盲導犬情報 第50号(2006年7月)



内容




身体障害者補助犬法改正案の提出 見送られる

身体障害者補助犬法の見直しについては、2002年5月に成立した当初より「この法律の施行後三年を経過した場合において」身体障害者補助犬の育成や使用状況、社会の受け入れ状況等について検討し、「その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるもの」となっていました。
 そのため、昨年9月には、全国盲導犬施設連合会(塩濱良夫会長)と身体障害者補助犬法改正対策使用者団体連絡協議会(竹前栄治会長・以下「補改使連」という)が「身体障害者補助犬法の見直しに関する要望書」を厚生労働省に提出。使用者の声を生かした見直しになるよう求めました。
 今年3月には、身体障害者補助犬を推進する議員の会(津島雄二会長・以下「議員の会」という)の総会が開かれ、補助犬使用者との質疑応答・意見交換がなされました。
 4月には、全国盲導犬施設連合会と補改使連が議員の会に対して要望書を提出。
 一方、厚生労働省は「身体障害者補助犬法の施行状況に関する検討会」を設置。「法施行後における補助犬の普及啓発や社会での受入などの身体障害者補助犬法の施行状況について、補助犬に携わる関係者のそれぞれの立場から意見を伺い、今後どのような取り組みが有効か本検討会で検討すること」とし、検討会を3月から5月の間に3回開催し、6月には報告書を提出しました。
 この報告書のPDFファイルは、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。ホームページアドレスは以下の通りです。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/s0608-3.html


報告書の概略を以下にご紹介します。

1. 身体障害者補助犬法の施行状況

(1)訓練事業者の推移
身体障害者補助犬を育成する訓練事業者は、法施行後の平成15年4月時点で、介助犬2団体、聴導犬1団体、盲導犬9団体の計12団体であったものが、平成18年3月1日現在で、介助犬22団体、聴導犬19団体、盲導犬9団体の計50団体となっている。
 なお、介助犬と聴導犬を併せて育成している事業者が14団体あることから事業者数は36団体である。
(2)指定法人数の推移
平成16年4月時点で、介助犬4団体、聴導犬3団体、盲導犬9団体であったものが、平成18年3月1日現在では、介助犬5団体、聴導犬5団体、盲導犬9団体となっている。
(3)身体障害者補助犬の実働頭数及び待機数
身体障害者補助犬として指定法人から認定された後に実働している頭数は、平成18年3月には、介助犬30頭、聴導犬11頭、盲導犬957頭(平成17年3月末)となっている。  身体障害者補助犬を希望する者のうち、自治体による育成事業等の助成を待機している者は、平成17年8月末現在で、盲導犬124人、介助犬4人、聴導犬3人となっている。(厚生労働省アンケート結果)
(4)身体障害者補助犬に対する社会の理解
訓練事業者30団体中20団体、指定法人4団体中全法人、61自治体中49自治体が、身体障害者補助犬に対する社会の理解は進んだと評価している。(厚生労働省アンケート集計結果)
(5)補助犬の受入れ
使用者団体が行ったアンケートによれば、一部に同伴の受入拒否があるとの結果がでている。
 また、研究者などの発表資料によれば、身体障害者補助犬の受入れに対する意識は、法律施行後向上しているものの、一部には消極的な施設もあるとの結果が出ている。
(6)普及啓発
厚生労働省の取り組みは、ポスター、パンフレット、リーフレット、ステッカーの配布や政府公報、ホームページの公開等をこれまで行ってきた。
 訓練事業者の取り組みは、学校や地域イベント等への参加、セミナー、シンポジウム等の開催を中心としたものとなっている。(厚生労働省アンケート集計結果)
 自治体の取り組みは、ポスター、リーフレット、ステッカー等印刷物の掲示・配布、セミナー、シンポジウム等の開催、自治体広報誌等での広報が主なものとなっている。(厚生労働省アンケート集計結果)
(7)相談窓口
補助犬使用者又は住民等から補助犬に関する相談や苦情があった場合の自治体の対応は、61自治体のうち補助犬を担当する課が48自治体、委託先が5自治体、その他8自治体となっている。
 また、市町村又は福祉事務所等で相談や苦情に対する体制をとっている自治体は61自治体中11自治体であり、他の自治体は県の本庁で対応している。(厚生労働省アンケート集計結果)

