『盲導犬情報』 第5号 〜NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌〜

盲導犬情報 第5号



内容




盲導犬を持たない視覚障がい者を対象にしたアンケート調査報告(1)
盲導犬に関する調査委員会

 全国盲導犬施設連合会が事務局となって、「盲導犬を持たない視覚障がい者および盲導犬使用者団体を対象にしたアンケート調査」を行いました。その結果がまとまりましたので、概要をご報告します。
 なお、報告書は墨字版、点字版、電子データ版があります。ご希望の方は、全国盲導犬施設連合会までお申し込みください。

1.調査の目的

 本調査では、盲導犬を使用していない視覚障がい者を対象にした質問紙調査を行うことにより、盲導犬希望者と盲導犬非希望者における盲導犬に対する意識や生活の質(QOL)の違いを比較し、盲導犬使用希望との関連を検討する。そして、盲導犬の貸与を申し込む前の視覚障がい者に対して、盲導犬育成団体がどのような情報やサービスを提供すべきかを考える。

2.調査の内容

(1)調査対象

 視覚障がい者団体および視覚障がいリハビリテーション施設に所属、または施設を利用していた盲導犬を使用しない 1または 2級の視覚障がい者

(2)調査時期

 2010年1〜3月

(3)調査方法

 質問紙調査
 施設・団体を通して、調査票をメール、点字、墨字(インタビュー)に分けて郵送又は電子メールにて送付・回収

(4)質問項目
a. 基本事項

 性別、年齢、視覚障がいの程度、視覚障がい以外の障害の有無、居住地域、同居者の有無、犬の飼育経験の有無の7項目

b. 外出状況・歩行手段

 外出頻度、歩行に困難を感じた時期、外出方法、歩行訓練受講の有無、援助依頼の積極性、外出時のストレス(松中 1997)、情報源の7項目

c. QOLの5段階評価(望月 1998)項目

 「健康である」「精神的な緊張が少ない」「病気や障害についての理解者がいる」「支えてくれる人がいる」「家庭内に争いごとがない」「障害によって得たものがある」「自分に誇りがある」「尊敬されている」「老後に対する不安がない」「人の役に立っている」「障害を受け入れている」「通勤・通学が快適にできる」「安心して外出ができる」「自分に適した仕事ができる」「社会活動に参加している」「趣味がある」の16項目

d. 盲導犬に対する考え
e.比較の方法
QOL
cQOL測定の回答方法は、5件法(1:違うと思う〜5:そうだと思う)である。この評価を満足度の高いものを高得点とし、1〜5の数値で得点化した。盲導犬使用希望有無について、対応のないt検定を用いて比較した。
盲導犬希望者・非希望者の比較
「今すぐ持ちたいと考えている」、「将来、もちたいと考えている」と回答した人を盲導犬希望者、「以前は持ちたいと考えていたが、今は考えていない」、「盲導犬を持とうと考えたことはない」、「わからない」と回答した人を盲導犬非希望者とした。この2群間での回答の偏りをみるために、カイ二乗検定を用いた。

3.調査結果の概要

(1)回答者のプロフィール

a.性別および年齢
回答者の性別は、

男性 66%
女性 34%

年齢は、

20代 5%
30代 10%
40代 17%
50代 32%
60代 27%
70代 8%
80代 1%

b. 視覚障がいの程度

全盲 54%
弱視 20%
弱視、視野狭窄 18%
視野狭窄のみ 3%
無回答 5%

c. 視覚障がい以外の障害の有無

なし 86%
聴覚障害 4%
肢体不自由 3%
内部障害 5%
その他 2%

d. 居住地域

繁華街 6%
住宅街 82%
農漁山村 12%

e. 職業

被雇用者(会社員等) 20%
主婦 13%
学生 8%
無職 25%
その他 2%
(2)歩行・外出について

a. 1週間の外出頻度

5日以上 40%
3,4日ほど 30%
2日以下 30%
無回答 0%

b. 外出方法

白杖などによる単独歩行 81.8%
ガイドヘルパーによる手引き 74.1%
家族・友人による手引き 61.7%
その他 17.9%

c. 歩行訓練の経験の有無

ある 54%
ない 46%

d. 外出時の援助依頼について

自分から積極的に援助を依頼する 55.5%
周りから援助の声がよくかかる 17.2%
あまり周りの人に援助を依頼しない 17.5%
援助依頼をするのは苦手 13.9%

e. 外出する際に強いストレスを感じる時(複数回答)

