を行っているのは横浜市・神戸市。「えさ代の助成」は仙台市・名古屋市・神戸市。「訓練にかかる旅費など、取得にかかる費用の助成」は北海道・鳥取県。「犬舎など飼育用品の購入費用の助成」は名古屋市・神戸市。また大分県は「再訓練に係る訓練士派遣旅費」を助成すると回答しています。
  ただし、これらの費用の減免・助成に関しては給付条件があり、給付対象者には一定の制限があるようです。

4.身体障害者補助犬法の施行に関する施策

身体障害者補助犬法第二十三条では、国及び地方公共団体は「身体障害者補助犬が果たす役割の重要性について国民の理解を深めるよう努めなければならない」としていますが、どのような施策がとられているのか、最後に聞いてみました。
  最も多かったのは、広報誌やグラフ誌、地元新聞紙などでの広報で、26自治体。その他、パンフレットやポスター、ステッカーの作成・配布をしたのが14自治体。説明会の開催や宿泊施設・飲食関係施設の会議や研修会での説明を行ったのが10自治体。その他、ホームページの掲載やイベントでのピーアール、テレビ・ラジオ放送での広報など、何らかの施策を講じたと回答のあったのは、1道2府30県8指定都市で68.3%でした。

都道府県・指定都市別 盲導犬育成事業実施状況 一覧
  (都道府県名、実施の形態、委託契約・補助金交付先の順に記載)

北海道 補助金交付 北海道盲導犬協会
札幌市 補助金交付 北海道盲導犬協会
青森県 委託契約 希望施設
岩手県 委託契約 希望施設
宮城県 委託契約 希望施設
仙台市 委託契約 希望施設
秋田県 委託契約 北海道盲導犬協会
山形県 委託契約 希望施設
福島県 委託契約 希望施設
茨城県 委託契約 日本盲導犬協会/他
栃木県 委託契約 栃木盲導犬センター
群馬県 委託契約 希望施設
埼玉県 委託契約 希望施設
さいたま市 実施予定  
千葉県 委託契約 希望施設
千葉市 委託契約 アイメイト協会
東京都 委託契約 アイメイト協会
神奈川県 委託契約 希望施設
横浜市 委託契約 アイメイト協会/日本盲導犬協会
川崎市 委託契約 アイメイト協会/日本盲導犬協会
新潟県 委託契約 希望施設
富山県 補助金交付 富山県視覚障害者協会
石川県 委託契約 アイメイト協会
福井県 未実施  
山梨県 委託契約 アイメイト協会/日本盲導犬協会
長野県 委託契約 希望施設
静岡県 委託契約 アイメイト協会
愛知県 補助金交付 中部盲導犬協会
名古屋市 補助金交付 中部盲導犬協会
岐阜県 補助金交付 岐阜県視覚障害者福祉協会
三重県 委託契約 三重県視覚障害者協会
滋賀県 補助金交付 希望施設
京都府 補助金交付 関西盲導犬協会
京都市 補助金交付 関西盲導犬協会
大阪府 未実施  
大阪市 補助金交付 日本ライトハウス/兵庫県盲導犬協会
兵庫県 委託契約 日本ライトハウス/兵庫県盲導犬協会
神戸市 委託契約 日本ライトハウス/兵庫県盲導犬協会
奈良県 補助金交付 日本ライトハウス
和歌山県 補助金交付 日本ライトハウス
鳥取県 委託契約 鳥取県視覚障害者福祉協会
島根県 委託契約 島根ライトハウス
岡山県 委託契約 希望施設
広島県 委託契約 広島県視覚障害者福祉協会
広島市 未実施  
山口県 委託契約 日本ライトハウス/福岡盲導犬協会
徳島県 委託契約 徳島の盲導犬を育てる会
香川県 委託契約 日本ライトハウス
愛媛県 委託契約 日本ライトハウス
高知県 委託契約 高知県盲導犬協会
福岡県 委託/補助金 福岡盲導犬協会
福岡市 補助金交付 福岡盲導犬協会
北九州市 補助金交付 福岡盲導犬協会
佐賀県 補助金交付 福岡盲導犬協会
長崎県 補助金交付 福岡盲導犬協会
熊本県 補助金交付 希望施設
大分県 補助金交付 大分盲導犬協会
宮崎県 委託契約 アイメイト協会/関西盲導犬協会/福岡盲導犬協会
鹿児島県 委託契約 アイメイト協会
沖縄県 委託契約 希望施設

