盲導犬情報 第48号(2006年1月)



内容




盲導犬使用者の会(Guide Dog Users, Inc.)による盲導犬学校に対する調査結果報告(2)

前号に引き続き、アメリカ合衆国の盲導犬使用者の会(Guide Dog Users, Inc.以下「GDUI」)が合衆国内の盲導犬学校に対して行ったアンケート調査をご紹介いたします。今回は、各盲導犬学校が行なう共同訓練についてです。
 今回も、この調査に回答した盲導犬学校10校と回答書中の略記号、それぞれの学校のホームページアドレスを最初にご紹介してから、共同訓練についての結果を掲載しています。

【回答した盲導犬学校10校と回答書中の略記号。ホームページアドレス】

【プログラム・オプション】

貴校のプログラムを最も適切に記述する回答に、チェックをしてください。
1. 初めて盲導犬を希望する視覚障害者のためのプログラムは、
2. 他の盲導犬学校の卒業生である場合、最初の場合と同じ訓練の条件を満たさなければならない。
3. 学校の卒業生が、代替の犬と訓練を受ける場合、
  • 4週間の訓練………なし
  • 3週間の訓練………LDB, TSE
  • 2週間の訓練………FREE, GDF, KSDS
  • その他(「その他」を選んだ場合は、説明してください。)
     GDB:4週間、3週間、2週間、その他。代替訓練は、卒業生の必要に合わせて行われる。要請することはないが、幾人かの使用者は4週間の訓練を選択する。又、その人に合わせた在宅訓練も行う。
     GDA:4週間、3週間、2週間、その他。代替訓練は、卒業生の必要性と能力に合わせて行われる。
     GEB:3週間、2週間
     SGD:4週間、3週間、2週間、その他。代替訓練は、卒業生の必要に合わせて(限度はあるが)行われる。要請することはないが、幾人かの使用者は4週間の訓練を選択する。又、その人に合わせた在宅訓練も行う。
4. 貴校が盲導犬を希望する視覚障害者に提供する訓練方法の選択肢は、学校、家庭、地域、その他(「その他」を選んだ場合は、説明してください)。
  • FID:家庭、地域
  • FREE:家庭、地域。家庭訓練と地域訓練は、ことばは違うが同じ内容である。
  • GDF:それらの組み合わせ、又はその他。(その他は詳細不明)
  • GDB:それらの組み合わせ、又はその他。特別に用意される訓練では、訓練の間に特定の地域や道路で正しく歩くことができるよう多くの選択肢を用意している。
  • GDA:学校、家庭。及びそれらの組み合わせ。その他。
  • GEB:学校、家庭。及びそれらの組み合わせ。その他。経験豊富な使用者には、学校に宿泊して10日、家庭で5日の訓練を組み合わせる方法もある。
  • KSDS:学校
  • LDB:それらの組み合わせ及びその他。
  • SGD:それらの組み合わせ、又はその他。特別に用意される訓練では、訓練の間に特定の地域や道路で正しく歩くことができるよう多くの選択肢を用意している。
  • TSE:学校、家庭。及びそれらの組み合わせ。その他。(その他は詳細不明)

アメリカの盲導犬学校を訪ねて

和歌山県 林 克之

みなさん、こんにちは。全日本盲導犬使用者の会副会長の林克之です。私はいま一年間の任期で全国盲導犬施設連合会が設けた「盲導犬歩行指導員等養成カリキュラム調査委員会」の委員をさせていただいています。良質の盲導犬を安定して育成するためには優秀な訓練士が安定して養成されることが必要です。そのための方法を検討して全国盲導犬施設連合会に対して答申・提案することを目的としています。

委員会の取り組みのひとつとして、平成17年11月14日(月)から19日(土)の日程で、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンラファエルにあるGuide Dogs for the Blind, Inc(以下、「盲導犬学校」)を訪問視察しました。カリフォルニア州には「盲導犬委員会」という行政組織があり、行政主導の訓練士免許制度があります。また盲導犬学校ではサンフランシスコ州立大学と協力して、新しい養成カリキュラムをスタートさせました。その実態をつぶさに視察し、日本の養成カリキュラムに生かしたいというのが今回の渡米の目的でした。

