盲導犬情報
盲導犬を希望される方や、すでにユーザーとして生活されている方、視覚障がい者団体や施設を対象に年2回発行される情報誌です。点字版と墨字(活字)版、音声版の3種類があります。送付ご希望の方は、下記「お問い合わせ」フォームあるいは電話(03-5367-9770)にて、ご連絡ください。
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最新号
『盲導犬情報』 第34号 ~認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌~
今号の内容
1.盲導犬受け入れ全国調査(2025)について
2.2023(令和5)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査について
3.サイトワールド2024に参加
4.盲導犬ユーザーのコーナー 「盲導犬と私、そして未来への可能性」
熊本県 藤川舞
5.盲導犬情報ボックス
「2024年に発行された盲導犬に関する文献」
6.認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ
7.編集後記
1.盲導犬受け入れ全国調査(2025)について
身体障害者補助犬法により盲導犬の受け入れが義務化されてから20年以上が経過しました。そして2024年4月には、障害者差別解消法が改正され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたことで、障害者への理解とともに、対応がより一層求められる社会となりましたが、法律に対する人々の理解は進んでいるのでしょうか。
連合会では、盲導犬ユーザーへの聞き取りにより全国規模では5年前に続き、2回目となる盲導犬受け入れ状況の実態調査を行いました。
連合会事務局と加盟協会が一丸となって取り組み、判明した実態調査の結果概要を報告します。
調査では、連合会加盟施設の盲導犬ユーザー576名の回答を集めました。内訳は男性268名、女性308名です。調査の内容は、2024年1月からの1年間で、盲導犬同伴で受け入れを拒否されることがあったか、拒否されたならその場所はどこだったのか、などについて、今年の1月1日から2月21日、加盟協会職員による電話での聞き取りとメール、および郵送で調査を行いました。
また今回の調査では改正障害者差別解消法が施行されたことで、ユーザーの暮らしに変化があったのか?等も聞き取りを行いました。
調査結果は、次の通りです。
・「盲導犬同伴で受け入れ拒否」に遭ったユーザーは48%
回答のあった576人のうち、昨年1年間で拒否を経験した人は276人(47.9%)に及びました。2020年の調査では、拒否を経験した人は336人(52.3%)でしたので、比較すると、ほぼ横ばいです。
また、「ある」と答えた276人が拒否に遭った延べ回数は1144回。
1年間のうち、1人当たり平均4.1回の受け入れ拒否を経験していることになります。
・拒否が発生する場所は、飲食店、交通機関、宿泊施設の順で多い
結果は飲食店が圧倒的で488回(42.7%)、次いで電車・バス・タクシーなどの交通機関156回(13.6%)、宿泊施設が132回(11.5%)と続きました。(拒否発生回数1144回が母数・複数回答有)
2020年の調査でも「飲食店」と答えた人が最も多く260人(77.4%)でした。
・拒否の理由の多くは「犬はダメ」 5年前と変わらない
「どんな理由で拒否をされましたか?」の問いに最も多い回答は「動物や犬はダメ」が169人(61.2%)、次いで「犬アレルギーや犬嫌いの人など他の人に迷惑がかかる」が134人(48.6%)、「犬を店の外に待たせる、外の席でなどの条件をつけられた」104人(37.7%)、「受け入れの前例がない」が96人(34.8%)と続きました。(拒否経験者276人が母数・複数回答有)
2020年の調査でも「動物や犬はダメ」が207人(61.6%)で、最も多い回答でした。
・社会的障壁と感じることの自由記述
社会参加する上で障壁と感じていることについては「タッチパネルの操作ができない」とする内容が目立ち、その他セルフレジやロボットによる配膳など、ICT技術の進化による障壁を342人の方が感じていました。
