盲導犬情報 第51号(2006年10月)



内容




障害者自立支援法について

和洋女子大学 坂本洋一

<はじめに>

平成18年4月から、障害者自立支援法が一部施行されています。本格的には、10月からの施行の分が多いようです。盲導犬関係者の皆様にはあまり関係ないと思われているようです。盲導犬事業に特化した法律の改正とはなっておりませんが、障害者自立支援法の改正の趣旨を理解し、今後の盲導犬事業がどのように変わろうとしているのかを知っておくことは重要なことです。盲導犬情報の読者のほとんどの方は、なぜ私がこのような記事を寄稿するのだろうか、という疑問をお持ちだと思いますので、少し自己紹介をしたいと思います。

私が、盲導犬事業と関係するようになったのは、平成2年の頃です。それ以前には、海外研修中にアメリカの盲導犬訓練センターを見学に行った経験があります。この見学中に盲導犬による歩行体験をし、アメリカの盲導犬はなんと早足なのだろうという印象と混雑地域での歩行が白杖歩行とは異なりとても快適な歩行だなあと感じたことがあります。平成2年に国立身体障害者リハビリテーションセンターの学院に視覚障害生活訓練専門職員養成課程が設置され、主任教官として仕事をすることになりました。そこで、教育カリキュラムを作る際に盲導犬への理解を深める科目を必要としました。それまで、視覚障害者のリハビリテーションに携わっていたことから、盲導犬に対する知識や理解は少々もっていました。これからの白杖の歩行を指導する訓練士は、盲導犬の知識を習得し、視覚障害者に適切な情報を提供する役割を担ってほしいと考えていました。このような理由から、関西盲導犬協会の訓練センターにおいて2泊3日で集中的に盲導犬を理解するプログラムを実行しました。それ以来、盲導犬に対して一層愛着をもつと同時に盲導犬事業が視覚障害者のリハビリテーションの中に組み込まれることを願っていました。仕事の上では、全国盲導犬施設連合会が主催する「盲導犬歩行指導員養成カリキュラム検討委員会」の委員長として微力ながら報告書をまとめました。私的には現在、ゴールデンを家庭犬(ブランコという名前)としてもち家族の一員としてわが家の主役になっています。このような背景でこの記事を寄稿していることを理解していただければと思います。

<障害者自立支援法の何を知る必要があるか>

 さて、障害者自立支援法の話になりますが、障害者自立支援法をどのように捉えるかという問題は、視覚障害者の方々にとって恐らく一人ひとり異なっているだろうと思います。障害者自立支援法を考えるとき、盲導犬ユーザーの方は、盲導犬事業だけでなく、自分自身の生活がこの法律によってどのように変わるのだろうかという関心をお持ちだと思います。あるいは、盲導犬事業に携わっている職員の方は、身体障害者補助犬育成事業がどのように変わるのだろうかという点に関心をもたれると思います。この法律によって、視覚障害者の生活は何が変わるかという点は、障害者自立支援法を全般的に知る必要があります。例えば、障害者自立支援法による障害福祉サービスは、どのように変わり、何が自分自身の生活に影響を与えるのか、障害福祉サービスを利用する際の利用者負担はどのように変わるのか、などを自分自身の生活の視点で捉える必要があります。一方、身体障害者補助犬育成事業はどのように変わるのだろうか、という疑問は障害者自立支援法の一部を理解すれば十分だと思います。

<身体障害者補助犬育成事業はどのように位置づけられたか>

まず、身体障害者補助犬育成事業はどのように変わるのかという点から始めましょう。今まで、盲導犬育成事業は、障害者自立支援・社会参加総合推進事業の都道府県・指定都市事業の中の「身体障害者補助犬育成事業」として実施されていました。障害者自立支援法では、身体障害者補助犬育成事業は、地域生活支援事業として位置づけられることになります。地域生活支援事業は、この法律によって法定化された事業です。地域生活支援事業は、都道府県地域生活支援事業と市町村地域生活支援事業の2つの事業を指しています。身体障害者補助犬育成事業は、都道府県地域生活支援事業の中に入っています。都道府県地域生活支援事業は、都道府県が必ず実施しなければならない必須事業と都道府県の判断により実施するその他の事業に分かれています。(障害者自立支援法第78条)身体障害者補助犬育成事業は、都道府県の判断により実施する事業として考えられており、必須事業ではありません。都道府県の判断によって実施されることになりますが、では本年10月から身体障害者補助犬育成事業が現状から消えてしまうかというとそうではありません。都道府県が、現状のサービスを低下させるような判断をするとは思われません。