わずか4日間の滞在でしたが担当のサンドラ・ローゼン教授をはじめ、訓練関係者、盲導犬使用者などなど、たくさんの人にお会いし、お話をうかがうことができました。紙面の都合上、とてもすべてをお伝えすることはできませんが、レポートとしてまとめてみます。

今回残念なことに検疫手続きが間に合わず、パートナーのベッキーといっしょに行けませんでした。盲導犬使用者が盲導犬をつれていないというのは、とても心細いものです。1週間近く離れて暮らすわけですが、訓練所卒業以来初めてのことでした。すこし後ろ髪を引かれる気分での出発となりました。

さて、訪米グループは私をふくめて6名。調査委員会から2名。そして別の目的でAGBNのメンバーが4名。このAGBNというのはAsia Guide Dogs Breeding Networkといい、日本、韓国、台湾などの間で盲導犬の繁殖における協力体制を作ろうという組織です。今回は、盲導犬学校から何頭かの犬を提供してくれることになり、犬の評価をすることが目的の訪米でした。

11月14日午後5時30分、予定通り成田空港を出発。そして14日午前9時30分(現地時間)にサンフランシスコ空港に無事到着。つまらない話ですが、私にはこの「時間の魔法」がどうにも納得できません。

サンラファエルは、サンフランシスコから車で一時間ほどの町です。盲導犬学校はその町はずれに広大な敷地をほこっています。全米の盲導犬数が約6,000。この学校の出身盲導犬は2,000。文字通り全米トップクラスの育成施設です。

到着のあいさつを施設関係者とかわした後、AGBNのメンバーとともに犬の評価をするために町の中心を歩きました。そして盲導犬学校にもどり、ケン・オルテンバーガーさんの案内で施設内を見学。彼は盲導犬使用者でありこの学校の職員でもあります。

学校内を見て回った感想は、とにかくすべてにおいて規模が大きいということです。盲導犬との訓練をうけるために宿泊する部屋はまるで一流ホテル並でした。外にはプールまであります。通常20人が一度に訓練を受けるんだそうです。施設内にはちゃんと犬の病院がありました。その規模、スタッフの数、設備内容はまるで大学病院といったところです。犬舎の大きさも日本とは比べ物になりません。

2日目、午前中は訓練チームとともに町に出て、実際に研修生がベテラン訓練士といっしょに犬の訓練を行う様子を見せていただきました。私の希望を聞いてくださり、2頭の訓練犬と実際に歩かせてもらえました。まだ訓練を始めたばかりということで、とても荒削りな誘導でしたが、爽快な歩行を体感できました。訓練では最初とても早い歩きで安定した歩行を確保するのだそうで、訓練犬との歩行はまるで競歩といったところでしょうか。でも、歩道などの状態も含め、異国の町を異国の盲導犬と歩けたことは私にとってとても貴重な体験となりました。

午後からは2人の盲導犬使用者とお話させていただきました。はじめにケン・オルテンバーガーさん。前日施設内を案内してくださった方です。もうひとりはアエリアル・ギルバートさん。彼女とはこの日はあまり時間がとれず、3日目の昼食をともにして親しくお話しました。ここの施設では7人の盲導犬使用者が働いているとの事でした。私はケンさん、アエリアルさん、そしてもう1人バーバラさんという女性からアメリカの使用者の実情など、さまざまなお話をうかがい、意見交換することができました。ちなみにケンさんは犬舎での仕事、アエリアルさんは広報、バーバラさんは電話受け付けの仕事をされているそうです。バーバラさんとは彼女が受付で電話の応対をしているまさに仕事中にいろいろと話し掛けてしまいました。きっとご迷惑だったことと思いますが、ぜひ日米の使用者の交流を実現したいという希望を3人に伝えました。

