盲導犬情報

盲導犬を希望される方や、すでにユーザーとして生活されている方、視覚障がい者団体や施設を対象に年2回発行される情報誌です。点字版と墨字(活字)版、音声版の3種類があります。送付ご希望の方は、下記「お問い合わせ」フォームあるいは電話(03-5367-9770)にて、ご連絡ください。

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最新号

『盲導犬情報』 第32号 ~認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌~
今号の内容
1.改正障害者差別解消法は令和6年4月1日に施行されます
2.2022(令和4)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査について
3.盲導犬と行く!全国津々浦々観光情報~仙台編~
4.盲導犬ユーザーのコーナー
  「小さな旅から大きな旅へ」 兵庫県 板橋 真由美
5.盲導犬情報ボックス
「2023年に発行された盲導犬に関する文献」
6.認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ
7.編集後記

1.改正障害者差別解消法は令和6年4月1日に施行されます
 令和3年5月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が改正され(令和3年法律第56号)、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。改正法は令和6年4月1日に施行されます。
 ここでは、内閣府によって作成されたリーフレットから内容を一部抜粋し、ご紹介します。

(1)共生社会の実現に向けて~障害者差別解消法とは~
・ 我が国では、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会(共生社会)を実現することを目指しています。
・「障害者差別解消法」では、行政機関等及び事業者に対し、障害のある人への障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止し、障害のある人から申し出があった場合に「合理的配慮の提供」を求めることなどを通じて、「共生社会」を実現することを目指しています。

(2)合理的配慮の提供とは
・ 日常生活・社会生活において提供されている設備やサービス等については、障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動などが制限されてしまう場合があります。
・ このような場合には、障害のある人の活動などを制限しているバリアを取り除く必要があります。このため、障害者差別解消法では、行政機関等や事業者に対して、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供を求めています。
・ 具体的には、『行政機関等と業者がその事務・事業を行うに当たり、個々の場面で障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときに、社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること』とされています。

(3)「合理的配慮」には対話が重要です!
・ 合理的配慮の提供に当たっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、障害のある人と事業者等が対話を重ね、共に解決策を検討していくことが重要です。このような双方のやり取りを「建設的対話」と言います。
・ 障害のある人からの申し出への対応が難しい場合でも、障害のある人と事業者等の双方が持っている情報や意見を伝え合い、建設的対話に努めることで、目的に応じて代わりの手段を見つけていくことができます。

(4)不当な差別的取扱いとは
・ 障害者差別解消法では障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止しています。
・ 企業や店舗などの事業者や、国・都道府県・市町村などの行政機関等においては、例えば「障害がある」という理由だけで財・サービス、各種機会の提供を拒否したり、それらを提供するに当たって場所・時間帯等を制限したりするなど、「障害のない人と異なる取扱い」をすることにより障害のある人を不利に扱うことのないようにしなければなりません。
・ 具体的には、『行政機関等や事業者が、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として、障害者でない者と比較して、不当な(正当な理由のない)差別的取扱いをすること』等により、障害のある人の権利利益を侵害することが禁止されています。

(5)「もし何かあったら… 」は正当な理由になりません!
・ 「正当な理由がある場合」の判断は、個別のケースごとに行うことが重要です。
・ 「過去に同じようなことがあったから」「世間一般にはそう思われているから」といった理由で、一律に判断を行うことは、「正当な理由がある場合」には該当しません。個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて、判断をすることが必要です。
・ また、そのためには、障害のある人に対し、個別の事情や、配慮が必要か等の確認を行うことが有効です。
※障害者、事業者、第三者の権利利益等の観点を判断するためや、合理的配慮の提供のために必要な範囲で、プライバシーに配慮しながら、障害のある人に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには該当しません。

本リーフレットには各項目の具体例なども掲載されていますので、ぜひご覧ください。


2.2022(令和4)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査に
ついて
特定非営利活動法人 日本補助犬情報センターでは、都道府県・政令指定都市・中核市に、毎年、身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査を行い、その結果を「身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査」にまとめています。今回は2022(令和4)年度の調査報告書の概要をご紹介します。