2. 検討課題

検討課題については、第1回目の検討会において、次のとおり整理された。

[補助犬の普及啓発に関すること]
○法及び補助犬に関する啓発の推進について
○使用者の義務、マナー等の周知方法について
[補助犬の社会での受入れに関すること]
○法に関する事項に係る相談機関(体制)の整備について
○事業者又は事務所、住宅への補助犬の受入義務化について
○法を遵守しない場合の指導、罰則について

3. 検討課題に係る関係団体からの意見・要望と検討会としての意見

(1)補助犬の普及啓発に関すること

1. 法及び補助犬に関する啓発の推進について

(関係団体からの主な意見・要望)
・補助犬について、全く理解していないためペットと同じだと誤解をされ、施設への「入場・入店・入室」を拒否される場合が多く、まだ社会全体に補助犬の理解が進んでいない。
・補助犬の実際の利用状況を見ていただくことが、補助犬への理解を深めるためには最適であるため、訓練事業者、補助犬使用者による啓発活動がより重要であり効果的。
・国、都道府県等の積極的な普及啓発を望む。
(検討会における意見)
○法施行から3年が経過し、施行前に比べると補助犬に関する社会の理解は進んだものの、補助犬のことをよく知らないことから同伴拒否するなどの事例が見受けられることから、引き続き、実効性の高い普及啓発活動が必要である。
○普及啓発活動の主体としては、国、地方公共団体の他、補助犬を使用している障害当事者や訓練事業者等、関係者による普及啓発活動も望まれる。
○社会への普及啓発活動の具体的な案としては、
 ・補助犬使用者・受入れ側双方からの苦情・相談に関する相談対応マニュアルを作成、関係者への周知
 ・自治体の関係部局の職員等や学校における児童に対する啓発や研修の実施
 ・公的施設等におけるポスターの掲示
 ・障害者週間などにおけるイベント活動の実施
 ・新聞・ラジオ・テレビ等のメディアの活用
 ・補助犬や一定程度の能力を有する訓練犬によるデモンストレーションの実施
 ・介助犬及び聴導犬を必要とする障害者等に対し、有効性等を具体的に周知
などが考えられる。

2. 使用者の義務、マナー等の周知方法について

(関係団体からの主な意見・要望)
・受入れを進めるためには、補助犬使用者が補助犬の衛生を確保する等の適切な管理を行うことが必要。
・使用者として、補助犬の適切な管理に対する自覚を高めるため、使用者教育の仕組みが必要。
(検討会における意見)
○補助犬の行動の管理や衛生の確保などのマナーの遵守は、補助犬の受入れ義務化を推進する上で重要。
○訓練事業者は使用者に対する研修を定期的に行うなど、マナーが遵守されるよう使用者教育に責任をもってあたる必要があるほか、地方公共団体による訓練事業者に対する指導も継続的に行う必要がある。
2. 補助犬の社会での受入れに関すること

(1)法に関する事項に係る相談機関(体制)の整備について

(関係団体からの主な意見・要望)
・受入れ拒否に関する苦情申立て救済機関、調整窓口がどこかについての周知や関係機関の連携が図られていない。
(検討会における意見)
○補助犬についてのみ新たな相談機関を新設するのではなく、障害者が地域で生活する上で生じる様々な相談の一つとして、既存の機関において実施することが有効なのではないか。
○障害者の社会参加推進の観点から、これを担当する地方公共団体の障害福祉部局の行政機関が中心となって、関係機関(人権擁護を担当する法務局や地域保健を担当する保健所等)と連携して、受入れ拒否等に対する相談に対応すべき。
○今後、国及び地方公共団体における関係機関の連携体制の整備を進めるとともに、相談のための指針、マニュアル等の作成に関する検討が必要。

(2)事業所又は事務所、住宅の受入れ義務化について

(関係団体からの主な意見・要望)
・民間の事業所、事務所、住宅等の受入れについて、努力規定から義務規定へすべき。
(検討会における意見)
○事業所又は事務所、住宅の受入れ義務化については、社会的認識の定着がある程度図られた後に取り組むべき課題であり、まずは実効性のある普及啓発活動を行うべき。