今回は「情報収集」が主な目的だったので、まるで大学の授業を受けるような専門的なお話が大半となりました。一使用者の私には正直むずかしすぎる内容でした。それでも、関係者のみなさんの熱意あふれるお話に、姿勢を正して聞き入りました。わからないなりに精一杯の質問もさせていただきました。その内容はくわしくレポートにまとめ委員会に報告しました。今回の視察が日本の盲導犬育成事業の未来に少しでもプラスになれば、これほどうれしいことはありません。

あっという間の短い滞在でしたが、関わってくださったみなさんがとてもよくしてくださり、すばらしい思い出を山ほど持ち帰ることができました。私にこのような機会を与えてくださったみなさんに、まごころで歓迎してくださったみなさんに心から感謝申しあげます。ほんとうにありがとうございました。

19日の夜、駅のホームには妻とベッキーが待っていてくれました。熱烈歓迎!

さあ、また明日から、この国で、この町でしっかりと歩いていきましょう。

補助犬学会第1回学術会議開催される

日本身体障害者補助犬学会は、補助犬の学術的研究によって身体障害者の自立と社会参加を推進することを目的として、補助犬の普及発展を願う学識経験者が集まり、2005年9月1日に設立されました。理事長は、東京経済大学名誉教授であり、盲導犬ユーザーでもあられる竹前栄治氏。このような補助犬に関する学術団体の発足は世界でも初めてのことだそうです。

この補助犬学会が主催する第1回学術大会が、1月29日、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院講堂で開催されました。

大会は、まず、第1回学術大会会長でもある竹前栄治理事長からの挨拶で開会。来賓挨拶の後、基調講演、口演発表19題、ポスター発表16題、シンポジウム、と発表が目白押しでエネルギッシュな大会でした。

基調講演は、「世界における盲導犬関係法令の現状と課題」と題した、竹前栄治・東京経済大学名誉教授の講演でした。講演は時間が1時間あっても足りないぐらいの内容でしたが、予定の講演時間はわずか20分。時間オーバーを気にしながらも、アメリカやイギリスで補助犬受け入れを拒否した飲食店に対するユーザーの対応など、具体的なやりとりにも触れながらのお話がありました。

補助犬の受け入れ拒否に対し、慰謝料や謝罪を求めて訴訟を起こし、補助犬に対する理解を勝ち取っていく、というやり方は、日本ではまだまだ馴染みのないものですが、それ以前に日本と違うのは、拒否した当事者とユーザーの間に立ち、調停する役割の機関があり、機能している点にあるようです。日本では、受け入れを拒否し補助犬法に違反したからといって罰則があるわけでもありません。また、拒否した側との交渉も、拒否されているユーザー自身がやっていかなければいけないような状況が多くあります。しかし、それでは社会全体に大きく影響を及ぼすことは困難です。受け入れ拒否に対しユーザーの相談に応じ、拒否した側を指導し、ユーザーの権利を擁護する機関が日本にも必要なのではないでしょうか。

ところで、補助犬同伴を拒否されることの多い施設として「病院」があげられるかと思います。午後のシンポジウムは、「透析施設における盲導犬の受け入れ」がテーマとなりました。シンポジウムは、まずシンポジストとして補助犬ユーザーや医療関係者、育成施設職員等5名の方々からの報告で始まりました。

2名のシンポジストは、すでに盲導犬ユーザーが盲導犬を同伴して人工透析を受けているクリニックの院長をされている医師でした。どちらのクリニックも、現在通院している盲導犬ユーザーは、透析室まで盲導犬を同伴し、透析中はベッドの下に盲導犬を待たせているとのことでした。実際に受け入れている状況を踏まえて、「盲導犬を入室させることに対する衛生面の心配はない」という医師の意見に、百万の兵を味方に得た思い、と言っては少し大げさでしょうか。ただ、ユーザー側も盲導犬の衛生管理については十分配慮することは必要で、「シャンプーは月に1〜2回、ブラッシングや体を拭くなどの盲導犬に対する手入れは毎日した方が良い」との発言が、別のシンポジストからありました。また、ここでも調停役を明確にしておくことが必要で、患者さん同士のトラブルを避けるためにも、クレームなど相談を受け付ける体制をクリニックがきちんと組むこともキーポイントではないかと思いました。