<身体障害者補助犬育成事業を定着させる方法は?>

障害者自立支援法には、障害保健福祉サービスを計画的に整備する観点から障害福祉計画の策定義務を規定しました。したがって、都道府県及び市町村は必ず障害福祉計画を策定しなければなりません。(障害者自立支援法第87・88・89条)都道府県障害福祉計画には、地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項を盛り込むことが決められています。そこで、身体障害者補助犬育成事業を定着させるには、障害福祉計画策定の作業段階で、団体として都道府県に要望することが重要になってきます。その際、それぞれの都道府県では何頭の盲導犬を育成すべきかを明らかにする基礎資料を常に準備しておくことが肝要です。盲導犬を必要としている人が、どれぐらいの数いるかをそれぞれ都道府県毎にデータとしてもっているとよいと思います。これからの障害福祉行政は、国を相手にすることも必要ですが、都道府県に対するアプローチを重視することが重要になってきます。

<障害者自立支援法の制定の意義>

なぜ、今、障害者自立支援法なのかという問いに対して、障害者自立支援法の制定の意義という観点から思うところを述べてみたいと思います。そうすることによって、障害者自立支援法が視覚障害者の福祉にどのように関わってくるか関心をもっていただければと思います。

私たちの障害者福祉の制度は、戦後の措置制度から支援費制度へ移行し、行政がサービスやサービス提供先を決めていた時代から、障害者がサービスを選択し、サービス提供者と契約を結んでサービスを購入する仕組みになりました。支援費制度への移行は、大きな変化をもたらしました。具体的には、サービス提供現場において、利用者主体のサービス、障害者の自己決定の尊重等が強調されるようになりました。これらの理念は、関係者の賛同を得られ、新たな障害者福祉の推進の出発として、利用者主体、権利擁護等が核になってきています。

しかしながら、支援費制度は、基本的には障害者が福祉サービスを利用する際の支援費支給手続の改正に留まり、障害者福祉行政全般の改革はなされませんでした。例えば、地域生活への移行を提案しながら、地域生活を支える仕組みが方策として具体化されなかったこと、施設サービス体系が複雑で障害者が選択しようとしても施設機能は明確になっていなかったこと、障害者の所得保障の課題が残されたこと、相談支援体制の構築が不十分であったこと等支援費制度のもとで残されてきました。

このような、課題を解決することが社会福祉構造改革の目的でしたが、今回の障害者自立支援法の制定に対して、これらの課題が山積みしていることを理解する必要があります。
私なりに、障害者自立支援法の制定の意義を考えると、以下の4点があげられます。

(1)障害種別を越えた制度設計

わが国の障害者福祉施策は、身体障害、知的障害、精神障害の3障害独自の発展を経てきています。従来も、障害者社会参加総合促進事業などのように、3障害をとりまとめる形で事業を展開してきたことはありますが、それは一部の事業に限られていました。また、障害者施設においては、厚生労働省障害保健福祉部企画課長から各自治体宛に通知を出し、身体障害者施設を知的障害者が利用できるよう相互利用制度を実施していました。精神障害者福祉においては、支援費制度は実施されておらず、3障害が共通の法律に基づくサービス提供システムを構築することは大きな課題となっていました。ここにきて、障害種別を越えて共通の基盤でサービス提供体制を構築するにいたった背景には、国際生活機能分類の障害の概念にみられるように障害のとらえ方が時代とともに変わってきたこと、地域生活という共通のキーワードが語られるようになったこと、介護保険制度の導入により個々の障害種別というより障害という大きな括りで介護の課題を考えるようになったこと、地域福祉という大きな地域社会の共通のテーマとなってきていること等があるように思われます。

このように、3障害共通のサービス提供基盤を構築する意義は大きいと思われます。しかしながら、今回の障害者自立支援法が、完全に統合した基盤となっているかといえば、まだまだ、寄せ集めの基盤づくりになっているように思われます。具体的には、障害のとらえ方において、国際生活機能分類が示すような機能障害、活動制限、参加制約の包括的な概念で障害の認定がなされているわけではありません。