盲導犬に関する一般市民の認識の変化

−1992年と2001年の認識調査の比較−

筑波大学人間総合科学研究科 石上智美(イシガミ トモミ)
1.はじめに

わが国で初めて、盲導犬に関する一般市民(幼稚園児から成人)の認識調査が行われたのは1992年のことでした(文献1)。この調査結果から、例えば、「仕事中の盲導犬には声をかけたり頭をなでたりしてはいけないこと」を認識している人は全体の約4割、また「盲導犬は信号の色が見分けられないこと」を認識している人は全体の約2割にすぎないことが確認されました。
 今日では、テレビや新聞などのマスコミが盲導犬を取りあげる機会が増え、盲導犬に関する書籍が数多く出版されています。また、全国の盲導犬協会や盲導犬使用者(以下、使用者)による啓発活動も頻繁に行われていることから、一般市民が盲導犬に関する情報にふれる機会はとても多くなっています。しかし、社会において盲導犬に対する関心が高まっている今日でも、飲食店や宿泊施設の利用拒否を経験する使用者が少なくありません。また、盲導犬のマスコミ情報に関する研究の結果から、現在のマスコミ情報の多くは盲導犬を「何でもできるスーパードッグ」のように取りあげたり、「犬の感動物語」として情緒的な伝え方をしていることが確認されています(文献2、文献3)。このような偏った情報によって、盲導犬や使用者に関する一般市民の認識がゆがめられてしまう可能性があります。さらに、2001年の5月から7月にかけて、全日本盲導犬使用者の会の会員21名にご協力いただき、「盲導犬や使用者に関して一般市民に認識してもらいたいこと」(複数回答)について聞き取り調査を実施したところ、最も多かった回答は「盲導犬に関するマナー」(21名中14名)でした。次に「盲導犬を同伴しての利用拒否の問題」(12名)、「盲導犬は何でもできるスーパードックではないこと」(9名)などが挙げられました。つまり、使用者が盲導犬とともに安心して暮らせる状況にまだなっていないと言えるでしょう。
 そこで、2001年に小学生から成人までを対象とした盲導犬に関する認識調査を実施しました。今回は、2001年の調査結果から得られた、一般市民の盲導犬との接触経験や盲導犬に関する情報源の概要をご報告します。さらに、1992年と2001年の調査結果の比較を通して得られた、各年齢群の全体的な盲導犬に関する認識の程度(認識の量)と、盲導犬に関する知識項目の認識の程度(認識の質)がどのように変化しているかをご紹介したいと思います。

2.2001年の認識調査の方法

(1)調査対象者
小学校4・5年生(246名)、中学校1・2年生(296名)、高等学校1・2年生(304名)、18歳から66歳までの成人(2150名)を調査対象としました。質問紙の回収率は、小学生・中学生・高校生については授業時間に実施したため、100%でした。成人については2150部を配付し1587名より回答を得たので74%になります。

(2)調査手続き
調査は2001年5月〜8月にかけて行われました。小学生・中学生・高校生・一部の成人(短大生や大学生)については、各学校の調査協力者である先生宛に質問紙を郵送し、授業時間内における調査の実施を依頼しました。その他の成人に対しては、調査者による直接の依頼、あるいは郵送による回答を依頼しました。調査はすべて無記名で行われ、調査実施後には盲導犬に関する解説文をすべての対象児・者に配布しました。

(3)調査項目
調査項目は、「回答者の属性(性別・年齢・所属)」1項目、「盲導犬との接触経験(盲導犬を実際に見たことがあるか、また直接さわったことがあるか)」2項目、「盲導犬に関する情報源(盲導犬のことをどのようにして知ったか)」1項目、「盲導犬に関する知識」23項目でした。なお、2001年の調査における盲導犬に関する知識項目のうち、1992年の調査と共通しているのは16項目でした。