その他には「オンライン講座で画面共有資料がわからない」、「無人駅が多く介助をしてもらえない」、「目が見えないからと思われているのか自分に話しかけず、家族や付き添っている人に話す人が多い」、「コンビニの店員に外国人が増え対応が難しい」など、さまざまなコメントが寄せられました。
・障害に対する人々の理解の変化
「2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供が義務化されましたが、この1年間で障害に対する人々の理解に変化があったと思いますか?」の問いに対して「良い変化があったと感じる」と答えた方は127人(22%)、「変化したとは思わない」は446人(77.4%)でした。
この他の詳細な調査結果は、連合会のWEBサイトで公開しています。
今回の調査で見えてきた結果をもとに、連合会と加盟協会は、盲導犬同伴を当たり前とする社会を目指し、受け入れ促進活動を推進するとともに、障害のある方も無い方も、共に生きる社会づくりにむけて邁進いたします。
2.2023(令和5)年度 身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査について
特定非営利活動法人 日本補助犬情報センターでは、都道府県・政令指定都市・中核市に、毎年、身体障害者補助犬育成促進事業等実施実態調査を行い、その結果を調査報告書にまとめています。今回は2023(令和5)年度の調査報告書の概要をご紹介します。
注:この報告書で出している値は、四捨五入による計算の丸め誤差が存在するため、値の合計は100%にならないことがあります。
■2023(令和5)年度補助犬育成促進事業実施実態調査の結果
(1)補助犬育成促進事業の実施状況
盲導犬:79%が実施
介助犬:21%が実施
聴導犬:13%が実施
(2)盲導犬育成促進事業実施頭数と1頭あたりの助成金額
北海道 2(1,800,000円)
青森県 0
岩手県 1(1,500,000円)
宮城県 2(無記入)
秋田県 1(1,890,000円)
山形県 1(1,830,000円)
福島県 1(1,500,000円)
茨城県 1(2,022,000円)
栃木県 1(1,600,000円)
群馬県 0
埼玉県 未回答
千葉県 1(1,984,500円)
東京都 8(1,984,500円)
神奈川県 3(1,910,800円)
新潟県 1(1,800,000円)
富山県 0
石川県 0
福井県 0
山梨県 2(1,500,000円)
長野県 3(1,980,000円)
岐阜県 2(1,500,000円)
静岡県 2(1,984,500円)
愛知県 3(1,500,000円)
三重県 未回答
滋賀県 未回答
京都府 2(1,500,000円)
大阪府 3(1,661,000円)
兵庫県 2(1,890,000円)
奈良県 0
和歌山県 未回答
鳥取県 未回答
島根県 1(1,980,000円)
岡山県 未回答
広島県 1(1,980,000円)
山口県 1(1,500,000円)
徳島県 1(1,980,000円)
香川県 1(1,980,000円)
愛媛県 1(1,980,000円)
高知県 0
福岡県 未回答
佐賀県 0
長崎県 1(1,200,000円)
熊本県 1(1,200,000円)
大分県 1(1,890,000円)
宮崎県 1(2,045,000円)
鹿児島県 未回答
沖縄県 未回答
(3) 都道府県における補助犬育成促進事業の助成金交付先
・盲導犬
希望者が選んだ訓練事業者:76%
指定する団体:5%
委託する団体:16%
回答なし:3%
・介助犬
希望者が選んだ訓練事業者:76%
指定する団体:5%
委託する団体:11%
回答なし:8%
・聴導犬
希望者が選んだ訓練事業者:76%
指定する団体:5%
委託する団体:11%
回答なし:8%
■補助犬に関する助成施策等の実施状況
(1)都道府県
①補助犬の健康管理費(予防接種、医療費など)
石川県:県内の補助犬ユーザー団体に基金を設立し、助成対象費用計の半額を対象に、1頭当たり年間11,000 円を上限に助成する
福井県:身体障がい者補助犬の衛生管理に必要な処置を県獣医師会に委託
長野県:県動物愛護センターにおいて、補助犬の健康診断(身体検査、血液検査、糞便検査、尿検査、爪切り等)を無料で行っている。(ドッグドッグ事業)