■2022(令和4)年度補助犬育成促進事業実施実態調査の結果
(1)補助犬育成促進事業の実施状況
 盲導犬:74%が実施
 介助犬:21%が実施
 聴導犬:5%が実施

(2)盲導犬育成促進事業実施頭数と1頭あたりの助成金額
北海道 5(1,800,000円)
青森県 0
岩手県 未回答
宮城県 3(無記入)
秋田県 1(1,890,000円)
山形県 1(1,830,000円)
福島県 1(1,500,000円)
茨城県 2(2,022,000円)
栃木県 1(1,600,000円)
群馬県 0
埼玉県 4(1,984,500円)
千葉県 2(1,984,500円)
東京都 未回答
神奈川県 2(1,910,800円)
新潟県 2(1,890,000円)
富山県 0
石川県 1(1,890,000円)
福井県 0
山梨県 2(1,500,000円)
長野県 1(1,980,000円)
岐阜県 0
静岡県 5(1,984,500円)
愛知県 4(1,500,000円)
三重県 1(1,500,000円)
滋賀県 0
京都府 2(1,500,000円)
大阪府 3(1,672,000円)
兵庫県 1(1,890,000円)
奈良県 2(1,890,000円)
和歌山県 0
鳥取県 1(無記入)
島根県 1(1,980,000円)
岡山県 0
広島県 1(1,944,000円)
山口県 1(1,500,000円)
徳島県 未回答
香川県 1(1,980,000円)
愛媛県 0
高知県 未回答
福岡県 2(1,500,000円)
佐賀県 1(1,500,000円)
長崎県 1(1,200,000円)
熊本県 0
大分県 1(1,890,000円)
宮崎県 0
鹿児島県 2(1,890,000円)
沖縄県 1(2,038,000円)

(3) 都道府県における補助犬育成促進事業の助成金交付先
・盲導犬
希望者が選んだ訓練事業者:74%
指定する団体:5%
委託する団体:16%
回答なし:5%
・介助犬
希望者が選んだ訓練事業者:72%
指定する団体:5%
委託する団体:9%
回答なし:14%
・聴導犬
希望者が選んだ訓練事業者:72%
指定する団体:5%
委託する団体:9%
回答なし:14%

■補助犬に関する助成施策等の実施状況
(1)都道府県
①補助犬の健康管理費(予防接種、医療費など)
埼玉県:補助犬の健康管理及び疾病等の治療に必要な経費を、補助犬を使用する身体障害者に助成する
石川県:県内の補助犬ユーザー団体に基金を設立し、助成対象費用計の半額を対象に、1頭当たり年間11,000 円を上限に助成する
福井県:身体障害者補助犬の衛生管理に必要な処置を県獣医師会に委託
長野県:県動物愛護センターにおいて、補助犬の健康診断(身体検査、血液検査、糞便検査、尿検査、爪切り等)を無料で行っている。(ドッグドッグ事業)
三重県:全国盲導犬協会、獣医医師会等の助成
滋賀県:補助犬の健康管理費を助成する
鳥取県:予防接種代の補助
島根県:県内の補助犬使用者に、4万円を上限として、補助犬の予防接種・医療費の助成を行う。
香川県:補助犬を使用する者に対して、厚生労働省が作成した「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン」に定められているものを対象に、年間1回、1人につき20,000円を限度として助成する。
 ②飼育のための必要経費(餌など)
 青森県:補助犬の貸与に必要な経費
 三重県:三重補助犬普及協会から助成 寄付金対応