口演発表では、盲導犬に関係した発表が4題(記載は発表順)。
「凍結精子を用いた盲導犬の人工繁殖の試み」(北海道盲導犬協会・諏訪義典)
「日本盲導犬協会における犬の管理システムの概要」(日本盲導犬協会・堀江智子)
「盲導犬は自動車をどのように認識しているか」(日本盲導犬協会・福井良太)
「視覚障害者に対する盲導犬試験歩行の取り組みについて」(日本盲導犬協会・金井政紀)
補助犬受け入れに関する発表が2題。
「健康福祉センターにおける身体障害者補助犬の受け入れ啓発活動について」(千葉県松戸健康福祉センター・竹下晶子)
「身体障害者補助犬使用者に対する補助犬受け入れ状況等のアンケート調査報告」(身体障害者補助犬法改正対策使用者団体連絡協議会・木村佳友)
ラブラドール・リトリーバー種に関する発表が2題。
「ラブラドール・レトリーバー438頭の股関節レントゲン評価」(麻布大学外科第二研究室・陰山敏昭)
「ラブラドール・レトリーバーの発育期整形外科疾患に関する遺伝的検討」(麻布大学外科第二研究室・森淳和)
その他、介助犬に関する発表が10題、聴導犬に関する発表が1題ありました。
ポスター発表では、日本盲導犬協会付設盲導犬訓練士学校の学生の発表が16題中14題ありました。それぞれの演題は、以下の通りです。
「家庭内の盲導犬訓練について」(武富花菜)
「単独でアイマスクをつけて行なうDE(Dog Education-基礎訓練)の方法」(矢花由希子)
「視覚障害者の行動を想定した盲導犬訓練の考察について」(田中真司)
「盲導犬の左右両手持ち(左右持ち替え持ち)についての一考察」(松本健太郎)
「盲導犬の作業能力の低下とそれを防ぐための訓練方法の検討」(越智渚)
「指示語の学習と般化の検討〜「チェアー」コマンドを用いて〜」(丹伊田貴真)
「タスクの複合による犬の学習効果について〜方向指示からのアプローチ〜」(鈴木知之)
「盲導犬候補犬の排便コントロールのための工夫」(足達花菜)
「着衣による犬の体温変化についての調査」(井上裕子)
「盲導犬が白線を活用する可能性」(大塚高志)
「日本における盲導犬観の変遷について」(実川みどり)
「盲導犬候補犬の排便管理について」(島田敬子)
「盲導犬訓練犬の食糞行動の実態調査」(矢吹良平)
「最適な排便空間についての検討」(山賀綾乃)

学会で発表されたものは、後日、学会の会員に送られる、日本身体障害者補助犬学会の学会誌「日本補助犬科学研究」に発表される予定です(ただし投稿者のみ)。

学会の会員になるには、学会評議員一名の推薦が必要です。会員になりたいとお考えの方は学会事務局にお問い合わせください。日本身体障害者補助犬学会についての詳細は、

同学会ホームページ http://www.jssdr.net/ をご覧ください。

なお、すでに第2回学術大会の予定も決まっています。会期は2007年4月14日(土)、15日(日)の二日間。場所は、日本獣医生命科学大学(東京都武蔵野市)だそうです。