(3)法を遵守しない場合の指導、罰則について

(関係機関からの主な意見・要望)
・悪質な補助犬受入れ拒否業者に対する罰則規定を新設してはどうか。
・法が周知されていない現状があり、罰則を設けるのは時期尚早ではないか。
・法の趣旨・目的を考えると、罰金や懲役のような罰則は馴染まないことから、受入れを拒否した場合の個人名や法人名あるいは施設名の公表を行うこととしてはどうか。
(検討会における意見)
○何らかの制裁措置を課すことは、法の実効性を高めるための有効な手段の一つとなりうる。
○その手段としては、(1)罰則を設けること。(2)受入れを拒否した場合の氏名の公表等が考えられる。
○(1)については、身体障害者の施設の利用の円滑化という、法の趣旨・目的に照らすと制裁措置として罰金等の罰則には馴染まないのではないか。
○(2)の違反事業者の公表を行うには、適用に当たっての基準を設ける必要があることや公表に伴う受入業者に対する社会的制裁の影響の大きさを考えると、十分な事前準備や補助犬に関する社会的理解が進んでいることが必要である。
○また、障害者基本法の基本的理念や国連における障害者の権利条約の検討状況、人権侵犯事件に対して法務省の人権擁護機関が救済措置を講じていること等を踏まえると、受入れ拒否に対する措置についても障害者施策全体の議論の中で検討すべき事項の一つであり、補助犬法のみで早急に結論を出すべきではないと考える。
○このため、理解不足による受入れ拒否が行われている現状を考えると、制裁措置については、今後の検討課題とし、まずは実効性のある普及啓発活動を進めることが必要。

4. 関係団体からのその他の意見・要望で主なもの

以上の他、第2回目の検討会における関係団体からの意見・要望として以下のものがあった。

報告書は、最後に以下のようにまとめて終わっています。
 「本検討会では、身体障害者補助犬法の施行状況を調査した上で、補助犬使用者や訓練事業者、補助犬を同伴した身体障害者を受け入れる関係者等のご意見を踏まえ、今後どのような取り組みが必要か等について検討を行った。
 法施行後3年が経過するが、補助犬に関する知識がないことから、受け入れが拒否される事例が多いなど、未だ補助犬に関する社会的認識の定着が不十分な状況であり、まず実効性のある普及啓発活動を行うことが最優先課題であると考えられる。
 また、補助犬の同伴を拒否された場合や、補助犬を受け入れるために留意すべきこと等の相談を行う機関の周知や関係機関の連携が図られていないこと、相談に対するノウハウが共有されていない等から、今後関係機関の連携体制の整備や、相談マニュアルの作成を行う必要がある。
 さらに、社会での定着がある程度図られた後の将来的な課題として、住宅や事業主の受入れを義務とすること、義務規定に違反した場合の制裁措置を規定することが考えられるが、社会的認識の定着状況や具体的な指導指針の作成の検討等、障害者施策全体の中での議論や他の法体系との整合性、さらには国連における障害者の権利条約の動向等を踏まえながら、検討を進める必要がある。」

当初、議員の会では先月閉会した第164回国会に改正案を提出する見通しでしたが、結局、提出は見送られました。しかし、9月に開かれる臨時国会において、改正案の提出が検討されるものと思われます。そこで、補改使連では現在、請願署名活動に取り組んでいます。署名は8月31日までに集約し、法の改正を要望していく予定です。
 要望する改正点としては、請願事項としては、補助犬使用の受け入れが努力義務に留まっている「民間の住居・職場・学校」での受け入れ義務化を挙げています。
 署名用紙は、補改使連のホームページの中の次のアドレスからプリントアウトすることができます。
http://www.geocities.jp/hokaishiren/shomei-top.html

または、「盲導犬情報」墨字版にも縮小したものを掲載しています。使用される場合は、A4版の大きさに拡大コピーしてお使いください。なお、署名される場合は、以下の点についてご注意ください。

この署名運動についてのお問い合わせは、身体障害者補助犬法改正対策使用者団体連絡協議会(補改使連)・事務局までお願いします。お問い合わせ先は以下の通りです。

〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-1-1901
TEL&FAX 043-243-3445
Mail:hokaishiren@yahoo.co.jp
http://www.geocities.jp/hokaishiren/

盲導犬使用者の会(Guide Dog Users, Inc.)による盲導犬学校に対する調査結果報告(4)

引き続き、アメリカ合衆国の盲導犬使用者の会(Guide Dog Users, Inc.以下「GDUI」)が合衆国内の盲導犬学校に対して行ったアンケート調査をご紹介いたします。今回は、各盲導犬学校が行なう誘導作業の標準と訓練評価についてです。
 今回も、この調査に回答した盲導犬学校10校と回答書中の略記号、それぞれの学校のホームページアドレスを最初にご紹介してから、調査結果について掲載しています。

【回答した盲導犬学校10校と回答書中の略記号。ホームページアドレス】

【誘導作業の標準と訓練評価】

1. 以下の事項で、貴校の訓練プログラムに含まれているものはどれですか?