(2)政令市・中核市
①補助犬の健康管理費(予防接種、医療費など)
横浜市:身体障害者補助犬定期検診等助成事業(補助犬の定期検診、疾病にかかる診療費を助成)
新潟市:登録手数料、狂犬病予防注射済票交付手数料、鑑札の再交付手数料、狂犬病予防注射済票再交付手数料
名古屋市:身体障害者手帳1級から3級の方で、日常生活補助のために使用する補助犬及び盲導犬として育成している犬に係る次の手数料の免除 登録申請手数料(3,000 円)、狂犬病予防注射済票交付手数料(550 円)、鑑札の再交付手数料(1,600 円)及び狂犬病予防注射済票交付手数料(340 円)
神戸市:補助犬の健康管理を図るために必要な健康診断、予防接種、治療等に充てる経費を補助(所得制限あり) ※月額3,600 円~7,000 円
広島市:低所得のため補助犬の養育に要する費用の負担が困難な者に対して、健康管理費としてその一部を支給する。
いわき市:予防接種費用の助成(実施主体:福島県獣医師会)
豊橋市:狂犬病予防接種済証手数料減免実施
尼崎市:狂犬病予防法に基づく予防注射済票交付手数料の減免(R5 年度は、8頭@550円)
呉市:市内居住する 補助犬を使用し かつ養育する者を対象に 補助犬の健康管理に要する費用の一部を給付する。
 ②飼育のための必要経費(餌など)
仙台市:飼料代を年間 42,000 円まで補助。
名古屋市:身体障害者補助犬飼育費補助事業(4,900 円 月)
岡山市:補助犬飼育費の助成
宇都宮市:導入の次年度から5年間
長野市:補助犬の飼育費(月額3,000 円)
倉敷市:在宅で、身体障害者手帳を所持し① ~③ のいずれかに該当する方、
①視覚障害の程度が1 級で、盲導犬を現に使用し、飼育している方
②肢体不自由の程度が1~2 級で、介助犬を現に使用し、飼育している方
③聴覚障害の程度が2 級で、聴導犬を現に使用し、飼育している方
下関市:1名につき、月額5,000 円を3か月おきに3か月分(計15,000 円)支給。
 ③その他の費用
相模原市:手数料の免除・犬の登録・犬の狂犬病予防注射済票の交付
神戸市:犬の登録手数料(3,000 円)の免除、狂犬病予防注射済票交付手数料(550 円)の減免
船橋市:犬の登録、犬鑑札の再交付、狂犬病予防注射済票の交付、狂犬病予防注射済票の再交付に係る手数料の免除
富山市:・狂犬病予防接種済票交付手数料(550円)及び犬の登録手数料(3,000円)の免除
富山市:身体障害者補助犬の貸与を受けた者に、貸与に際して発生した自己負担額の一部(2分の1、上限5万円)を補助
長野市:訓練施設までの往復交通費(本人及び付添人)
豊橋市:犬登録手数料減免実施
福山市:犬の登録手数料、犬の狂犬病予防注射済票の交付手数料、犬の鑑札の再交付手数料、犬の狂犬病予防注射済票の再交付手数料の減免
大分市:盲導犬の貸与を受けるために、盲導犬訓練センターで、訓練を行う視覚障害者のセンターまでの往復の交通費の助成
■補助犬に関する相談・苦情等の受付の有無
(1)都道府県
 ①相談・苦情等
 ・盲導犬:あった 65%
      なかった 33%
      回答なし  2%
 ・介助犬:あった 19%
      なかった 79%
回答なし  2%
 ・聴導犬:あった 9%
なかった 88%
回答なし  2%
 ②盲導犬に関する問い合わせの項目と相談者について
 ・訓練事業者関連(補助犬使用者5、補助犬希望者36、障害者家族1)
・資料請求(補助犬希望者30、障害者家族1、訓練事業者2、一般市民1、その他7)
 ・その他問い合わせ(補助犬希望者22、障害者家族1、訓練事業者3、一般市民1、その他2)
 ・同伴拒否関連(補助犬使用者40、訓練事業者5、受入れ事業者1、一般市民3、その他3)
 ・その他の苦情(一般市民1、その他6)

(2)政令市・中核市
 ①相談・苦情等
 ・盲導犬:あった 38%
      なかった 57%
      回答なし  5%
 ・介助犬:あった 7%
       なかった 86%
      回答なし 7%
 ・聴導犬:あった 7%
       なかった 86%
      回答なし 7%
 ②盲導犬に関する問い合わせの項目と相談者について
 ・訓練事業者関連(補助犬使用者1、補助犬希望者3、一般市民1)
 ・その他問い合わせ(補助犬使用者29、補助犬希望者15、一般市民3、その他11)
  ・同伴拒否関連(補助犬使用者26、障害者家族1、訓練事業者1、受入れ事業者3、一般市民3、その他2)
 ・その他の苦情(補助犬使用者3、一般市民5、その他1)
*1月31日現在、未回答の自治体については回答待ちです。
報告書の詳細は、後日、日本補助犬情報センターのホームページにアップされ、PDFファイルでダウンロードできる予定です。