盲導犬ユーザーのコーナー

春風とともに

滋賀県 前田 眞理

「お世話になりました。いつもありがとうございます。」

運転手さんにお礼を述べ、バスを降り、5分程歩くと、そこが我が家です。1日のスケジュールを終えて、盲導犬パズとともに軽やかな、そして迷いの無い足取りで、自宅へ向かうこの道のりが私は大好きです。
 車の往来も、人影もない田んぼ道。もうすぐ我が家という安堵感で自然と歩きながら笑顔がこぼれます。蒸し暑い夏は蛙の大合唱。秋は虫たちのオーケストラ。真冬の木枯らしも、苦になりません。
 盲導犬パズも1日の長いお仕事を漸く終えて、一安心しているのでしょうか。はじけたように軽やかな歩きで、我が家にゴールイン。

「ありがとう。ご苦労さん!」

ハーネス、リード、首輪、ダスターコートを外してやり、盲導犬という責任ある仕事から解放されたパズがいます。出掛けに置いておいた雑巾で足の裏をきれいに拭いて、

「入っていいよ」

とお尻をポン。冷たい水をなみなみ汲んでやると、なんともおいしそうに飲んでくれます。続いて、トイレ、そしてご飯タイムまでパズのお世話を一気に済ませてやると、ようやくこちらも一段落。

そして、家事や用事を済ませているあいだ、私たち家族とともに台所で過ごし、1日の最後は2階の私の部屋で過ごします。階段を駆け上がり、部屋の扉の前で私を待っています。今ではここがパズのお城であり、一番落ち着く場所となりました。

パズのお気に入りは、たくさんのぬいぐるみとボールです。口にくわえて、大切そうに持ち運びます。下りの階段では、大きなぬいぐるみを上から転がして運びます。上りでは、ずるずると引きずりながら上っています。そして、ぬいぐるみとボールを傍において私が相手をするのを静かに待っていてくれます。夜、寝ているパズの体を撫でていると、口元にはこれらのおもちゃが添えてあることに気づきます。小さな子供が、使い古した毛布を離さずに寝るように、パズも愛着のあるおもちゃに囲まれて安心して眠りに入るのでしょう。こうしてささやかな1日が終わります。

ハーネス姿の時、家で自由にしている時、どんなときでも、パズは私の一挙一動をひたむきに見つめてくれています。

そして、私も同じようにパズを見つめ、パズの瞳に映る周囲の人々の優しさが感じられるようになりました。私の見えないことへの心のバリアを、ゆるやかな風が消し去ります。ささやかな毎日の幸せを大切にし、明日につなげたいと思います。最後になりますが、パズを育ててくださったパピーウォーカーのご家族、そして盲導犬事業を支えて下さっているみなさん、ありがとうございます。春風を感じながら、明日もパズとともに元気に歩きます。

盲導犬フラッシュ、僕に光と夢をあたえてくれて有難う

大阪府 蔦田 貴彦

私は11年前、27歳のときに失明しました。現在は、大阪府交野市で鍼灸院を営んでおります。
 中学から大学まで陸上部で活躍したスポーツマン。体力には自信がありました。勤務先の大手運送会社の仕事が忙しく、帰宅が連日午前様で微熱が続きましたが、近所の病院で診察を受けても「風邪」との診断。風邪薬を飲み、気力で乗り切っていました。しかし3ヶ月後、手や舌がしびれ、目の奥に激痛が走るようになり、再び病院に行くと手遅れとなっていました。
 病名は「髄膜炎」。医師から家族が「生命の保障はできない」と言われていたことを後で知りました。
 入院7ヶ月、意識が戻ったとき、光を完全に失い、真っ暗闇で、ベッドから起き上がることも立つこともできず、惨めで惨めで・・・。病室から飛び降りて自殺しようと思いました。しかし、どこに窓があるのかさえわからない。窓までたどり着くこともできなかったから、自殺しようにもできませんでした・・・。
 まさに絶望のどん底から這い上がるきっかけとなったのは、頸椎損傷で首から下がマヒとなり電動車椅子でリハビリに通っていた人との出会いでした。その人がこう言いました。