項目1 買い物をする時:59.9%
項目2 飲食店を利用する時:47.4%
項目3 公共交通機関を利用する時:53.4%
項目4 道路を横断する時:55.9%
項目5 慣れないところへ一人で外出しなければならない時:78.9%
項目6 一人で外出中にトイレに行きたくなった時:61.1%
項目7 道に迷った時:74.5%
項目8 雨の日に外を歩かなければならない時:56.3%
項目9 遠出をする時:38.5%
項目10 援助依頼をする時:30.4%
項目11 人や物にぶつかった時:49.0%
項目12 手引き者と外出する時:11.7%
項目13 特にない:6.5%
項目14 その他:7.7%

(3)視覚障がい者のQOL測定尺度

以下の16個のそれぞれの質問について5段階評価をした平均値

a. 健康尺度
項目1 健康である・・・3.9
項目2 イライラやストレスなどの精神的な緊張が少ない・・・3.3

b. 対人関係尺度
項目3 自分の病気や障害について、理解してくれる人がいる・・・4.2
項目4 自分を支えてくれる家族や仲間がいる家族尺度・・・4.4
項目5 家庭内の争いごとが少ない・・・4.1

c.生き方尺度
項目6 障害を受けたことで、新たに得たものがあると思える・・・3.8
項目7 病気や障害があっても、自分に誇りがもてる・・・3.7
項目8 人から尊敬されている・・・2.9
項目9 老後に対する不安がない・・・2.5
項目10 人の役に立っている・・・3.2
項目11 障害を受容しているという自覚がある・・・3.9

d. 社会関係尺度
項目12 通勤・通学が快適にできる・・・2.8
項目13 道路などが視覚障がい者にとって安心して外出できるように配慮されている・・・2.1

e. 仕事尺度
項目14 やりがいのある仕事や、自分に適した仕事ができる・・・3.1

f. 社会尺度
項目15 ボランティアなどの社会活動に参加している・・・2.8

g. 余暇尺度
項目16 熱中できる趣味がある・・・3.8

(4)盲導犬に対する考え方

a. 盲導犬に関する知識
以下の項目について「知っている」と答えた人の割合を記載
項目1 盲導犬を連れて交通機関や公共施設の利用が法的に可能であること:93.1%
項目2 盲導犬は信号の色が見分けられないこと:66.1%
項目3 行き先を告げるだけで盲導犬が誘導できるわけではないこと:86.5%
項目4 視覚障がい者が危険な目にあうと吠えて知らせるわけではないこと:70.1%
項目5 盲導犬もまれに失敗すること:80.3%
項目6 盲導犬の主な仕事は「道路の端を歩く」、「角や段差で止まって教える」、
     「障害物を回避する」こと:82.5%
項目7 盲導犬は10〜12歳で引退すること:73.0%
項目8 盲導犬を持つためには、約4週間、歩行指導(共同訓練)を受けなければならないこと:82.8%
項目9 盲導犬を使用している間も相談にのってもらえること:58.4%
項目10 一部の自治体では盲導犬使用者に盲導犬取得にあたっての費用や飼育費、
      予防薬等についての補助がでること:39.8%
項目11 身体障害者補助犬法があること:62.4%
項目12 盲導犬はトイレのしつけがされていること:84.3%
項目13 仕事中の盲導犬には周りの人は声をかけたりなでたりしてはいけないこと:88.3%
項目14 多くの育成団体では、盲導犬は無償で貸与されること:61.7%
項目15 盲導犬の貸与を受けるために、どこに申し込んだらいいかということ:40.5%

b. 盲導犬希望の有無
今すぐ持ちたいと考えている:4%
将来持ちたいと考えている :13%
以前は持ちたいと考えていたが、今は考えていない :17%
盲導犬を持とうと考えたことはない:55%
わからない:9%
無回答:2%