(2)障害者施設の体系化の整理と効率性

障害者の施設サービスは、従来の身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律によって、それぞれ独自に体系化されてきました。そのため、障害者の施設体系が複雑になってきていました。障害者自身が自己決定のもとでサービス提供事業者と契約するためには、障害者にとってわかりやすい施設体系になっていることが必要です。

そのために必要なことは、障害者が施設サービスを利用しようとすれば、施設サービスで何を得られるかが明らかになることです。従来の施設サービスにおいては、施設に預かってからさあ何をしようかと考えることが多かったように思われます。障害者自身が施設を利用するのではなく、施設が障害者の道を決めているのではないかとすら思えます。また、障害者にとっても、ほんとうは、更生施設に入所したいが、近くに更生施設がないので、身近にある授産施設を利用しようと考えた点もあります。その典型的な例は、ある授産施設では、介護を必要とするような障害者を入所させて施設サービスを提供している。授産施設は、本来、日中活動の場を提供するための施設ですが、現実はそのようになっていないこともありました。このような社会的理由によって、施設を利用することが多々見られていました。

障害者自立支援法は、施設の機能に着目して、その機能を障害者が利用するという立場をとっています。したがって、施設はその機能を充実させようと努力し、質の高いサービス提供をしなければ、施設の運営が厳しくなってくると思われます。

障害福祉計画の策定義務

障害者自立支援法によって、障害福祉サービスの量が具体的なものとなります。従来、1995年の「障害者プラン」、2002年の「重点施策実施5か年計画」(新障害者プラン)において、障害福祉サービスの数値目標が設定されていました。これらの数値は、市町村の障害福祉サービスの必要量を積み上げて算出したものではありません。今回、障害福祉計画の策定が実施されることによって、市町村の障害福祉サービスの必要見込み量が算出され、その結果が都道府県障害福祉計画に反映され、そして、国の障害者施策の予算化に繋がってきます。市町村、都道府県、国が一体的に障害者福祉施策に取り組む基礎的なデータが明らかになります。障害者福祉が地域のなかで市民権を獲得するためにも、これらの基礎的なデータは貴重なものであり、障害福祉サービスの必要量が地域社会にオープンになってはじめて地域社会において障害者が尊厳をもって生活することの第一歩となると思われます。

在宅サービスの経費の義務化

障害者自立支援法は、支援費制度において最も制度的に困難であった在宅サービスの経費をどのように確保するかという問題に解答を出しました。従来、施設の経費とは異なり、在宅サービスの経費は裁量的経費として位置づけられていました。この経費の確保は、障害者の地域生活の命運を担っていましたが、裁量的経費であったために、国は在宅サービスの経費負担の義務を担っていませんでした。地域生活を継続するための在宅サービスの安定的な供給を確保しないで障害者の地域生活への移行を提唱しても、絵に描いた餅であったといわれても仕方がありません。今回、法律によって、自立支援給付の中の介護給付と訓練等給付については、国が2分1を負担するよう規定されました。この義務的経費の法定化は大きな前進といえます。裁量的経費と義務的経費の違いがわかりにくいかもしれませんが、簡単に述べると次のようになります。つまり、裁量的経費は、国は一定の予算を準備するけれども、使い切ったらお金は出せませんよ、という経費です。義務的経費は、法律によって、国は必ず準備しなければならないお金です。

ところで、厚生労働省は、国の責任を明確にしたと強調していますが、障害者福祉における国の責任とは何かという問題は残っているように思われる。地域生活支援事業は、今回の法律においても裁量的経費として扱われています。移動支援、コミュニケーション支援等の福祉サービスは、障害者にとっては、生活に直接影響を与えるものです。ある事業は、国が予算として確保するが、この事業は予算の義務化はないとするなら、どのような判断基準で、どのような位置づけによって、国の責任が異なっているのか明確にしなければなりません。今後、地域生活支援事業が、完全に地方自治体に委ねられるのであれば、国の責任はどこまでかが議論されるべきであると思われます。しかしながら、この問題は、社会保障という大きな問題でもあり、国民が議論を尽くして結論を出すべきだと思います。