3.盲導犬との接触経験

(1)盲導犬を実際に見たことがあるか
「実際に見たことがある」と回答した人は成人(53%)が最も多く、次に高校生(33%)、中学生(31%)、小学生(22%)でした。年齢が上がるにしたがって、見たことがある人の割合が高くなっています。

(2)盲導犬を直接さわったことがあるか
「実際に見たことがある」と回答した人のうち、「直接さわったことがある」と回答した人は、中学生(「実際に見たことがある」と回答した人のうちの40%)、小学生(32%)、高校生(16%)、成人(12%)の順に多い結果でした。特に小学生や中学生においては、盲導犬を見たことがあるだけでなく直接ふれあった経験のある人が少なくありませんでした。具体的にどのような場面でさわったかについては不明ですが、全国的に行われている盲導犬に関する啓発活動への参加などが考えられます。

4.盲導犬に関する情報源

盲導犬のことをどのように知ったのかを尋ねたところ(複数回答)、年齢を問わず8割〜9割の人が「テレビ」と回答しました。具体的な番組名としては、『ハッピー』や『動物奇想天外!』が多く挙げられました。また「本」と回答した人は、各年齢群とも1割〜2割程度でした。具体的な書籍としては、盲導犬サーブや盲導犬ベルナに関する児童書が挙げられていました。その他には、「新聞」や「映画」を情報源としている人がいました。

5.1992年と2001年の盲導犬に関する認識の変化

(1)各年齢群の全体的な盲導犬に関する認識の変化
1992年と2001年に共通している盲導犬に関する知識の16項目について、1項目の正答を1点とみなして算出した「合計得点の平均点」を比較しました。その結果、1992年と2001年では、全体的な盲導犬に関する認識の程度はあまり変化してないことが確認されました。ただし、各年齢群の平均点の差をみてみると、小学生では+1.9点、中学生で+1.4点、高校生では±0点、成人では+0.6点となっており、小学生や中学生では認識が深まっている傾向がありました。

  1992年 2001年 増減
小学生 5.5点 7.4点 +1.9点
中学生 6.4点 7.8点 +1.4点
高校生 7.8点 7.8点 ±0点
成人 7.6点 8.2点 +0.6点

(2)盲導犬に関する知識項目の認識の変化
 a.2001年の正答者の割合が1992年に比べて、年齢2群以上において10ポイント以上の増加がみられる項目

a-1.盲導犬を連れて交通機関や公共施設の利用が可能であることを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 47% 59% +12ポイント
中学生 58% 72% +14ポイント
高校生 82% 74% −8ポイント
成人 80% 78% −2ポイント
a-2.盲導犬がつける器具のことをハーネスと呼ぶことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 6% 34% +28ポイント
中学生 9% 29% +20ポイント
高校生 31% 27% −4ポイント
成人 19% 31% +12ポイント
a-3.盲導犬は信号の色が見分けられないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 6% 19% +13ポイント
中学生 20% 34% +14ポイント
高校生 27% 37% +10ポイント
成人 34% 34% ±0ポイント

b.2001年の正答者の割合が1992年に比べて、年齢2群以上において10ポイント未満の増加がみられる項目

b-1.盲導犬は視覚障害者が使用する犬であることを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 79% 94% +15ポイント
中学生 96% 98% +2ポイント
高校生 98% 99% +1ポイント
成人 99% 99% ±0ポイント
b-2.盲導犬は特別な訓練を受けた犬であることを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 90% 94% +4ポイント
中学生 94% 97% +3ポイント
高校生 99% 98% −1ポイント
成人 98% 99% +1ポイント
b-3.盲導犬は視覚障害者の心のささえであることを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 76% 80% +4ポイント
中学生 86% 93% +7ポイント
高校生 90% 93% +3ポイント
成人 96% 97% +1ポイント
b-4.視覚障害者が行き先を告げるだけで、盲導犬が誘導できるのではないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 22% 28% +6ポイント
中学生 33% 40% +7ポイント
高校生 54% 52% −2ポイント
成人 50% 57% +7ポイント
b-5.盲導犬は郵便ポストがわからないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 14% 23% +9ポイント
中学生 20% 21% +1ポイント
高校生 19% 24% +5ポイント
成人 22% 27% +5ポイント
b-6.盲導犬は許可がないと排泄をしないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 21% 24% +3ポイント
中学生 13% 36% +23ポイント
高校生 31% 19% −12ポイント
成人 20% 21% +1ポイント
b-7.視覚障害者が危険な目にあうと、盲導犬はほえて知らせるのではないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 7% 11% +4ポイント
中学生 8% 11% +3ポイント
高校生 9% 16% +7ポイント
成人 19% 18% −1ポイント