c. 盲導犬を持つことのメリット(複数回答)
項目1 安全に速く歩けるようになる:53.3%
項目2 いつでも外出できる:46.0%
項目3 行動範囲が広がる:54.4%
項目4 外出の時のストレスが軽減される:35.0%
項目5 通勤、通学、仕事がしやすくなる:24.5%
項目6 日常生活が楽しくなる:39.1%
項目7 生きがいを感じる:27.4%
項目8 自立できる:24.1%
項目9 盲導犬が身の回りの世話をしてくれる:4.0%
項目10 交友関係が増える:34.3%
項目11 体が健康になる:31.0%
項目12 孤独感が軽減される:38.7%
項目13 癒される:48.2%
項目14 なし:20.4%
項目15 その他:2.6%

d. 盲導犬を持つことのデメリット(複数回答)
項目1 お金がかかる:44.5%
項目2 盲導犬に頼りすぎて自立心がなくなる:10.9%
項目3 家族への負担:30.7%
項目4 周囲への配慮・周囲の反対:32.1%
項目5 行動範囲が狭まる:10.9%
項目6 家が狭い:31.0%
項目7 犬が嫌い:15.7%
項目8 犬の毛によるアレルギー:10.9%
項目9 職場での受け入れ:12.8%
項目10 マンションなど集合住宅での受け入れ:23.4%
項目11 盲導犬が思い通りに動かない:14.2%
項目12 盲導犬希望の申し込みをしたあとの待機期間が長い:16.4%
項目13 盲導犬との歩行指導(共同訓練)を受ける時間的な余裕がない:29.6%
項目14 自身の高齢・健康上の問題:13.1%
項目15 盲導犬との離別や死別がつらい:47.1%
項目16 盲導犬の世話や手間がかかる:57.3%
項目17 盲導犬のにおいや毛などで家屋が汚れる:30.3%
項目18 盲導犬のしつけに自信がない:31.8%
項目19 無職なので盲導犬はもてない:6.2%
項目20 なし:9.5%
項目21 その他:4.0%

4.視覚障がい者へのサポート、盲導犬に関する希望・意見

 「視覚障がい者へのサポート、盲導犬に関する希望・意見欄」については自由記述とした。以下は、寄せられた自由記述を、「盲導犬を希望しない主な理由」、「盲導犬の世話・しつけの不安」、「周囲への配慮」、「社会でのサポート(視覚障がい者、盲導犬)」、「行政への要望」、「盲導犬関連施設への要望」、「健常者への要望」、「質問紙調査への要望」、「盲導犬使用者への要望」、「盲導犬以外の歩行手段」の10の観点から整理したもののうち、第4部・問2において「今すぐ希望する」、「将来希望する」と回答した盲導犬希望者の意見である。

(1)盲導犬を使用しない主な理由
(2)盲導犬の世話・しつけの不安
(3)周囲への配慮
(4)社会でのサポート(視覚障がい者、盲導犬)
(5)行政への要望
(6)盲導犬関連施設への要望
(7)健常者への要望
(8)盲導犬使用者への要望
(9)質問紙調査への要望
(10)盲導犬以外の歩行手段

補助犬育成補助事業の実施状況について

特定非営利活動法人日本介助犬アカデミーでは、2010年 2月に都道府県・政令指定都市・中核市を対象に、補助犬育成補助事業の実施状況についての調査を行い、その結果について「補助犬育成補助事業実施実態調査報告書」にまとめました。今回、日本介助犬アカデミーの承諾を得て調査結果の概要の一部と、関西盲導犬協会が調査した助成施策の結果を併せてご紹介します。

1.2009年度補助犬育成補助事業実施実態調査の結果

(1)2009年度補助犬育成補助事業の実施状況

盲導犬:87%が実施
介助犬:21%が実施
聴導犬:13%が実施

(2)2010年度補助犬育成補助事業の実施予定

盲導犬:81%が実施予定
介助犬:55%が実施予定
聴導犬:51%が実施予定

(3)補助犬育成補助事業の助成金交付先

盲導犬:
 希望者が選んだ訓練事業者:60%
 都道府県が指定した事業者:30%
 未記入: 2%
 実績なし: 2%
 委託事業: 4%
 その他: 2%

介助犬
 希望者が選んだ訓練事業者:58%
 都道府県が指定した事業者: 4%
 未記入:21%
 実績なし:11%
 委託事業: 4%
 その他: 2%

聴導犬
 希望者が選んだ訓練事業者:53%
 都道府県が指定した事業者: 6%
 未記入:26%
 実績なし: 9%
 委託事業: 4%
 その他: 2%

(4)育成補助事業助成金額

盲導犬
 150万円未満: 8%
 150万円〜180万円未満:21%
 180万円〜200万円未満:43%
 200万円以上:11%
 実施なし:13%
 未記入: 4%