島根県:県内の補助犬使用者を対象に、4万円を上限として、補助犬の予防接種・医療費の助成を行う。
香川県:補助犬を使用する者に対して、厚生労働省が作成した「身体障害者補助犬の衛生確保のための健康管理ガイドライン」に定められているものを対象に、年間1回、1人につき20,000円を限度として助成する。
②飼育のための必要経費(餌など)
青森県:補助犬の貸与に必要な経費
(2)政令市・中核市
①補助犬の健康管理費(予防接種、医療費など)
札幌市:身体障害者補助犬について、狂犬病手数料のうち、登録手数料(3,200円)及び注射済票交付手数料(700円)を免除
横浜市:身体障害者補助犬定期検診等助成事業(補助犬の定期検診、疾病にかかる診療費を助成)
川崎市:一定の要件を満たす補助犬ユーザーに対し、健康管理費を年間最大6万円支給する。
新潟市:登録手数料、狂犬病予防注射済票交付手数料、鑑札の再交付手数料、狂犬病予防注射済票再交付手数料(R5年度は、狂犬病予防注射済票交付手数料@550円×盲導犬11件)
名古屋市:身体障害者手帳1級から3級の方で、日常生活補助のために使用する補助犬及び盲導犬として育成している犬に係る次の手数料の免除 登録申請手数料(3,000 円)、狂犬病予防注射済票交付手数料(550 円)、鑑札の再交付手数料(1,600 円)及び狂犬病予防注射済票交付手数料(340 円)
神戸市:補助犬の健康管理を図るために必要な健康診断、予防接種、治療等に充てる経費を補助(所得制限あり) ※月額3,600 円~7,000 円
広島市:低所得のため補助犬の養育に要する費用の負担が困難な者に対して、健康管理費としてその一部を支給する。
富山市:狂犬病予防接種済票交付手数料(550円)及び犬の登録手数料(3,000円)の免除
岐阜市:身体障害者補助犬の狂犬病予防接種にかかる注射済票交付手数料の免除
尼崎市:狂犬病予防法に基づく予防注射済票交付手数料の減免(R6年度は、7頭@550円)
呉市:市内居住する、補助犬を使用し、かつ養育する者を対象に、補助犬の健康管理に要する費用の一部を給付する。
②飼育のための必要経費(餌など)
仙台市:飼料代を年間 42,000 円まで補助。
名古屋市:身体障害者補助犬飼育費補助事業(4,900 円/月)
岡山市:補助犬ユーザーに対し飼育費の助成。
宇都宮市:導入の次年度から5年間
長野市:補助犬の飼育費(月額3,000 円)
岐阜市:身体障害者補助犬の飼育のために必要な経費の一部を助成する。
豊橋市:犬登録手数料減免(登録手数料3,000円)及び狂犬病予防接種済票
手数料減免(550円) R5実績は登録0、注射済票3件
倉敷市:在宅で、身体障害者手帳を所持し① ~③ のいずれかに該当する方、
①視覚障害の程度が1 級で、盲導犬を現に使用し、飼育している方
②肢体不自由の程度が1~2 級で、介助犬を現に使用し、飼育している方
③聴覚障害の程度が2 級で、聴導犬を現に使用し、飼育している方
③その他
相模原市:手数料の免除・犬の登録・犬の狂犬病予防注射済票の交付
神戸市:犬の登録手数料(3,000 円)の免除、狂犬病予防注射済票交付手数料(550 円)の減免
富山市:身体障害者補助犬の貸与を受けた者に、貸与に際して発生した自己負担額の一部(2分の1、上限5万円)を補助
福山市:犬の登録手数料、犬の狂犬病予防注射済票の交付手数料、犬の鑑札の再交付手数料、犬の狂犬病予防注射済票の再交付手数料の減免
大分市:盲導犬の貸与を受けるために、盲導犬訓練センターで、訓練を行う視覚障がい者のセンターまでの往復の交通費の助成
■補助犬に関する相談・苦情等の受付の有無
(1)都道府県
①相談・苦情等
・盲導犬:あった 63% なかった 37% 回答なし 0%
・介助犬:あった 16% なかった 82% 回答なし 3%
・聴導犬:あった 8% なかった 92% 回答なし 0%
②盲導犬に関する問い合わせの項目と相談者について
・訓練事業者関連(補助犬希望者32、訓練事業者1)
・資料請求(補助犬使用者5、障害者家族1、訓練事業者1、受入れ事業者11、一般市民1、その他5)
・その他問い合わせ(補助犬使用者1、補助犬希望者1、訓練事業者1、一般市民3、その他2)
・同伴拒否関連(補助犬使用者37、訓練事業者6、一般市民1、その他3)