3.盲導犬と行く!全国津々浦々観光情報~仙台編~
 公益財団法人 日本盲導犬協会 仙台訓練センター
日本盲導犬協会は、全国に4つの訓練センターがあります。北から仙台市、横浜市、静岡県富士宮市、島根県浜田市です。今回ご案内する仙台市は、古い歴史や温泉街、七夕まつりなどの有名なイベントやおいしい食べ物が沢山あり、遊びに行くには良い場所です。
先日、神奈川県在住のユーザーが仙台を旅行したと聞き、お話を伺ってみました。今回が3回目の仙台旅行で、これまで訪問して楽しかったのは仙台城跡、秋保温泉、仙台市の北東にある松島。グルメも満喫したそうです。仙台の観光情報について、地元訓練センターの職員の口コミなども交え紹介します。
新幹線で出かける際、複数人で前後の座席が取れた時は、席を回転させて、広くなった足元に毛布を敷いて犬をダウンさせるそうです。ちなみに、コロナ禍で自粛となっていた、新幹線などでの席の回転は、現在できるようになっています。
仙台城跡は、言わずと知れた戦国武将伊達政宗の居城の跡地です。残念ながら、現在お城はないのですが、広い公園になっていて盲導犬と散歩するにはもってこいの場所です。標高130メートルの高台にある本丸跡地には凛々しく馬にまたがる政宗の石像があり、そこからは、仙台市内、太平洋までを見渡すことができます。仙台市内の観光名所を循環する、シティーループバスで行くのがおすすめです。ループバスでは、政宗公の御霊を祀る霊屋である瑞鳳殿や、政宗公が建てた国宝の大崎八幡宮にも行けますので、歴史を感じたい方は是非!
秋保温泉は、仙台駅から車で40分ほどのところにあります。なんと古墳時代からある温泉で、天皇から御湯の称号を賜った日本三御湯のひとつだそうです。いくつもの旅館があり、旅館ごとに大浴場や露天風呂、サウナなどがあります。入浴中は、盲導犬は部屋で待機となりますが、露天風呂は永遠に入れる気持ちよさだったとか。「秋保・里センター」では、4~11月の週末に、毎週源泉が変わる足湯を楽しむことができます。TVなどでも有名な「主婦の店さいち」のおはぎは職員にもファンが多く、あんこ・ごま・きなこに、10~5月は納豆もあるそうです!週末は第三まである駐車場もいっぱいになる大人気のお店です。
松島は、松島湾内外に浮かぶ260ほどの島の総称で、日本三景のひとつです。犬が座ったように見える、「犬島」もあるそうです。遊覧船があり、島めぐりが楽しめます。複数の船会社がありますが、ほとんどのHPに盲導犬が乗れることが明記されていて、補助犬の同伴について理解が浸透しているので、安心して乗船できます。
ここで少し仙台訓練センターの情報も。仙台訓練センターでは、毎年「さくまつり」という地域のおまつりに場所を提供しており、昨年はコロナ禍を経て4年ぶりの開催でした。魚介や焼きそばの出店に、ユーザーが参加するバンド演奏や、チャリティバザーなどを楽しむことができます。
最後にグルメ情報です。おすすめはずんだシェイクに、女川の牡蠣を使った牡蠣ご飯とのこと。ずんだシェイクは、枝豆風味のバニラシェイクです。こってりが好きな方は、ホイップクリームトッピングを選んでみてください。他にも芋煮、せり鍋、仙台駅から少し足を伸ばして定義とうふ店の三角あぶらあげ。駅前のアーケードでは阿部蒲鉾のアメリカンドッグのようなかまぼこ、ひょうたん揚げを食べながら歩く人が沢山います。そして、仙台訓練センターそばの太平楽のラーメンもおいしいのではずせません。
旅行を予定される際は、ぜひ仙台へどうぞ。楽しい場所もおいしいものも、たくさんありますよ!