c.2001年の正答者の割合が1992年に比べて、年齢2群以上において10ポイント以上の減少がみられる項目

c-1.盲導犬は法律では、視覚障害者の身体の一部であると考えられていることを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 78% 58% −20ポイント
中学生 74% 68% −6ポイント
高校生 73% 55% −18ポイント
成人 72% 63% −9ポイント
c-2.日本の盲導犬の数は、アメリカやイギリスに比べて少ないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 35% 26% −9ポイント
中学生 50% 30% −20ポイント
高校生 58% 48% −10ポイント
成人 69% 52% −17ポイント
c-3.1頭の盲導犬を育成するためには、300万円以上の費用が必要なことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 30% 17% −13ポイント
中学生 28% 13% −15ポイント
高校生 40% 10% −30ポイント
成人 25% 13% −12ポイント
c-4.盲導犬になることができる犬種は2〜3種類であることを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 18% 31% +13ポイント
中学生 37% 40% +3ポイント
高校生 56% 29% −27ポイント
成人 50% 38% −12ポイント

d. 2001年の正答者の割合が1992年に比べて、年齢2群以上において10ポイント未満の減少がみられる項目

d-1.盲導犬はほかの犬や猫とケンカをしないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 58% 74% +16ポイント
中学生 59% 57% −2ポイント
高校生 60% 56% −4ポイント
成人 57% 55% −2ポイント
d-2.仕事中の盲導犬に声をかけたり頭をなでたりしてはいけないことを知っている人の割合
  1992年 2001年 増減
小学生 38% 43% +5ポイント
中学生 32% 29% −3ポイント
高校生 43% 33% −10ポイント
成人 43% 38% −5ポイント
6.まとめ

1992年と2001年に一般市民を対象として行われた、盲導犬に関する認識調査の結果の比較を通して、認識の量と質がどのように変化しているのかを明らかにしました。その結果、認識の量については、全体的に大きな変化はみられないことが確認されました。ただし、小学生と中学生においては認識が深まっている傾向があり、このことは盲導犬とのふれあい経験による影響であることが推測されます。しかし、具体的にどのようなふれあいの場面であるかが不明なため、詳細な考察はできませんでした。
 一方、盲導犬に関する知識項目のうち、使用者が社会の中で安心して生活を送るために一般市民が認識しておかなければならない内容のいくつかについては、かなり理解が進んでいることが確認されました。例えば、「盲導犬を連れて交通機関や公共施設の利用が可能であること」や「盲導犬がつける器具のことをハーネスと呼ぶこと」、また盲導犬の特性や役割を示している「許可がないと排泄しないこと」、「信号の色が見分けられないこと」、「行き先を告げるだけで視覚障害者を誘導できるのではないこと」などが挙げられます。特に小学生と中学生において、認識が深まっている内容が多くみられたことから、学校や地域で行われている啓発活動が小・中学生の認識の変化に何らかの影響を及ぼしていることが推測されます。しかし、上記に挙げた盲導犬の特性や役割については、年齢を問わず、依然として十分には認識されていないことも示されました。さらに、盲導犬に関するマナーである「仕事中に声をかけたり頭をなでたりしてはいけないこと」については、中学生・高校生・成人において認識している人が減っており、盲導犬使用者が日々直面している問題の解決にはつながらない結果となりました。