・その他の苦情(補助犬使用者3、一般市民1、その他1)
(2)政令市・中核市
①相談・苦情等
・盲導犬:あった 31% なかった 67% 回答なし 2%
・介助犬:あった 2% なかった 96% 回答なし 2%
・聴導犬:あった 7% なかった 89% 回答なし 4%
②盲導犬に関する問い合わせの項目と相談者について
・訓練事業者関連(補助犬使用者1、補助犬希望者1)
・資料請求(障害者家族1、受入れ事業者1)
・その他問い合わせ(補助犬使用者4、補助犬希望者1、一般市民1)
・同伴拒否関連(補助犬使用者15、訓練事業者1、受入れ事業者1、その他3)
・その他の苦情(補助犬使用者1)
*1月31日現在、未回答の自治体については回答待ちです。
報告書の詳細は、後日、日本補助犬情報センターのホームページにアップされ、PDFファイルでダウンロードできる予定です。
3.サイトワールド2024に参加
視覚障害者向け総合イベント「サイトワールド」。皆様はご存知でしょうか。
国内最大級の視覚障害支援機器展示会として、毎年、東京の錦糸町マルイで開催されており、盲導犬の関係では、日本盲導犬協会が盲導犬体験歩行会で長年出展しています。
今回で16回目を迎えた本イベントは「ふれてみよう!日常サポートから最先端テクノロジーまで」をテーマとして、視覚障害者の日常生活を便利にする機器や、未来につながる最先端の技術を利用したさまざまな製品が展示されており、実際にそれらを体験することもできました。
今号の盲導犬情報では、サイトワールドについて、参加レポートにて皆様へご紹介いたします。
2024年11月1日(金)~11月3日(日)の3日間で開催された中、筆者が参加したのは初日です。会場となる「すみだ産業会館サンライズホール」は錦糸町マルイの8階と9階にあり、駅からはわずか徒歩2分とアクセスが良い場所ですが、駅から会場までの道のりにはたくさんのひと、ひと、ひと。
しかし、あちらこちらに「サイトワールド」のビブスを着たスタッフが配置され、会場までスムーズなご案内と誘導がありました。
会場に着くと、平日にも関わらずここでも大勢の人が午前中から列をなし、参加者達の本イベントへの期待の高さを垣間見ることができました。
ちなみに、盲導犬用のトイレの場所も準備されておりましたので、盲導犬ユーザーも安心して参加することができます。
今年の出展企業・団体は42団体ある中、筆者が実際に体験した製品を2つご紹介します。
①あしらせ
靴に付けて視覚障害者の歩行をサポートするナビゲーションデバイス。スマートフォンを利用して専用のアプリにて目的地を設定すると、足への振動で目的地を案内します。目的地への進行方向が正解の時は靴の前側が、反対に向いている時は靴のかかと部分が振動。また右折の時は右側、左折の時は左側の靴がそれぞれ振動し、進む方向が直感的に分かり易い振動案内です。
あしらせのご担当者の方によると、盲導犬ユーザーとあしらせの相性は良いそうです。盲導犬は、道案内はできないが障害物などの危険を避けることができる、逆にあしらせは、障害物察知はできないので、盲導犬とあしらせを組み合わせると、より快適な歩行が可能となる、とお話しされていました。
②アイコサポート
遠隔オペレーターがスマートフォンに写った映像や位置情報、目の前の書類などの情報を声で伝えるサービスです。体験会ではマクドナルドのメニューをスマートフォンのカメラにかざし、オペレーターに読み上げてもらいました。遠隔オペレーターは同行援護従事者養成研修など、視覚障害者をサポートするための研修を受けた専門スタッフが対応します。目的地には到着しているけれども、お店の入り口が分からないなど、「今ちょっと教えてほしい」と思い立った時に、すぐ知りたい情報が的確に得られることは、視覚障害者の方々により快適な外出を促すことになるのではないでしょうか。
ご紹介した以外にも、3Dプリンタを利用した模型で絵本に登場するイラストを触って実感できる製品や、ガイドヘルパーを「アイドルヘルパー」と呼び、安全で楽しいおでかけを実現する同行援護事業所など、多種多様な団体が出展していました。そして、会場には盲導犬ユーザーの姿もあり、日本盲導犬協会は盲導犬との歩行が体験できるコーナーを設け、盲導犬体験歩行会を実施しています。まだ盲導犬と歩いたことがない方や盲導犬のことを知りたい方にとって、気軽に立ち寄って盲導犬について聞いたり体験したりできるイベントだと感じました。