介助犬
 150万円未満: 2%
 150万円〜180万円未満:11%
 180万円〜200万円未満: 8%
 実施なし:79%

聴導犬
 150万円未満: 2%
 150万円〜180万円未満: 4%
 180万円〜200万円未満: 7%
 実施なし:87%

(5)補助犬に関する相談・苦情等の受付の有無

盲導犬:あった 74%(相談(109件) 受入拒否(49件))
      なかった 26%
介助犬:あった 32%(相談(37件) 受入拒否(2件))
      なかった 68%
聴導犬:あった 23%(相談(5件) 受入拒否(2件))
      なかった 77%

2.補助犬に関する助成施策実施状況

A. 都道府県

(1)登録手数料、予防注射料等の減免
 茨城県

(2)予防注射料の減免
 茨城県
 群馬県
 福井県

(3)上記以外の補助犬診療費・薬代の助成
 群馬県
 福井県

(4)餌代の助成
 群馬県

(5)補助犬の訓練に係る旅費や補助犬取得に係る費用の助成
 鳥取県

(6)飼育用品の購入費用の助成
 群馬県

(7)その他
 山形県:獣医師会が補助事業を行っている
 埼玉県:補助犬の健康管理及び疾病等に要した費用の一部を助成
 神奈川県:獣医師会が会員診療所における補助犬の診療について、診療費の一部を助成
 新潟県:獣医師会が予防注射料の減免を実施
 長野県:県の動物愛護センターにおいて、補助犬の定期健康診断を希望者に無料で行っている
       (ドッグドッグ事業)
 岐阜県:市町及び獣医師会において飼育費や注射料の助成を実施している
 静岡県:補助犬使用者団体による助成制度で補助犬診療費・薬代の助成を行っている
       獣医師会の協力で予防注射の減免を行っている
       市町事業で狂犬病予防法に基づく飼犬登録手数料の減免を行っている
 鳥取県:予防接種料の助成

B. 政令指定都市

(1)登録手数料、予防注射料等の減免
 新潟市
 名古屋市
 神戸市
 福岡市

(2)予防注射料の減免
 新潟市
 神戸市
 福岡市

(3)上記以外の補助犬診療費・薬代の助成
 横浜市

(4)餌代の助成
 名古屋市
 岡山市
 広島市

(5)補助犬の訓練に係る旅費や補助犬取得に係る費用の助成
 なし

(6)飼育用品の購入費用の助成
 なし

(7)その他
 仙台市:現物による飼料の給付(所得制限有)
 新潟市:狂犬病予防法に基づく飼犬登録手数料の減免
       予防注射料の減免
 名古屋市:身体障害者手帳1〜3級の方で、補助犬等にかかる登録申請手数料及び
       狂犬病予防注射済票交付手数料の減免
       補助犬の飼養に必要な費用の一部を助成(所得制限有)
 神戸市:狂犬病予防法に基づく飼犬登録手数料、注射済票交付手数料の減免
       低所得のため補助犬の健康管理費の負担が困難な者に対して、健康管理費等
       (補助犬の健康管理を図るために必要な健康診断・予防接種・治療等に充てる経費)
       の一部を助成
       予防注射料の減免
 広島市:補助犬健康管理費として月5,000円支給(所得制限有)

C. 中核市

(1)登録手数料、予防注射料等の減免
 前橋市
 長野市
 岐阜市
 尼崎市

(2)予防注射料の減免
 尼崎市

(3)上記以外の補助犬診療費・薬代の助成
 なし

(4)餌代の助成
 長野市
 岐阜市
 尼崎市
 倉敷市

(5)補助犬の訓練に係る旅費や補助犬取得に係る費用の助成
 富山市
 長野市
 大分市

(6)飼育用品の購入費用の助成
 なし

(7)その他
 前橋市:犬の登録手数料、狂犬病予防注射済票交付手数料、狂犬病予防注射済票再交付手数料、
       犬の鑑札の再交付手数料の減免
 宇都宮市:補助犬を導入した障害者に対し、導入時及び導入後の一定期間、費用の一部を補助
 長野市:予防注射済証発行手数料の免除
 豊田市:狂犬病予防注射済票交付(再交付)手数料、犬の鑑札の再交付手数料の免除
 尼崎市:尼崎市動物愛護センターで狂犬病予防法に基づく飼犬登録手数料の減免
       尼崎市民福祉振興協会が餌代の助成を実施