「君にはまだ自由に動かせる手と足があるじゃないか」

そう言われた瞬間、心の目が見開きました。

その後、賢明のリハビリで両手両足の筋力も取り戻し、自らの足で立って、自分で食べる事や病院内を歩けるようになりました。
 そして、もっと自立して社会参加を目指したいと、平成8年日本ライトハウスに入学しました。
 3年間の寮生活をしながらの勉強と日常生活訓練を受け、白杖歩行と音声パソコンの操作ができるまでになりました。
 白杖訓練では、頼りは白杖一本だけでした。道路は障害物だらけで、停まっている自転車を将棋倒しにしてしまって怒鳴られたこともあります。杖で車に触れてしまい、
「お前、ほんまは目見えとるん違うか」
と殴られそうになったことも一度や二度ではありません。駅のホームから転落しそうになり、何度も死の恐怖を感じました。
 そんな時、テレビ番組で盲導犬ユーザーの視覚障害者が、
「スピーディー、セーフティーに風を切って歩けます」
と言っているのを聞いて、日本ライトハウスに盲導犬を申し込んだんです。そしたら幸運なことに6ヶ月後、私と相性のいい、フラッシュがいると連絡をもらったんです。
 共に歩行する猛訓練を一ヶ月積んだ後、平成10年12月から二人五脚の歩みが始まりました。
 失明宣告・視覚障害者との理由で会社からの強制解雇・・・。自暴自棄になりそうになった時も何度もありました。
 その時、クラブの後輩を通して、元マラソンランナーの瀬古利彦選手からビデオレターが届いたのでした。
「僕が昔ケガをしたとき、救ってくれたのは全盲の鍼灸師さんでした・・・」
その言葉に私は目が見えないけど、もう一度、人の為に活かされていきたいと奮起しました。
 その一心で、私は、フラッシュと二人で平成12年兵庫県神戸市にある国立視力障害センターに入学して、それから3年間の寮生活と厳しい鍼灸師への猛勉強が始まりました。
 知らない街での生活と厳しい勉強・・・。目が見えない私を、いつも救ってくれたのはフラッシュでした。
 その後、平成15年鍼灸師の国家試験に無事合格し、3年前から自宅で開業しています。やっとのことで、ここまで登りつめられたのでしたが、その頃、妻は「ついていけない」と私の元を去っていきました。突然のむごい仕打ちを受けて一時は希望を無くしかけましたが、「僕にはいつも支えて来てくれたフラッシュがいた、人は裏切っても犬は裏切らない・・・」そんな思いでした。フラッシュは僕の光です。もう彼がいない生活は考えられません。
 そして昨年の春、幸せが訪れました。
 フラッシュと歩く私を目に留めていた理恵さんが、偶然に患者として来院したのをきっかけにお付き合いが始まり、昨年11月3日に、沖縄県ルネッサンスリべーラ教会でゴールイン。
 私はこう思います、盲導犬とは、ただ単に視覚障害者を安全に誘導するだけではないと。心の支えとなって、目が見えないからと引っ込み思案だった私を外へ外へと導いてくれました。そして世界が広がり、多くの人と、そして理恵さんとも出会えました。
 本当に、心から「ありがとう、フラッシュ。君のお陰で、人生またやり直せられました」と感謝しています。これからは、妻と盲導犬フラッシュとで、二度と無い人生を、明るく・素直に・いつも感謝の気持ちで、三人六脚で心合わせて頑張ります。

追伸  皆様からのお便りお待ちしております。また、そんな盲導犬フラッシュとの生活ぶりを是非下記のホームページでご覧下さい。
E-MAIL:houmeidou@nifty.com
盲導犬フラッシュURL:http://homepage3.nifty.com/houmeidou/

盲導犬情報ボックス

2005年に出版された盲導犬に関する文献

昨年に引き続き、今年も、昨年1年間に出版された盲導犬に関する書籍を調べてみました。墨字以外の媒体も出ているものについては、ナイーブネットで検索した結果を題名の後に書き込んであります。
 大学や学会などで発表された論文については、分かる範囲でピックアップしましたが漏れているものが多いと思います。他の文献をご存じの方はぜひ盲導犬情報室までお知らせください。