<最後に>

障害者自立支援法の概要を述べることはできませんでしたが、今回の法律が盲導犬事業という立場からみて、どのような事柄を考慮し、どのような点に着目すべきかを述べてみました。法律の概要については、膨大な解説が必要となってきますので、ここでは限界もあり、割愛させていただきたいと思います。

*本原稿は本年8月に寄稿いただきましたものを掲載しております。

盲導犬使用者の会(Guide Dog Users, Inc.)による盲導犬学校に対する調査結果報告(5)

引き続き、アメリカ合衆国の盲導犬使用者の会(Guide Dog Users, Inc.以下「GDUI」)が合衆国内の盲導犬学校に対して行ったアンケート調査をご紹介いたします。今回は、繁殖と子犬の育成についてです。
 今回も、この調査に回答した盲導犬学校10校と回答書中の略記号、それぞれの学校のホームページアドレスを最初にご紹介してから、調査結果について掲載しています。

【回答した盲導犬学校10校と回答書中の略記号。ホームページアドレス】

【繁殖と選択】

1.次に掲げる犬種のうち、貴校で訓練している犬の種類。「その他」を選んだ場合、犬種を挙げてください。
2.それらの犬をどのようにして得ていますか?
3.繁殖に低温学、人工授精または他の科学的研究法を利用していますか?
4.子犬の寄付を受けている場合、寄付はどこからですか?

【子犬の育成/社会化】

1.あなたの学校に、盲導犬の訓練に備え、子犬を育成し社会化するための正式なプログラムがありますか?
2.育成される子犬はどんな年齢で、社会化のプロセスを開始することになっていますか。「その他」の場合、説明してください。
3.育成プログラムには、「Behind Bars Program(受刑者による飼育奉仕活動)」を採用していますか?
4.貴校では、子犬を社会化することに興味がある人は誰でも、自由にプログラムに参加できますか?
5.子犬を社会化することを希望する人々は、プログラムに参加する前に審査されますか?
6.子犬の育成プログラムを担当するのは、
7.飼育プログラムには、育成ボランティアを支援するためのガイドラインを示したマニュアルが整備されていますか?
8.社会化プログラムへの参加者は、定期的にミーティングに出席しなければならず、また、決められた手順を遵守しなければならないですか?
9.貴校では子犬の育成に、より柔軟なアプローチが定着していますか?
10.子犬は、誰が評価しますか。また、その期間は?
11.正式な訓練を受けさせるかどうかを決定する際、用いられる評価基準は、

(「12.」の質問は、なし。)

13.盲導犬としての訓練を受けるにふさわしくない子犬は、
14.盲導犬使用者と育成ボランティアの交流は、奨励、促進されていますか?
15.育成ボランティアは、使用者と卒業式で面会しますか?
16.交流するための情報は、要請があれば提供されますか?「その他」ならば、説明してください。

「補助犬使用者の住居・職場(学校)における「補助犬の受入」に関する調査」報告(1)

身体障害者補助犬法改正対策使用者団体連絡協議会(以下、補改使連という)では、今年5月から7月にかけて、「補助犬使用者の住居・職場(学校)における「補助犬の受入」に関する調査」を行いました。
 その結果について、補改使連事務局の許可を得てご紹介いたします。なお、今号では調査の概要について、次号では調査結果の詳細について、と2回に分けての掲載になりますが、ご了解ください。

1.実施時期

2006年5月〜7月にかけて実施

2.目的

身体障害者補助犬法では、民間の住居・職場(学校)における補助犬の受け入れは努力義務にとどまっているため、補助犬使用者が住居・職場(学校)を得るために苦労する例が報告されている。
実際に補助犬を受け入れている住居や職場(学校)の状況を報告することで、民間の住居・職場(学校)における補助犬の受入を推進したい。

3.実施方法

補助犬使用者へ、アンケート用紙を、郵送・メール・FAXで送付し、質問事項に対する選択および記述式回答

4.実施団体

全国盲導犬施設連合会、アイメイト協会、日本介助犬使用者の会、聴導犬使用者タッチの会

5.対象者

アンケート送付者:980人(盲導犬 958人*1、介助犬17人、 聴導犬 5人)
回答者:445人(盲導犬 434人、 介助犬 7人、 聴導犬 4人)
回答率:45%(盲導犬  45%、 介助犬41%、 聴導犬80%)
*1:アンケート送付者において、盲導犬使用者については、国内の盲導犬使用者数(タンデム使用者は1人とカウント)を表記。