D. 市町村(関西盲導犬協会が一部地域を対象に調査した結果)

(1)登録手数料、予防注射料等の減免
 千葉県市川市
 埼玉県川越市
 滋賀県彦根市
 兵庫県尼崎市
 岡山県倉敷市
 広島県庄原市
 広島県呉市
 熊本県小国町

(2)餌代の助成
 京都府宇治市
 兵庫県尼崎市
 兵庫県姫路市
 岡山県倉敷市

(3)訓練経費
 京都府亀岡市
 富山県富山市

(4)その他
 岡山県岡山市(飼育費として月6000円)
 広島県広島市(健康管理費として月5000円)
 千葉県 市川市(盲導犬予防注射済受付手数料550円)
 埼玉県 川越市 障害者福祉課(集合予防接種場所でのみ予防注射料と接種済証明札が無料)
 広島県 庄原市 社会福祉課障害者福祉係(市内動物病院2つ、注射料減免申請書に記入する)

*市町村での実施状況については、和歌山県にお住まいだった(故)林克之さんが2008年に調査された結果を『盲導犬情報』第3号(2009.9発行)にも掲載しております。併せてご参照ください。

盲導犬ユーザーのコーナー

病院の受け入れに感謝

千葉県 市角敏子

 1997年 1月、私は、急性糸球体腎炎という病気になってしまいました。これは、突然腎臓が働かなくなって体中に老廃物が貯まり、おしっこが全く出なくなってしまうという病気です。治療法は透析療法、つまり人工透析をしなければ生きられないというものです。私の場合、透析は 1週間に 3回、月・水・金曜日、 1回につき 4時間かかります。
 透析を始めたころは、ヘルパーさんと通っていました。ヘルパーさんと通院出来ることは、とてもありがたいし感謝もしていました。しかし 1年くらい経った頃、本来、人との会話が苦手な私にとって、このヘルパーさんとの通院が苦痛になってきました。
 そんな時に、盲導犬体験デーが横浜にある日本盲導犬協会で行われました。
 盲導犬体験デーに参加して、相談窓口に、
「私は透析をしているけれども、盲導犬の訓練を受けることができますか?」
と聞きました。
「出来ますよ」
という返事を聞いて、もしかしたら病院に盲導犬と通えるかもしれないと思いました。
 でも盲導犬を病院が受け入れてくれるだろうか? その頃はまだ身体障害者補助犬法もなく、病院側に受け入れ義務もありませんでした。
 とりあえず病院に聞いてみることにしました。病院側でも、すぐにいいですよと言ってくれるわけはありません。
「このような例はないので、少し調べてからお返事します」
と言われました。当然だと思います。10年以上も前のことです。透析に犬をつれて通院するなんて聞いたことがありません。かなり無理を言っていることは、自分でもわかっていましたから、断られても仕方ないなと思っていました。
 そんなお願いをしてから 1ヶ月くらいして、
「盲導犬の受け入れに際して、こちらもいろいろ調べました。犬の持っている病原菌やウイルス、そして衛生面なども調べた結果、犬の持っている菌は人には全く影響がないため、問題もなく衛生面でも問題がないことがわかりました。
 そこで、盲導犬をどこに置くかを考えました結果、市角さんのベットの足下がいいのではないかと思いますが、市角さんはどうですか? 市角さんを見ていると、通院がストレスになって駄目になってしまうといけないですし・・・」
 なんてうれしい対応だと思いました。
 病院の受け入れを確認してから、習志野市を通して千葉県に盲導犬の貸与を申し込みました。しかし 4年間申し込んでも、いつも受け付けてもらえずにいました。
 そんな時に、千葉県ヤクルト株式会社が地域社会活動として盲導犬を寄贈するという取り組みをしていると聞き、すぐにそちらに申し込みました。