(当てはまる全てをチェックする)

<情報室注>各項目についてほとんどの盲導犬学校が実施しているので、逆に実施していない項目と学校名を以下に記載します。

2. 正式な訓練期間は、

3. 盲導犬の誘導能力や作業をこなす能力を判断するために、正式な試験は行われますか?

4. 訓練課程を訓練生の状況に合わせることは

5. 訓練を終了して、視覚障害者に提供された盲導犬のパーセンテージを2003、2002、2001、2000の順番に示してください。
FID
90%(2003) 85%(2002) 80%(2001) 85%(2000)が訓練を終え、使用者に渡された。
FREE
100%(2003) 90%(2002) 100%(2001) 85%(2000)
GDF
このような形式のデータはない。
GDB
65%(2003) 58%(2002) 63%(2001) 54%(2000)
GDA
100%(2003) 100%(2002) 100%(2001) 100%(2000)
GEB
無回答
KSDS
90%(2003) 90%(2002) 90%(2001) 90%(2000)
LDB
無回答
SGD
65%(2003) 68%(2002) 70%(2001) 68%(2000)。65%〜70%で一定している。
TSE
卒業する犬は年によってさまざまであり、何頭訓練されたかというよりも、その年に訓練を受ける訓練生の状況に拠る。
6. 提供された盲導犬のうち、学校に戻ったパーセンテージは、2003、2002、2001、2000の順番に示してください。
FID
10%(2003) 15%(2002) 20%(2001) 15%(2000)
FREE
0%(2003) 8%(2002) 0%(2001) 16%(2000)
GDF
そのような形式のデータはない。
GDB
まだまとまっていない(2003) 12%(2002) 14%(2001) 10%(2000)
GDA
情報がない
GEB
3.47%(2003) 9.93%(2002) 5.41%(2001) 3.55%(2000)
KSDS
0%(2003) 0%(2002) 0%(2001) 0%(2000)
LDB
5-8%(2003) 無回答(2002) 2%以下(2001) 無回答(2000)
SGD
過去5年の平均は約5%。戻った5%の犬のうち、3%相当の犬は再び盲導犬に、残りの2%相当の犬はプログラムから除外される。
TSE
学校に戻ってくる犬の数は、戻ってくる理由に拠る数字である。犬が戻ってくる理由も一つではない。説明がなされない数字は誤った結論を導くことになる。
7. 上記では言及されなかった盲導犬の訓練について、下記の余白に記入してください。
FID
使用者の個別のニーズに応えている。
FREE
無回答
GDF
無回答
GDB
エスカレーターを利用する訓練
GDA
無回答
GEB
エスカレーターを利用する訓練、回転ドアの訓練、ジェントル・リーダーを付けた訓練、目印の訓練、反対条件付けの訓練
KSDS
無回答
LDB
無回答
SGD
エスカレーターを利用する訓練、海辺の訓練
TSE
無回答

盲導犬の平均寿命

「盲導犬はストレスを抱えているので、寿命が短いんでしょう」という質問を受けたことのある盲導犬ユーザーも多いと思います。
 では、ラブラドールリトリーバーやゴールデンリトリーバーのような中型犬の平均寿命とはどれぐらいなのでしょうか。本当に盲導犬は、ペット犬に比べると寿命が短いのでしょうか。そんなことはない、と噂を打ち消したいところですが、平均寿命がどれぐらいかがわからないままでは、はっきりと断言はできません。
 今回、全国盲導犬施設連合会では、加盟している8団体の協力を得て、盲導犬の平均寿命を算出しましたので、ご報告します。
 盲導犬もしくは盲導犬をリタイアした犬447頭のうち犬種・性別が不明な34頭を除外して計算したところ、全体の平均寿命は12歳12ヶ月(12才11ヶ月以上12ヶ月未満)となりました。
 死亡年齢別にみると、14,15才で死亡した犬が約3割を占めています。また、17才で死亡した犬も1.2%いることがわかりました。