7.今後の課題

「盲導犬情報第33号」(2002年4月)のなかで、「新しい学習指導要領と盲導犬事業」が紹介されていました。2002年4月から、小・中学校において「総合的な学習の時間」が本格的に始まり、福祉のテーマとして「盲導犬」がとりあげられる機会が非常に増えています。また、「総合的な学習の時間」に関連して、小・中学生の子どもたちが盲導犬や使用者と直接ふれあう機会が今後ますます増えていくと予想されます。
 子どもたちが盲導犬や使用者と直接ふれあうことは、理解を深めるために必要なことですが、従来より、障害理解教育について「単に時間と場所を共有するだけでは、障害や障害児・者に関する適切な理解と態度は形成されない」と指摘されています(文献4)。しかし、学校関係者の中には「ただふれあうだけで福祉教育になる」と考えている者がみうけられます。また、盲導犬協会による啓発活動の内容や方法は、啓発担当職員にまかされているのが現状のようです。さらに、盲導犬使用者の中には、子どもたちに対して何をどのように話せばよいのか戸惑っている人もいると思われます。
 そこで、今後の課題としては、学校や地域における福祉教育の一環として行われている盲導犬に関する啓発活動の実態を把握し、その問題点を明らかにすることが挙げられます。そして、2001年の認識調査によって確認された「一般市民がまだ十分には認識していない内容」と今後明らかにされる「啓発活動の実態や問題点」、さらに「障害理解の5段階」として提唱されている(1)気づきの段階、(2)知識化の段階、(3)情緒的理解の段階、(4)態度形成段階、(5)受容的行動の段階(文献4)をふまえて、盲導犬に関する啓発活動としては「誰に対して」「どのような内容を」「どのような方法で」行えばよいかを検討していく必要があると言えます。

<文献>
  1. 望月珠美・徳田克己(1993)一般の人の盲導犬の認識について−幼稚園児から成人までを対象にした調査の結果−,視覚障害心理・教育研究,第10号,ページ31−37.
  2. 下村祥子(シモムラ サチコ)・石上智美・徳田克己(2001)盲導犬使用者のマスコミ報道に対するニーズ,実践人間学,第5号,ページ37−41.
  3. 石上智美・下村祥子・徳田克己(2002)盲導犬に関する新聞記事および書籍の内容の分析,障害理解研究,第5号,ページ47−52.
  4. 徳田克己・西館有沙(ニシダテ アリサ)(2002)障害者に対する偏見と障害理解教育,徳田克己・塙和明(ハナワ カズアキ) 編著『看護・医療・教育・保育・福祉に関わる人のための心身障害学』,第21講,ページ174−190,文化書房博文社.
<謝辞>

聞き取り調査にご協力いただいたみなさまに、心よりお礼を申し上げます。

身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン

身体障害者補助犬法によれば、身体障害者補助犬ユーザーは、身体障害者補助犬の衛生の確保のための健康管理に関する事項を記載した書類を所持し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならないことになりました。そこで、厚生労働省では、「身体障害者補助犬健康管理手帳」を作成し、その活用を推奨しています。この「身体障害者補助犬健康管理手帳」の内容については、前号の「盲導犬情報」の中でご紹介しましたが、現在日本にいるすべての身体障害者補助犬ユーザーに配布されているわけではないですし、どちらかといえば記録用の手帳なので、どの程度の頻度でどういった検査をすべきなのか、といった具体的な記述がありませんでした。
  そこで、今回は、「身体障害者補助犬健康管理手帳」の作成にあわせて設定された「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン」の内容についてご紹介したいと思います。
  このガイドラインでは、身体障害者補助犬ユーザーによる健康管理、獣医師による健康管理の二つに分け、「当該犬の健康を維持し、その生活の質の向上を図るとともに、公衆衛生上の危害の発生防止のため、犬を清潔に保ち、他者に不快感を与えないこと、および人と動物の共通の感染症を予防することを目的として」います。
  身体障害者補助犬ユーザーによる健康管理としては、

  1. 犬の健康状態について観察を行う。健康状態の観察項目としては、「身体障害者補助犬健康管理手帳」40,41ページに記載されている一般状態および体重測定とする。体重の測定は1か月に1回とする。
  2. 被毛等の管理
    (1)整毛
      適切なブラシ及び櫛等を選択し、整毛する。実施頻度は1日ないしは数日に1回とする。ただし、犬の状態にもとづき、特に換毛期等には頻度を増すようにする。
    (2)皮膚および被毛の洗浄
      適切なシャンプー製品とリンス製品を選択し、皮膚および被毛の洗浄を実施する。実施頻度は、数週間に1回、ないしは1〜2か月に1回程度とする。
    (3)剪毛
      適切なはさみ等を選択し、実施する。実施頻度は1年に1〜2回とする。ただし、犬の状態にもとづき必要に応じて頻度を増すようにする。
    (4)爪切り
      実施の時期は、起立時に四肢の爪が床面に接触しはじめたときを目安とする。