4.盲導犬ユーザーのコーナー
  「小さな旅から大きな旅へ」 兵庫県 板橋 真由美
私がお気に入りのカバンに、三段ポーチとポケットがたくさんついた大小のリュックがあります。夫も、仕分けができるワンショルダーバッグと大小のリュックを使い分けています。それから、最近出番が少なくなった大きなスーツケースがあります。
 私たちは、夫婦で一頭の盲導犬と歩く盲導犬タンデムユーザーです。
パートナーの盲導犬ガイアは、お出かけの気配を感じると、どちらが出かける?どのかばん?今日は、みんなででかける?とそわそわしながら、私たち二人の行動を注目しています。
 家の周りを歩く外出の延長線上に、小さな旅がある。と私は思っています。小さな旅の連続が、大きな旅へとつながります。

 わが家に家族に迎えた初めての盲導犬は、全盲の夫のパートナーのカンタスでした。彼とは、真冬の宗谷海峡の寒さを体感する、サロマ湖で氷の滑り台を滑る、夏にはカヌーやラフボートに乗る、ヨーロッパ旅行やオーストラリアに一ヶ月滞在するなど、国内外をたくさん旅しました。
旅は、リフレッシュするだけではなく、盲導犬と盲導犬ユーザーの、お互いの気持ちをいかにくみ取れるか。という最も大切なことを、短期間に学ばせてくれる機会でした。
 二頭目の盲導犬ハンソンを家族に迎えたのは、弱視の私が、駅のホームで停車している列車を、眼では確認できなくなった頃です。私も盲導犬と一緒に、胸を張って、風を切るようなスピードで歩きたいと思いました。
 ハンソンは、私の病院通いのため、兵庫から京都までの道のりを月に何度も往復するのを支えてくれました。
明日は通院日。また一日仕事だなぁ。とブルーな気持ちになるところを、茶目っ気たっぷりに、彼と小さな旅を楽しむように、謎かけゲームをたくさんちりばめて出かけていました。
 例えば、
・最寄り駅から、新快速電車のAシートの広々としたテーブルの先頭座席が空いているとラッキー!
・病院内の郵便局のATMは、すいているはず!
・午後からの予約分はうまい具合に30分ほど繰りあがるなんて事があったら、ものすごく嬉しい!!
・帰りに壬生菜のお漬物は、売り切れていません。
・聖護院の生八つ橋を買って帰りたいけれど、ジャスト聖護院前にたどり着くゾ!
などなど。たくさんの人の声かけや、助けを借りながら、ハードルの低い事からちょっと高そうな事まで、いろんなお膳立てをクリアし、その都度ハンソンと大喜び。そのような小さな旅を重ねたのも、忘れられない大切な思い出です。

 一昨年、コロナウイルス感染症を経て、三頭目の盲導犬ガイアが家族に加わりました。世界情勢の変化や、酷暑の夏にゲリラ豪雨など、気軽に旅する事が難しくなっている部分もありますが、また犬のレインコートや敷物、大・小のタオルにトイレグッズ、犬用のお水にドッグフードなど、たくさんの荷物をかかえて、道に迷い、困った事があったとしても、いつも傍らにいる同志のような存在のぬくもりを心強く感じながら、こころ豊かな旅に出かけようと思います。


5.盲導犬情報ボックス「2023年に発行された盲導犬に関する文献」
2023年1月から12月の間に発行された書籍の中で、盲導犬に関する記述があるものをご紹介します。
【ノンフィクション】
・『盲導犬繁殖犬チッパーさまさまね 定年おやじ奮闘記』 白石 裕雄(著) (海象社) <点字データ着手・音声デイジー着手>
・『動物がくれる力 教育、福祉、そして人生』 大塚 敦子(著) 岩波書店
・『英雄になった動物たち 胸をゆさぶる100の物語』 クレア・ボールディング (著),白川部 君江(訳) 草思社

【フィクション】
・『とわの庭』 小川 糸(著) 新潮社 <点字データ着手>

【エッセイ】
・『見えないボクと盲導犬アンジーの目もあてられない日々』 栗山 龍太(原作), エイイチ(企画構成・イラスト) 小学館 <点字データ・音声デイジー>