死亡年齢 頭数  
2才 5 1.2%
3才 4 1.0%
4才 4 1.0%
5才 6 1.5%
6才 11 2.7%
7才 11 2.7%
8才 12 2.9%
9才 9 2.2%
10才 21 5.1%
11才 29 7.0%
12才 57 13.8%
13才 56 13.6%
14才 68 16.5%
15才 70 16.9%
16才 45 10.9%
17才 5 1.2%
合計 413 100.0%

一般のペット犬の平均寿命の調査としては、東京農工大学の林谷秀樹助教授が行ったものがあります。2002年から2003年までの1年間、約3200頭を調査対象として算出されたペット犬の平均寿命は11.9才。これらの調査結果をみれば、盲導犬の平均寿命はペット犬よりも長く、「盲導犬は短命」といううわさは根拠のないものと言えるでしょう。
 ところで、今回の調査では、過去の盲導犬の犬種や雌雄の比率も出ています。
 犬種としてはやはり圧倒的にラブラドールリトリーバー種が多く、全体の88.6%を占めています。次いでゴールデンリトリーバー種が5.1%、ラブラドールとゴールデンの一代雑種が4.8%、ジャーマンシェパード種が1.4%。
 また、盲導犬候補犬の多くが1歳になる前に去勢・避妊の手術をしているため、あまり性差はないようですが、413頭のうち、牡は27.5%、牝は72.4%で、牝の方が多くなっていました。

中国でも始まる盲導犬育成事業

現在、アジアの中で盲導犬を育成しているのは、日本、韓国、台湾。中国には約877万人の視覚障害者がいるそうですが、盲導犬ユーザーは一人もいません。
 中国政府のホームページによれば、中国の北東、遼寧省大連市にある大連医科大学では、2004年から盲導犬の育成・訓練を始めており、最初に訓練された6頭がもうすぐ視覚障碍者に提供される予定とのこと。ホームページには、今年5月に撮影された、女性の視覚障害者が歩行指導を受けているらしい様子の写真も掲載されています。
 このような中国での盲導犬育成事業に(財)日本盲導犬協会が協力しています。今年6月には、中国で盲導犬のデモンストレーションを行ったり、子犬を寄贈したそうです。
 大連医科大学にある盲導犬訓練センターの所長であり、動物行動の専門家でもあるワンさんは、5年間のうちに、毎年20頭の盲導犬を育成する体制を作りたいと考えておられるようです。
 2008年には中国でパラリンピックが開催される予定です。中国は、そのパラリンピックを一つの契機として、盲導犬の育成・普及を進めたい考えのようです。ワンさんによれば、レストランやホテル、飛行機などを利用する際に、盲導犬を同伴する視覚障害者が何らかの問題に出会うこともあるだろう、とのことです。育成もさることながら社会の理解促進も重要であることは、日本と同じかもしれません。

盲導犬ユーザーのコーナー

5頭の盲導犬と出会って

奈良県 清水 佳子

35年前の6月のある日、千葉盲学校に勤めている友人から突然私の職場に
「私、盲導犬をもらいにアメリカに行くことになったのだけれど、あなたも一緒に行かない?」
と言う電話がありました。私は、即座に
「行く、行く」
と答えていました。