一方、獣医師による健康管理としては、

  1. 健康診断
      身体障害者補助犬の飼養および利用にあたっては、犬の衛生を確保するため小動物臨床に従事する獣医師による健康診断を定期的に実施し、衛生管理の啓発と疾病の早期発見に努め、何らかの異常が発見された場合には速やかな対応を行わなければならない。
      健康診断は、個体識別の後、まず一次検査として一般的な諸検査を行い、それによって異常が疑われた場合には、二次検査を実施する。また、一次検査および二次検査において異常が認められた例に対しては、必要に応じて各々の場合に適した精密検査を適宜実施する。
    a.実施頻度
      獣医師による健康診断の実施頻度は、一次検査のうち、問診、視診、触診、打診、聴診および体温、脈拍数、呼吸数の計測については1年に2回以上、血液学的検査ならびに糞便検査については一年に1回以上実施するものとする。また、二次検査および精密検査は、個々の例に応じて適切な頻度で実施する。
    b.一次検査
      一次検査の実施項目は以下のとおりとする。
    1)問診
      補助犬の飼い主から当該犬の一般状態等を聴取し、特に前回の健康診断以降の異常の有無について調査する。
    2)視診
      補助犬の全身について視診を行い、異常の有無を観察する。
      観察項目は、元気の有無、体格、食欲、栄養状態、姿勢、歩様、感覚の状態、被毛の状態、天然孔の異常の有無等とする。
    3)触診
      補助犬の全身について触診を行い、異常の有無を観察する。
      観察項目は、皮膚および被毛、体表リンパ節、関節、指趾端の状態等とする。
    4)打診
      補助犬の主に胸部および腹部について指々打診を行い、以上の有無を観察する。
      すなわち、打診部位を手指により叩打し、その際の振動音、すなわち打診音を聴取する。
    5)聴診
      補助犬の主として胸部及び腹部の聴診を行い、以上の有無を観察する。
    聴診の主たる対象は以下の各項目とする。
       (1)心臓
         心拍動のリズムの変化、心内雑音の有無、心膜の摩擦音の有無等
       (2)呼吸器系
         喉頭、気管、気管支および肺胞から発する音、胸膜の摩擦音等
       (3)消化器系
         消化管の蠕動音等
    6)体温、脈拍数、呼吸数の計測
      補助犬の体温、脈拍数、呼吸数の計測を行い、一般的正常値からの逸脱の有無を検討する。
    7)血液学的検査
      実施が推奨される血液学的検査項目は、以下のとおりとする。
       (1)赤血球またはヘマトクリット値
       (2)白血球数
       (3)犬糸状虫ミクロフィラリア
    8)糞便検査
      実施が推奨される糞便検査項目は、以下の通りとする。
       (1)理学的性状
         糞便量、色調、水分含有量(下痢の有無)、臭気、未消化物および異物等 
       の混在の有無
       (2)寄生虫学的検査
         原虫の栄養型、シスト、オーシスト、蠕虫卵、幼虫、成虫、条虫の片節
     c.二次検査
      一次検査により異常が疑われた場合には、以下の検査を実施する。
    1)血液生化学的検査
      実施が推奨される血液生化学的検査項目は、以下のとおりとする。
       (1)グルコース
       (2)尿素窒素
       (3)総蛋白
       (4)アラニンアミノトランスフェラーゼ(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)
       (5)犬糸状虫成虫循環抗原
       (6)抗レプトスピラ抗体
    2)尿検査
       (1)理学的性状
         尿量、色調、混濁度、濃度、粘稠性、臭気、比重、pH
       (2)化学的性状
         糖質、蛋白質、血色素(潜血)、ウロビリノゲン、ケトン体、亜硝酸塩
    3)糞便検査
      下痢、血便等が認められた場合には、糞便の細菌検査等を実施する。
     d.精密検査
      一次検査および二次検査により異常が疑われた場合には、必要に応じてさらに種々の精密検査を実施する。
      精密検査の実施項目は、個々の例に応じて適宜に選択する。
  2. 予防接種およびその他の疾病予防措置等
      身体障害者補助犬の衛生確保のため、予防接種を定期的に実施することは必須であり、加えてその他の疾病予防措置等を講ずることが望ましい。
     a.実施すべき予防接種
      身体障害者補助犬への接種を行うべきワクチンは、以下のものとする。
      これらのワクチンの接種頻度は、1年1回とする。
    1)狂犬病ワクチン
    2)犬レプトスピラ病ワクチン
    3)犬パルボウイルス感染症ワクチン
    b.実施が望まれる疾病予防措置
      身体障害者補助犬に対して、少なくとも以下の疾病予防措置を講ずることを推奨する。
    1)犬糸状虫症の予防(犬糸状虫成虫寄生予防薬の投与)
      犬糸状虫症予防薬を適宜に選択し、その薬剤の用法にもとづいて適切な投与を実施する。
    2)ノミおよびマダニの寄生予防
      ノミおよびマダニの駆除薬、とくに残効性が高い薬剤を適宜に選択し、その薬剤の用法にもとづいて適切な投与を実施する。