<書籍>
「イザベルに導かれ盲導犬と歩んだ半生」 米田明三(北国新聞社) 2005.12
「震災にあった盲導犬クララ」(点字・録音・デイジー) 石黒謙吾・小山るみこ(双葉社) 2005.10
「盲導犬キキ 風のように光のように」(点字・録音・デイジー) 今井敏代(かもがわ出版) 2005.10
「リタイア犬グレイシャス 盲導犬のお母さんがふつうの犬になるまで」 竹内和世(北辰メディア) 2005.06
「リタイア 盲導犬の老いを見つめて」(点字着手・録音・デイジー) 郡司ななえ(ハ−ト出版) 2005.07
「盲導犬クイ−ルの一生(文春文庫plus )」(点字・録音・デイジー) 秋元良平・石黒謙吾(文藝春秋) 2005.07
「見えなくても…私 盲導犬とともに歩んで(角川文庫)」 郡司ななえ(角川書店) 2005.06
「ハッピー! 盲導犬ハッピーの誕生日!編 (講談社漫画文庫7)」 波間信子(講談社) 2005.05
「ハッピー! 盲導犬ハッピーと点字の日記編 (講談社漫画文庫8)」 波間信子(講談社) 2005.05
「お帰り!盲導犬オリバー ぼく、みんなのこと覚えているよ」 今泉耕介(ハ−ト出版) 2005.04
「盲導犬ジョナと登った3000m 挑戦しつづける、宮本武」(点字・録音・デイジー) 石黒謙吾(学習研究社) 2005.03
「サングラスをかけた盲導犬(おはなしガ−デン ) 」 手島悠介・吉崎誠(岩崎書店) 2005.03
「涙、ぽろり 盲導犬パピーウォーカー」(点字・録音・デイジー) 水田茉莉(文芸社) 2005.02
「大きなチビ、ロイド 盲導犬になった子犬のものがたり」(点字) 河相洌(文芸社) 2005.01
<雑誌>
「レトリーバー」2,4,6,8,10,12月号((エイ)出版社)
 もっと知りたい!盲導犬ホントの話 STAGE2誕生
「ルシャン」4月号(扶桑社)
 わんわん共和国通信
「G-life」9号(うちのコ元気!事業部)
 盲導犬、博学への道
「ノーマライゼーション」10月号(日本障害者リハビリテーション協会)
 1000字提言 盲導犬のトイレについて思うこと
「点字民報」3月号(全日本視覚障害者協議会)
 渡辺 宏「盲導犬における現状と課題」
「月刊 悠(はるか)」7月号(ぎょうせい)
[インタビュー]FRONT RUNNER  盲導犬訓練士 多和田悟さん
<研究論文>
「身体障害者補助犬法の現状と課題−改正に向けた研究と提案−」
 日本盲導犬協会,2005.3
「盲導犬使用が視覚障害者のQOLに与える影響−盲導犬使用時と白杖使用時の比較を通して−」
 石上智美,徳田克己(アジア障害社会学研究),2005.5
「盲導犬使用者の感じる盲導犬に関する問題点」
 石上智美,徳田克己(健康科学大学紀要),2005.1
「盲導犬とのふれあい体験が盲導犬に関する児童の認識に与える影響」
 石上智美,徳田克己(どうぶつと人 比較心身症研究会誌),2005.12

編集後記

今回、編集作業が大幅に遅れ、発行が遅くなりました。申し訳ありません。
 今年は戌年。ふと思い返せば、全日本盲導犬使用者の会ができたのも戌年でした。その頃には思いも寄らなかった新しい法律、補助犬法ができ、そして補助犬学会が設立され・・・。ここ数年、少しずつ何か動き出しているような感じです。これだけ時期がずれてしまうと、いささか間が抜けてしまいますが、はてさてどんな戌年の一年になるのでしょう。(久保)