【趣味・実用】
・『ガイドヘルパーが感動した 驚きのチャレンジ精神』 村山 茂(著) ごま書房新社

【医学書】
・『新篇眼科プラクティス 7 だれでもロービジョンケア』 大鹿 哲郎(シリーズ監修)/ 園田 康平, 近藤 峰生, 稲谷 大(シリーズ編集)/ 石子 智士, 近藤 峰生(編集) 文光堂

【児童書】
・『カンタの決心 ボク盲導犬になる』 草野 あきこ(著),かけひ さとこ(絵) 岩崎書店 <点字データ着手・音声デイジー>
・『ワーキングドッグ - わたしたちの社会ではたらく犬たち』 福澤 めぐみ(著) (緑書房)

【コミック】
・『ミラクルラブリー♡感動のどうぶつ物語DX 涙のむこう』 春風 はな (編著) 西東社

6.認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ
(1)2023年度資格認定事業の実施状況
全国盲導犬施設連合会では、盲導犬希望者がどこの施設から盲導犬の貸与を受けても、ほぼ一定水準の盲導犬や歩行指導などのサービス提供が得られるように、盲導犬を育成する「盲導犬訓練士」と、盲導犬希望者へ盲導犬との歩行や毎日の世話の方法を指導する「盲導犬歩行指導員」の資格の認定事業を加盟施設の協力の下に2007年度より行っております。2023年度は、学科目・実技試験を行った結果、4名の盲導犬訓練士、3名の盲導犬歩行指導員の資格認定を行いました。
(2)2024年度の『デュエット』とポスターについて
全国盲導犬施設連合会では盲導犬普及活動として、毎年『デュエット』という広報冊子とポスターを作成・発行しています。
2024年度の『デュエット』では、盲導犬の訓練を特集テーマに掲げ、訓練の種類や「褒めること」を大切にしながら訓練に取り組んでいることを紹介しています。表紙は、「訓練中」と書かれたハーネスバッグを付けた、ピンク色のコートを着ているブラックのラブラドール犬の写真を使用しました。
2024年度のポスターも、『デュエット』表紙と同じ写真を使用しています。ポスターのキャッチコピーは「合言葉はGood!」です。文字は水色を使い、さわやかな明るいイメージで作成しました。上半分は写真を使い、写真の下には次のような文章が書いてあります。「全国盲導犬施設連合会は、盲導犬の育成・支援を推進することで、視覚障害者の自立と社会参加の促進を目指しています。」「盲導犬同伴は身体障害者補助犬法で認められています、皆様のご理解・ご協力をお願いします。」

『デュエット』は、全国盲導犬施設連合会の募金箱を置いてくださっているスーパーなどで無料にて配布しています。置いてあるお店が近くにない場合は、連合会事務局(電話:03-5367-9770)にお問い合わせください。


7.編集後記
令和6年1月1日の能登半島地震におきまして、お亡くなりになられた方々、被災された皆様ならびにご家族の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。そして、被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
さて、32号では障害者差別解消法の改正について特集しました。どのような立場・境遇であっても、結局は人対人です。お互いに相手への思いやりを持って会話する、というのは人として当たり前のことですが、これからも忘れずに実行していきたいです。

『盲導犬情報』 第32号 ~認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌~
■発行責任者 井上 幸彦
■編集責任者 篠田 林歌
■編集 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会事務局
    〒162-0065 東京都新宿区住吉町5-1吉村ビル2階
    電話:03(5367)9770 FAX:03(5367)9771
http://www.gd-rengokai.jp/
E-mail:gd_rengokai★peach.ocn.ne.jp (★を@に替えて送信してください)
■発行 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会
 【加盟団体】
(公財)北海道盲導犬協会 (公財)東日本盲導犬協会 (公財)日本盲導犬協会 (社福)中部盲導犬協会 (公財)関西盲導犬協会 (社福)日本ライトハウス (社福)兵庫盲導犬協会 (公財)九州盲導犬協会
■協力 社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会
NPO法人 日本補助犬情報センター
■発行日 2024年3月31日

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