盲導犬情報ボックス

都道府県別にみた盲導犬ユーザーの比率

2002年3月31日現在の盲導犬ユーザー数が、視覚障碍者人口のどれぐらいの比率なのか、都道府県別にみてみました。盲導犬ユーザーが日本全国で 915人、視覚障碍者人口が全国で 389,487人(2002年盲導犬情報室調べ)。現在、視覚障碍者の0.23%の人たちが盲導犬ユーザーということになります。
  比率が最も高かったのは、石川県の0.78%。次いで山梨県・長野県・愛知県で、0.4%台でした。0.3%台が、秋田県・栃木県・静岡県・埼玉県・兵庫県・新潟県となりました。年間委託頭数や育成費補助の頭数が多かったのは、東京都・静岡県・埼玉県・愛知県ですが、そのうちの3県が上位10県に入っています。
  また、上位10県のうち愛知県・栃木県・兵庫県の3県は、盲導犬育成施設がある県です。一方、その他の盲導犬育成施設のある道府県をみると、13番目に神奈川県の0.26%、22番目に北海道の0.23%、29番目に大阪府の0.21%、33番目に東京都の0.20%、34番目に京都府の0.19%、37番目に宮城県の0.18%、42番目に福岡県の0.14%とばらつきがあり、盲導犬育成施設がある都道府県だからといっても盲導犬ユーザーが他県に比べ特別多い、ということはないようです。
  0.2%台で、全国単位でみた比率より高かったのが、佐賀県・広島県・神奈川県・山口県・島根県・和歌山県・茨城県・富山県・千葉県・滋賀県・鳥取県・北海道。0.2%台だが全国よりも低かったのが、大分県・宮崎県・熊本県・高知県・岡山県・愛媛県・大阪府・三重県・岐阜県・奈良県・東京都。
  0.1%台が京都府、徳島県・鹿児島県・宮城県・岩手県・群馬県・福井県・香川県・福岡県・沖縄県・山形県・福島県・長崎県でした。そして、47番目が0.04%の青森県でした。
  比率が高い、低いと言っても、最も比率が高い県でも1%未満。これらの数字から地域特性を推察することは難しいでしょう。しかし、1998年に行った「盲導犬に関する調査」結果で報告されている、盲導犬を「今すぐ希望」しているのは視覚障碍者の3.3%という結果と比べると、やはり盲導犬が不足している日本の現状を改めて認識させられます。

編集後記

今回、6年ぶりに都道府県・指定都市に対して盲導犬育成事業等の実施状況について照会してみましたが、「盲導犬育成施設を限定するのではなく盲導犬希望者の希望する施設に委託または補助金を交付する」と回答した自治体が予想以上に増えていました。多くの方々の働きかけがあったからこそ行政の対応も変わっていったのだと思います。時代は変化し、さて、盲導犬育成施設はそれに呼応できているのでしょうか。(久保)