6.調査結果の概要

(1)住居について

補助犬使用者の約63%が、「持家・一戸建ての住宅」に居住しており、集合住宅、賃貸住宅では、補助犬を受け入れないケースが多いためと思われる。
補助犬用の「排泄場所」を確保している例が数件あるが、受け入れ側が懸念する「補助犬を受け入れるための特別な設備」は必要なく、事前に「補助犬の同伴・入居」を、通知・掲示することで、混乱を避けられるようである。
入居後のトラブルとして、「排泄(排便の臭いや取り残し)や毛によるトラブル」、「犬嫌いの人とのトラブル」が数件あがっているが、誠意を持って話し合うことで、解決する場合が多い。
不動産関係者(家主や管理会社)が、補助犬や補助犬法をきちんと理解していないため、補助犬を受け入れることによる負担やリスクを過大に懸念し、受け入れを拒否しているようである。

(2)職場(学校)について

就業者の約10%について、排泄場所や待機場所が確保されているが、多くは特別な設備が無い状態で職場へ補助犬を同伴しているようである。
また、社員のために、空気清浄機や消臭剤が設置された例が2件あったが、職場へ盲導犬を同伴することにより、業務に支障が出るようなトラブルはなかった。
住居と同様に、雇用主や管理者が、負担やリスクを過大に懸念し、受け入れを拒否しているようである。

(3)まとめ

住居、職場(学校)においても、障害者の利用を考えたバリアフリー化が重要で、補助犬を受け入れるための負担やリスクは小さいことを理解して欲しい。
補助犬使用の受け入れを促進するために、補助犬法において、住居、職場(学校)においても、補助犬の受け入れを義務化してほしい。

身体障害者補助犬法改正対策使用者団体連絡協議会(補改使連)・事務局の連絡先
〒261-0001 千葉市美浜区幸町1−1−1−1901 TEL&FAX 043−243−3445
Mail:hokaishiren@yahoo.co.jp
http://www.geocities.jp/hokaishiren/

全犬使会がすすめる日韓交流

全日本盲導犬使用者の会(以下、全犬使会という)では、韓国の盲導犬使用者との交流を深めようと、今年9月「親善交流団」を派遣、3名の盲導犬ユーザーが訪韓されました。その中のお一人、山井修事務局長に韓国との交流について、電話でお話を伺いましたので、ご紹介したいと思います。

* * *

全犬使会では、毎年全国盲導犬使用者交流会を開催していますが、2003年には韓国で開催しました。5月24日、日本から19頭の盲導犬がユーザーと共に海を渡りました。そして、この時に韓国でも「案内犬使用者の会」が発足しました。日韓の盲導犬使用者のさらなる発展を祈念して清水和行全犬使会会長、山井修事務局長の手で韓国サムスン盲導犬学校に桜の木が植樹されました。

しかし、その訪韓の際、ソウル市内のホテルに宿泊しようとしたところ、宿泊を拒否され、なかなかスムーズに宿泊場所を確保することができませんでした。韓国には、日本の「身体障害者補助犬法」のように、盲導犬の同伴を拒否することを禁ずる法律があります。しかも、日本とは違い、違反した場合の罰金を課せられることになっています。しかし、法律はできていても、一般社会の理解はまだまだのようでした。

昨年5月29日、愛知で開催した全犬使会の全国交流会には、韓国案内犬使用者の会会長である全淑蓮(チョン スンヨン)さんをお招きし、愛知万博の市民パビリオンにて「盲導犬フォーラム」を開催しました。

そして、今年9月23日〜25日の3日間、今度は日本から、山井事務局長を団長として親善交流団が派遣され、3名の盲導犬ユーザーが再び海を渡りました。

今回の訪韓での日韓盲導犬使用者の意見交換には、案内犬使用者の会会長の全さんと大学生の女性ユーザーが参加されました。韓国では、20〜30歳代の若い年齢層のユーザーが多いそうです。そして、来年には韓国の盲導犬ユーザーが訪日する予定となりました。このように全犬使会では「盲導犬を通して民間の文化交流」に取り組んでいこうと考えています。