 やっと盲導犬が私のところに来てくれるかもしれないと思ったら、本当に私に盲導犬を管理し使いこなせるだろうかと不安になってしまいました。しかし、ここでやめたら病院のスタッフに申し訳ないですから、頑張るしかないと思いました。
 共同訓練は、2001年11月から始まることが決まりました。ところが、今度は、盲導犬協会の都合が悪くなって延期になってしまいました。そしてやっと2002年 9月に共同訓練を受けることができました。
 その共同訓練を受けている 3週間の間に、受け入れ側の病院では、透析の患者さん全員に透析室での盲導犬受け入れ決定書を出してくれました。そして病院のいたるところに盲導犬受け入れの張り紙をしてくれました。
 共同訓練が始まって 2日目に、レシーダという雌のラブラドールレトリバーに会うことができました。この子が私と一緒に病院に行ってくれるのか! 4時間、足下で待っていてくれるのか! と思ったらしらないうちにレシーダを抱きしめていました。
 「レシちゃん、よろしくね。可愛いよ」
 何度も何度も言い続けました。
 そして、共同訓練が終わり、10月からレシーダとの通院が始まりました。
 雨の日も雪の日も、猛暑でも、7時30分に家を出ます。病院はバスで20分ほどの所ですが、ちょうどラッシュの時間帯。最初は足を踏まれたりしながらも、毎日同じバスで行くようにしました。慣れてくると、バスの乗客の方がレシーダを守ってくださるようになりました。バス停で下りる時も、運転手さんが、
「ワンチャンが通りますので空けてください」
と車内放送までしてくださるようになりました。
 レシーダと通院する中で、病院の主任看護師さんから、こんなことを言われました。
「市角さんに必ず守ってもらいたいことがあります。
 それは、一つは、レシーダは、市角さんが管理すること。
 もう一つは、レシーダを管理するには、市角さんが、いつも犬を管理できるだけの体力を持たなければいけません。だから自分の管理ができないと困りますので、必ず無理をしないこと。これだけは守ってください」
 こうして約 8年間、レシーダと一緒の通院が続きました。
 そして2010年 2月28日、レシーダは10歳を越えて引退し、元気にパピーウォーカーのところへ帰って行きました。
 レシーダとお別れした翌日の 3月 1日から、新しい盲導犬ジョジョくんとの共同訓練が始まりました。盲導犬として、 5時間以上ステイをし、トイレも 8時間以上待つことは、簡単なことではないそうです。でもジョジョくんもレシーダの後を継いで、しっかり待っていてくれています。
 私がジョジョくんとの共同訓練を終えて病院に行くと、透析の待合室に置いてある椅子の背もたれに「補助犬同伴可」のステッカーが貼ってありました。
 「ここは、市角さんの座る席ですからね」
 私と盲導犬とを受け入れてくださっている病院には、本当に感謝しています。でも、透析室のベットの足下で盲導犬を待たせることができるようなところは、まだ少ないと聞いています。多くの病院が、盲導犬を受け入れてくれるようになることを期待しています。

盲導犬情報ボックス

都道府県別 日本の盲導犬使用者数

 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会リハビリテーション部会盲導犬委員会の「2009年度盲導犬訓練施設年次報告書」を参考にして2010年 3月31日現在の日本の盲導犬使用者数を出すと、次のようになりました(報告書は都道府県政令指定都市別に盲導犬実働数をまとめていますが、ここでは都道府県別に盲導犬使用者数でまとめています。また、海外など国家公安委員会から指定を受けた団体以外で育成された盲導犬の使用者も盲導犬使用者数に含めています)。