視覚障害者にとって最も不自由なことは、歩行と文字の読み書きであると、そのころの私は常々思っていました。それに子どもの時から犬が大好きで、盲導犬について何も知らないのに、いつか盲導犬を持ちたいとずうっと思っていました。
 当時の国内の盲導犬事情に全く無知であったからこそ、友人からの誘いにすぐにそのように答えられたのだと思います。彼女と一緒ならば、英語ができなくても彼女の英語力でなんとかなると思ったことも事実でした。そして、7月末には、私達は、サンフランシスコにいました。
 8月上旬から4週間、ロサンジェルスの近くのトパンガというところにあるEye Dog Foundationという訓練所に入って、わからない英語と異文化社会の中で、ドキドキ・ワクワクの毎日を過ごしました。今思い起こすと、全て楽しく貴重な体験をさせていただいたと感謝しております。
 そんな無知な私と一緒に日本にきた可愛そうな盲導犬ブリジェットは、ジャーマンシェパードの大きな2歳の女の子でした。本県最初の盲導犬ですから、電車にもバスにも乗れない状態でした。バス会社と交渉の結果、やっとのこと、口輪を着けてならということでバス乗車を許されて、盲導犬と通勤をはじめました。
 雨降りの日にはゴミ袋を着せて歩きました。先輩の同僚の口添えでブリジェットは職員室に置いていただき、皆さんに可愛がってもらいました。
 ところが、誰かが私のいない間に食べ物を与えたり、中庭に連れ出して走らせて遊んだりするなど、盲導犬にとってふさわしくないこともいろいろあったようでした。
 適当なフォローアップが受けられないまま8年がすぎ、いつしかブリジェットは、ごみ箱に顔を突っ込んだり、机の上に置かれてある食べ物を通りがかりにジャンプして食べたりするようになってしまいました。  これらのことはコントロールする私の力量不足と、周囲の人たちに盲導犬を理解してもらうすべを持たなかった私の責任でした。盲導犬使用者として全く未熟な私と生活するためにはるばるアメリカから来たブリジェットには、本当に申し訳ないことをしたと思っています。
 彼女は盲導犬の優しさと歩行の自由を私に教えてくれました。

ブリジェットを親戚に引き取ってもらい、私は日本ライトハウスで、2頭目の盲導犬の訓練を受けました。
 当時はまだ、県の予算がなくて自費で受けることになっていましたが、ボランティアの方々により、費用の半分は募金で助けていただきました。そして翌年から日本ライトハウスの盲導犬には、県の予算がつくようになりました。
 2頭目の盲導犬エミーはイエローのラブラドールでした。
 母の手作りのコートやレインコートを着て、毎日一緒に出勤し、出張や校外学習や学校行事にも参加しました。
 12歳で胃捻転を起こしましたが、九死に一生を得て14歳まで生きて、私達親子のもとで息を引き取りました。

3頭目からは関西盲導犬協会で訓練を受けるようになりました。
 3頭目のジニーはゴールデンリトリバーでした。
 ジニーはふさふさの毛がウエーブして、長いしっぽをゆらゆらさせながら、お尻を振って歩くので、みんなからモンローウォークだと言われました。
 のんびりした性格で、速く歩いてほしいと思ってもいつもマイペース。みんなと歩いたら落ちこぼれそうなので、手引きしてくださいと言ったこともありました。プラットホームや乗る電車の入り口に人がいっぱいいるときは、彼女にとっては、障害物ばかりで、歩けないということのようで、私が盲導犬を先導して歩かなければならないことも時々ありました。
 ジニーと暮らして5年目、私は体調を崩して、入院して手術を受けました。そして翌年退職しました。体力の回復とともにジニーとの生活を楽しもうと思っていた矢先、ジニーは突然一夜のうちに亡くなってしまいました。
 そのことは今思い出しても胸が痛みます。夜9時ごろ具合が悪くなってきたようなので、獣医さんに電話をしましたが、留守電の録音が流れるばかり!「朝まで頑張って!」となでなでしているうちに、12時ごろピクピクと痙攣して、8歳の誕生日を目前に息を引き取りました。

4頭目の盲導犬はディーナ、イエローのラブラドールでした。
 ジニーに比べると積極的で要領のよいやんちゃ娘でした。
 私のところに来て、1週間経つか・経たないうちに、小学校にお話に行きました。それ以来、8年間、ディーナとあちこちの学校や公民館などを回りました。
 また、末期がんの母の介護をする私に寄り添って、病床の母に教えられた路をたどって買い物に歩いてくれました。
 そして、母をおくった後の私の寂しい心を慰め、励ましてくれました。拾い食いや青い草を食べに行く悪い癖は、私のコントロールでは直りませんでしたが、それだけにディーナには、どんな場面に遭遇してもあまり動じない楽天的な面がありました。しかし一方で、引越しを前にして手首を骨折してしまった私の心の動揺を敏感に受け止めて、ディーナ自身が一緒に体調を崩して痩せ細ってしまうほど、デリカシーも兼ね備えたパートナーでもあったのです。
 8年3ヶ月私と暮らしてくれたディーナは、11歳1ヶ月で引退し、リタイア犬ボランティアさんのお宅で、今わがまま三昧に暮らしています。

私のところには、5頭目の盲導犬オニールが来ました。
 彼女はゴールデンリトリバーのとても「いい子」です。
 今の私の体力でも一緒にゆっくり歩いてくれる子、ひろい食いをしない子という私の希望通りの子にめぐり合わせていただいたのでした。
 彼女と生活をはじめて、まだ3ヶ月、前の4頭の盲導犬が私の人生のそれぞれの場に寄り添っていてくれたように、オニールもまた、(老い)という厳しい現実と向き合っている私に寄り添ってどのような犬生をおくることになるのでしょうか?