韓国は今、ペットブーム。ペットショップも増えているようです。盲導犬の認知度を高めようと、韓国では盲導犬に赤いコートを着せています。しかし、今回、街を歩いていると、犬の好きな人が勝手に盲導犬にさわったりすることも多く、中には珍しいからか写真を撮る人までいました。

アポをとって利用した飲食店での対応は良く、またスーパーに入ってみたところ、断られることはありませんでした。しかし、その一方で、一度宿泊できたホテルでも支配人が替わると拒否されてしまうこともあるようです。

前回の訪韓時には約40頭だった盲導犬実働数が、現在は60頭に増えています。盲導犬育成事業は確実に前進していますが、社会の受け入れ状況、一般市民のマナーにはまだまだ課題があるようです。

日本と韓国の盲導犬ユーザーが交流を深めることが、一般市民の意識にもいい刺激を与え、韓国での啓発活動を少しでもお手伝いできれば・・・と考えています。

盲導犬ユーザーのコーナー

パディーと楽しく ・・・・・奈良県  岩本 士(いわもと あきら)

失明してから22年、3頭の盲導犬達に助けてもらいながら暮らしています。今の子はパディーという茶色でかなり太めの男の子です。オーストラリア生まれでのんびり系、だれかさんいわく、信楽の狸そっくりだそうで、先輩の2頭にくらべると、あまり美形じゃないようです。
過日、電車で出会った女子高生三人が寄ってきて、

「おっちゃん、この犬 盲導犬やなあ」

っていって側にしゃがみこんだのですが、そのうちの二人は

「やっぱり盲導犬や。かしこそうやな」

って言ってくれたんだけれど、後の一人いわく

「そやけど、おっちゃん、この犬おじんくさい顔してるなあ」

って言われてしまいました。おじんくさいというのは、なんとなくおじさんっぽいってことなんだけれど、わかっちゃいるんだけど、そう言われると、この犬はかなり不細工な犬なんだって印象が強くなってしまいました。
 パディーは我が家に来て5年、来たときはかなりくちゃくちゃの顔をしてたようだけど、今はふっくらしていい子になりました。犬も人間も同じだけれど、つきあってみないとその善し悪しはよくわかりません。パディーは今素晴らしいパートナーとして日夜つきあってくれています。
 最近あった彼の珍奇なパフォーマンスを紹介します。それは、なんとかっていう落語家が「お前はあほか」って言って有名にした西洋鋸を手に入れたので、バイオリンの弓で毎晩キーコキーコ練習してたところ、パディーが時々変な声を出し始めました。
 おもしろいので、たまにこの犬唄を唄わせていたのですが、あるときクラシックコンサートに誘われたので、パディーを連れてでかけました。演奏が始まり、ややあってチゴイネルワイゼンが流れてきた途端、それまで寝ていたパディー、がばっと起きあがって、ヒューヒュー言い出したではありませんか。あわてて口をふさいだのですが後の祭り、近くの人たちがくすくす笑い出すし、まことに困りました。
 そのあと、女の人がアベマリアを唄いだしたのですが、またまた同じことをやってくれまして、近くの人たちはくすくす笑うし、これじゃコンサートには来れないなあって思いながら、小さくなって会場を出ました。ところがロビーで何人かの人たちに捕まってしまい、

「このワンちゃん、楽しい子ですね」

などと言われ、名刺なんかもらってきました。ほっと一息ついたのですが、あれ以来クラシックコンサートには行っていません。
 でも鋸音楽をもう少し極め、彼が犬語でハモってくれたらどこかの舞台で一稼ぎできるかもなどと、馬鹿なことを考えながら遊んでいます。