 また、2010年1月1日現在の介助犬実働数と2009年8月1日現在の聴導犬実働数(厚生労働省調べ)を付記します。

  盲導犬 介助犬 聴導犬
北海道 60 10 0
青森県 5 0 0
岩手県 20 1 0
宮城県 16 0 0
秋田県 19 1 0
山形県 7 0 0
福島県 15 0 0
茨城県 24 0 0
栃木県 10 1 0
群馬県 8 0 0
埼玉県 59 2 2
千葉県 36 3 1
東京都 102 8 5
神奈川県 59 10 2
新潟県 29 0 1
富山県 5 0 0
石川県 29 0 0
福井県 4 2 0
山梨県 12 0 0
長野県 28 1 0
静岡県 49 2 0
愛知県 39 3 0
岐阜県 12 0 0
三重県 12 0 0
滋賀県 15 0 1
京都府 21 3 0
大阪府 59 3 2
兵庫県 61 4 1
奈良県 14 2 0
和歌山県 10 0 0
鳥取県 6 0 0
島根県 11 0 0
岡山県 22 0 0
広島県 36 0 0
山口県 22 0 0
徳島県 6 1 2
香川県 7 0 0
愛媛県 14 0 0
高知県 10 0 0
福岡県 27 0 0
佐賀県 6 0 0
長崎県 8 0 1
熊本県 16 0 0
大分県 16 0 0
宮崎県 15 1 0
鹿児島県 24 0 0
沖縄県 9 0 1
合計 1094 49 19

 2010年 3月末日現在、全国の盲導犬実働数は、国家公安委員会指定の盲導犬育成団体が育成した盲導犬だけを数えると1073頭。海外などの団体が育成した盲導犬で日本で認定された盲導犬3頭を合計すると 1076頭。また、この実働数に、1頭の盲導犬を夫婦二人で使用するタンデム方式の盲導犬使用者21組を加え、盲導犬使用者数を算出してみると、日本国内で盲導犬を使用している視覚障碍者は 1094人。2009年 3月末の盲導犬使用者は1069人だったので、25人増えたことになります。

 なお、タンデム使用者を育成施設別にみると、北海道盲導犬協会 1組、日本盲導犬協会 7組、関西盲導犬協会 2組、日本ライトハウス 7組、兵庫盲導犬協会 1組、九州盲導犬協会 3組となっています。都道府県別では、北海道 1組、福島県 1組、東京都 1組、神奈川県 1組、長野県 1組、愛知県 1組、兵庫県 3組、和歌山県 1組、鳥取県 1組、岡山県 1組、広島県 2組、山口県 2組、福岡県 1組、熊本県 1組、宮崎県 1組、鹿児島県 1組、沖縄県 1組となっています。

 国内の指定法人が1年間に育成した盲導犬の頭数は 161頭。2008年度育成数は185頭だったので、2009年度の育成頭数は24頭少なくなっています。2008年度の育成頭数が前年度に比べ33頭と増えているのに比べると、これは残念な結果になってしまいました。

 2009年度育成頭数のうち、新規の使用者のパートナーとなった盲導犬は89頭、代替えは72頭で、年間育成頭数の44.7%が代替えとなっています。育成頭数のうち代替えが過半数を占めるという状況がずっと続いていましたが、昨年度はやや新規の方が多くなりました。

 この新規の盲導犬頭数89頭を一昨年度の盲導犬実働数1045頭に加えると、1134頭になりますが、実際の実働数は1070頭です。このことは、64頭の盲導犬の使用者は、盲導犬が死亡または引退したが年度末までに代替えの盲導犬を得られなかったか、なんらかの理由で代替えの盲導犬を希望しなかったのではないかと考えられます。

盲導犬情報ボックス(2)

日本の盲導犬育成団体

 盲導犬は、聴導犬・介助犬の認定とは違い、その盲導犬を育成した団体が認定を行っています。盲導犬を育成・認定する団体は、国家公安委員会の指定を受けなければいけません。
 財団法人制度の改革により、法人格が「公益財団法人」に変わった団体がある他、新たに一つの団体が国家公安委員会の指定を受けましたので、改めて日本の盲導犬育成団体をご紹介します。

編集後記

 北海道盲導犬協会会長・全国盲導犬施設連合会理事長をされていた佐々木紀夫さんが急逝され、その悲しみも癒えぬうちに、全日本盲導犬使用者の会役員として積極的に活動されていた山井修さんが、そして林克之さんが相次いで帰らぬ人となりました。また、日本人として初めて盲導犬の訓練に成功した塩屋賢一さんも秋にご逝去されました。今頃は皆さんで集まって盲導犬談義に花を咲かせつつ、高いところから私たちの様子を覗いてくださっているでしょうか。慎んでご冥福をお祈りいたします。(久保)