30年あまりの歳月、いつも私の隣にいてくれたユニークで愛らしいパートナーたち。思い出深い彼女らは「みんな違って、みんないい」子たちでした。
 盲導犬と出会って、ともに歩む私の人生を幸せに思います。
 そして、このような「ユーザーの幸せ」のために、仕事とはいえ、ご苦労いただいている育成団体の皆様方と、「盲導犬の一生」のどこかに関わって、それを支えてくださっている数多くのボランティアの皆様方に心より感謝申し上げます。

盲導犬情報ボックス

日本の盲導犬使用者数

社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会リハビリテーション部会盲導犬委員会の「2005年度盲導犬訓練施設年次報告書」を参考にして2006年3月31日現在の日本の盲導犬使用者数を出すと、次のようになりました(報告書は都道府県政令指定都市別に盲導犬実働数をまとめていますが、ここでは都道府県別に盲導犬使用者数でまとめています)。

北海道 55名 青森県 2名 岩手県 15名 宮城県 10名
秋田県 14名 山形県 3名 福島県 11名 茨城県 18名
栃木県 16名 群馬県 6名 埼玉県 53名 千葉県 32名
東京都 81名 神奈川県 59名 新潟県 25名 富山県 8名
石川県 25名 福井県 5名 山梨県 11名 長野県 30名
静岡県 37名 愛知県 37名 岐阜県 13名 三重県 11名
滋賀県 10名 京都府 18名 大阪府 56名 兵庫県 62名
奈良県 13名 和歌山県 12名 鳥取県 9名 島根県 9名
岡山県 17名 広島県 33名 山口県 14名 徳島県 7名
香川県 7名 愛媛県 16名 高知県 9名 福岡県 23名
佐賀県 8名 長崎県 7名 熊本県 19名 大分県 11名
宮崎県 13名 鹿児島県 19名 沖縄県 6名 合計 975

日本に在住の盲導犬使用者は、975名。前年度に比べると7名減っています。また、975名のうち6名は、海外など他の盲導犬訓練施設で育成された盲導犬を使用している方で、北海道盲導犬協会、日本盲導犬協会、中部盲導犬協会、関西盲導犬協会がそれぞれの盲導犬について認定をしました。
 なお、1頭の盲導犬を夫婦二人で使用するタンデム方式の盲導犬使用者は昨年度より2組少なく17組になりました。したがって使用者数は975名ですが、盲導犬実働数は958頭(認定した盲導犬を含む)となっており、昨年度より5頭少なくなっています。
 タンデム使用者を育成施設別にみると、北海道盲導犬協会1組、日本盲導犬協会2組、関西盲導犬協会4組、日本ライトハウス6組、兵庫盲導犬協会1組、福岡盲導犬協会3組となっています。都道府県別では、北海道1組、東京都1組、新潟県1組、愛知県1組、大阪府1組、兵庫県3組、和歌山県2組、岡山県1組、広島県1組、山口県1組、島根県1組、福岡県2組、熊本県1組となっています。

1年間の育成頭数でみると、2005年度は129頭(認定犬を含む)。盲導犬使用者数は前年度に比べると減っていますが、育成頭数は4頭増えています。
 また129頭の育成頭数のうち新規の使用者のパートナーとなったのは57頭、代替えは72頭で、年間育成頭数の565.8%が代替えとなっています。
 新規より代替えの方が多くなっていますが、それでも昨年度は、62頭の盲導犬の使用者は、盲導犬が死亡または引退したが、代替えの盲導犬を希望しなかったか、希望しても年度末までに代替えの盲導犬を得られなかったのではないかと考えられます。

編集後記

補助犬法の改正は見送られましたが、バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)、学校教育法の一部改正など、関わりの深い法律がいくつか新しくなりました。4月から実施されている障害者自立支援法も、盲導犬事業にどのような影響があるものなのか………。五里霧中といった心持ちでいるのは私だけ?(久保)