サイトワールドは次回、2025年10月16日(木)~10月18日(土)にすみだ産業会館サンライズホールで実施が予定されています。
ご興味のある方は是非、次回参加されてみてはいかがでしょうか。
最後に、本イベントの主催者情報を掲載いたします。
・主催:NPO サイトワールド
・共催:(社福)日本盲人福祉委員会、(社福)日本盲人社会福祉施設協議会、
(社福)日本点字図書館、(社福)視覚障害者支援総合センター
4.盲導犬ユーザーのコーナー 「盲導犬と私、そして未来への可能性」
熊本県 藤川舞
2.0の視力を持ち、何不自由のない生活を送っていた私が失明してしまったのは二十歳の頃でした。突然のことに落ち込んだものの、シングルマザーでもあった私は「明るく行動的な母親でありたい」と考えるようになりました。
そこでまずは白杖歩行に挑戦。杖で息子の保育園へお迎えに行ったり、あん摩・鍼灸を学ぶために盲学校への道を覚えたことは大きな自信につながりましたが、当時の私は常々「もっと自由に、いろいろな場所に行きたい」と感じていました。そんな中、障害物を颯爽と避(よ)けて歩く盲導犬ユーザーと出会い、「自分も盲導犬と歩きたい!」と感じるに至ったのです。
盲導犬と暮らし始めた私の行動範囲は大きく広がり、徐々に「各地を旅してみたい」という欲求が芽生えました。「全盲者が旅だなんて…」と考える方もおられるでしょう。しかし私は「ほんの少しの勇気と迷惑にならない程度の図々しさ」を持てれば、旅を楽しめることに気付いたのです。
駅・航空会社・ホテル・気になる飲食店等には盲導犬を同伴することと、誘導をお願いしたい旨を事前に連絡。もし断られたら、丁寧に説明し、それでもだめなら、「その場所には縁が無かった」と割り切ればよいのです。土地勘がなく困ることもあるけれど、スマホの音声ナビで目的地付近には向かえますし、かわいい盲導犬がいれば多くの方にお声がけいただけます。通行人は案外親切で、声を出せば誰かが答えてくれますし、目的地を伝えれば地図を教えてくれたり、誘導してくれることも少なくありません。
つい先日も、同じく全盲の夫と、今の相棒である盲導犬のミミと、仙台旅行に出かけてきました。観光タクシーを利用し、運転手さんの協力を得つつ、空港や仙台駅でお土産を選んだり、ずんだソフトクリームや牛タンを楽しんだり、伊達政宗の銅像と写真を撮ったり、神社を参拝したりと、充実した時間を過ごしました。夕食は地元の居酒屋へ。地産地消を楽しんだ後、ホテルを目指したのですが…。頭の中の地図通りに歩いているのに、入り口が見つかりません。道に迷っているのに、見慣れない景色に尻尾を振って喜ぶミミ。私たちも「そのうちたどり着くだろう」と笑顔で歩きます。通行人に声をかけてみると、目的地は目と鼻の先だったようで、そこまで誘導してもらった、なんてこともありました。こんな些細なトラブルも、旅の楽しみの一つだと思っています。
ところで私は「いつか、わんこそばに挑戦したい」と思っていました。調べてみると、仙台から目的地までは意外に近い様子。ならば夢を叶えようということで、お店を予約し、新幹線で盛岡へ。ミミに見守られながら挑戦した結果は、夫が74杯、私が105杯(15杯でかけそば1杯分)。達成感に浸りつつ盛岡駅に戻り、駅員さんにお願いして冷麺などのお土産を買い、電車・飛行機を乗り継いで帰路についたのでした。
私たちにとっての盲導犬は、単なる移動の手段ではありません。彼らは私たちが自信を取り戻し、新たな世界へ足を踏み出すことを支援してくれるパートナーであり、家族同然の存在なのです。歩くこと、行きたい場所へ行くことを諦めている視覚障害者にこそ知っていただきたい。盲導犬はあなたにも笑顔と感動を与えてくれる存在になりうるのだということを。
5.盲導犬情報ボックス「2024年に発行された盲導犬に関する文献」
2024年1月から12月の間に発行された書籍の中で、盲導犬に関する記述があるものをご紹介します。
【フィクション】
・『わんダフル・デイズ』横関 大【著】幻冬舎 <点字データ着手・音声デイジー着手>
【エッセイ】
・『犬たちの心の声が教えてくれること』 ゆりあ【著】 ロングセラーズ
・『盲導犬との絆、静かな感動 - 光を失った33人が自ら綴るエッセイ』 全日本盲導犬使用者の会【著】/石黒 謙吾【編】ワニ・プラス <点字データ着手・音声デイジー・テキストデイジー>