パディーが来る1年前、吉野熊野国立公園の一隅に、大台ヶ原という山がありますが、その山の南にある小さな村の山中に、山小屋を作りました。日本一雨の多い所です。行くたびに雨にみまわれますが、静かでいい所です。電車、バスで行き、林道を延々と歩いて行きます。犬連れでなければとても行けません。家でグッズを詰め込んだリュックを背負ってハーネスを握れば、いつでも気楽に行ける山小屋は宝物です。わけのわからない料理を作ったり、好きな音楽を聴いたりしながら数日を過ごすのですが、一週間もいると、パディーの帰りましょうコールが始まりますので、あわてて戸締まりなんかして帰ります。昨年の夏、久々にこの山小屋に出かけたとき、着いた次の日から雨が降り続き、やっと雨があがり太陽が出てきた朝、キュンキュン言って帰りたそうにするので、しかたなく要求をいれて帰ったのですが、なんとその晩、山はどしゃぶりで、林道の一部が崩れたそうで、タスカッターって胸をなでおろしたものでした。犬にはどっか優れた感というか、神通力があるのでしょうか、それ以来彼にはなるべく逆らわないようにしています。

パディーはおとなしくって、楽しい犬なのですが、ご多分に漏れず、たまにタクシーの乗車拒否にあったり、入店入室拒否にあったりします。折角出来た補助犬法も、そんな時、ほとんど役に立ちません。この法律が出来て、補助犬たちに対する世間の目は少し変わったかもしれませんが、いざというときに全く力を発揮してくれないので、どうにもなりません。
 過日友達と一緒にイタリア料理を食べに行ったのですが、席を探していると、その店のオーナーが来られて、お嬢さんが中学校の時、育友会の役員をしておられ、その時学校で盲導犬の話を聴いたそうで、とても親切に気持ちよく入らせていただいて、気楽においしく食事をすることができました。又、ある病院を訪れたときも、そこのお医者さんが高校の時に盲導犬の話を聴き、最近映画も見たそうで、診察室まで犬を連れてこいと言われました。これはご遠慮申し上げて待合いにステイさせておいたのですが、パディーがあまり静かに待っていたので看護婦さんたちにも感心されてしまい、以後この病院には気を使わずに通えるようになりました。このようなことを何度か体験して、若い頃、子供の頃見聴きしたことは、大人になっても心の中に残るんだなあってことを痛感しました。
 最近の小学校の教科書には、車椅子や点字、盲導犬などが教材として取りあげられています。そんなことを学んだ子供達が、やがて大人になってこの国を背負っていく頃、我が補助犬達の権利がもう少し認められるようになればいいなって期待しているところです。しかし昨今の政治家達の意見を聴いていると、学習カリキュラムの内容が違う方向にいきそうで一抹の不安もつのってきます。
 それはともかくとして、暇が出来たらまたまた山小屋で、どんな料理を作るか考えながら筆を置きます。

盲導犬情報ボックス

世界各国の盲導犬実働数

全国盲導犬施設連合会が発行している機関誌「デュエット」第15号に、世界各国の盲導犬実働数が紹介されています。
 現在、国際盲導犬連盟に加盟している盲導犬訓練施設は28カ国72施設。連盟に加盟していない国もありますので、正確にはわかりませんが、盲導犬の訓練は、約30カ国で訓練されていると考えられます。なお、国際盲導犬連盟では、世界で活動する盲導犬は約25,000頭以上と推定しています。
 国別の実働数として、以下の15カ国が紹介されていますので、転載します。

アメリカ合衆国 8000頭以上 イギリス 4656頭 ドイツ  1500〜2000頭 フランス 1500頭 日本  957頭 ロシア 800頭 スペイン 562頭 オランダ 500頭 オーストラリア 493頭 ベルギー 350〜400頭 スイス 350頭 ニュージーランド 303頭 フィンランド 205頭 アイルランド 120頭 スロバキア 54頭

編集後記

まず第51号の発行が大幅に遅れましたことを謹んでお詫び申し上げます。早々に原稿をくださった坂本、岩本両先生、届くのを待っていてくださった方、申し訳ありませんでした。
 さて、前回、身体障害者補助犬法改正対策使用者団体連絡協議会が取り組んだ請願署名について、「盲導犬情報」でも署名活動へのご協力をお願いしましたが、衆議院宛に102,012名、参議院宛に101,172名の署名が集まり、11月14日「身体障害者補助犬を推進する議員の会」総会に提出されました。ご協力くださいました皆さまに深く感謝申し上げます。提出後の状況については次号でご紹介する予定です。(久保)