・『盲導犬と地球を歩く - 郡司ななえと私たちのわんだふるじゃーにー』内田 素子【著】自然食通信社 <点字データ・音声デイジー・テキストデイジー>
【実用】
・『教養としての犬―思わず人に話したくなる犬知識130』菊水 健史【監修】/富田 園子【著】西東社
【障害者福祉】
・『障害者たちが生きる時代を問う―アソシエーション・コモン社会への展望』堀 利和【編著】社会評論社
【児童書】
・『ぼくはまっくろ』原 陽子【文】/山本 久美子【絵】リーブル(練馬区)<点字データ着手>
・『カンタの訓練―盲導犬への道』草野 あきこ【作】/かけひ さとこ【絵】岩崎書店<点字データ着手・音声デイジー着手>
・『さいきょうのボディーガード』海野 あした ニコモ <点字データ>
【コミック】
・『ハッピー!ハッピー♪(22) 特別編:リタイア』波間信子【著】講談社
6.認定NPO法人全国盲導犬施設連合会からのお知らせ
(1)2024年度資格認定事業の実施状況
全国盲導犬施設連合会では、盲導犬希望者がどこの施設から盲導犬の貸与を受けても、ほぼ一定水準の盲導犬や歩行指導などのサービス提供が得られるように、盲導犬を育成する「盲導犬訓練士」と、盲導犬希望者へ盲導犬との歩行や毎日の世話の方法を指導する「盲導犬歩行指導員」の資格の認定事業を加盟施設の協力の下に2007年度より行っております。2024年度は、学科目・実技試験を行った結果、4名の盲導犬訓練士、1名の盲導犬歩行指導員の資格認定を行いました。
(2)2025年度の『デュエット』とポスターについて
全国盲導犬施設連合会では盲導犬普及活動として、毎年『デュエット』という広報冊子とポスターを作成・発行しています。
2025年度の『デュエット』では、盲導犬の受け入れを特集テーマに掲げ、盲導犬ユーザーから聞いた、店舗などにスムーズに受け入れていただいた時の工夫や、盲導犬の受け入れに関する法律などを紹介しています。表紙はハーネスをつけたイエローの盲導犬が、左へ向かって颯爽と歩いている写真を使用しました。
2025年度のポスターも、『デュエット』表紙と同じ写真を使用しています。
ポスターのキャッチコピーは「一歩前に踏み出そう」です。文字は青緑を使い、明るいイメージで作成しました。写真の下には次のような文章が書いてあります。「全国盲導犬施設連合会は、盲導犬の育成・普及を推進することで、視覚障害者の自立と社会参加の促進を目指しています。」「盲導犬同伴は身体障害者補助犬法で認められています。皆様のご理解・ご協力をお願いします。」
『デュエット』は、全国盲導犬施設連合会の募金箱を置いてくださっているスーパーなどで無料にて配布しています。置いてあるお店が近くにない場合は、連合会事務局(電話:03-5367-9770)にお問い合わせください。また、『デュエット』は、当連合会のホームページでも見ることができます。
7.編集後記
今号で掲載いたしました「盲導犬受け入れ全国調査(2025)」にご回答いただきましたユーザーの皆様におかれましては、大変お忙しい中ご協力を賜り、心より感謝申し上げます。盲導犬情報への掲載というかたちで、調査結果のご報告とさせていただきます。
『盲導犬情報』 第34号 ~認定NPO法人全国盲導犬施設連合会 情報誌~
■発行責任者 井上 幸彦
■編集責任者 篠田 林歌
■編集 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会事務局
〒162-0065 東京都新宿区住吉町5-1吉村ビル2階
電話:03(5367)9770 FAX:03(5367)9771
https://www.gd-rengokai.jp/
E-mail:gd_rengokai★peach.ocn.ne.jp
(★を@に換えて送信してください)
■発行 認定NPO法人全国盲導犬施設連合会
【加盟団体】(公財)北海道盲導犬協会 (公財)東日本盲導犬協会 (公財)日本盲導犬協会 (社福)中部盲導犬協会 (公財)関西盲導犬協会 (社福)日本ライトハウス (社福)兵庫盲導犬協会 (公財)九州盲導犬協会
■協力 社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会
NPO法人 日本補助犬情報センター
■発行日 2025年3月31日